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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1187043
審判番号 不服2005-24440  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-19 
確定日 2008-10-29 
事件の表示 特願2003-353862「プラズマディスプレイパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月 5日出願公開、特開2004- 38214〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件は、平成9年9月3日(パリ条約による優先権主張1996年9月3日,大韓民国)にされた特許出願(特願平9-238277号)の一部を新たな特許出願として平成15年10月14日にされた特許出願(特願2003-353862号)につき、平成17年9月12日付け(同年9月20日発送)で拒絶査定がされたところ、これに対して、同年12月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年1月18日付けで明細書を補正対象とする手続補正書が提出されたものである。

2 平成18年1月18日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年1月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成18年1月18日提出の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の記載
「 【請求項1】
上下基板の間に共通電極、走査電極及びデータ電極が配置されるとともに、共通電極と走査電極とは互いに平行に配列され、かつデータ電極は上記共通電極及び走査電極に対して直角に配列される一方、上記上下基板のうち一方の基板に形成された上記共通電極及び走査電極と上記上下基板のうち他方の基板に形成された上記データ電極とを覆うように絶縁膜が形成され、上記共通電極と上記走査電極とが上記データ電極と交差するところにセルが形成されている3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネルにおいて、
上記データ電極は、複数の電極に分割され、
上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され、
上記データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルスの時間幅と、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルスの時間幅と、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルスの時間幅との和を含む維持周期の許容値は、上記データ電極の分割数の増加につれて増加することを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
上下基板の間に共通電極、走査電極及びデータ電極が配置されるとともに、共通電極と走査電極とは互いに平行に配列され、かつデータ電極は上記共通電極及び走査電極に対して直角に配列される一方、上記上下基板のうち一方の基板に形成された上記共通電極及び走査電極と上記上下基板のうち他方の基板に形成された上記データ電極とを覆うように絶縁膜が形成され、上記共通電極と上記走査電極とが上記データ電極と交差するところにセルが形成されている3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネルにおいて、
上記データ電極は、複数の電極に分割され、
上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され、
上記データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルスの時間幅と、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルスの時間幅と、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルスの時間幅との和からなる維持周期の最小値が一定の値であるとき、上記走査電極の許容個数は上記データ電極の分割数の増加につれて増加することを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
上下基板の間に共通電極、走査電極及びデータ電極が配置されるとともに、共通電極と走査電極とは互いに平行に配列され、かつデータ電極は上記共通電極及び走査電極に対して直角に配列される一方、上記上下基板のうち一方の基板に形成された上記共通電極及び走査電極と上記上下基板のうち他方の基板に形成された上記データ電極とを覆うように絶縁膜が形成され、上記共通電極と上記走査電極とが上記データ電極と交差するところにセルが形成されている3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネルにおいて、
上記データ電極は、複数の電極に分割され、
上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され、
上記データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルスの時間幅と、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルスの時間幅と、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルスの時間幅との和からなる維持周期の最小値をTs、上記走査電極の数をN、1フィールドを構成するサブフィールドの数をNfS、1フィールドの走査時間をTiとしたとき、上記データ電極の分割に応じて分割される上記プラズマディスプレイパネルの画面数Kは、
Ts≦Ti÷(N/K)÷Nfs
を満足する自然数として求められることを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
上下基板の間に共通電極、走査電極及びデータ電極が配置されるとともに、共通電極と走査電極とは互いに平行に配列され、かつデータ電極は上記共通電極及び走査電極に対して直角に配列される一方、上記上下基板のうち一方の基板に形成された上記共通電極及び走査電極と上記上下基板のうち他方の基板に形成された上記データ電極とを覆うように絶縁膜が形成され、上記共通電極と上記走査電極とが上記データ電極と交差するところにセルが形成されている3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネルにおいて、
上記データ電極は、複数の電極に分割され、
上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され、
上記セルの数をM×N、フィールドメモリーに同時に蓄積されるビットの数をNb、上記フィールドメモリーに蓄積されたデータが直並列変換回路に1ビット進むのに要する時間をTd、1フィールドの走査時間をTiとしたとき、上記データ電極の分割に応じて分割される上記プラズマディスプレイパネルの画面数Kは、
M×N×Nb×Td/K<Ti
を満足する自然数として求められることを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項において、
上記データ電極は、ほぼ中央部で上下に2分割されることを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項において、
上記分割されたデータ電極に応じて分割された画面は、それぞれ並列にかつ独立的に駆動されることを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
請求項3において、
上記NfSは、8であることを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
請求項4において、
上記Nbは、8であることを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
請求項3または請求項4において、
上記Tiは、1/60であることを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
上下基板の間に共通電極、走査電極及びデータ電極が配置されるとともに、共通電極と走査電極とは互いに平行に配列され、かつデータ電極は上記共通電極及び走査電極に対して直角に配列される一方、上記上下基板のうち一方の基板に形成された上記共通電極及び走査電極と上記上下基板のうち他方の基板に形成された上記データ電極とを覆うように絶縁膜が形成され、上記共通電極と上記走査電極とが上記データ電極と交差するところにセルが形成されている3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネルにおいて、
上記データ電極は、複数の電極に分割され、
上記分割された一方のデータ電極の端部とこの端部に対向する他方のデータ電極の端部との間の間隔をa、一対の共通電極及び走査電極と、この一対の共通電極及び走査電極に隣接する一対の共通電極及び走査電極との間の間隔をbとするとき、上記aは上記bより小さいことを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。」
を、
「 【請求項1】
上下基板の間に共通電極、走査電極及びデータ電極が配置されるとともに、共通電極と走査電極とは互いに平行に配列され、かつデータ電極は上記共通電極及び走査電極に対して直角に配列される一方、上記上下基板のうち一方の基板に形成された上記共通電極及び走査電極と上記上下基板のうち他方の基板に形成された上記データ電極とを覆うように絶縁膜が形成され、上記共通電極と上記走査電極とが上記データ電極と交差するところにセルが形成されている3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネルにおいて、
上記データ電極は、複数の電極に分割され、
上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され、
上記セルの数をM×N、フィールドメモリーに同時に蓄積されるビットの数をNb、上記フィールドメモリーに蓄積されたデータが直並列変換回路に1ビット進むのに要する時間をTd、1フィールドの走査時間をTiとしたとき、上記データ電極の分割に応じて分割される上記プラズマディスプレイパネルの画面数Kは、
M×N×Nb×Td/K<Ti
を満足する自然数として求められ、
上記直並列変換回路は遅延時間が一般的に8nsの常用フリップフロップを使用してできている
ことを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
請求項1において、
上記データ電極は、ほぼ中央部で上下に2分割されることを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
請求項1において、
上記分割されたデータ電極に応じて分割された画面は、それぞれ並列にかつ独立的に駆動されることを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
請求項1において、
上記Nbは、8であることを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
請求項1において、
上記Tiは、1/60であることを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。」
と補正する内容を含むものである。

(2)補正の目的の適合性
上記特許請求の範囲に関する補正は、補正前の請求項1乃至3,7,10を削除するとともに、請求項4乃至6,8,9をそれぞれ繰り上げて新たな請求項1乃至5とし、さらに、補正前の請求項4に記載された発明特定事項に、「上記直並列変換回路は遅延時間が一般的に8nsの常用フリップフロップを使用してできている」との限定事項を加えるものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるということができる。

(3)独立特許要件
本件補正後の請求項1乃至5に係る発明は、平成18年1月18日付け手続補正書より補正された特許請求の範囲の記載からみて、請求項1乃至5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は、次のとおりである。
「【請求項1】
上下基板の間に共通電極、走査電極及びデータ電極が配置されるとともに、共通電極と走査電極とは互いに平行に配列され、かつデータ電極は上記共通電極及び走査電極に対して直角に配列される一方、上記上下基板のうち一方の基板に形成された上記共通電極及び走査電極と上記上下基板のうち他方の基板に形成された上記データ電極とを覆うように絶縁膜が形成され、上記共通電極と上記走査電極とが上記データ電極と交差するところにセルが形成されている3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネルにおいて、
上記データ電極は、複数の電極に分割され、
上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され、
上記セルの数をM×N、フィールドメモリーに同時に蓄積されるビットの数をNb、上記フィールドメモリーに蓄積されたデータが直並列変換回路に1ビット進むのに要する時間をTd、1フィールドの走査時間をTiとしたとき、上記データ電極の分割に応じて分割される上記プラズマディスプレイパネルの画面数Kは、
M×N×Nb×Td/K<Ti
を満足する自然数として求められ、
上記直並列変換回路は遅延時間が一般的に8nsの常用フリップフロップを使用してできている
ことを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。」(以下、「本願補正発明」という。)」

そこで、本願補正発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(4)刊行物に記載された発明
本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平4-42289号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア「従来用いられているメモリ機能を有するドットマトリクス表示型ACプラズマディスプレイパネルの一例の構成を第7図に示す。第7図(a)は平面図、第7図(b)は同図(a)におけるA-A'線による断面図である。
また第8図は第7図に示すプラズマディスプレイパネルの電極配置を示す上面図である。第8図においては、第7図に示した行電極3が2つのグループ、すなわち、走査電極S1からSmと、共通行電極C1からCm+1に分かれている。」(公報第1頁右下欄第6行-第15行。)

イ「上述したことから明らかなように、一画面の発光を制御するには走査パルスは走査線の数だけ必要である。一方、一画面の発光制御時間(1フレームと呼ばれる)は、人間の目にちらつきを感じさせないために、略1/60秒以下とする必要がある。」(公報第2頁左上欄第16行-同頁右上欄第1行。)

ウ「多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを駆動しようとすると、必然的に維持パルスの周波数を上げなければならなくなる」(公報第2頁右上欄第3行-同頁同欄第6行。)

エ「例えば、走査電極数を120本のプラズマディスプレイパネルで16階調表示を行うために、1フレームを更に4分割し、分割した各サブフレームを8:4:2:1の重み付けをする場合を考えてみる。1フレームを1/60秒とすると、走査に必要な回数は、1秒当たり
60×4×120=28800
回となる。」(公報第2頁右上欄第7行-同頁同欄第14行。)

オ「第7図、第8図に示したプラズマディスプレイパネルに対して本発明の駆動方法を適用した第1の実施例では・・・維持パルスA、維持パルスBおよび走査パルスのパルス幅は5マイクロ秒、消去パルス幅は0.7マイクロ秒である。データパルスはこれらの走査パルスに同期して各列電極に印加挿入される。・・・本実施例では維持パルス周波数を従来の1/3に低減できることが分かる。・・・また、本実施例では、維持パルスや走査パルス幅を従来より広く取れる利点もある。第6図(a)に示したように、従来の維持パルスの周期T1は1/115200=8.7マイクロ秒であるから、維持パルスおよび走査パルスの幅は均等割り振りで2.9マイクロ秒以下となってしまう。しかし、本実施例の場合は、・・・従来の1.8倍近い幅を割り当てることができる。維持パルスや走査パルスの幅の増大は放電の安定性向上に大きく寄与するので、これは非常に大きな利点である。」(公報第3頁右上欄第7行-同頁右下欄第11行。)

カ「本発明によれば、維持パルスや走査パルスの幅を従来より広く取れるので、放電の安全性、ひいてはプラズマディスプレイパネルの動作安定性を著しく高めることができ、実用上非常に有益である。」(公報第4頁右上欄第9行-同頁同欄13行。)

キ 図面の第7図(b)には、「第1絶縁基板(1)」に「行電極(3)」が形成され、「行電極(3)」を覆うように「絶縁層(5)」が形成されていること、及び、「第2絶縁基板(2)」に「列電極(4)」が形成され、「列電極(4)」を覆うように「絶縁層(6)」が形成されていること、並びに、「第2絶縁基板(2)」を上側の基板、「第1絶縁基板(1)」を下側の基板として、両者の間に、「行電極(3)」及び「列電極(4)」が配置されていることが見て取れる。

ク 図面の第8図には、「共通行電極(C1?Cm+1)」と「走査電極(S1?Sm)」が互いに平行に配列されていること、及び、「列電極(D1?Dn)」は「共通行電極(C1?Cm+1)」と「走査電極(S1?Sm)」に対して直角に配列されていること、並びに、「共通行電極(C1?Cm+1)」と「走査電極(S1?Sm)」とが「列電極(D1?Dn)」と交差するところに「画素(11)」が形成されていることが見て取れる。

ケ 公報第3頁右下欄第12行-同頁同欄第20行の「次に、本発明の第2の実施例について説明する。ここで用いたプラズマディスプレイパネルは、第1の実施例と同じく、第7図、第8図に示したパネルである。・・・維持パルスBの位置が第1の実施例と異なっている。このように、維持パルスBの位置は消去パルスと重ならない限りは維持パルスAの間のどのような位置でも良い。」という記載と共に、第2図には、列電極に印加されるデータパルスの印加と同時に走査電極に印加される走査パルス、走査パルスの印加後に共通行電極に印加される維持パルスA、共通行電極への維持パルスAの印加後に走査電極に印加される維持パルスBが見て取れる。

上記摘記事項ア?ケからみて、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「第1絶縁基板(1)と第2絶縁基板(2)の間に共通行電極(C1?Cm+1)、走査電極(S1?Sm)及び列電極(D1?Dn)が配置されるとともに、共通行電極(C1?Cm+1)と走査電極(S1?Sm)とは互いに平行に配列され、かつ列電極(D1?Dn)は上記共通行電極(C1?Cm+1)及び走査電極(S1?Sm)に対して直角に配列される一方、上記第1絶縁基板(1)と第2絶縁基板(2)のうち一方の基板に形成された上記共通行電極(C1?Cm+1)及び走査電極(S1?Sm)と上記第1絶縁基板(1)と第2絶縁基板(2)のうち他方の基板に形成された上記列電極(D1?Dn)とを覆うように絶縁層(6)が形成され、上記共通行電極(C1?Cm+1)と上記走査電極(S1?Sm)とが上記列電極(D1?Dn)と交差するところに画素(11)が形成されているプラズマディスプレイパネルにおいて、多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを安定的に駆動する手段を適用し、また、プラズマディスプレイパネルは、上記列電極(D1?Dn)に印加されるデータパルスの印加と同時に走査電極(S1?Sm)に印加される走査パルス、この走査パルスの印加後に共通行電極(C1?Cm+1)に印加される維持パルスA、共通行電極(C1?Cm+1)への維持パルスAの印加後に走査電極(S1?Sm)に印加される維持パルスB、によって駆動されるものである、プラズマディスプレイパネル。」(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)

(5)対比・判断
本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「第1絶縁基板(1)と第2絶縁基板(2)」、「共通行電極(C1?Cm+1)」、「走査電極(S1?Sm)」、「列電極(D1?Dn)」、「絶縁層(5,6)」、「画素(11)」は、それぞれ、本願補正発明の「上下基板」、「共通電極」、「走査電極」、「データ電極」、「絶縁膜」、「セル」に相当する。
刊行物1全体の記載、特に、第7図(a)(b)を見れば、刊行物1に記載された発明の「プラズマディスプレイパネル」は「3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル」であるから、両者は、

<一致点1>
「上下基板の間に共通電極、走査電極及びデータ電極が配置されるとともに、共通電極と走査電極とは互いに平行に配列され、かつデータ電極は上記共通電極及び走査電極に対して直角に配列される一方、上記上下基板のうち一方の基板に形成された上記共通電極及び走査電極と上記上下基板のうち他方の基板に形成された上記データ電極とを覆うように絶縁膜が形成され、上記共通電極と上記走査電極とが上記データ電極と交差するところにセルが形成されている3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。」である点で一致し、他方、以下の点において相違する。

<相違点1>
本願補正発明では、「データ電極は、複数の電極に分割され、上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され、上記セルの数をM×N、フィールドメモリーに同時に蓄積されるビットの数をNb、上記フィールドメモリーに蓄積されたデータが直並列変換回路に1ビット進むのに要する時間をTd、1フィールドの走査時間をTiとしたとき、上記データ電極の分割に応じて分割される上記プラズマディスプレイパネルの画面数Kは、 M×N×Nb×Td/K<Ti を満足する自然数として求められ」る構成であるのに対して、刊行物1に記載された発明においては、上記摘記事項イ又はエによれば、人間の目にちらつきを感じさせないために1フィールドの走査時間内において各サブフレームに対応したデータの読み出しを完了するような構成ではあるが、データ電極を複数の電極に分割し、データパルスを独立に印加するために、そのためデータ電極の分割に応じてプラズマディスプレイパネルの画面を分割しているような構成ではない点。

<相違点2>
本願補正発明では、「直並列変換回路は遅延時間が一般的に8nsの常用フリップフロップを使用してできている」構成であるのに対して、刊行物1に記載された発明においては、その点の構成を欠く点。

上記相違点1について検討する。
例えば、本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平2-125287号公報(以下、「刊行物2」という。)には、
ア「前段の処理を終えた信号は、フィールドメモリFMI,FM2によってパネル駆動回路に適合するように信号形式が変換される。フィールドメモリFM1,FM2はそれぞれ1画面分の容量をもち、フィールド毎に書き込み、読み出しを交互にくり返すものとする。
フィールドメモリFMの出力はシフトレジスタSRに送られ、シフトレジスタSRでシリ-パラ(直列-並列)変換した後ラッチ回路Lに転送されるが、フィールドメモリFMとシフトレジスタSR間のデータ転送は相当な高速が要求されるので、パネルの32列、64列など適当な列数で列電極駆動回路RDをブロックに分割し、ブロック内は直列、ブロック間は並列にデータ転送を行って実効的な転送速度の低減を行う構成になっている。」(公報第2頁左下欄第10行-右下欄第4行。)

イ「第6図はメモリパネルで中間調を表示する駆動法を示すタイムチャートである。縦軸はパネルの行k(1?K)、横軸は時間t、Vはlフィールド期間を示す。斜線W、Eは第5図示の書き込みパルスW、Eを各行に亘って結んだ軌跡で、斜線WからEまでの期間Si(i=0?3)が発光期間となる。Ui(i=0?3)はフィールド長VをN(表示すべき中間調のビット数、図では4)分割したものでサブフィールドと称し、1サブフイールドに1枚のビット面を表示する。発光期間の長さSiをサブフィールド毎に1/2に減じて行き、N枚のサブフィールドでNビットの中間調を再現する。図では4枚のサブフィールド(U3?U0)で4ビツト,16レベルの中間調を表示する例を示した。これが詳細に関しては本願人になる特開昭62-196696号「放電表示パネルの駆動方法」を参照されたい。」(公報第3頁左上欄第9行-同頁右上欄第5行。)と記載されており、

本件出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平5-19717号公報号公報には、図面とともに次の事項が記載されている。
ウ「【0004】放電型パネルは、複数の表示セルの行列配列を有していて、各表示セルに、少なくとも陰極維持電圧を含む陰極電圧と少なくとも陽極維持パルスを含む陽極電圧とを印加して放電発光させるように構成している。この装置の駆動装置を構成する各回路は、周知の通り、制御部10からの、それぞれに適した同期信号あるいはクロック信号(C1?C10)で適切に制御駆動されているので、この点についての詳細な説明は省略する。」

エ「【0007】このような色配置に従って、上述したディジタル信号をスイッチ18によって切り換えて、第1記憶装置(M1)22aおよび第2記憶装置(M2)22bに入力する。従来例では、これら記憶装置22aおよび22bには、それぞれ、表示セル領域の左半分および右半分の表示セルを駆動させるように、役割をもたせていた。一般には、画面を複数個のブロックに分けてそのブロックに対応して専用の記憶装置を配置している。そのため、記憶装置22aを、第1シフトレジスタ(SR)24aおよび第1列ドライバ(XDR)26aを介して表示パネル20に結合させて左半分の領域の表示セルを表示させるようにしており、また、記憶装置22bを、第2シフトレジスタ(SR)24bおよび第2列ドライバ(XDR)26bを介して表示パネル20に結合させて右半分の領域の表示セルを表示させるように構成している。なお。図中、28は、通常の行ドライバ(YDR)である。【0008】通常、記憶装置(M1,M2)22a,22bは、2フィールド(1フレーム)を持っていて、一方の記憶装置22aが書き込み中は他方の記憶装置22bが、読み出しを行なうように、また、その逆の動作となるように、交互に動作を行なっている。従って、記憶装置22aから読み出された信号は、シフトレジスタ24aで左半分の領域の表示セル用の第1列ドライバ26aの各列の駆動回路に分配される。
【0009】ところで、パルスメモリー駆動方式で、中間調を表示する場合には、周知の通り、中間調のビット数に応じたサブフィールド毎に信号を読み出す。例えば、中間調が8ビット(256階調に相当する。)であると、8つのサブフィールドが1つのフィールド周期(1/60s)の中に設定される。(例えば、文献I:関口・芳根・北・加治,「特公昭51-32051」および文献II:加治・水嶋・村山・福島「テレビ学技報」アイ ピー ディ(IPD)-11-4(1973.3.12)を参照)。」

オ 図面の図2には、記憶装置M1,M2から、各々一本の信号線を用いて直列にSR24a,24bにデータを転送し、該SR24a,24bから並列にXDR26a,26bにデータを転送してなる構成が読み取れる。

上記刊行物2及び特開平5-19717号公報の記載事項によれば、サブフィールド方式を用いて階調表示を行うプラズマディスプレイパネルにおいて「データ電極は、複数の電極に分割され、上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され、上記セルの数をM×N、フィールドメモリーに同時に蓄積されるビットの数をNb、上記データ電極の分割に応じて上記プラズマディスプレイパネルの画面を分割する」技術は周知技術にすぎない。そして、刊行物1に記載された発明はサブフィールド方式を用いて階調表示を行っているから、刊行物1に記載された発明において、サブフィールド方式における上記周知技術を採用することに特段の困難性もない。また、直並列変換回路が1ビット進むのに要する時間を含めて、1フィールドの走査時間以内に1フィールドの画面が完成していなければならないことは、技術的に明白な事項であるから、「プラズマディスプレイパネルの画面数Kは、M×N×Nb×Td/K<Tiを満足する自然数として求められ」ような構成となることは技術的に明白である。よって、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、刊行物1に記載された発明に上記周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

次に、上記相違点2について検討する。
表示装置において、データを伝送するためにフリップフロップを用いてなる直並列変換回路を使用することは、周知・慣用の技術にすぎない。また、例えば、上記刊行物2に「フィールドメモリFMの出力はシフトレジスタSRに送られ、シフトレジスタSRでシリ-パラ(直列-並列)変換した後ラッチ回路Lに転送されるが、フィールドメモリFMとシフトレジスタSR間のデータ転送は相当な高速が要求されるので、パネルの32列、64列など適当な列数で列電極駆動回路RDをブロックに分割し、ブロック内は直列、ブロック間は並列にデータ転送を行って実効的な転送速度の低減を行う構成になっている。」(公報第2頁左下欄第16行-右下欄第4行。)と記載されているように、そもそも画面を分割することは、データ転送速度の低減を目的としたものである。さらに、一般に常用されている素子の使用を可能とすることによりコストの低減を図るとの技術課題は、製造技術全般において自明な技術課題にすぎず、画面を分割してデータの転送速度の低減を図った際に、直並列変換回路として遅延時間が一般的に8nsの常用フリップフロップを使用できるような構成とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮程度のことにすぎない。そうすると、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

そして、本願補正発明の奏する作用効果も、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)独立特許要件についてのむすび
したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(7)むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明
平成18年1月18日付けの手続補正は前記とおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成16年11月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】 上下基板の間に共通電極、走査電極及びデータ電極が配置されるとともに、共通電極と走査電極とは互いに平行に配列され、かつデータ電極は上記共通電極及び走査電極に対して直角に配列される一方、上記上下基板のうち一方の基板に形成された上記共通電極及び走査電極と上記上下基板のうち他方の基板に形成された上記データ電極とを覆うように絶縁膜が形成され、上記共通電極と上記走査電極とが上記データ電極と交差するところにセルが形成されている3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネルにおいて、
上記データ電極は、複数の電極に分割され、
上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され、
上記データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルスの時間幅と、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルスの時間幅と、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルスの時間幅との和を含む維持周期の許容値は、上記データ電極の分割数の増加につれて増加することを特徴とする3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。」

(1)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である上記特開平4-42289号公報(以下、同様に「刊行物1」という。)には、上記2.(4)において示した発明(以下、同様に「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されている。

原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-136889号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア「走査信号が供給される走査電極群と表示データ信号が供給されるデータ電極群とをマトリックス状に配列し、交差部に放電セル群を形成してなるプラズマディスプレイパネルにおいて、・・・前記データ電極群を複数分割してなることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。」(特許請求の範囲)

イ「AC型のPDPでメモリ機能を活かした表示をするには、ある程度のアクセスタイムが確保されなければならないからである」(公報第2頁左上欄第11行-同頁同欄第14行。)

ウ「第1図、第2図および第3図は本発明の一実施例を示すもので、・・・背面ガラス板2の対向面には、複数列のデータ電極群Y1、Y2、Y3、…、Ymを各データ電極毎に前記4つのブロックに対応して4分割された複数列のデータ電極群Y11?Y14、Y21?Y24、Y31?Y34、…、Ym1?Ym4が設けられている。」(公報第2頁左下欄第4行-同頁右下欄第3行。)

エ「データ電極群Y11?Ym4のそれぞれに独立のデータ信号を供給すると、対応した放電セル群S、S、…が放電発光し、所定の表示がなされる。・・・例えば、HDTV(ハイビジョン)のように、1秒間の画面が60枚、1画面の走査電極群が1000行、パルス数制御による表示の階調数が256(8ビット)の高画質表示にした場合、1行のアクセスタイムは従来の約2μsの4倍の約8μsと長くなり、AC型のPDPでも十分にメモリ機能を活かした走査による表示をすることができる。」(公報第2頁右下欄第15行-第3頁左上欄第15行。)

したがって、刊行物3には、以下の発明が記載されているものと認める。
「プラズマディスプレイパネルにおいて、データ電極群は、複数分割され、上記データ電極群に供給されるデータ信号は、上記分割された複数のデータ電極群のそれぞれに対して独立に供給されるようにしたプラズマディスプレイパネル。」

(2)対比・判断
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「第1絶縁基板と第2絶縁基板(1,2)」、「共通行電極(C1?Cm+1)」、「走査電極(S1?Sm)」、「列電極(D1?Dn)」、「絶縁層(5,6)」、「画素(11)」、及び、「走査パルス」は、それぞれ、本願発明の「上下基板」、「共通電極」、「走査電極」、「データ電極」、「絶縁膜」、「セル」、及び、「アドレッシング用走査パルス」に相当する。
刊行物1全体の記載、特に、第7図(a)(b)を見れば、刊行物1に記載された発明の「プラズマディスプレイパネル」は「3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル」である。
本願発明の「上記データ電極は、複数の電極に分割され、上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され、」という構成は、段落番号【0013】「まず、画面を上下に2等分する場合に対して説明する。・・・従って、同一の1280×1024の解像度を有する表示素子を本実施形態による方法で駆動する場合、従来技術による方法に比べて維持パルスの周期が2倍に増加してプラズマディスプレイパネルセルの放電特性から与えられる放電に必要な最少要求時間を充足できることを分かる。」などの作用効果に関する記載からみて、刊行物1に記載された発明の「多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを安定的に駆動する手段」に対応する。
本願発明のプラズマディスプレイパネルは「データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルスの時間幅と、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルスの時間幅と、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルスの時間幅との和を含む維持周期の許容値は上記データ電極の分割数の増加につれて増加する」という記載によって特定されるものであるから、「データ電極に印加されるデータパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルス、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルス、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルス、によって駆動されるもの」という点において、刊行物1に記載された発明に対応する。

<一致点2>
「上下基板の間に共通電極、走査電極及びデータ電極が配置されるとともに、共通電極と走査電極とは互いに平行に配列され、かつデータ電極は上記共通電極及び走査電極に対して直角に配列される一方、上記上下基板のうち一方の基板に形成された上記共通電極及び走査電極と上記上下基板のうち他方の基板に形成された上記データ電極とを覆うように絶縁膜が形成され、上記共通電極と上記走査電極とが上記データ電極と交差するところにセルが形成されている3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネルにおいて、多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを安定的に駆動する手段を適用し、また、プラズマディスプレイパネルは、上記データ電極に印加されるデータパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルス、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルス、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルス、によって駆動されるものである、3電極面放電方式のプラズマディスプレイパネル。」の点で一致し、他方、以下の点において相違する。

<相違点3>
本願発明における「多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを安定的に駆動する手段」は、「上記データ電極は、複数の電極に分割され、上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され」るものであるのに対して、刊行物1に記載された発明のそれは、これとは異なる構成である点。

<相違点4>
本願発明におけるプラズマディスプレイパネルは「データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルスの時間幅と、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルスの時間幅と、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルスの時間幅との和を含む維持周期の許容値は上記データ電極の分割数の増加につれて増加する」という記載によって特定される物であるのに対し、刊行物1にはこのような記載はない点。

そこで、上記相違点3及び4について検討する。
<相違点3>について
本願発明と、刊行物3に記載された発明を比較すると、刊行物3に記載された発明の「データ電極群」、「複数分割され」、「データ信号」、及び、「供給する」は、それぞれ本願発明の「データ電極」、「複数の電極に分割され」、「データパルス」、及び、「印加する」に相当する。
したがって、「プラズマディスプレイパネルにおいて、データ電極は、複数の電極に分割され、上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加されるようにした、プラズマディスプレイパネル。」の発明は、刊行物3に記載されており、公知である。
また、刊行物3の摘記事項(エ)の記載を考慮すれば、刊行物3に記載された発明は、「多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを安定的に駆動する手段」である。
そして、刊行物1に記載された発明および刊行物3に記載された発明が、プラズマディスプレイパネルに関するものであるという、産業上の利用分野の共通性を考慮すれば、刊行物1に記載された多数の走査線を有するプラズマディスプレイパネルを安定的に駆動する手段として、刊行物3に記載された「データ電極は、複数の電極に分割され、上記データ電極に印加されるデータパルスは、上記分割された複数の電極に対して独立に印加され」る構成を採用することは、当業者が容易にできることである。

<相違点4>について
「データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルスの時間幅と、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルスの時間幅と、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルスの時間幅との和を含む維持周期の許容値は上記データ電極の分割数の増加につれて増加する」という記載によって特定される物としては、例えば、以下の(a)及び(b)の要件を備えたものが含まれる。

(a)データパルスの印加と同時に上記走査電極に印加されるアドレッシング用走査パルス、このアドレッシング用走査パルスの印加後に上記共通電極に印加される維持パルス、共通電極への上記維持パルスの印加後に上記走査電極に印加される維持パルス、によって駆動されるもの。
(b)データ電極の分割数の増加につれて維持周期の許容値が増加する性質のもの。

ここで、上記(a)は、刊行物1に記載された発明が有するものである。

また、刊行物1に記載されたプラズマディスプレイパネルも、データ電極を分割すれば走査線数は減少するから、維持周期の許容値は増加し得る性質のものである。
したがって、相違点4は、実質的な相違点ではない。

そして、本願発明の作用効果は、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された発明から予期しうるものであって、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された発明を組み合わせたことにより予期し得ない格別な効果を奏しているとすることはできない。
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
また、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、本願のその余の請求項に係る発明について判断を示すまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-29 
結審通知日 2008-06-03 
審決日 2008-06-16 
出願番号 特願2003-353862(P2003-353862)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 直明  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 杉野 裕幸
西島 篤宏
発明の名称 プラズマディスプレイパネル  
代理人 西山 修  
代理人 山川 政樹  
代理人 紺野 正幸  
代理人 黒川 弘朗  
代理人 山川 茂樹  

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