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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A43B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A43B |
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管理番号 | 1187136 |
審判番号 | 不服2006-639 |
総通号数 | 108 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-01-10 |
確定日 | 2008-10-01 |
事件の表示 | 特願2001-575852号「靴の組み立て部材およびこれを用いた靴並びにその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月25日国際公開、WO01/78543、平成15年10月14日国内公表、特表2003-530179号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2001年4月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年4月13日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成17年9月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年1月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年2月8日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。 第2.平成18年2月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年2月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「靴の基部に組み込まれ、互いに高さが異なる複数種類の踵に応じて複数の構造を取り得る可撓性部材(10,40)と、 踵(11,49)とを備え、 前記踵が、前記可撓性部材(10,40)に構造的に組み込まれ、前記可撓性部材(10,40)により足を支える構造を形づくると共に、踵(11,49)を可撓性部材(10,40)に接続するための支持部材(20,62)を備え、 前記可撓性部材が、前記支持部材を受け入れる細長い通路(18,47)を含み、 前記支持部材(20,62)が長く、前記細長い通路に受け入れられて前記可撓性部材(10,40)に組み込まれたときに、前記可撓性部材の長さ方向に沿って延在することを特徴とする組み立て部材。」(下線部は、補正箇所を示す) 2.補正の目的の適否 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「踵」に、「互いに高さが異なる複数種類の」との限定を付与するとともに、「可撓性部材」と「支持部材」との接続に関して、「前記可撓性部材が、前記支持部材を受け入れる細長い通路(18,47)を含み」及び「前記細長い通路に受け入れられて」との限定を付与するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。 3-1.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭54-60041号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.「一組の靴を基にして、異なつた衣服にその都度合う様、かかとが取り換えられることがますます望まれている事は知られており、また、かかと、特に細長いタイプのかかとは、壊れやすく、靴の他の部分より早く役に立たなくなるので一組の靴に少なくとも二組のかかとを用意する事も同様に合理的である。」(第2ページ右上欄第13?19行) イ.「第1図、第2図において1はかかと、2は主要靴底、3はかかと1の一部をなす突出部(第1図)、4は締めくさび、そして5は主要靴底内の切り込みを表している。・・・(中略)・・・突出部3を切り込み5に垂直に向けて挿入し、突出縁7が支持くぼみ6の上にきた時、半回転する事によつて突出部7の高さにおける突出部の幅が、支持くぼみの高さにおける切り込み5の幅より大きいのにもかかわらず、突出部3を切り込みに挿入する事が可能である。もちろん、例えば、後部に向かつて広がる切り込み(図示されていない)を用意し、突出部をこの切り込みの後部から挿入する等の他の可能な方法もある。」(第2ページ右下欄第3行?第3ページ左上欄第18行)) 上記イの記載及び第1図から、かかと1は、主要靴底2に組み立てられ、主要靴底2により足を支える構造となるものといえる。 ここで、「主要靴底2」と「かかと1」とを備えたものを、便宜上「靴の組立部品」という。 これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 「主要靴底2と、 かかと1とを備え、 かかと1が、主要靴底2に組み立てられ、主要靴底2により足を支える構造となると共に、かかと1を主要靴底2に保持するための突出部3を備え、 主要靴底2が、突出部3を挿入する切り込み5を有し、 突出部3が、切り込み5に挿入されて主要靴底2に組み立てられる靴の組立部品。」 3-2.対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明1の「かかと1」は、本願補正発明の「踵」に相当し、以下同様に、「組み立てられ」は、「構造的に組み込まれ」及び「組み込まれ」に、「構造となる」は「構造を形作る」に、「保持する」は「接続する」に、「突出部3」は「支持部材」に、「挿入する」は「受け入れる」に、「挿入されて」は「受け入れられて」に、「靴の組立部品」は「組み立て部材」に、それぞれ相当する。 引用発明の「主要靴底2」は、靴の基部の一部であり、可撓性があるのは明らかであるから、本願補正発明の「靴の基部に組み込まれ」た「可撓性部材」に相当する。 また、引用発明の「切り込み5」と本願補正発明の「細長い通路」とは、支持部材を受け入れる通路という点で共通している。 そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「靴の基部に組み込まれた可撓性部材と、 踵とを備え、 前記踵が、前記可撓性部材に構造的に組み込まれ、前記可撓性部材により足を支える構造を形づくると共に、踵を可撓性部材に接続するための支持部材を備え、 前記可撓性部材が、前記支持部材を受け入れる通路を含み、 前記支持部材が、前記通路に受け入れられて前記可撓性部材に組み込まれる組み立て部材。」 そして、両者は次の相違点1、2で相違する。 (相違点1) 可撓性部材に関して、本願補正発明は、互いに高さが異なる複数種類の踵に応じて複数の構造を取り得るものであるのに対し、引用発明は、そのようなものであるのか不明である点。 (相違点2) 可撓性部材と支持部材との接続に関して、本願補正発明は、可撓性部材が、支持部材を受け入れる細長い通路を含み、前記支持部材が長く、前記細長い通路に受け入れられて前記可撓性部材に組み込まれたときに、前記可撓性部材の長さ方向に沿って延在するのに対し、引用発明は、そのような構成であるのか不明である点。 3-3.相違点の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) 踵が交換可能な靴において、靴底の部材として、互いに高さが異なる複数種類の踵に応じて複数の構造を取り得るものは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-215914号公報や、実願昭46-2666号(実開昭47-3938号)のマイクロフィルム、実願平1-138726号(実開平3-78406号)のマイクロフィルム等で示されるように、本願の優先日前の周知技術であるから、引用発明において、該周知技術を適用し、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点2について) 踵が交換可能な靴において、踵と靴の基部との接続構造として、一方に靴底の長さ方向に沿った細長い通路を設け、他方に該細長い通路に受け入れられる、靴底の長さ方向に長い部材を設けるものは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭61-28424号(実開昭63-13008号)のマイクロフィルム及び実願昭61-149954号(実開昭63-54307号)のマイクロフィルムや、実願昭46-2666号(実開昭47-3938号)のマイクロフィルム、実願平1-138726号(実開平3-78406号)のマイクロフィルム、実願昭59-109902号(実開昭61-23807号)のマイクロフィルム、実願昭50-69909号(実開昭51-149748号)のマイクロフィルム等で示されるように、本願の優先日前の周知技術にすぎない。 よって、引用発明において、該周知技術を適用して、切り込み5(通路)を靴底2(可撓性部材)の長さ方向に沿った細長い通路とし、突出部3(支持部材)を該細長い通路に受け入れられる、主要靴底2(可撓性部材)の長さ方向に長いものとして、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.むすび したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、拒絶査定時の明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「靴の基部に組み込まれ、踵に応じて複数の構造を取り得る可撓性部材(10,40)と、 踵(11,49)とを備え、 前記踵が、前記可撓性部材(10,40)に構造的に組み込まれ、前記可撓性部材(10,40)により足を支える構造を形づくると共に、踵(11,49)を可撓性部材(10,40)に接続するための支持部材(20,62)を備え、 前記支持部材(20,62)が長く、前記可撓性部材(10,40)に組み込まれたときに前記可撓性部材の長さ方向に沿って延在することを特徴とする組み立て部材。」 第4.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記3-1に記載したとおりである。 第5.対比・判断 本願発明は、本願補正発明から、「踵」の限定事項である「互いに高さが異なる複数種類の」との構成と、「可撓性部材」及び「支持部材」の限定事項である「前記可撓性部材が、前記支持部材を受け入れる細長い通路(18,47)を含み」及び「前記細長い通路に受け入れられて」との構成とを省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記3-3に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-04-24 |
結審通知日 | 2008-05-08 |
審決日 | 2008-05-21 |
出願番号 | 特願2001-575852(P2001-575852) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A43B)
P 1 8・ 575- Z (A43B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 沖田 孝裕 |
特許庁審判長 |
山崎 豊 |
特許庁審判官 |
八木 誠 蓮井 雅之 |
発明の名称 | 靴の組み立て部材およびこれを用いた靴並びにその製造方法 |
代理人 | 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ |