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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1186973 |
審判番号 | 不服2005-23252 |
総通号数 | 108 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-01 |
確定日 | 2008-10-30 |
事件の表示 | 特願2005-150713「撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月27日出願公開、特開2005-304067〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第一 経緯 1 手続 本願は、平成10年12月8日(優先権主張 平成9年12月24日)の出願(特願平10-348439号)の一部を新たな特許出願とした平成17年5月24日の出願であり、平成17年9月20日付けで手続補正がなされたが、平成17年10月27日付けで拒絶査定された。 本件は、本願についてされた上記拒絶査定を不服とする平成17年12月1日の審判請求であり、請求後、平成17年12月27日付けで手続補正書(明細書、特許請求の範囲又は図面について請求の日から30日以内にする補正)が提出された。 2 査定 原査定の理由は、概略、以下のとおりである。 (1)理由その1 この出願の請求項1ないし10に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開平9-37124号公報 刊行物2:特開平7-336571号公報 刊行物3:特開平7-30789号公報 刊行物4:特開平9-163199号公報 刊行物5:特開平9-9108号公報 刊行物6:特開平9-163189号公報 (2)理由その2 この出願の請求項1ないし10に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 記 先願:特願平9-240666号(特開平11-88735号) 第二 補正却下の決定 平成17年12月27日付けの手続補正について以下のとおり決定する。 [結論] 平成17年12月27日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 平成17年12月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という)は、本件補正前、平成17年9月20日付け手続補正書により補正された請求項1ないし10についてする補正であり、補正前の旧請求項1、3、4ないし7を削除するとともに、補正前の旧請求項2に「前記第4の面であって、前記レンズの左右方向の一方の端及び他方の端よりも内側に、前記操作者によって操作される操作部材を設けた」という限定を付加し、新請求項1とするものである。また、上記請求項の削除に伴い、補正前の請求項8、9、10について従属先の請求項を補正し、新請求項2、3、4としている。 2 補正の適合性 (1)補正の範囲(第17条の2第3項) 本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の記載に基づくものであるから、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてする補正である。 (2)補正の目的(第17条の2第4項第1号?第4号) 本件補正は、補正前の請求項1、3、4ないし7を削除するとともに、補正前の請求項2の構成を限定したものであるといえる。 そして、補正の前後において産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 本件補正は、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮に該当する。 (3)独立特許要件(第17条の2第5項) 本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的として含んでいる。そこで検討する。 ア 補正後の本願発明 本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「補正後発明」ともいう)は、以下のとおりのものである。 「レンズ部を有し、上下方向が左右方向よりも長い形状の撮像装置であって、 撮像装置本体と、 画像を表示する表示画面を有する表示部と、 前記撮像装置本体の第1の面が前記表示部によって覆われる第1の位置と、前記表示部の前記表示画面側が操作者方向に向き、前記表示部の前記表示画面の背面側が撮像しようとする被写体方向に向く第2の位置とに、前記表示部を移動可能とする移動部材とを有し、 前記表示部は、第1の軸を中心に前記撮像装置本体の上側方向に回動する第1の動作が行われることにより、前記表示部の背面が前記第1の面と略垂直になる位置に移動し、その後、前記表示部の背面が前記第1の面と略垂直になった位置で、前記第1の面に対して略垂直な第2の軸を中心に回動する第2の動作が行われることにより、前記第1の位置から前記第2の位置に移動することが出来るとともに、前記第1の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記第2の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致するように設けられており、 前記撮像装置本体は、前記第1の面及び前記第1の面に対して反対側の第2の面の左右方向が、前記レンズ部を有する第3の面及び前記第3の面に対して反対側の第4の面の左右方向よりも長い形状であり、 前記撮像装置は、ビューファインダを設けないようにするとともに、前記表示部が前記第1の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記表示部が前記第2の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致するようにし、前記第4の面であって、前記レンズの左右方向の一方の端及び他方の端よりも内側に、前記操作者によって操作される操作部材を設けたことを特徴とする撮像装置。」 イ 先願、先願明細書に記載された発明 (ア)先願明細書の記載 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願及び優先権主張の日前の平成9年9月5日の出願であって、その出願後に公開された特願平9-240666号(以下「先願」という、特開平11-88735号公報参照)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という)には、以下の技術事項が記載されている。 a「【発明の属する技術分野】本発明は、ビデオカメラ等の記録再生装置に関するものである。」(段落【0001】) b「・・・ (実施の形態1)図1?図5は本発明の記録再生装置の構成を示す斜視図であり、図1は第2の筐体を第1の筐体に重ねた状態、図2は第2の筐体を起こした状態、図3はモニター画面が見やすいように第2の筐体を回転させた状態・・・を各々示している。」(段落【0010】) c「図1において、10は第1の筐体で、縦長に構成され、VTR部1を内部に構成し、またその正面にテレビカメラ部3を構成し、テレビカメラ部3の下、すなわち第1の筐体10の正面下部にバッテリー部2が構成されている。11は第2の筐体で、第1の筐体10の側面とほぼ同等あるいはやや小さい大きさの面を有し、その面にモニター画面5が構成され、かつモニター画面5の短辺側近傍に第1の筐体10と回動支持されるためのヒンジ部6が構成されている。ヒンジ部6は第1の筐体10の側面の上部近傍に構成され、水平方向の第1の回動軸6aと、第1の回動軸6aに垂直な第2の回動軸6bとから構成されている。4はファインダーで第1の筐体10の背面、すなわちテレビカメラ部3のある面と逆の面に構成されている。」(段落【0011】) d「・・・まず、図1において、テレビカメラ部3により光学情報を電子映像情報に変換し、周知のようにVTR部1で記録され、又ファインダー4で映像化される。この電子映像情報は第2の筐体11にあるモニター画面5でも映像化される。」(段落【0012】) f「この第2の筐体11は、その上部を垂直に構成された2軸の回動軸すなわち第1、第2の回動軸6a、6bからなるヒンジ部6で第1の筐体10に回動支持されているため、まず水平に構成された第1の回動軸6aを支軸として回動することで図2に示す形態になる。次に第1の回動軸6aと垂直な第2の回動軸6bを回動支軸として第2の筐体11を回動することで図3に示すような形態になる。これにより第1の筐体10とほぼ同等な大きさの第2の筐体11のモニター画面5がファインダー4を覗いている撮影者に向くことになる。モニター画面5は第2の筐体11の平面全面、言い換えれば第1の筐体10の側面とほぼ同等の面に構成でき、そのため大型のモニター画面にすることができるので、視認性が非常によく撮影内容の確認が容易にできる。」(段落【0013】) (イ)先願明細書に記載された発明 a ビデオカメラ 上記(ア)aによれば、先願明細書には、ビデオカメラが記載されているといえる。 b テレビカメラ部3 上記(ア)c、d及び図1によれば、先願に係るビデオカメラは、テレビカメラ部3を有しているといえる。 c 全体の形状 上記(ア)c及び図1によれば、先願に係るビデオカメラは、縦長に構成されているといえる。 d 第1の筐体10 上記(ア)c及び図1によれば、先願に係るビデオカメラは、第1の筐体10を有しているといえる。 e 第2の筐体11 上記(ア)c、d及び図1によれば、先願に係るビデオカメラは、電子映像情報を映像化するモニター画面5を有する第2の筐体11を有しているといえる。 f 筐体を重ねた状態、回転させた状態 上記(ア)b、c及び図1、3によれば、先願明細書には、前記第1の筐体10の第1の面が前記第2の筐体11によって覆われる第2の筐体を第1の筐体に重ねた状態(図1)と、前記第2の筐体11の前記モニター画面5が撮影者の方に向き、前記第2の筐体11の前記モニター画面5の背面側が被写体の方に向くモニター画面が見やすいように第2の筐体を回転させた状態(図3)が記載されているといえる。 g ヒンジ部6 上記(ア)b、c、e及び図1?3によれば、先願に係るビデオカメラは、重ねた状態(図1)と、回転させた状態(図3)とに、前記第2の筐体11を移動可能にするヒンジ部6を有しているといえる。 h 第1、第2の回動軸6a、6bを支軸として回動 上記(ア)e及び図1?3によれば、先願に係るビデオカメラは、前記第2の筐体11は、第1の回動軸6aを支軸に前記第1の筐体10の上側方向に回動することにより、第2の筐体を起こした状態(図2)に回動し、その後、前記起こした状態(図2)で、前記第1の面に対して略垂直な第2の回動軸6bを支軸として回動するものであるといえる。 i 重ねた状態から回転させた状態への移動 上記(ア)e及び図1?3によれば、先願に係るビデオカメラは、第1、第2の回動軸6a、6bを支軸として回動することにより、前記重ねた状態(図1)から前記回転させた状態(図3)に移動することができるものであるといえる。 j 第2の筐体と第1の面の位置関係(その1) 上記(ア)c、e及び図1、3によれば、先願に係るビデオカメラは、前記重ねた状態(図1)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記回転させた状態(図3)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致するように設けられているといえる。 k 第1の筐体10の形状 上記(ア)c及び図1によれば、先願に係るビデオカメラは、前記第1の筐体10は、前記第1の面及び前記第1の面に対して反対側の第2の面の左右方向が、前記テレビカメラ部を有する第3の面及び前記第3の面に対して反対側の第4の面の左右方向よりも長い形状であるといえる。 l 第2の筐体と第1の面の位置関係(その2) 上記(ア)c、e及び図1、3によれば、先願に係るビデオカメラは、前記第2の筐体11が前記重ねた状態(図1)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記第2の筐体11が前記回転させた状態(図3)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致するものであるといえる。 m まとめ 上記(イ)a?l及び先願の図1?3によれば、先願明細書に記載された発明(以下「先願発明」という)として、以下のとおりのものを認定することができる。 「テレビカメラ部3を有し、縦長に構成されたビデオカメラであって、 第1の筐体10と、 電子映像情報を映像化するモニター画面5を有する第2の筐体11と、 前記第1の筐体10の第1の面が前記第2の筐体11によって覆われる第2の筐体を第1の筐体に重ねた状態(図1)と、前記第2の筐体11の前記モニター画面5が撮影者の方に向き、前記第2の筐体11の前記モニター画面5の背面側が被写体の方に向くモニター画面が見やすいように第2の筐体を回転させた状態(図3)とに、前記第2の筐体11を移動可能にするヒンジ部6とを有し、 前記第2の筐体11は、第1の回動軸6aを支軸に前記第1の筐体10の上側方向に回動することにより、第2の筐体を起こした状態(図2)に回動し、その後、前記起こした状態(図2)で、前記第1の面に対して略垂直な第2の回動軸6bを支軸として回動することにより、前記重ねた状態(図1)から前記回転させた状態(図3)に移動することが出来るとともに、前記重ねた状態(図1)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記回転させた状態(図3)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致するように設けられており、 前記第1の筐体10は、前記第1の面及び前記第1の面に対して反対側の第2の面の左右方向が、前記テレビカメラ部を有する第3の面及び前記第3の面に対して反対側の第4の面の左右方向よりも長い形状であり、 前記第2の筐体11が前記重ねた状態(図1)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記第2の筐体11が前記回転させた状態(図3)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致するようにしたビデオカメラ。」 ウ 対比 補正後発明と先願発明とを対比する。 (ア)撮像装置 先願発明の「ビデオカメラ」は、補正後発明でいう「撮像装置」に相当するということができる。 (イ)レンズ部 先願発明の「ビデオカメラ部3」は、当然レンズ部を有している(なお、先願の図1等にもその示唆がある)ので、補正後発明の「レンズ部」に相当するものといえる。 (ウ)全体の形状 先願発明の「縦長に構成されたビデオカメラ」は、補正後発明の「上下方向が左右方向よりも長い形状の撮像装置」に相当する。 (エ)撮像装置本体 先願発明の「第1の筐体10」は、補正後発明の「撮像装置本体」に相当する。 (オ)表示部 先願発明の「電子映像情報を映像化するモニター画面5を有する第2の筐体11」は、補正後発明の「画像を表示する表示画面を有する表示部」に相当する。 (カ)第1の位置 先願発明の「前記第1の筐体10の第1の面が前記第2の筐体11によって覆われる第2の筐体を第1の筐体に重ねた状態(図1)」は、補正後発明の「前記撮像装置本体の第1の面が前記表示部によって覆われる第1の位置」に相当する。 (キ)第2の位置 先願発明の「前記第2の筐体11の前記モニター画面5が撮影者の方に向き、前記第2の筐体11の前記モニター画面5の背面側が被写体の方に向くモニター画面が見やすいように第2の筐体を回転させた状態(図3)」は、補正後発明の「前記表示部の前記表示画面側が操作者方向に向き、前記表示部の前記表示画面の背面側が撮像しようとする被写体方向に向く第2の位置」に相当する。 (ク)移動部材 先願発明における、重ねた状態(図1)と回転させた状態(図3)とに「前記第2の筐体11を移動可能にするヒンジ部6」は、補正後発明における、第1の位置と第2の位置とに「前記表示部を移動可能とする移動部材」に相当する。 (ケ)第1及び第2の動作 先願発明における、「第1の回動軸6aを支軸に前記第1の筐体10の上側方向に回動」、「第2の筐体を起こした状態(図2)」、「第2の回動軸6bを支軸として回動」は、それぞれ、補正後発明における、「第1の軸を中心に前記撮像装置本体の上側方向に回動する第1の動作」、「前記表示部の背面が前記第1の面と略垂直になる(なった)位置」、「第2の軸を中心に回動する第2の動作」に相当するといえる。 よって、先願発明の「前記第2の筐体11は、第1の回動軸6aを支軸に前記第1の筐体10の上側方向に回動することにより、第2の筐体を起こした状態(図2)に回動し、その後、前記起こした状態(図2)で、前記第1の面に対して略垂直な第2の回動軸6bを支軸として回動すること」は、補正後発明の「前記表示部は、第1の軸を中心に前記撮像装置本体の上側方向に回動する第1の動作が行われることにより、前記表示部の背面が前記第1の面と略垂直になる位置に移動し、その後、前記表示部の背面が前記第1の面と略垂直になった位置で、前記第1の面に対して略垂直な第2の軸を中心に回動する第2の動作が行われること」に相当する。 (コ)第1の位置から第2の位置に移動 先願発明の「前記重ねた状態(図1)から前記回転させた状態(図3)に移動することが出来る」は、補正後発明の「前記第1の位置から前記第2の位置に移動することが出来る」に相当する。 (サ)表示部と第1の面の位置関係(その1) 先願発明の「前記重ねた状態(図1)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記回転させた状態(図3)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致する」は、補正後発明の「前記第1の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記第2の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致する」に相当する。 (シ)撮像装置本体の形状 先願発明の「前記第1の筐体10は、前記第1の面及び前記第1の面に対して反対側の第2の面の左右方向が、前記テレビカメラ部を有する第3の面及び前記第3の面に対して反対側の第4の面の左右方向よりも長い形状」は、補正後発明の「前記撮像装置本体は、前記第1の面及び前記第1の面に対して反対側の第2の面の左右方向が、前記レンズ部を有する第3の面及び前記第3の面に対して反対側の第4の面の左右方向よりも長い形状」に相当する。 (ス)ビューファインダ 補正後発明では、前記撮像装置は、「ビューファインダを設けないようにする」のに対し、先願発明ではそのようにしていない。一応の相違が認められる。 (セ)表示部と第1の面の位置関係(その2) 先願発明の「前記第2の筐体11が前記重ねた状態(図1)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記第2の筐体11が前記回転させた状態(図3)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致する」は、補正後発明の「前記表示部が前記第1の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記表示部が前記第2の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致する」に相当する。 (ソ)操作部材 補正後発明は、「前記第4の面であって、前記レンズの左右方向の一方の端及び他方の端よりも内側に、前記操作者によって操作される操作部材を設けた」のに対し、先願発明はそのようにしていない。一応の相違が認められる。 (タ)一致点、一応の相違点 したがって、補正後発明と先願発明とは、 [一致点] 「レンズ部を有し、上下方向が左右方向よりも長い形状の撮像装置であって、 撮像装置本体と、 画像を表示する表示画面を有する表示部と、 前記撮像装置本体の第1の面が前記表示部によって覆われる第1の位置と、前記表示部の前記表示画面側が操作者方向に向き、前記表示部の前記表示画面の背面側が撮像しようとする被写体方向に向く第2の位置とに、前記表示部を移動可能とする移動部材とを有し、 前記表示部は、第1の軸を中心に前記撮像装置本体の上側方向に回動する第1の動作が行われることにより、前記表示部の背面が前記第1の面と略垂直になる位置に移動し、その後、前記表示部の背面が前記第1の面と略垂直になった位置で、前記第1の面に対して略垂直な第2の軸を中心に回動する第2の動作が行われることにより、前記第1の位置から前記第2の位置に移動することが出来るとともに、前記第1の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記第2の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致するように設けられており、 前記撮像装置本体は、前記第1の面及び前記第1の面に対して反対側の第2の面の左右方向が、前記レンズ部を有する第3の面及び前記第3の面に対して反対側の第4の面の左右方向よりも長い形状であり、 前記表示部が前記第1の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記表示部が前記第2の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致するようにした撮像装置。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 [一応の相違点1] 補正後発明では、前記撮像装置は、「ビューファインダを設けないようにする」のに対し、先願発明ではそのようにしていない点。 [一応の相違点2] 補正後発明は、「前記第4の面であって、前記レンズの左右方向の一方の端及び他方の端よりも内側に、前記操作者によって操作される操作部材を設けた」のに対し、先願発明はそのようにしていない点。 エ 判断 上記各一応の相違点について検討する。 (ア)[一応の相違点1]について ビデオカメラのような撮像装置において、ビューファインダの代わりとなり得る液晶ディスプレイ等の表示部を設け、ビューファインダを設けないようにすることは周知(例えば、特開平8-125890号公報の図1や特開平9-37124号公報の図4参照)である。他方、先願発明のモニター画面5は、先願明細書段落【0012】?【0014】に記載されているように、撮影時に電子映像情報を映像化して撮影内容を確認するためのものであるから、ビューファインダの代わりとなり得るものである。したがって、先願発明において、ビューファインダを設けないようにすることは、単なる周知技術の転用であり、また、そのことによる作用効果の違いは認められないので、上記[一応の相違点1]は、撮像装置で必須とされるファインダ機能の具体化における微差に過ぎない。 (イ)[一応の相違点2]について ビデオカメラのような撮像装置は、操作者によって操作される操作部材を備える必要があると考えられるところ、先願発明のような上下方向に長い形状(縦長)の撮像装置であっても、操作部材は当然備えているというべきである。そして、上下方向に長い形状(縦長)の撮像装置において、操作者によって操作される操作部材を、第4の面(レンズ部を有する面に対して反対側の面)であって、レンズの左右方向の一方の端及び他方の端よりも内側に設けることは、周知(例えば、実りの秋の新製品一挙効果!、ビデオサロン、玄光社、1996年9月1日発行、第32巻,第9号、pp.19?27;特に、pp.20、21、27の写真参照)である。したがって、先願発明において、操作者によって操作される操作部材を、テレビカメラ部3を有する面に対して反対側の面であって、レンズの左右方向の一方の端及び他方の端よりも内側に設けることは、単なる周知技術の付加であり、また、そのことによる作用効果の違いは認められないので、上記[一応の相違点2]は、撮像装置で必須とされる操作部材配置の具体化における微差に過ぎない。 (ウ)まとめ したがって、補正後発明は、先願の当初明細書又は図面に記載された発明と同一である。 オ まとめ(独立特許要件) 以上によれば、補正後発明は、先願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が上記先願に係る発明をした者と同一ではなく、またこの出願の出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第三 本願発明 平成17年12月27日付の手続補正は上記のとおり却下する。本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成17年9月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に係る発明のとおりであるところ、そのうち、請求項2に係る発明(以下「本願発明」ともいう)は、平成17年9月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「レンズ部を有し、上下方向が左右方向よりも長い形状の撮像装置であって、 撮像装置本体と、 画像を表示する表示画面を有する表示部と、 前記撮像装置本体の第1の面が前記表示部によって覆われる第1の位置と、前記表示部の前記表示画面側が操作者方向に向き、前記表示部の前記表示画面の背面側が撮像しようとする被写体方向に向く第2の位置とに、前記表示部を移動可能とする移動部材とを有し、 前記表示部は、第1の軸を中心に前記撮像装置本体の上側方向に回動する第1の動作が行われることにより、前記表示部の背面が前記第1の面と略垂直になる位置に移動し、その後、前記表示部の背面が前記第1の面と略垂直になった位置で、前記第1の面に対して略垂直な第2の軸を中心に回動する第2の動作が行われることにより、前記第1の位置から前記第2の位置に移動することが出来るとともに、前記第1の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記第2の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の短手方向と前記第1の面の長手方向と が略一致するように設けられており、 前記撮像装置本体は、前記第1の面及び前記第1の面に対して反対側の第2の面の左右方向が、前記レンズ部を有する第3の面及び前記第3の面に対して反対側の第4の面の左右方向よりも長い形状であり、 前記撮像装置は、ビューファインダを設けないようにするとともに、前記表示部が前記第1の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記表示部が前記第2の位置にあるときは、前記表示部及び前記表示画面の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致するようにしたことを特徴とする撮像装置。」 第四 査定の検討 1 先願、先願明細書に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願及び優先権主張の日前の平成9年9月5日の出願であって、その出願後に公開された特願平9-240666号(以下「先願」という、特開平11-88735号公報参照)の願書に最初に添付した明細書又は図面には、上記第二の2(3)イ(ア)の技術事項が記載されている。そして、上記第二の2(3)イ(イ)の認定を援用すれば、先願明細書に記載された発明(先願発明)として、以下のとおりのものを認定することができる(再掲)。 「テレビカメラ部3を有し、縦長に構成されたビデオカメラであって、 第1の筐体10と、 電子映像情報を映像化するモニター画面5を有する第2の筐体11と、 前記第1の筐体10の第1の面が前記第2の筐体11によって覆われる第2の筐体を第1の筐体に重ねた状態(図1)と、前記第2の筐体11の前記モニター画面5が撮影者の方に向き、前記第2の筐体11の前記モニター画面5の背面側が被写体の方に向くモニター画面が見やすいように第2の筐体を回転させた状態(図3)とに、前記第2の筐体11を移動可能にするヒンジ部6とを有し、 前記第2の筐体11は、第1の回動軸6aを支軸に前記第1の筐体10の上側方向に回動することにより、第2の筐体を起こした状態(図2)に回動し、その後、前記起こした状態(図2)で、前記第1の面に対して略垂直な第2の回動軸6bを支軸として回動することにより、前記重ねた状態(図1)から前記回転させた状態(図3)に移動することが出来るとともに、前記重ねた状態(図1)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記回転させた状態(図3)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致するように設けられており、 前記第1の筐体10は、前記第1の面及び前記第1の面に対して反対側の第2の面の左右方向が、前記テレビカメラ部を有する第3の面及び前記第3の面に対して反対側の第4の面の左右方向よりも長い形状であり、 前記第2の筐体11が前記重ねた状態(図1)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の長手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致し、前記第2の筐体11が前記回転させた状態(図3)にあるときは、前記第2の筐体11及び前記モニター画面5の短手方向と前記第1の面の長手方向とが略一致するようにしたビデオカメラ。」 2 対比 本願発明と先願発明とを対比する。 補正後発明と先願発明との上記第二の2(3)ウの対比を援用すると、本願発明と先願発明とは、上記第二の2(3)ウ(タ)の[一応の相違点1]の点で一応相違し、その余の点では一致している。 3 判断 本願発明に係る[一応の相違点1]についての判断は、上記第二の2(3)エ(ア)と同様である。 4 まとめ(査定の検討) したがって、本願発明は、先願の当初明細書又は図面に記載された発明と同一である。 第五 むすび 以上のとおり、本願の請求項2に係る発明は、先願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が上記先願に係る発明をした者と同一ではなく、またこの出願の出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、残る理由その1及び請求項1、3ないし10に係る発明に対する理由その2について特に検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-26 |
結審通知日 | 2008-09-02 |
審決日 | 2008-09-16 |
出願番号 | 特願2005-150713(P2005-150713) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04N)
P 1 8・ 161- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 益戸 宏 |
特許庁審判長 |
新宮 佳典 |
特許庁審判官 |
奥村 元宏 岩井 健二 |
発明の名称 | 撮像装置 |
代理人 | 西山 恵三 |
代理人 | 内尾 裕一 |