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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61J
管理番号 1187117
審判番号 不服2006-14827  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-11 
確定日 2008-10-09 
事件の表示 平成 8年特許願第508326号「リザーバーおよび送達装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月17日国際公開、WO96/14043、平成10年 8月 4日国内公表、特表平10-507937号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、1995年11月1日(パリ条約による優先権主張:1994年11月2日、イギリス国)を国際出願日とする出願であって、平成18年4月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年7月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

第2 平成18年7月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年7月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「送達装置によって制御される患者供給ラインを介して患者に供給されるべき薬剤を収納する受動型リザーバーであって、前記送達装置が受動型リザーバーから隔てられており、かつ患者供給ラインを介して薬剤の送達を制御するように患者供給ラインに適用される受動型リザーバーにおいて、
前記受動型リザーバーの中に収容されるか或いは収容されるべき薬剤に関するデータを担持する、電気的及び/又は磁気的に作動可能なデータキャリア手段を備え、前記データキャリア手段によって坦持されたデータが送達装置の動作に考慮され、前記データキャリア手段は、送達装置の外部のフィールド発生手段によって発生された活動化するフィールドにより動作されたとき、薬剤に関連したデータを表示する少なくとも一つの所定の共鳴周波数で共鳴し、それによって、当該受動型リザーバーの包囲材料の中に埋め込まれた前記データキャリア手段で薬剤に関連したデータを出すようになっている共鳴装置を備える、受動型リザーバー。」(下線部分が補正箇所である。)

2 補正の目的の適否
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「データキャリア手段」に、「当該受動型リザーバーの包囲材料の中に埋め込まれた」との限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。

(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特表平5-500917号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 「1.ハウジングと、前記ハウジング上の、プランジャーを有する注射器のための装着装置と、所定の速度で前記プランジャーを駆動するための、該プランジャーに連結されているモーターを有する装置と、前記プランジャーの作動を制御するための、前記モーターに接続されている電算機にして、患者の投薬量要件に関するデータを受取って該データを、受取ったデータに従って前記プランジャーを駆動する様に前記モーターを制御する信号に変換することができる前記電算機と、前記電算機に接続されている、機械読取り可能な電算機データの読取り装置と、プランジャーを有し、注射器に装着され且つ患者の投薬量要件に関するデータを含んでいる機械読取り可能なデータを有している注射器とを包含し、前記読取り装置は、前記データを読取ると、前記モータの作動従って前記注射器内の薬剤の投薬を制御し、前記注射器は、前記読取り装置が前記データを読取るのを可能にすると共に前記電算機が特定患者の要件に対してプログラムする様に、前記装着装置によって装着されている注入ポンプ。
2.前記読取り装置はバーコード読取り装置であり、前記データは前記注射器上のバーコードの形態をしている請求の範囲第1項に記載の装置。」(【特許請求の範囲】の請求項1、2)
イ 「本発明の目的は、患者及び薬剤に関してすべての用途に適うものであるが、不注意の操作による患者への損傷を防止する注入ポンプを提供することである。
本発明のこの目的は、従来キーボードによって入力されていたデータをポンプの電算機へ入力するために、バーコード読取り装置またはバーコードの命令を自動的に入れる装置を注入ポンプに設けることによって達成される。注射器には、中の薬剤が医療のための処方せんに従って薬剤師により支給されたものである様に、バーコードが装着される。処方せんを与えられた薬剤師は、患者に適合する様に作られたバーコードを有する注射器を準備する。
使用の際には、医師は医療のための処方せんを作成しこれが薬剤師に与えられる。処方せん調薬が調合されて1本またはそれ以上の注射器に入れられる。処方データを有するバーコードが作成され、ラベルの形態で注射器に装着ないし付着される。操作者は、注射器をポンプハウジングに挿入する。注射器がハウジングに挿入されると、バーコ-ド読取り装置はバーコードを読取って処方データをポンプの電算機に入力する。従って、注入ポンプは医師によって作成された処方に従ってのみ作動する様にプログラムされる。」(2頁右上欄10行?左下欄6行)
ウ 「ポンプは図中に10で示され、閉鎖キャップ12を有するハウジング11を備えている。ハウジングは注射器14を収容するためのチャンバ13を備えている。注射器はプランジャ15を有している。ねじ16がプランジャ内に装着され、ナット17を有している。
注射器がハウジング11に装着されると、ナットは回転に抗してチャンバ13の壁によって固定される。ねじは想像線で示されるモーター21に連結される駆動ビン20に結合される。モーターの作動は、ねじをナット17に対して回転させる。ナットが固定されているため、ねじは軸方向へ移動し、薬剤を注射器内から押出す様にプランジャを注射器の投薬端部23に向けて駆動する。」(2頁左下欄23行?右下欄9行)
エ 「バーコード読取り装置30は、ハウジング内のポンプに装着されるかまたは該ポンプに容易に接続され、データをバーコードから電算機へ入力する様に電算機に接続される。バーコード32は注射器の表面に装着される。
好ましくは、該バーコードは、注射器内にある特定の薬剤に対してまた該薬剤を処方される特定の患者に対して電算機をプログラムする様に、薬剤師によって作成され薬剤師によって注射器に装着されるラベルの形態をしている。バーコードは、注射器かチャンバ13に挿入されるとバーコード読取り装置によって読取られる様に適合されている。」(2頁右下欄15行?25行)
オ 「操作の際、患者は彼の医師から薬剤の処方せんを入手する。患者は該処方せんを薬剤師のところへ持って行く。薬剤師は、ハウジング11に適合する寸法の1本またはそれ以上の注射器に処方された薬剤を充填する。薬剤師は、薬剤とその濃度及び投薬量等に関する必要なデータを当該技術で周知の機械に入れる。該データは、その機械によってバーコード形態でラベル上に印刷され、薬剤師はこのラベルを注射器の指定個所に装着する。
操作者は、バーコードデータをその上に有する注射器を、バーコードがバーコード読取り装置に隣接された状態でハウジング内に設置する。バーコード読取り装置は、データを読取って該データを電算機へ入力する。そこで、注入ポンプは患者に対して処方された投薬量の投与に対する準備ができていると共に、操作者か様式および投薬量における許可された変更を行うのを可能にしている。」(3頁左上欄4行?18行)

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理するすると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。
「患者に供給される薬剤を収納する注射器14であって、モーターによって駆動され、薬剤を押し出すプランジャ15を備えた注射器14において、患者に供給される薬剤とその濃度及び投薬量等に関するデータに基づいて作成されたバーコード32を指定個所に装着し、バーコード32からのデータに基づいてモーターが制御される注射器14。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「注射器」と、本願補正発明の「受動型リザーバー」は、患者に供給されるべき薬剤を収納する部材である点で共通し、また、引用発明の「バーコード32」と、本願補正発明の「データキャリア手段」は、薬剤を収納する部材の中に収容されるか或いは収容されるべき薬剤であって、患者に供給されるべき薬剤に関するデータを担持する手段であり、さらに、引用発明の「モーターによって駆動され、薬剤を押し出すプランジャ15を備えた…バーコード32からのデータに基づいてモーターが制御される」は、送達装置を備えていて、上記データを担持する手段に担持されたデータが送達装置の動作に考慮されるものであるといえる。

そうすると、両者は、
「患者に供給されるべき薬剤を収納する部材において、該部材の中に収容されるか或いは収容されるべき薬剤に関するデータを担持する手段を備え、データを担持する手段によって担持されたデータが送達装置の動作に考慮される、患者に供給されるべき薬剤を収納する部材。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
患者に供給されるべき薬剤を収納する部材に関し、本願補正発明は、送達装置によって制御される患者供給ラインを介して患者に供給されるべき薬剤を収納する受動型リザーバーであって、送達装置が受動型リザーバーから隔てられており、かつ患者供給ラインを介して薬剤の送達を制御するように患者供給ラインに適用される受動型リザーバーであるのに対して、引用発明は、モーターによって駆動され、薬剤を押し出すプランジャ15を備えた注射器14である点。
<相違点2>
薬剤についてのデータを担持する手段に関し、本願補正発明は、電気的及び/又は磁気的に作動可能なデータキャリア手段であって、データキャリア手段は、送達装置の外部のフィールド発生手段によって発生された活動化するフィールドにより動作されたとき、薬剤に関連したデータを表示する少なくとも一つの所定の共鳴周波数で共鳴し、それによって、当該受動型リザーバーの包囲材料の中に埋め込まれた前記データキャリア手段で薬剤に関連したデータを出すようになっている共鳴装置を備えるものであるのに対して、引用発明は、バーコード32であって、注射器の指定箇所に装着されたものである点。

(3)相違点の判断
上記相違点1、2について以下に検討する。
ア 相違点1について
患者に供給されるべき薬剤を収納するリザーバーの分野において、送達装置によって制御される患者供給ラインを介して患者に供給されるべき薬剤を収納する受動型リザーバーであって、送達装置が受動型リザーバーから隔てられており、かつ患者供給ラインを介して薬剤の送達を制御するように患者供給ラインに適用される受動型リザーバーは周知の技術である(例えば、特開平4-22368号公報、特開平3-183335号公報参照)。
そして、引用発明の注射器と上記周知の技術の受動型リザーバーは、患者に薬剤を供給するための機器である点で共通する。
したがって、患者に供給されるべき薬剤を収納する部材を、送達装置によって制御される患者供給ラインを介して患者に供給されるべき薬剤を収納する受動型リザーバーであって、送達装置が受動型リザーバーから隔てられており、かつ患者供給ラインを介して薬剤の送達を制御するように患者供給ラインに適用される受動型リザーバーとし、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは引用発明及び上記周知の技術から当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
データを担持する手段として、電気的及び/又は磁気的に作動可能なデータキャリア手段であって、データキャリア手段は、送達装置の外部のフィールド発生手段によって発生された活動化するフィールドにより動作されたとき、データを表示する少なくとも一つの所定の共鳴周波数で共鳴し、それによって、データキャリア手段でデータを出すようになっている共鳴装置を備えるものは周知の技術であり(例えば、特表平3-501303号公報、特開昭58-192197号公報、特開平3-272773号公報、特開昭61-226915号公報、特公昭62-7516号公報、特開平6-97761号公報、特開平1-38683号公報参照)、また、このデータを担持する手段を対象部材の中に埋め込むことも周知の技術である(例えば、特開昭61-226915号公報、特公昭62-7516号公報、特開平6-97761号公報、特開平1-38683号公報参照)。
そして、上記周知の技術のデータを担持する手段に、薬剤についてのデータを担持させることに特段の阻害要因は見当たらない。
したがって、薬剤についてのデータを担持する手段として、引用発明のバーコードに代えて上記周知の技術のデータを担持する手段を採用し、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び上記周知の技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成17年5月16日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「送達装置によって制御される患者供給ラインを介して患者に供給されるべき薬剤を収納する受動型リザーバーであって、前記送達装置が受動型リザーバーから隔てられており、かつ患者供給ラインを介して薬剤の送達を制御するように患者供給ラインに適用される受動型リザーバーにおいて、
前記受動型リザーバーの中に収容されるか或いは収容されるべき薬剤に関するデータを担持する、電気的及び/又は磁気的に作動可能なデータキャリア手段を備え、前記データキャリア手段によって坦持されたデータが送達装置の動作に考慮され、前記データキャリア手段は、送達装置の外部のフィールド発生手段によって発生された活動化するフィールドにより動作されたとき、薬剤に関連したデータを表示する少なくとも一つの所定の共鳴周波数で共鳴しそれによって薬剤に関連したデータを出すようになっている共鳴装置を備える、受動型リザーバー。」

第4 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2 3(1)」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2 1」の本願補正発明から、「データキャリア手段」の限定事項である「当該受動型リザーバーの包囲材料の中に埋め込まれた前記データキャリア手段で」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3」に記載したとおり、引用発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-16 
結審通知日 2008-05-19 
審決日 2008-05-30 
出願番号 特願平8-508326
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61J)
P 1 8・ 575- Z (A61J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一ノ瀬 薫  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 新井 克夫
仲村 靖
発明の名称 リザーバーおよび送達装置  
代理人 小林 泰  
代理人 富田 博行  
代理人 社本 一夫  
代理人 増井 忠弐  
代理人 千葉 昭男  
代理人 内田 博  

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