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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1186950 |
審判番号 | 不服2005-3129 |
総通号数 | 108 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-02-23 |
確定日 | 2008-10-30 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第336750号「画像検索方法およびその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月 2日出願公開、特開平11-175534〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年12月8日の出願であって、平成17年1月17日に拒絶査定がなされ(発送日1月25日)、これに対して同年2月23日に拒絶査定不服審判が請求され、その後当審において平成20年2月25日付で拒絶の理由が通知され、同年4月21日付で手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成20年4月21日付の手続補正書により補正された明細書又は図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。 「【請求項1】 複数の画像データを格納したデータベースと、 該複数の画像データのそれぞれの原特徴量を抽出する抽出手段と、 該抽出された複数の原特徴量のデータから3つのベクトル方向へ射影した3次元ベクトルである描画特徴量に再構成するための手段と、 該再構成された描画特徴量から3次元座標値を算出する算出手段と、 該算出された3次元座標値を基礎にして、3次元空間中のその座標に該当する場所に各画像データの画像またはそれらを縮小または簡約したパターンである画像アイコンを貼り付けて使用者に提示する提示手段と、 使用者の行為または使用者の操作を検出する検出手段とを有し、 上記提示手段は、上記検出手段によって設定される上記3次元空間中の視点に対して常に所定の角度を有するように上記画像または画像アイコンを提示することを特徴とする画像提示装置。」 3.当審の拒絶理由 一方、当審において平成20年2月25日付で通知した拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 (B)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.田邊 勝義 他、多次元心理空間を用いる類似画像検索法、電子情報通信学会論文誌、日本、社団法人電子情報通信学会、1992.11.25発行、Vol.J75-D-II、No.11、pp.1856-1865. 2.特開平04-246771号公報 3.早川和宏 他、ユーザの利用履歴に基づくWWWサーバの地図型ディレクトリ、情報処理学会研究報告、日本、社団法人情報処理学会、1997.01.16発行、Vol.97、No.2(97-HI-70-3)、pp.17-24. 4.辻康博 他、曲の局所パターン特徴量を用いた類似曲検索・感性語による検索、電子情報通信学会技術研究報告、日本、社団法人電子情報通信学会、1997.03.06発行、Vol.96、No.565(SP96-124)、pp.17-24. 5.特開平05-189484号公報 6.小池英樹、インタラクティブ3次元情報視覚化、コンピュータソフトウェア、日本、日本ソフトウェア科学会、1994.11.15発行、Vol.11,No.6、pp.20-31. 4.引用例 (4-1)当審拒絶の理由で引用文献1として引用された、田邊 勝義 他、多次元心理空間を用いる類似画像検索法、電子情報通信学会論文誌、日本、社団法人電子情報通信学会、1992.11.25発行、Vol.J75-D-II、No.11、pp.1856-1865.(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の(ア)?(キ)の事項が記載されている。 (ア)「あらまし 本論文では,画像データベースにおける,人間の多様な類似感覚と対応した類似画像検索法について述べる.本類似画像検索では,主観評価により画像間の(非)類似度を取得し,多次元尺度法により多次元心理空間を構成する.多次元心理空間の各座標軸を重回帰分析により画像特徴量の線形結合式でそれぞれ表す.検索キー画像から抽出した画像特徴量を,上記の線形結合式の全部あるいは一部を用いて多次元心理空間中の点に変換し,蓄積画像との距離の近い画像を検索結果として出力する.260枚の蝶の2値パターンに主観評価を行い,得られたパターン間の類似度を正解として,画像特徴量から前述の線形結合式により計算される多次元心埋空間の推定値との誤差評価を行い,15次元を多次元心理空間の最適次元と決定した.最適次元での検索性能評価を検索率および検索結果への非類似パターンの混入の観点から行い,有効性を確認した.また,多次元心理空間における各軸の意味付けを行い,個別の観点での検索が実現できる可能性を見出せた.」(第1856頁) (イ)「2. 類似画像検索システムの構成 2.1 類似画像検索システムの概要 現状の画像データベースシステムでは,あらかじめ人間が蓄積する画像に主に言語情報などのインデックスを付与しておき,検索時には,このインデックスを参照している^((1)).本論文では,人間の多様な類似感覚と対応した検索が可能なインデックスの自動付与を目指す.このために,図1に示すようなシステム構成をとる.図1では,インデックスの付与に対応する検索系の構築(図1で実線),検索系の構築後に行う画像の蓄積(1点鎖線),画像を検索キーとして用いた画像の検索(破線)の処理を示している. 検索系の構築では,検索系の構築に用いられる画像(学習パターン)について,主観評価データを取得し,画像間の類似度を得る.2.2に述べるように画像間の類似度に基づき多次元心理空間を構成し,物理量との対応関係を求める. 画像の蓄積では,検索系の構築後に画像を蓄積する場合に,画像から抽出した特徴量より多次元心理空間における座標値を求める. 画像の検索では検索キー画像から抽出した画像特徴量より,多次元心理空間上の座標値を求め,蓄積画像との多次元心理空間上での距離の近い画像を検索結果として出力するという処理となる.以下各処理の詳細を説明する.」(第1857頁右欄第21-33行) (ウ)「2.2 検索系の構築 2.2.1 多次元心理空間と物理特徴量との対応付け 検索系の構築では,人間の類似感覚と対応した類似画像検索を実現するために,画像から抽出される物理特微量と心理量との対応付けを行う.そのために,主観評価結果を用いて多次元心理空間を構成し,空間の各座標軸と物理量との関係式を導出する.検索時には,検索キー画像から物理量を抽出し,これを多次元心理空間中の点に変換し,距離の近い画像を検索する.このようにすることにより,人間の類似感覚と対応した類似画像検索が実現可能となる. 図1に示すように検索系を構成するために用いるn枚の画像(学習パターン)について主観評価を行い,画像iと画像j間の非類似度o_(ij),(≧0;o_(ij)の値が小さいほど類似していることを示す)を求める.次に主観評価で求めた画像間の非類似度o_(ij)から多次元尺度法^((l5))(付録参照)により,A次元の多次元心理空間を構成し,多次元心理空間における画像iの座標値y_(i)={y_(1i),…,y_(li),…,y_(Ai)}を決定する. 多次元心理空間へ配置された学習パターンのy_(i)から以下のようにして多次元心理空間の各座標軸と物埋量の対応付けが得られる.学習パターンiから画像特徴量 x_(ik)(k=1,…,m;mは次元数)を抽出する.多次元心理空間に配置したn枚の学習パターンを用いて,心理空間の各次元の座標値y_(t)(t=1,2,…,A)と画像特徴量x_(k)(k=1,…,m)の関係式を求める.具体的には,y_(t)を目的変数とし,x_(k)を説明変数として重回帰分析を行い,次式のようにy_(t)をx_(k)の線形結合式で表す. y_(t)=b_(t0)+b_(t1)x_(1)+…+b_(tm)x_(m) (1) ここで,b_(t0),b_(t1),…,b_(tm)は偏回帰係数である. このように式(1)を用いて画像iのx_(ik)から多次元心理空間上における座標値y_(i)を計算できる.以上のようにして得られたb_(to),b_(t1),…,b_(tm)(t=1,2,…,A)およびy_(i)(i=1,2,…,n)を図1の類似尺度テーブル(Index table)へ格納する. 2.2.2 画像の蓄積 蓄積されるI枚の画像はx_(k)を抽出後,式(1)を用いてインデックスが付与される.図1の類似尺度テーブルに格納されたb_(to),b_(t1),…,b_(tm)(t=1,2,…,A)を用いて,式(1)により多次元心理空間における座標値y_(l)(l=1,2,…,I)を計算することにより多次元心理空間上での配置が決定される.後述のように,検索時には検索キー画像とy_(l)との多次元心理空間上での距離を計算するために用いられる.蓄積画像のインデックスと言えるy_(l)を,図1の類似尺度テーブルに格納する.」(第1857頁右欄第34行-第1858頁右欄第6行) (エ)「3.3 画像特徴 本論文で用いた画像データの物理量(画像特徴)は,蝶のパターンの輪郭形状を表現するのに適していると考えられるぺリフェラル特徴^((16))に基づいている.具体的には,以下のように画像iの画像特徴ベクトルx_(i)=(x_(i1),…,x_(ik),…,x_(im))^(T)を求める.ここでmは特徴ベクトルの次元である.」(第1859頁左下欄下から8-2行) (オ)「4.1多次元心理空間における最適次元の決定 (中略) 3.2で述べたように,260枚の画像間の主観評価データo_(ij)を取得しているため,260枚の一部を学習パターンとして2.2で述べた検索系を構築するために使用し,残りの画像を未知パターンとしてo_(ij)との誤差評価を行う(ここで,o_(ij)は,260枚中の任意の画像i,j間の非類似度を表す).ところで,検索性能は学習パターンに大きく依存すると考えられるので,全蓄積画像260枚から任意に50枚を選択し,このような学習パターンセットを23通り作成した.以下に述べる各種の評価は,23セットの平均値を用いて行うことにした.」(第1859頁右欄第11-27頁) (カ)「4.3 多次元心理空間における各軸の意味付け 構築した検索系の多次元心理空間における距離を用いた検索は,総合的な類似感覚に対応した検索といえるのに対し,多次元心理空間を張る各軸は,個別の心理的観点が反映されている可能性がある.そこで,各軸の表す心理的観点を調べるために,構築したl5次元の多次元心理空間に260枚の蝶のパターンを配置した.そして,15軸から2軸ずつ抽出して平面を張り,そのときの蝶のパターンの分布を紙にプリントアウトし,目視により各軸の意味付けを試みた. 各軸の意味付けの結果を表1に示す.同表で,括弧で囲んである軸についての意味付けは,確信度が低いことを表す.また,意味付けが困難な場合は,不明とした.表1に示すように,横長度,真円度,下羽の広がり度,三角形度合,重心の位置という個別の形状因子を表現できる軸を見出すことができた.このうち表1に示す1次元目の横長度と4次元目の三角形度合について,前述のように蝶のパターンを配置した結果を図9に示す.図中横方向が第1次元,縦方向が第4次元を表す.同図に示すように第1次元の右側ほど,蝶は横長である.また第4次元の軸方向では,上の方に三角形の蝶がクラスタを構成しているのに対し,他の形状の蝶は下の方に存在しているのがわかる.各軸それぞれにおいて,蝶の横長度と三角形の度合をよく表現できていることがわかる. 本検討結果から,多次元心理空間を構成する次元を部分的に取り出して使用することにより,総合的な類似感覚だけでなく,画像を個別の観点で検索できる可能性を示したと言える.」(第1862頁右欄第3行-第1863頁左欄第6行) (キ)「5.むすび (中略) (3)多次元心理空間における各座標軸の意味付けを行い,横長度,三角形度合など個別の形状因子を表現できる軸を見出すことができ,多次元心理空間を構成する軸の一部を使用することにより,総合的な類似感覚だけでなく,個別の観点で画像を検索できる可能性を示した.」(第1863頁左欄第7行-同右欄第19行) 上記(ア)?(キ)の記載事項及び図面から、次のことがいえる。 (あ)上記(ア)の「本論文では,画像データベースにおける,人間の多様な類似感覚と対応した類似画像検索法について述べる.」との記載、上記(イ)の「2.1 類似画像検索システムの概要 現状の画像データベースシステムでは,あらかじめ人間が蓄積する画像に主に言語情報などのインデックスを付与しておき,検索時には,このインデックスを参照している^((1)).本論文では,人間の多様な類似感覚と対応した検索が可能なインデックスの自動付与を目指す.」との記載から、引用例1には、画像データベースを備えた類似画像検索システムが記載されており、該システムにおける画像データベースでは、蓄積する画像に類似感覚と対応した検索が可能なインデックスが自動付与されているものと認められる。 (い)上記(ウ)の記載事項、及び上記(エ)の「3.3 画像特徴 本論文で用いた画像データの物理量(画像特徴)は,蝶のパターンの輪郭形状を表現するのに適していると考えられるぺリフェラル特徴^((16))に基づいている.具体的には,以下のように画像iの画像特徴ベクトルx_(i)=(x_(i1),…,x_(ik),…,x_(im))^(T)を求める.ここでmは特徴ベクトルの次元である.」との記載からみて、引用例1における類似画像検索システムは、画像データの物理量を、画像特徴として抽出する手段を備えていると認められる。 (う)上記(ウ)の「多次元心理空間へ配置された学習パターンのy_(i)から以下のようにして多次元心理空間の各座標軸と物埋量の対応付けが得られる.学習パターンiから画像特徴量 x_(ik)(k=1,…,m;mは次元数)を抽出する.多次元心理空間に配置したn枚の学習パターンを用いて,心理空間の各次元の座標値y_(t)(t=1,2,…,A)と画像特徴量x_(k)(k=1,…,m)の関係式を求める.具体的には,y_(t)を目的変数とし,x_(k)を説明変数として重回帰分析を行い,次式のようにy_(t)をx_(k)の線形結合式で表す.」との記載、および「蓄積されるI枚の画像はx_(k)を抽出後,式(1)を用いてインデックスが付与される.図1の類似尺度テーブルに格納されたb_(to),b_(t1),…,b_(tm)(t=1,2,…,A)を用いて,式(1)により多次元心理空間における座標値y_(l)(l=1,2,…,I)を計算することにより多次元心理空間上での配置が決定される.後述のように,検索時には検索キー画像とy_(l)との多次元心理空間上での距離を計算するために用いられる.蓄積画像のインデックスと言えるy_(l)を,図1の類似尺度テーブルに格納する.」との記載から、引用例1の類似画像検索システムは、画像データから抽出される画像特徴量と各次元の座標値とを関連付ける式(1)を求め、該式(1)を用いることで、各画像の特徴量から各画像の多次元心理空間の各座標軸への射影をとり、多次元心理空間内での座標値を決定するものといえるから、引用例1の類似画像検索システムは、画像データから抽出された画像特徴量から多次元心理空間の各座標軸への射影をとり、多次元心理空間における座標値を算出する手段を備えているといえる。 (え)上記(オ)の「260枚の画像間の主観評価データo_(ij)を取得しているため,260枚の一部を学習パターンとして2.2で述べた検索系を構築するために使用し」や「全蓄積画像260枚から任意に50枚を選択し,このような学習パターンセットを23通り作成した.」との記載からすると、引用例1では、260枚の画像データを画像データベースの全蓄積画像とし、その一部を学習パターンとして検索系を構築しているものと認められる。 これを踏まえて、上記(カ)の「各軸の表す心理的観点を調べるために,構築したl5次元の多次元心理空間に260枚の蝶のパターンを配置した.そして,15軸から2軸ずつ抽出して平面を張り,そのときの蝶のパターンの分布を紙にプリントアウトし,目視により各軸の意味付けを試みた.」、及び「このうち表1に示す1次元目の横長度と4次元目の三角形度合について,前述のように蝶のパターンを配置した結果を図9に示す.図中横方向が第1次元,縦方向が第4次元を表す.」との記載をみると、引用例1には、260枚の画像データの一部から構築した15次元の多次元心理空間に全蓄積画像を配置し、この多次元心理空間を構成する15の座標軸から任意の2軸を選択して、この2つの座標軸により規定される平面座標中のその座標に該当する場所に蝶のパターンを配置して提示する手段を備えているものと認められる。 上記(あ)?(え)で検討した事項を踏まえると、上記(ア)?(キ)及び関連する図面の記載から、引用例1には、次の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「複数の画像データを蓄積する画像データベースと、 蓄積される複数の画像データのそれぞれの画像特徴量(物理量)を抽出する手段と、 抽出された画像特徴量から多次元心理空間の各座標軸への射影をとり、多次元心理空間における座標値を算出する手段、 算出された多次元心理空間の各座標値に基づいて、多次元心理空間の多数の座標軸から任意に選択した2つの座標軸により規定される平面座標中のその座標に該当する場所に画像データを提示する手段を備えた類似画像検索システム」 (4-2)当審拒絶の理由で引用文献2として引用された、特開平04-246771号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、次の、 (ク)「【0019】関数表示部3においては、ウィンドウ51?54に表示される画像の持つインデックスの値に相当する座標のところに、それぞれの画像の番号が表示される。図6はそれを示したもので、70は蓄積されてある全画像のインデックスの形状パラメータの値に関して位置を表示したものであり、71は領域41の指定により選択された画像である。」 (ケ)「【0021】次に、関数の大きさの違いによる検索の例を示す。ユーザは、関数表示部3の画像表示において、図3の11の部分をライトペン4で選択する。すると、座標検出手段62において、スケールパラメータの範囲指定である事を座標値から判断し、関数作成手段61に、スケールパラメータの座標系を作成する指令を出す。関数作成手段61では、現在、第1番目に検索されている画像(2)の関数パラメータを用いて、関数作成手段61によりスケールパラメータ(a1、a2、a3)を変化させたときの関数形状を計算し、図7に示すような、関数パラメータ座標系上に関数形状を表示した一覧を関数表示部3に提示する。図7は、超二次関数のスケールパラメータa1、a2、a3を、画像(2)の持っている値にそれぞれに、デフォルト値(例えば、5.0)を加算したときの各関数形状を関数パラメータ座標系上に表示した例である。81?83は、画像(2)のインデックスであるスケールパラメータの値を意味しており、81、82、83はそれぞれa1=10.0、a2=10.0、a3=9.0の値に相当する座標の位置に示している。」 が記載されている。(審決注:原文の○囲み数字を表記することができないため、(数字)の表記とした。) 引用例2に記載された画像の関数パラメータは、当該画像の形状やスケールに関する特徴を表す特徴量といえる。 してみると、引用例2には、次の事項が記載されているものと認められる。 「画像データベースの画像データ検索方式において、 画像データの持つ特徴量(パラメータ)に基づいて座標値を算出し、 平面座標、または、3次元座標に画像データを配置して提示する方式」 (4-3)当審拒絶の理由で引用文献3として引用された、早川和宏 他、ユーザの利用履歴に基づくWWWサーバの地図型ディレクトリ、情報処理学会研究報告、日本、社団法人情報処理学会、1997.01.16発行、Vol.97、No.2(97-HI-70-3)、pp.17-24.には、図面とともに、次の、 (コ)「ユーザインタフェースにとっての情報可視化の適用分野としては、情報可視化はユーザの認知的負荷を軽減するという観点から、インタフェースデザインの問題と関連して扱われることが多い。この方向での情報可視化の主要なアプリケーションとしては、情報検索インタフェースや情報ブラウジングのインタフェースがある[4]。たとえばツリー構造を可視化するConeTree[5]などの研究が有名である。単純な可視化ではなく、利用者に適応した可視化を行なうような拡張[6]も行なわれている。」(第18頁右欄第12-22行) (サ)「4サーバ地図を用いたインタフェース 4.1 全体像 図2は前節で説明したように、サーバの特徴ベクトルを主成分分析し、球面上に再配置したデータをVRML[12]で記述したものである。サーバはHTTPアンカーを埋め込んだ立方体で表されており、利用者はクリックすることでそのサーバヘアクセスすることができる。また、VRMLブラウザの機能にしたがって自由にこの空間内を探索することもできる。図で、第一主成分は図の下方向、第二主成分は図の左上方向、第三主成分は図の右上方向となっている。」(第21頁左欄第1-13行) (シ)「4.4 第二・第三主成分方向 図5は図2の上の部分を拡大したものである。図中harpo、zeppo、chicoはNCSA Mosaicのデフォルトのホームページであるwww.ncsa.uiuc.eduのCanonical Nameであり、www.ncsa.uiuc.eduがアクセスされると実際にはこれらのホストがアクセスされる。事実上これらのマシンは同一のものと見なせるので、空間中でも近くに位置するめは当然であると言える。 NCSA Mosaicは当時としては日本語の表示できるWWWクライアントソフトとして最もメジャーであったので、むしろもう少し中央部分寄りに位置しても良さそうである。しかし実際には中央からNTTホームページなどと反対方向に離れた場所へ位置している。これは、第一主成分の「日本人+NTT社員+計算機系研究者」というコミュニティが、早々とホームページをNTTホームページなどへ切替えたためではないかと思われる。 図の左方向は第二主成分の方向で、イメージファイルのアーカイブサイトが数個配置されている。右方向は第三主成分であるが、F1関連情報の置かれていたabekrd.co.ukとカナダのBritish Columbia大学計算機科学部cs.ubc.caのサーバがあるが、意味づけは不明である。」(第22頁右欄第13行-第23頁左欄第8行) が記載されている。 上記(コ)?(シ)の記載によれば、可視化しようとする情報であるWWWサイトの特徴ベクトルを主成分分析し、球面上に再配置し可視化してユーザに提示するとともに、空間内を探索し、各種成分方向に配置された情報にアクセスすることを可能としてる。 ここで、第二・第三主成分方を拡大した図5を参照すると、図2において上部に位置していた第二・第三主成分方向に配置された情報が、球面の中央かつ画面の中央に表示された状態が示されており、「拡大」という操作によりユーザの視点が図2の上部(第二・第三主成分方向)に移動していることが把握される。また、空間におけるWebサーバ名は、図2の状態においても、図5の状態においても、視点(即ち画面)に対して相対するように表示されていることが把握される。 してみると、引用例3には、次の事項が記載されているものと認められる。 「情報検索システムにおいて、 情報(WWWサイト)に関する特徴量(特徴ベクトル)に基づいて、座標値を算出し、 3次元座標に情報を示すデータ(Webサーバ名)を配置して提示し、 情報を示すデータ(Webサーバ名)を提示する際には、3次元座標中で視点の方向を変更しても、視点方向にたいして常に正面を向くように情報を示すデータ(Webサーバ名)が提示される情報検索システム」 5.対比 本願発明と引用例1発明とを対比する。 引用例1発明の「画像特徴量(物理量)」は、画像データを特徴づける物理量であるから、本願発明の「原特徴量」に相当する。 引用例1発明の「複数の画像データを蓄積する画像データベース」及び「蓄積される複数の画像データのそれぞれの画像特徴量(物理量)を抽出する手段」は、本願発明の「複数の画像データを格納したデータベース」及び「複数の画像データのそれぞれの原特徴量を抽出する抽出手段」に相当する。 引用例1発明の「多次元心理空間の各座標軸」及び「多次元心理空間における座標値」は、本願発明における「ベクトル方向」及び「3次元座標値」と、画像の物理的な特徴量に関連する複数の軸(ベクトル方向)であり、その軸に射影して得られる値から算出される座標値である点で共通する。 従って、引用例1発明における「抽出された画像特徴量から多次元心理空間の各座標軸への射影をとり、多次元心理空間における座標値を算出する手段」と、本願発明の「該抽出された複数の原特徴量のデータから3つのベクトル方向へ射影した3次元ベクトルである描画特徴量に再構成するための手段と、該再構成された描画特徴量から3次元座標値を算出する算出手段」は、抽出された複数の特徴量のデータから、複数のベクトル方向へ射影した各値を算出し、多次元空間における座標を算出する手段である点で共通する。 引用例1発明の「算出された多次元心理空間の各座標値に基づいて、多次元心理空間の多数の座標軸から任意に選択した2つの座標軸により規定される平面座標中のその座標に該当する場所に画像データを提示する手段」と、本願発明の「該算出された3次元座標値を基礎にして、3次元空間中のその座標に該当する場所に各画像データの画像またはそれらを縮小または簡約したパターンである画像アイコンを貼り付けて使用者に提示する提示手段」とは、算出された座標値を基礎にして、その座標に該当する場所に各画像データの画像を配置して使用者に提示する提示手段である点で共通する。 引用例1発明の類似画像検索システムは、上記提示手段を備え、画像データを使用者に提示する機能を備えたものであるから、「画像提示装置」であるといえる。 してみると、本願発明と引用例1発明とは、 「複数の画像データを格納したデータベースと、 該複数の画像データのそれぞれの原特徴量を抽出する抽出手段と、 該抽出された複数の原特徴量のデータから複数のベクトル方向へ射影したベクトルである描画特徴量に再構成するための手段と、 該再構成された描画特徴量から座標値を算出する算出手段と、 該算出された多次元座標値を基礎にして、多次元空間のその座標に該当する場所に各画像データの画像を貼り付けて使用者に提示する提示手段と、 を備えた画像提示装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1)本願発明は、3つのベクトル方向へ射影した3次元ベクトルである描画特徴量に再構成するための手段と、該再構成された描画特徴量から3次元座標値を算出し、該算出された3次元座標値を基礎にして、3次元空間中のその座標に該当する場所に各画像データの画像またはそれらを縮小または簡約したパターンである画像アイコンを貼り付けて使用者に提示するのに対し、引用例1発明では、多次元座標系の各座標軸について座標を算出し、任意に選択した2つの座標軸から構成される平面座標に画像データを提示している点。 (相違点2)本願発明は、「使用者の行為または使用者の操作を検出する検出手段とを有し、上記提示手段は、上記検出手段によって設定される上記3次元空間中の視点に対して常に所定の角度を有するように上記画像または画像アイコンを提示する」のに対し、引用例1発明は、検出手段を備えず、提示手段はこのように提示していない点。 6.当審の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1)について 引用例1発明においては、任意に選択した2つの座標軸により規定される平面座標中に画像データを配置して提示するものである。 しかし、引用例2には、「画像データベースの画像データ検索方式において、画像データの持つ特徴量(パラメータ)に基づいて座標値を算出し、平面座標、または、3次元座標に画像データを配置して提示する方式」が開示され、引用例3には「情報検索システムにおいて、情報(WWWサイト)に関する特徴量(特徴ベクトル)に基づいて、座標値を算出し、3次元座標に情報を示すデータ(Webサーバ名)を配置して提示し、情報を示すデータ(Webサーバ名)を提示する際には、3次元座標中で視点の方向を変更しても、視点方向にたいして常に正面を向くように情報を示すデータ(Webサーバ名)が提示される情報検索システム」が開示されているように、情報の特徴量に基づいて座標値を算出し当該座標に該当する情報を配置して提示するという技術において、2次元座標中のみならず3次元座標中の座標位置に情報を配置して提示することは、本願出願前周知の技術である。 してみると、引用例1発明において上記周知技術を採用し、多次元心理空間の座標軸から3つを選択し、その3次元座標値を算出し、該算出された3次元座標値を基礎にして、3次元空間中のその座標に該当する場所に各画像データの画像を貼り付けて使用者に提示するよう構成することは、当業者が容易に想起し得た事項である。 なお、引用例1発明に上記周知技術を採用する際、画像データのサイズや出力装置の処理能力をおよび周知の画像アイコンの技術を勘案して、座標に該当する場所に貼り付ける「各画像データの画像」に代えて「それらを縮小または簡約したパターンである画像アイコン」とすることは、当業者が適宜選択し得る事項である。 (相違点2)について 引用例1発明には、使用者の行為または使用者の操作を検出する検出手段はなく、提示手段は、上記検出手段によって設定される上記3次元空間中の視点に対して常に所定の角度を有するように上記画像または画像アイコンを提示するものでない。 しかしながら、引用例1発明と同一技術分野に属する引用例3には、「情報を示すデータ(Webサーバ名)を提示する際には、3次元座標中で視点の方向を変更しても、視点方向にたいして常に正面を向くように情報を示すデータ(Webサーバ名)が提示される情報検索システム」が開示されている。この「情報を示すデータ(Webサーバ名)」が視点方向に対して常に正面を向くように提示するとは、Webサーバ名が表示される平面が常に視点の方向に直交させることである。すなわち「記3次元空間中の視点に対して常に所定の角度を有するように上記画像または画像アイコンを提示する」ことが、引用例3には開示されている。また、引用例3では「3次元座標中で視点の方向を変更しても」情報を示すデータは視点の方向に対して所定の角度を有するように提示されることから、そのための前提となる構成として、視点の方向を変更する手段及びその変更を検出する手段を備えていることは明らかである。 してみると、上記「(相違点1)について」で検討したように、引用例1発明において周知技術を採用して、多次元心理空間の座標軸から3つを選択し、その3次元座標値を算出し、該算出された3次元座標値を基礎にして、3次元空間中のその座標に該当する場所に各画像データの画像を貼り付けて使用者に提示するよう構成する際に、3次元空間座標を用いた情報提示の手法の一つである上記引用例3記載の技術を併せて採用し、「使用者の行為または使用者の操作を検出する検出手段はなく、提示手段は、上記検出手段によって設定される上記3次元空間中の視点に対して常に所定の角度を有するように上記画像または画像アイコンを提示する」ものとすることは、当業者が容易に想起し得た事項である。 また、本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って、当然に予測される程度のものに過ぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。 7.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1発明及び引用例2,3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-26 |
結審通知日 | 2008-09-02 |
審決日 | 2008-09-16 |
出願番号 | 特願平9-336750 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 深津 始 |
特許庁審判長 |
田口 英雄 |
特許庁審判官 |
長 由紀子 手島 聖治 |
発明の名称 | 画像検索方法およびその装置 |
代理人 | ポレール特許業務法人 |
代理人 | ポレール特許業務法人 |
代理人 | 小川 勝男 |
代理人 | 小川 勝男 |