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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1187123
審判番号 不服2007-26762  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-01 
確定日 2008-10-21 
事件の表示 平成 9年特許願第509548号「選択対象物を融除するための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月27日国際公開、WO97/06857、平成11年10月19日国内公表、特表平11-511992号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、1996年8月15日(パリ条約による優先権主張:1995年8月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年6月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年10月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成18年12月13日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願発明」という)。

「尖った遠位端部と中央管腔とを有する一次アンテナ(14)と、
複数の二次アンテナ(16)を含む多重アンテナ装置であって、該二次アンテナは、前記一次アンテナ内に位置決めされている場合には非展延状態を有し、該複数の二次アンテナが該一次アンテナから現われるように該一次アンテナから前進して、展延したアンテナの間に融除領域を形成する場合には、展延状態を有する、前記多重アンテナ装置と
を含む、融除処置装置であって、
該複数の二次アンテナの少なくとも1つが、エネルギ源(20)に協働可能に結合されていることを特徴とする、融除処置装置。」

II.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用した、特公平7-73584号公報(以下、「引用例」という)には、次の事項が図面とともに記載されている。
1.「電気外科用具において、
(イ) 近端と、遠端と、前記近端と遠端との間に延在する複数個の内腔とを有する細長い管状部材と、
(ロ) 前記管状部材の遠端に固定された弾丸形状のセラミック製先端部材であって、前記先端部材はその中に形成された縦方向の孔を有しており、この孔は前記先端部材の外部における開口を出口としており、それは前記管状部材の縦方向軸線から横方向にずれて位置している、その弾丸形状のセラミック製先端部材と、
(ハ) 前記内腔の1つの配置された第1導線と、
(ニ) 前記管状部材の前記近端に結合されていて、かつ前記第1導線を選択的に移動させるために前記第1導線に連結された装置であって、それによって前記第1導線の遠端は前記縦方向の孔および前記開口を通過することができるようになっている、その装置と、
(ホ) 前記先端部材の前記外部に固着され、前記開口を間隙をおいて取囲んでいる電導性表面と、
(ヘ) 前記複数個の内腔の他の内腔を通過し、前記電導性表面に対して電気的に連結されている第2導線とを含むことを特徴とする電気外科用具。」(【請求項1】)

2.「図1を参照すると、本発明の電気外科用具が番号10で示されており、近端14と遠端16とを有する細長い、屈曲性のあるプラスチック性の管状部材12からなっている。図2の断面図は、前記管12が第1内腔18と第2内腔20とを有しているを示している。前記管は、2つの内腔を有するようにして成型されていても、あるいは、第1の管の単一の内腔内を第2の別直径の小さな管を通すことによって、2つの分離した内腔を形成してもよい。
管状部材12の遠端16には、滑らかに丸くなった弾丸形状のセラミック部材22が固定されており、前記部材はそれを完全に貫通する縦方向の孔24を有しており、これはセラミック先端部材22の表面において開口26を画定している。・・・(中略)・・・
セラミック先端22の外面上には銀あるいはニッケルのような適当な金属の電導層28が、メッキ、噴霧、浸液、スクリーニング、あるいはその他の方法で形成され、それらの金属は生物的に共立することができ、毒性がない。前記金属は、所定寸法のギャップ30を画定するために、開口26の外周から除去されており、このことの目的を以下詳細に説明する。」(【0008】?【0010】段落)

3.「第1導線32が、内腔20と、セラミック先端に形成された孔24とを貫通している。導線32の近端はプランジャ34の近端に機械的に結合されており、前記プランジャは、細長い屈曲性のある管状本体12の近端14に固定された鋳造成型されたプラスチック製ハブ36に形成された孔の中に嵌め込まれている。戻しばね38がプランジャ軸34を取囲み、通常時プランジャを近端方向は押付けておくためにハブ36と親指ボタン40と共に協同する。プランジャ34をばねの力に抗して押すと、導線32の遠端42をセラミック先端部材22に形成された開口26から突出させる。それに続いてプランジャを離すと、導線32の近端部分42は先端22の内部へ引き戻される。
さらに図2に示されているように、第2導線44がその内腔18を貫通し、導線44の遠端はセラミック先端に形成された金属化層28に連結されている。本用具10は、電線46によって、1989年10月6日付の本出願の譲渡人に譲渡されたStasz特許出願第071254、203に記載された型のような電気外科発電機の出力端子連結されている。電線46の中の導線は成型ハウジング36の中で導線32,44に対して電気的に連結されている。」(【0011】?【0012】段落)

4.「使用時においては、用具10は内視鏡を介して電気外科処理をしようとしている体内の位置に通される管状本体部分12を有している。遠方先端22がその位置に到達すると、外科医は親指ボタン40を押し、導線32の遠端部分42を開口26から突出させる。次に、電気外科用発電機に関する”切”足ペダルを踏むことによって、導線32の突出部分42とセラミック先端22を覆っている金属化層28との間に高周波電圧が発生される。突出導線42と金属化層22との間の電極領域において相当な差があるので、前記部分42は活性的な2極電極の役割を果たし、金属化層22はリターン電極となる。2つの電極が切除しようとする組織と接触すると、電弧が活性電極と組織との間に発生し、リターン電極へ流れ、この電弧が組織を切除する。・・・(後略)・・・」(【0014】段落)

図1には、記載3.の記載内容に関連して、内腔を貫通する第1導線32の遠端42が、先端部材22の開口から突出して伸張している状態が示されている。

上記記載内容を検討すると、記載1.ないし記載3.には、「電導性表面を有する弾丸形状のセラミック先端部材が遠端に固定された、内腔を有する管状部材」(以下、便宜上「管状部材組立体」と呼ぶ)が記載されている。
また、記載3.には、管状部材組立体の内腔を貫通する第1導線32が記載されており、図1を参酌すると、第1導線32の遠端42は、プランジャ34の操作によって、管状部材組立体の先端から突出して伸張した状態と、先端の内部へ引き戻され、内腔内に配置された状態とを取ることができる旨記載されている。(なお、記載3.に「近端部分42」とあるのは、「遠端42」の誤記である。)
さらに記載3.には、セラミック先端部材22の金属化層28に連結された第2導線44と、遠端42を有する第1導線32とに対して電気的に連結された電線46が、電気外科発電機の出力端子に連結されていることが記載されているので、セラミック先端部材22の金属化層28と第1導線32の遠端42とは電気外科発電機に電気的に連結されているといえる。
記載4.には、活性電極である第1導線32の突出部分42と、リターン電極である管状部材組立体の金属化層22とが切除しようとする組織と接触すると、「電弧が活性電極と組織との間に発生し、リターン電極へ流れ、この電弧が組織を切除する」旨記載されている。すなわち、突出して伸張した第1導線32と管状部材組立体との間に、組織が切除される領域が形成されることが記載されている。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「弾丸形状の遠端と内腔とを有する管状部材組立体と、
第1導線を含む装置であって、該第1導線は、前記管状部材組立体の内腔内に配置されている場合には引き戻された状態を有し、該第1導線が該管状部材組立体から現れるように該管状部材組立体から突出して管状部材組立体と伸張した第1導線との間に組織が切除される領域を形成する場合には、伸張状態を有する、前記装置とを含む電気外科用具であって、
前記第1導線が電気外科発電機に電気的に連結されている、電気外科用具。」

III.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「電気外科用具」は、高周波エネルギにより組織を切除するものであるから、本願発明の「融除処理装置」に相当し、同様に「電気外科発電機」は、高周波エネルギを供給するものであるから、「エネルギ源」に相当する。
引用発明の「管状部材組立体」は、その遠端の金属化層が、電気外科発電機に結合され、高周波エネルギが供給されるものであるので、本願発明の「一次アンテナ」に相当し、その「遠端」、「内腔」は、それぞれ「遠位端部」、「中央管腔」に相当する。
引用発明の「前記管状部材組立体の内腔内に配置されている場合には引き戻された状態を有し」、「該管状部材組立体から現れるように該管状部材組立体から突出して」、「伸張状態を有する」、「電気外科発電機に電気的に連結されている」、「第1導線」は、本願発明の「前記一次アンテナ内に位置決めされている場合には非展延状態を有し」、「該一次アンテナから現われるように該一次アンテナから前進して」、「展延状態を有する」、「エネルギ源(20)に協働可能に結合されている」、「二次アンテナ」に相当する。
また、引用発明の「組織が切除される領域」は、本願発明の「融除領域」に相当する。

したがって、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
(一致点)
「遠位端部と中央管腔とを有する一次アンテナ(14)と、
二次アンテナ(16)を含む多重アンテナ装置であって、該二次アンテナは、前記一次アンテナ内に位置決めされている場合には非展延状態を有し、該二次アンテナが該一次アンテナから現われるように該一次アンテナから前進して、展延したアンテナの間に融除領域を形成する場合には、展延状態を有する、前記多重アンテナ装置と
を含む、融除処置装置であって、
該二次アンテナの少なくとも1つが、エネルギ源(20)に協働可能に結合されていることを特徴とする、融除処置装置。」

そして、両者は、次の点で相違する(対応する引用発明(引用例記載)の用語を( )内に示す)。
(相違点a)
本願発明の一次アンテナは尖った遠位端部を有するのに対し、引用発明の一次アンテナ(管状部材組立体)は弾丸形状の遠位端部(遠端)を有する点。
(相違点b)
本願発明の二次アンテナは複数であるのに対し、引用発明の二次アンテナ(第1導線)は単数である点。

IV.判断
上記相違点について検討する。
(相違点aについて)
一般に、引用発明のような、高周波エネルギ等により組織の切除、焼灼等を行う電気外科用具において、用具の組織への経皮的導入等を目的として、その遠位端部を尖らせることは、例えば、特表平6-500476号公報や米国特許第4800899号明細書に示すように周知である。
すなわち、特表平6-500476号公報には、本願発明の「アンテナ」に相当するニードルプローブの電極部が尖った先端を有している旨記載されており(例えば、5ページ左下欄6?15行、図4参照)、米国特許第4800899号明細書には、本願発明の「アンテナ」に相当するアンテナ20は、尖った先端30を有する皮下注射針の形状をしていて、皮膚を通過し、体内26及び腫瘍24に導入される旨記載されている(例えば4欄4?8行、図1?3参照)。
そこで、かかる周知技術を勘案して、相違点aに係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点bについて)
一般に、引用発明のような、高周波エネルギ等により組織の切除、焼灼等を行う電気外科用具において、広範囲の組織を加熱処理するために、本願発明のアンテナに相当する複数の電極を備えたものは、例えば、原査定の拒絶の理由で引用した国際公開第95/10326号パンフレット(特に、RF電流を流すための複数の電極[90,100,469,474等]参照)や、特開平2-121675号公報(特に、マイクロ波が供給される複数の針状電極5参照)に示すように周知である。
そこで、かかる周知技術を勘案して、引用発明の二次アンテナ(第1導線)を複数として、相違点bに係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明による効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

V.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-19 
結審通知日 2008-05-26 
審決日 2008-06-06 
出願番号 特願平9-509548
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内藤 真徳  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 蓮井 雅之
鏡 宣宏
発明の名称 選択対象物を融除するための装置  
代理人 小川 信夫  
代理人 大塚 文昭  
代理人 中村 稔  
代理人 宍戸 嘉一  

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