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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1187113
審判番号 不服2005-24478  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-19 
確定日 2008-10-06 
事件の表示 平成 8年特許願第510983号「炭素含有血管移植片とその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月28日国際公開、WO96/09157、平成10年10月27日国内公表、特表平10-511012号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成7年9月15日の出願(パリ条約による優先権主張1994年9月23日、米国)であって、平成17年9月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年12月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

II.平成17年12月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年12月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された(以下、「本願補正発明」という)。
「【請求項1】
管状炭素含有血管移植片の内面を形成し、それを通る流路を画定する内側管腔層であって、前記内側管腔層は延伸したポリテトラフルオロエチレンを含み、
前記内側管腔層を同心的に囲む外側層であって、前記外側層は延伸したポリテトラフルオロエチレンを含み、
内側管腔層及び外側層の少なくとも一方はポリテトラフルオロエチレンと炭素との実質的に均質な混合物を含み、かつ、炭素成分に吸着され、生体内で前記炭素成分から生理的に放出される生物活性物質を含み、そして
内側管腔層及び外側層の両方ともその中に炭素が加えられている場合は、内側管腔層及び外側層は相異なる割合の炭素重量を有する、管状炭素含有血管移植片。」(下線部は補正個所を示す)

2.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「内側管腔層及び外側層の少なくとも一方」について、その成分として「炭素成分に吸着され、生体内で前記炭素成分から生理的に放出される生物活性物質」を含むとの限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.サポート要件
本願補正発明は、「内側管腔層及び外側層の少なくとも一方はポリテトラフルオロエチレンと炭素との実質的に均質な混合物を含み、かつ、炭素成分に吸着され、生体内で前記炭素成分から生理的に放出される生物活性物質を含」むことを、その発明特定事項としている。
そこで、この発明特定事項を含む本願補正発明が、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるかについて以下検討する。

平成9年3月24日付け提出の特許法第184条の5第1項の規定による書面に添付した明細書の翻訳文には、次の記載がある。
(1)「血管プロテーゼにコロイド状黒鉛を塗布することによっても、炭素は血管プロテーゼに混入されている。さらに詳しくは、例えばヘパリンのような凝固防止剤をプロテーゼ材料(典型的には可撓性ポリマー樹脂)及びトルエン又は他の芳香族溶剤と混合し、さらに黒鉛を混合して、血管プロテーゼの管腔層を形成する。黒鉛は凝固防止剤を保持するための吸着剤として機能する。血管プロテーゼをトルエンによって処理した後に、上記黒鉛コーティングを血管プロテーゼに注入し、プロテーゼの管腔面と接触した状態に留まらせ、次いでプロテーゼから排出させる。プロテーゼの管腔面上の残留コーティングを風乾させ、次いで熱によってプロテーゼに対して硬化させた。このような方法の1例は米国特許第3,585,647号に述べられている。このような炭素被覆血管移植片は幾つかの科学ジャーナル論文にも開示され、評価されている。Gott,V.T.,Whiffen,J.D.,Dutton,R.C.,“コロイド状黒鉛面のヘパリン結合”,Science,142:1297,1963;Whiffen,J.D.,Dutton,R.,Young,W.P.,Gott,V.L.,“黒鉛被覆血管内プロテーゼへのヘパリン塗布”,Surgery,56(2):404,1964;Gott,V.L.,Whiffen,J.D.,Koepke,D.E.,Daggett,R.L.,Beake,W.C.,Young,W.P.,“種々なプラスチックと金属に黒鉛-ベンズアルコニウムーヘパリンコーティングを塗布する方法”,Transactions American Society of Artificial Internal Organs,10:213,1964。」(第2頁第4?24行)、
(2)「前記炭素含有血管移植片の全てはさらに、血管移植片から徐放されることができる生物活性物質を含むことができる。生物活性物質は凝固防止剤、抗菌剤、抗炎症剤、成長因子、平滑筋収縮抑制剤、抗血栓剤、抗血小板剤、非ステロイド系抗炎症剤、インフェクチン(infectin)、チクロピデン(ticlopidene)、又は移植目的の移植片の有用性若しくは価値を高める任意の他の物質を包含することができる。
生物活性物質は技術上周知の方法によって炭素含有移植片中に混入される。例えば、炭素含有血管移植片を移植片の焼結後に所望の生物活性物質中に浸漬し、次いで乾燥させることができる。生物活性物質を血管移植片の孔隙中に押し込むために、負圧又は正圧を用いることもできる。生物活性物質を炭素含有移植片に結合させるための他の方法は、米国特許第4,229,838号及び第4,749,585号に述べられており、これらの特許は本明細書に援用される。既述したように、炭素含有血管移植片中の炭素成分の電気的陰性電荷は、生物活性物質を血管移植片に結合させるのを容易にすることができる。」(第14頁第8?21行)

本願明細書の発明の詳細な説明における、生物活性物質が、「炭素成分に吸着され、生体内で前記炭素成分から生理的に放出される」ことの根拠となる記載について検討すると、記載(1)に、実施例として、凝固防止剤であるヘパリンの炭素への結合についての、文献を引用した間接的な根拠となる記載があるのみであり(例えば、引用された米国特許第3,585,647号には、シリコーン樹脂製の人工血管内面に炭素を包含させ、炭素にヘパリンを結合することが記載されている)、他の「生物活性物質」について、そのことを確認した裏付けとなる記載はない。
一方、記載(2)によれば、本願補正発明に係る「生物活性物質」は、「凝固防止剤、抗菌剤、抗炎症剤、成長因子、平滑筋収縮抑制剤、抗血栓剤、抗血小板剤、非ステロイド系抗炎症剤、インフェクチン(infectin)、チクロピデン(ticlopidene)、又は移植目的の移植片の有用性若しくは価値を高める任意の他の物質」と広範にわたる物質を包含しているところ、上述のとおり、ヘパリン以外の物質について、管状炭素含有血管移植片の材料に混入された「生物活性物質」が、「炭素成分に吸着され、生体内で前記炭素成分から生理的に放出される」ことは確認されておらず、また、ヘパリンと化学的性質や電気的性質が異なる抗菌剤、抗炎症剤、成長因子等の物質がすべて、材料に混入された時「炭素成分に吸着され、生体内で前記炭素成分から生理的に放出される」か否かは従来の常識からは予期できないものであるから、当業者が技術常識に基づいて、特定の実施例についての発明の詳細な説明の教示を本願補正発明の全範囲に拡張ないし一般化できるともいえない。
したがって、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を越えているので、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、特許法第36条第6項1号の規定に適合せず、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-2.進歩性
[1]引用例の記載事項
A.原査定の拒絶の理由に示された特開平1-46468号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a.「本発明を構成する製品は、人工皮膚、血管移植片・・・(中略)・・・などのような、生物医学装置に非常に広範囲な用途を有している。」(第5頁左上欄第15?19行)
b.「ポリ(テトラフルオロエチレン)層およびポリ(テトラフルオロエチレン)/エラストマー層に対し、35℃から327℃まで、望ましくは約300℃に加熱したとき、両層は延伸が可能となり所望の性能を持つことができる。」(第8頁左上欄第5?10行)
c.「管を製造するにあたり、本発明の望ましい実施例では、同心円管を予備成形機の内側に入れて予備成形機を二つの空間にわける。潤滑化したポリ(テトラフルオロエチレン)粉末/エラストマー混合物を図1のように予備成形機の外側の空間内に入れる傍ら潤滑したポリ(テトラフルオロエチレン)粉末を内側の空間に入れる。本例では押出物は、所望の水浸入圧力に応じた内腔層の疎水性を有するとともに、優れた血液接触が得られるように、明確なフィブリルの節の微細構造を有する比較的薄い内腔層を有している。ポリ(テトラフルオロエチレン)/エラストマーの外側層は、弾性があるので伸展性が向上し、また遷移的マトリックスとして内側層と最外層の間に所望の接着力を与える。また粉末は50から約7Kg/cm2(約100psi)に圧縮して2重層の予備成形物又はビレットを製造する。」(第9頁右上欄第7行?左下欄第4行)
d.「別の実施例では、ポリ(テトラフルオロエチレン)/エラストマーの内腔層と第二層であるポリ(テトラフルオロエチレン)層から成っている。こうした層の組み合わせの場合、内腔層のエラストマーに依って親水性が向上する。」(第11頁右上欄第1?5行)
e.「図2と図6には、本発明の望ましい実施例が示してある。
すべての実施例において、エラストマー溶液は、抗生物質またはヘパリンのような治療に有用な物質を含有する事ができ、これらの物質は周囲へ移行できる。
図2には、ポリ(テトラフルオロエチレン)内腔層とポリ(テトラフルオロエチレン)/エラストマー外側層とを有する本発明の実施例が示してある。」(第11頁右上欄第8?17行)
f.図2には、内面を形成し、それを通る管路を画定する内腔層と該内腔層を同心的に囲む外側層とを有する管状の血管移植片の開放端の透視図が示されている。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「管状の血管移植片の内面を形成し、それを通る管路を画定する内腔層であって、前記内腔層は延伸したポリ(テトラフルオロエチレン)を含み、
前記内腔層を同心的に囲む外側層であって、前記外側層は延伸したポリ(テトラフルオロエチレン)を含み、
内腔層及び外側層の少なくとも一方はポリ(テトラフルオロエチレン)とエラストマーとの実質的に均質な混合物を含み、かつ、エラストマーに含有され、生体内でエラストマーから周囲へ移行できる抗生物質またはヘパリンのような治療に有用な物質を含む管状の血管移植片。」

B.同じく原査定の拒絶の理由に示された特開昭54-119799号公報(以下、「引用例2」という)には、次の記載がある。
g.「本発明は、人工血管移植片における使用のための材料、このような材料から作った血管構造物、そしてこのような材料および構造物を使用する技術に関する。
血管の移植片として使用するための種々のプラスチックから作られた人工器官を製造する技術は、よく開発されている。先行技術の研究者らはこのような使用のためのプラスチック物質を広く研究してきた。血管の人工物を移植するとき彼らが直面した共通の問題の1つは、移植片の部位における血栓形成による移植片の不全である。」(第3頁左上欄第1?11行)
h.「このような有害な影響を克服するため、血流-移植片の界面に血栓抵抗性を与えることが望ましいであろう。
この問題に対して先行技術の研究者らによって多くの研究がなされてきた。1961年において、Gottおよび彼の協同研究者らは血流中にグラファイトを位置させると血栓が減少すると決定した。」(第3頁左上欄第16行?右上欄第2行)
i.「本発明のほかの面において、該組成物から作られた人工血管装置が提供される。組成物の好ましい態様は、プラスチック(好ましいプラスチックは以後PTFEと呼ぶ膨張したポリテトラフルオロエチレンである)とグラファイト(コロイド状炭素)との9:1の比の組み合わせである。
組成物はプラスチック樹脂とグラファイトとを乾式混合して均質な混合物を形成し、その後この組み合わせをプラスチック単独、たとえばPTFEの加工に対して技術的に知られている工程によって加工することによって作られる。」(第4頁右上欄第14行?左下欄第5行)
j.「簡単に言えば、先行技術の方法を本発明に適合させるとき、押出し等級のPTFE微粉末とグラファイト粉末とを押出し助剤、たとえばVMおよびP等級のナフサと配合し、この組成物を100?300psi(7.0?21.1Kg/cm^(2))の下で円筒状ビレットに予備成形する。この予備成形組成物を次にラム型押出し機に入れ、ラムにより成形ダイに押し通す;次に押出し助剤を200?575°F(93.3?302℃)で蒸発させる。
その後、もろい押出し物を焼結し、そして冷却して仕上げ造形品、たとえば・・・(中略)・・・柔軟な、永久的な静脈、動脈および心臓の移植片として使用するための膨張したPTFE管を形成する。」(第4頁右下欄第6行欄?第5頁左上欄第1行)

上記記載より、引用例2には、血流-移植片の界面に血栓抵抗性を与えるために、ポリテトラフルオロエチレンと炭素との混合物組成物から人工血管移植片を作る技術が記載されている。

[2]対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「管路」は、本願補正発明の「流路」に相当し、以下同様に、「内腔層」は「内側管腔層」に、「ポリ(テトラフルオロエチレン)」は「ポリテトラフルオロエチレン」に、「周囲へ移行できる」は「生理的に放出される」に、それぞれ相当し、「抗生物質またはヘパリンのような治療に有用な物質」における「抗生物質」は「抗菌剤」であり、「ヘパリン」は「凝固防止剤」であるところ、「抗菌剤」及び「凝固防止剤」は、本願補正発明でいう「生物活性物質」に包含されるから、「生物活性物質」に相当する。
また、引用発明の「エラストマー」と、本願補正発明の「炭素」あるいは「炭素成分」とは、ポリテトラフルオロエチレンに混合される「被混合物質」である点で共通する。
更に、引用発明の「エラストマーに含有され」ることと、本願補正発明の「炭素成分に吸着され」ることとは、「被混合物質に付加される」という概念で共通する。
そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「管状血管移植片の内面を形成し、それを通る流路を画定する内側管腔層であって、前記内側管腔層は延伸したポリテトラフルオロエチレンを含み、
前記内側管腔層を同心的に囲む外側層であって、前記外側層は延伸したポリテトラフルオロエチレンを含み、
内側管腔層及び外側層の少なくとも一方はポリテトラフルオロエチレンと被混合物質との実質的に均質な混合物を含み、かつ、被混合物質に付加され、生体内で前記被混合物質から生理的に放出される生物活性物質を含む管状血管移植片。」
そして、両者は次の相違点1,2で相違する。
(相違点1)
管状血管移植片の内側管腔層及び外側層の少なくとも一方のポリテトラフルオロエチレンに混合され、生物活性物質が付加される被混合物質が、本願補正発明では炭素あるいは炭素成分であって、生物活性物質が炭素成分に吸着されているのに対し、引用発明ではそのような構成ではない点。
(相違点2)
本願補正発明では、管状血管移植片の内側管腔層及び外側層の両方ともその中に炭素が加えられている場合は、内側管腔層及び外側層は相異なる割合の炭素重量を有するのに対し、引用発明ではそのような構成を有していない点。

上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用発明は、管状の血管移植片に係るものであるから、その内面への凝血を防止しなければならないという課題を有するものであるので、引用発明の管状血管移植片の内側管腔層及び外側層の少なくとも一方に、引用例2に記載された、血流-移植片の界面に血栓抵抗性を与えるために、ポリテトラフルオロエチレンと炭素との混合物組成物から人工血管移植片を作るという技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、その適用にあたって、炭素が生物活性物質に包含されるヘパリンを保持することが、本願明細書に引用される米国特許第3,585,647号明細書等にあるように周知であったことから、血管移植片に含有されているヘパリンが炭素に保持、すなわち吸着されるようにして、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が必要に応じ適宜なし得たことである。
(相違点2について)
引用文献2に開示されたポリテトラフルオロエチレンと炭素との混合物組成物から作られた人工血管移植片を引用発明の管状血管移植片に適用するにあたって、その適用範囲を引用発明の管状血管移植片の内側管腔層及び外側層の両方に及ぼすことは、必要に応じて適宜になし得たものと認められ、その際、内側管腔層と外側層とに混合される炭素重量を相異なる割合とする程度のことは、単なる設計的事項に過ぎない。
そして、本願補正発明による効果も、引用発明、引用例2記載の技術及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2記載の技術及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成17年6月7日付けの手続補正書により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「管状炭素含有血管移植片の内面を形成し、それを通る流路を画定する内側管腔層であって、前記内側管腔層は延伸したポリテトラフルオロエチレンを含み、
前記内側管腔層を同心的に囲む外側層であって、前記外側層は延伸したポリテトラフルオロエチレンを含み、
内側管腔層及び外側層の少なくとも一方はポリテトラフルオロエチレンと炭素との実質的に均質な混合物を含み、そして
内側管腔層及び外側層の両方ともその中に炭素が加えられている場合は、内側管腔層及び外側層は相異なる割合の炭素重量を有する、管状炭素含有血管移植片。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記II.3-2.[1]に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1.の本願補正発明から、「内側管腔層及び外側層」の限定事項である「かつ、炭素成分に吸着され、生体内で前記炭素成分から生理的に放出される生物活性物質を含み、」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3-2.[2]に記載したとおり、引用発明、引用例2記載の技術及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明、引用例2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-15 
結審通知日 2008-05-16 
審決日 2008-05-27 
出願番号 特願平8-510983
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
P 1 8・ 575- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺澤 忠司  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 仲村 靖
増沢 誠一
発明の名称 炭素含有血管移植片とその製造方法  
代理人 小林 泰  
代理人 増井 忠弐  
代理人 社本 一夫  
代理人 栗田 忠彦  

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