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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G05B
管理番号 1187090
審判番号 不服2007-14056  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-16 
確定日 2008-11-12 
事件の表示 特願2002-174324「NC工作機械及び加工プログラム伝送システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月22日出願公開、特開2004- 21512、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明

本件出願は、平成14年6月14日の出願であって、その請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、平成19年6月13日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。

【請求項1】 加工動作機構部と、該加工動作機構部の作動を加工プログラムに基づき制御する制御装置と、前記制御装置に対して信号を入力するための入力手段、及び画像の表示を行う画面表示手段を少なくとも具備した操作盤とを備えたNC工作機械であって、
前記入力手段は、前記画面表示手段に表示された画像をオペレータが確認したことを示す確認信号を入力可能に構成され、前記制御装置は、加工プログラムを送信する送信装置と電気通信回線を介して接続可能に構成され、
更に、前記送信装置から加工プログラムを受信して、受信した加工プログラムを記憶する処理と、
前記受信した加工プログラムからプログラム番号を抽出し、抽出したプログラム番号を前記画面表示手段に画面表示させる処理であって、プログラム番号に係る画像を、前記画面表示手段に既に表示されている画像の全部又は一部を覆い隠すように表示させて、前記入力手段から入力される前記確認信号を受信するまで表示を継続し、該確認信号を受信後、前記プログラム番号に係る画像の表示を終了する処理と、
前記プログラム番号に係る画像の表示後、前記入力手段から入力される前記確認信号を受信し、且つ加工プログラムの受信を完了するまで、前記入力手段から入力される信号の全部又は一部を無効とする処理とを実行するように構成されてなることを特徴とするNC工作機械。

【請求項2】 前記制御装置が、加工プログラムを受信している間、前記加工プログラムの受信中であることを示す画像を、前記画面表示手段に表示させるように構成されてなることを特徴とする請求項1記載のNC工作機械。

【請求項3】 前記請求項1又は2記載のNC工作機械と、加工プログラムを送信する送信装置とを、電気通信回線を介して接続したことを特徴とする加工プログラム伝送システム。


2.引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由には、本件出願前に頒布された刊行物である次の刊行物1が引用されており、前記刊行物1には、以下の技術的事項が記載されている。

[引用刊行物]
刊行物1:特開2002-91539号公報

刊行物1:
(イ)段落【0003】
「【0003】DNCシステムとは、各種CAM(Computer Aided Manufacturing)加工機械の稼働をサポートするための工場内支援システムであり、従来、加工機械の制御装置に対してフロッピー(登録商標)ディスク等で送られていたCAMデータを、コンピュータを使って直接オンラインで加工機械の制御装置に転送するようにしたものである。これにより、CAMデータの3次元化によるデータ自身の大容量化に対応することができるとともに、工場全体の効率化に効果を奏している。」

(ロ)段落【0019】
「【0019】金型製造システム10は、基本的には、CAMシステム12、加工データ格納手段としてのDNCサーバシステム14、スケジュール作成管理手段としてのスケジュールシステム20、加工機械端末としての複数のマシンターミナル30を含むマシンターミナルシステム28、工数管理手段としての工数管理システム40、会計サーバ42およびこれらを互いに信号線を介して接続するLAN(Local Area Network)から成り立っている。」
(ハ)段落【0022】
「【0022】上記の各システム等を相互に接続するLANにはイーサネット(IEEE802.3)を採用している。図1では模式的に、データの流れに従い各システムを矢印で結ぶ線図で表しているが、実際の信号線(送受信線)はこの通りに接続する必要はなく、スター型、バス型、リング型など、どのように接続してもよい。また、イーサネット以外のLANにしてもよいし、電波等を用いた無線式のLANにしてもよい。また、LANは本システム専用に施設したものでなく、他のシステムと共通のものであってもよい。」

(ニ)段落【0025】
「【0025】CAMシステム12は、より上流のCAD(Computer Aided Design)システムから得られる金型形状等を表すCADデータに基づき、設計者が金型製作用のNCデータを含むCAMデータを作成するシステムであり、作成されたCAMデータは、経路Raを通じてDNCサーバ18へ送信される。このとき、DNCサーバ18に送信され、該DNCサーバ18に格納されるCAMデータには、上記NCデータの他に、型コード、機種コード、製品コード、工程コードからなる登録情報を包含させておく。」

(ホ)段落【0089】
「【0089】図6は、マシンターミナル30の外観を示している。マシンターミナル30は設置場所が工場内であることから防塵対策を施した筐体144に収納する構造にしている。該筐体144の画面部分を透明なガラス窓にすることにより、モニタ画面146を視認可能な構造にした。また、キーボードは塵埃に対して弱いため採用せず、入力はすべてマウス148で行うようにしている。文字列の入力が必要な場合も後述するソフトキーボードを用いることで対応し、ハードウェアの故障、操作性の低下を防ぐことができる。」

(ヘ)段落【0107】?【0110】
「【0107】DNC制御機能とは、各マシンターミナル30が、DNCサーバ18のCAMデータを読み出し、各マシンターミナル30がもつローカルディスクに保存するとともに、加工機械54の種別に適合したデータに変換した後に、対応する加工機械54に送信する一連の機能のことである。
【0108】まず、図7に示す作業工程表示領域104で、データ118の欄に◎の記号のある作業工程をマウス148によりクリックして選択する。この選択により、その作業工程で必要なCAMデータの情報がCAMデータ表示領域106に表示されるので、そのデータをクリック選択する。
【0109】次に、実際に加工するにあたり、単独運転ボタン136または連続運転ボタン138をクリックする。単独運転とは加工するCAMデータが1つの場合であり、連続運転とは複数CAMデータを連続して実行する場合である。
【0110】該ボタンをクリックすると、図7に示すマシンターミナル画面210上に図9に示すポップアップ画面140が現れるとともに、DNCサーバ18からマシンターミナル30へ経路Reを通じてCAMデータが読み込まれる。さらに、加工機械54の運転を開始させると、マシンターミナル30は読み込んだCAMデータを加工機械54に適合したデータに変換し、変換したデータを加工機械54へ転送する。該データ変換では、連続運転の場合の複数データの統合や、工具単位の区切り位置から再加工できるようにするなどの情報も組み込むようにしてある。」

刊行物1における加工機械は、NCデータを含むCAMデータを加工機械の種別に適合したデータに変換したものを受信して動作するものであり、加工機械が加工動作機構部と、該加工動作機構部の作動をNCデータを含むCAMデータに基づき制御する制御装置とを有することは、技術常識である。
また、マシンターミナルは、加工機械にNCデータを含むCAMデータを加工機械の種別に適合したデータに変換したものを転送するものであり、加工機械の周辺装置というべきものであって、加工機械に加えて、そうした周辺装置も含めたものもNC工作機械と見なし得ることは明らかである。

よって、上記摘記事項を技術常識を勘案して、本願発明1に照らして整理すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

「加工動作機構部と、該加工動作機構部の作動をNCデータを含むCAMデータに基づき制御する制御装置と、マシンターミナルに対して信号を入力するためのマウス、及び画像の表示を行うモニタ画面を少なくとも具備した操作盤とを備えたNC工作機械であって、 前記マシンターミナルは、NCデータを含むCAMデータを送信するDNCサーバとイーサネットを介して接続可能に構成され、
更に、前記DNCサーバからNCデータを含むCAMデータを受信して、受信したNCデータを含むCAMデータを記憶する処理を実行するように構成されてなるNC工作機械。」


3.対比・判断

(1)本願発明1について

本願発明1と刊行物1に記載の発明とを対比する。
刊行物1における「NCデータを含むCAMデータ」は本願発明1における「加工プログラム」に相当し、以下同様に、「マウス」は「入力手段」に、「モニタ画面」は「画像表示手段」に、「DNCサーバ」は「送信装置」に、「イーサネット」は「電機通信回線」に、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点と相違点は次のとおりと認められる。

[一致点]
「加工動作機構部と、該加工動作機構部の作動を加工プログラムに基づき制御する制御装置と、信号を入力するための入力手段、及び画像の表示を行う画面表示手段を少なくとも具備した操作盤とを備えたNC工作機械であって、
加工プログラムを送信する送信装置と電気通信回線を介して接続可能に構成され、更に、前記送信装置から加工プログラムを受信する処理とを実行するように構成されてなるNC工作機械。」である点。

[相違点1]
本願発明1では、「入力手段」が「制御装置」に対して信号を入力するものであり、且つ、前記「制御装置」が「加工プログラムを送信する送信装置と電気通信回線を介して接続可能に構成され、更に、前記送信装置から加工プログラムを受信して、受信した加工プログラムを記憶する処理」を実行するのに対し、刊行物1記載の発明は「入力手段」が「マシンターミナル」に対して信号を入力するものであり、且つ、前記「マシンターミナル」が「加工プログラムを送信する送信装置と電気通信回線を介して接続可能に構成され、更に、前記送信装置から加工プログラムを受信して、受信した加工プログラムを記憶する処理」を実行する点。

[相違点2]
本願発明1では、「入力手段」が「前記画面表示手段に表示された画像をオペレータが確認したことを示す確認信号を入力可能に構成され」ると共に、NC工作機械が「受信した加工プログラムからプログラム番号を抽出し、抽出したプログラム番号を前記画面表示手段に画面表示させる処理であって、プログラム番号に係る画像を、前記画面表示手段に既に表示されている画像の全部又は一部を覆い隠すように表示させて、前記入力手段から入力される前記確認信号を受信するまで表示を継続し、該確認信号を受信後、前記プログラム番号に係る画像の表示を終了する処理と、
前記プログラム番号に係る画像の表示後、前記入力手段から入力される前記確認信号を受信し、且つ加工プログラムの受信を完了するまで、前記入力手段から入力される信号の全部又は一部を無効とする処理とを実行する」のに対し、刊行物1に記載された発明は、それらに対応する特定事項を有していない点。

まず、上記相違点1について検討する。

刊行物1に記載された発明の「マシンターミナル」と「制御装置」とは別体であると認められるが、制御装置の技術分野において、複数の制御機能を1つの制御装置により達成することは、例示するまでもなく従来周知の事項であることを勘案すれば、刊行物1記載の発明において、「マシンターミナル」を「制御装置」に包含させて一体化し、相違点1に係る本願発明1のように構成することが、当業者にとって格別困難であったとは認められない。
次に、上記相違点2について検討する。

刊行物1に記載された発明は、上記相違点2に係る本願発明1の特定事項を有しておらず、本願発明1が課題とする、オペレータが知り得ないところで加工プログラムの追加や変更が行われた場合であっても、格納される加工プログラムを確実にオペレータに認識させる(段落【0007】?【0008】参照)ものとは、技術思想を異にするものである。
してみるに、刊行物1に記載された発明には、受信した加工プログラムの番号をオペレータが確認したことを示す確認信号を入力することについての契機ないし動機づけが存在しない。
また、上記相違点2に係る本願発明1の特定事項が、本願出願前に周知であったとすることもできない。
そして、本願発明1は、上記相違点2に係る特定事項を具備することにより、本件明細書に記載の「オペレータが加工プログラムの追加,変更を十分に把握しないまま、送信処理によって変更された加工プログラムを呼び出して、試加工を完了していない当該加工プログラムを用いて連続加工を行うといった事態に至るのを未然に防止することができる。」(段落【0052】参照)という格別の効果を奏するものと認められる。

したがって、上記相違点2については、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでないことから、本願発明1が、刊行物1に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


(2)本願発明2及び3について

本願発明2及び3は、本願発明1を引用する発明であって、本願発明1における特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当するものである。そして、本願発明1が、上記(1)に示したとおり、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、同様の理由により、本願発明2及び3は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


4.むすび

以上のとおりであるから、本件出願の請求項1?3に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることができない。

また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2008-10-20 
出願番号 特願2002-174324(P2002-174324)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 八木 誠  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 菅澤 洋二
佐々木 一浩
発明の名称 NC工作機械及び加工プログラム伝送システム  
代理人 村上 智司  

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