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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010800038 審決 特許
無効2009800125 審決 特許
無効2008800283 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
審判 全部無効 2項進歩性  C08L
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
管理番号 1187139
審判番号 無効2007-800232  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-10-23 
確定日 2008-10-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第3863778号発明「アルミノシリケート安定化ハロゲン化ポリマー」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3863778号の請求項1?34に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続きの経緯
本件特許第3863778号の請求項1?34に係る発明についての出願は、2000年7月31日(優先権主張 1999年7月29日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成18年10月6日にその発明についての特許の設定登録がされたものであるところ、審判請求人 水澤化学工業株式会社は、平成19年10月23日に、本件特許第3863778号の請求項1?34に係る発明の特許に対して、特許無効の審判を請求し、当審において、同年11月5日付けで被請求人 ピーキュー ホールディング,インコーポレーテッドに対して、期間を指定して答弁指令を送達(送達日 同年11月9日)したが、被請求人は何らの応答もしなかったものである。

II.本件発明
本件特許第3863778号の請求項1?34に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明34」、また、全体として「本件発明」という。)は、それぞれ、その明細書の特許請求の範囲請求項1?34に記載の次のとおりのものである。
「【請求項1】
安定化されたハロゲン化ポリマー組成物であって、該組成物は、ハロゲン化ポリマー樹脂および安定剤を含み、該安定剤は、式M_(2/n)O.Al_(2)O_(3).ySiO_(2).wH_(2)Oの合成結晶性アルミノシリケートを含み、ここで、Mは、電荷均衡カチオンであり、nは、Mの原子価でありかつ1または2であり、yは、SiO_(2)のモル数でありかつ1.8?15であり、そしてwは、1分子の該アルミノシリケートあたりの水和水のモル数であり、ここで、該アルミノシリケートは、0. 01μm?1μmの範囲の平均微結晶サイズを有し、ここで、該アルミノシリケートは、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、およびそれらの混合物からなる群より選択されるゼオライトである、組成物。
【請求項2】
Mが、ナトリウム、カリウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、テトラアルキルアンモニウム、テトラアリールアンモニウム、リチウム、NH_(4)、Ag、Cd、Ba、Cu、Co、Sr、Ni、Fe、およびそれらの混合物からなる群より選択される、電荷均衡カチオンである、請求項1に記載の安定化されたハロゲン化ポリマー組成物。
【請求項3】
Mが、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選択される電荷均衡カチオンであり、ただし、Mが、ナトリウムおよびカリウムまたはカルシウムを含むアルカリ金属およびアルカリ土類金属の混合物である場合、該カリウムおよびカルシウムの含量は、総アルカリ金属およびアルカリ土類金属含量の35%未満である、請求項1に記載の安定化されたハロゲン化ポリマー組成物。
【請求項4】
yが、2?5の範囲であり、前記アルミノシリケートが、0.01μm?1μmの範囲の平均微結晶サイズおよび0.1μm?10μmの範囲の平均粒径を有する、請求項1に記載の安定化されたハロゲン化ポリマー組成物。
【請求項5】
前記アルミノシリケートが、0.1μm?3μmの範囲の平均粒径を有する、請求項4に記載の安定化されたハロゲン化ポリマー組成物。
【請求項6】
前記組成物が、CPVC処方物または硬質PVC処方物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ハロゲン化ポリマー樹脂が、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、ポリクロロプレン(Neoprene)、 アクリロニトリル-塩化ビニルコポリマー(Dynel)、ポリ塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-塩化ビニルコポリマー、およびポリフルオロ-クロロエチレンポリマーからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ハロゲン化ポリマー樹脂が、ハロゲン化ビニルポリマー樹脂を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ハロゲン化ビニルポリマー樹脂が、ポリ塩化ビニルまたは塩素化ポリ塩化ビニルから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマー樹脂が、ポリ塩化ビニルである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリ塩化ビニルが、任意の従来の重合方法によって作製されて、20,000?100,000の範囲の数平均分子量および41?98の範囲のフィッケンチャーK値を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記アルミノシリケートが、ゼオライトAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ゼオライトが、前記アルミノシリケートの0.1重量%と20重量%との間の水含量に脱水されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記ゼオライトが、前記アルミノシリケートの0.1重量%と8重量%との間の水含量に脱水された、スチームか焼脱水ゼオライトを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ゼオライトが、前記アルミノシリケートの10重量%よりも大きい水含量に再水和しない、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ゼオライトが、2.8?8オングストロームの範囲の平均孔直径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記ゼオライトが、3?300m^(2)/gの範囲の外表面積を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記安定剤が、前記アルミノシリケートおよび1以上の共安定剤との組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の組成物であって、前記共安定剤が、マグネシウム、アンチモン、カドミウム、バリウム、スズ、カルシウム、亜鉛および 鉛からなる群より選択される従来の有機金属錯体安定剤、種々の脂肪酸の多価エステル、β-ジケトン、有機ホスファイト、ヒンダードアミン、有機メルカプタン、エポキシド化油、エポキシ化合物およびフェノールからなる群より選択される従来の有機錯体安定剤、硫酸鉛(二塩基)、硫酸鉛(三塩基)および硫酸鉛 (四塩基);亜リン酸鉛(二塩基);白鉛、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される従来の無機錯体安定剤である、組成物。
【請求項20】
ハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法であって、該樹脂を、式M_(2/n)O.Al_(2)O_(3).ySiO_(2).wH_(2)Oの合成結晶性アルミノシリケートを含む安定剤と混合する工程を包含し、ここで、Mは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リチウム、亜鉛、カルシウム、 テトラアルキルアンモニウム、テトラアリールアンモニウムおよびそれらの混合物から選択される電荷均衡カチオンであり、nは、Mの原子価でありかつ1または2であり、yは、SiO_(2)のモル数でありかつ1.85?10であり、そしてwは、1分子の該アルミノシリケートあたりの水和水の モル数であり、ただし、Mが、ナトリウムおよびカリウムまたはカルシウムを含むアルカリ金属およびアルカリ土類金属の混合物である場合、該カリウムおよびカルシウムの含量は、総アルカリ金属およびアルカリ土類金属含量の35%よりも多くなく、ここで、該アルミノシリケートは、0.01μm?1μmの範囲の 平均微結晶サイズを有し、ここで、該アルミノシリケートは、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、およびそれらの混合物からなる群より選択されるゼオライトである、方法。
【請求項21】
前記アルミノシリケートが、0.1μm?10μmの範囲の平均粒径を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
yが、2?5の範囲である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ハロゲン化ポリマー樹脂が、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、ポリクロロプレン(Neoprene)、アクリロニトリル-塩化ビニルコポリマー(Dynel)、ポリ塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-塩化ビニルコポリ マー、ポリフルオロ-クロロエチレンポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記ハロゲン化ポリマー樹脂が、ハロゲン化ビニルポリマー樹脂である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記ハロゲン化ビニルポリマー樹脂が、ポリ塩化ビニルまたは塩素化ポリ塩化ビニルから選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマー樹脂が、ポリ塩化ビニルである、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリ塩化ビニルが、任意の従来の重合方法によって作製されて、20,000?100,000の範囲の数平均分子量および41?98の範囲のフィッケンチャーK値を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記アルミノシリケートが、ゼオライトAである、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記ゼオライトが、前記アルミノシリケートの0.1重量%?20重量%の範囲内の水含量に脱水されている、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記ゼオライトが、2.8?8オングストロームの範囲の平均孔直径を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
前記ゼオライトが、3?300m^(2)/gの範囲の外表面積を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
前記安定剤が、前記アルミノシリケートおよび少なくとも1つの共安定剤との組み合わせである、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記共安定剤が、カドミウム、マグネシウム、アンチモン、バリウム、スズ、カルシウム、亜鉛、鉛およ びそれらの混合物からなる群より選択される従来の有機金属錯体、種々の脂肪酸の多価エステル、β-ジケトン、有機ホスファイト、ヒンダードアミン、有機メルカプタン、およびフェノールからなる群より選択される従来の有機錯体、硫酸鉛(二塩基)、硫酸鉛(三塩基)および硫酸鉛(四塩基);亜リン酸鉛(二塩 基)、および白鉛、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される従来の無機錯体である、方法。
【請求項34】
前記混合する工程が、前記樹脂の重合前、重合の間または重合後に行う、請求項20に記載の方法。」

III.当事者の主張及び証拠方法
III-1.請求人の主張及び証拠方法
1.請求人の主張の概要
請求人は、「特許第3863778号の請求項1?34に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」旨の審決を求め、本件発明1?34の特許を無効とすべき理由として以下の無効理由1、2を主張し、その証拠方法として下記の甲第1?6号証及び参考資料1を提出している。
そして、無効とすべき理由の概略は以下のとおりである。
無効理由1: 本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が不明確であり、また、本件特許に係る出願は、発明の詳細な説明の記載が、当業者がその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に、記載されていないから、本件特許は、特許法第36条第4項または特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるので、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
無効理由2: 本件発明1?34は、甲第1号証?甲第6号証のいずれかに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるので、または、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件発明1?34の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2.証拠方法
甲第1号証:特公昭58-18939号公報
甲第2号証:特開昭56-61449号公報
甲第3号証:特開昭55-92752号公報
甲第4号証:特開昭55-164236号公報
甲第5号証:特開昭57-28145号公報
甲第6号証:特開昭57-25346号公報
参考資料1:再公表特許WO02/004350号

III-2.被請求人の主張
被請求人は、指定した期間内に答弁書を提出しておらず、特段の主張はない。

IV.無効理由1についての検討
審判請求書8頁?10頁の記載からみて、請求人の主張する無効理由は、以下の3点に集約されると認められるので、それぞれについて検討する。
1.合成結晶性アルミノシリケートの平均微結晶サイズについて
(1)請求人の主張
請求人は、「本件の請求項1?請求項20に係るハロゲン化ポリマー組成物は、合成結晶性アルミノシリケートを含むものであり、また、請求項20?請求項34に係るハロゲン化ポリマーの安定化方法は、ハロゲン化ポリマーに合成結晶性アルミノシリケートを混合するものであるが、この合成結晶性アルミノシリケートは、請求項1及び請求項20に記載されているように、
0.01μm?1μmの範囲の平均微結晶サイズを有していること、
及び、
ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、及びそれらの混合物から選択されたゼオライトであること、
と限定されている。
しかるに、本件の発明の詳細な説明の欄には、平均微結晶サイズの定義が記載されていないし、その実施例には、どのようにして平均微結晶サイズを求めたかについて一言半句の記載もない。・・・このような結晶のサイズは、結晶学的形状はX線回折により測定し、走査型電子顕微鏡により観察される結晶のサイズは、当該電子顕微鏡観察により直接測定されるが、本件の発明の詳細な説明の欄には、このような結晶サイズをどのようにして求めるのかが全く記載されていない。・・・本件の発明の詳細な説明の欄には、平均微結晶サイズの測定方法が全く記載されていないため、当業者であっても平均微結晶サイズを求めることができない。
このように、本件の特許請求の範囲は、その記載が不明確であるし、また、発明の詳細な説明には、当業者が発明を実施し得る程度に明確かつ十分に、記載されていない。」旨主張する。
(2)当審の判断
本件特許明細書段落【0009】には、「・・・従来のゼオライトは、粒子へと塊状化する、小さな立方晶系または角柱系微結晶および/または他の幾何学的形状(例えば、斜方晶系、十二面体、球顆状、八面体など)ならびにそれらの組み合わせおよび連晶からなる。塊状化および/または連晶の程度は、光散乱または他の分光学的技術によって代表的に決定される粒径分布を決定するのに対して、微結晶サイズは事実上、粒径には依存せず、そして代表的に走査電子顕微鏡法画像によって決定される。この識別の一例として、現在市場で売られるゼオライト4Aおよびファージャサイト型ゼオライトは代表的に、約1.0ミクロン?5.0ミクロンの微結晶サイズを有し、この平均粒径は約3.0ミクロン?10.0ミクロン以上である。・・・」と記載されている。
さらに、請求項1、20においては、0.01μm?1μmの範囲の平均微結晶サイズを有するアルミノシリケートにおいては、微結晶サイズの大きさは規定しているものの、結晶学的な形状やそれによってもたらされる特異な効果についてまで必要とする記載はされていないのであるから、結晶学的な形状の測定であるX線回折による測定がなされていないことをもって平均微結晶サイズは不明であるとまではいえず、請求項1、20において採用されている「該アルミノシリケートは、0.01μm?1μmの範囲の平均微結晶サイズを有し、」における平均微結晶サイズは、明細書段落【0009】に記載されていると同様の、「走査電子顕微鏡法画像」によって決定される平均微結晶サイズを規定しているものと解することができ、そして、該測定法により決定された平均微結晶サイズを有するゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトYが示されているものと理解できる。
そうであれば、請求項1、20における「該アルミノシリケートは、0.01μm?1μmの範囲の平均微結晶サイズを有し、ここで該アルミノシリケートは、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、およびそれらの混合物からなる群より選択されたゼオライトである」との記載は、格別不明確であるとはいえないし、発明の詳細な説明中の記載が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない、ともいえない。

2.合成結晶性アルミノシリケートに含まれるカリウム及びカルシウム含量について
(1)請求人の主張
請求人は、「本件請求項3及び請求項20には、合成結晶性アルミノシリケートに含まれる電荷均衡カチオンMについて、このMがカリウム或いはカルシウムを含む混合物である場合について、
該カリウム及びカルシウムの含量は、総アルカリ金属及びアルカリ土類金属含量の35%未満であること、
が規定されている。
しかるに、アルミノシリケートのように、その組成式が酸化物としての組成で表されるような複合化合物において、アルカリ金属やアルカリ土類金属の含量は、酸化物換算(例えば、K_(2)O、CaOなど)で示されるのが一般的であり、事実、本件特許明細書においても、その実施例では、アルカリ金属やアルカリ土類金属の含量は、Na_(2)Oのように、酸化物換算で示されている(例えば段落[0030]、[0032]等参照)。
してみれば、本件請求項3及び請求項20において、上記のカリウム及びカルシウム含量、或いは総アルカリ金属及びアルカリ土類金属含量は、何れも酸化物換算での値を意味するものと思われるが、これらの請求項では、そのように記載されていない。」と主張する。
(2)当審の判断
本件明細書中に記載されている実施例によれば、段落【0030】、【0032】、【0038】、【0042】、【0047】、【0086】、【0087】、【0089】、【0090】において、アルミノシリケートにおけるNa_(2)OとSiO_(2)の比が酸化物換算で記載されている。
そして、請求人が審判請求書において述べているように、「組成式が酸化物としての組成で表されるような複合化合物において、アルカリ金属やアルカリ土類金属の含量は、酸化物換算(例えば、K_(2)O、CaOなど)で示されるのが一般的である」から、一般的な技術常識を参酌すると、請求項3、20における「該カリウム及びカルシウムの含量は、総アルカリ金属及びアルカリ土類金属含量の」という量比の規定においても、実質的には酸化物換算値で規定されていると解するのが相当である。
したがって、請求項3、20の記載が格別不明確であるとまではいえない。

3.合成結晶性アルミノシリケートの平均粒径について
(1)請求人の主張
請求人は、「合成結晶性アルミノシリケートについて、請求項4及び請求項21では、
その平均粒径が0.1μm?10μmである、
と記載され、請求項5では、
その平均粒径が0.1μm?3μmである、
と記載されている。
上記の平均粒径は、その範囲から考えて前述した結晶サイズとは異なり、粒子の平均径を意味するものと思われるが、一般に、粒子径には、粒子が単独で存在している一次粒子の径(一次粒子径)と粒子が凝集した状態で存在している2次粒子の径(2次粒子径)とがあるが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記の平均粒子径が、一次粒子径及び2次粒子径の何れを示すのか全く記載されていないばかりか、その測定方法も示されていない。例えば、粉末などの粒状物の平均粒径の測定方法には、代表的には、電子顕微鏡観察により、個々の粒子の径を求め、その算術平均で示す方法や、水等に分散させた液を用いたレーザ回折散乱法により、例えば体積換算での平均値(D_(50))などが知られているが、発明の詳細な説明の欄には、その実施例をみても、単に平均粒径の数値しか示されておらず、どのようにして測定された値であるのか、全く記載されていない。」と主張する。
(2)当審の判断
本件特許明細書において、請求項4、5及び21に記載されている「平均粒径」については、発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)として平均粒径を特定の範囲に限定している。
しかしながら、平均粒径には、長さ平均径、面積長さ平均径、体面積平均径、重量平均径、面積平均径、体積平均径と様々な種類があり、同一分布の粉体の系であってもその数値は異なるものとなり、また、その平均粒径の計算の基礎となる、粒度の測定法にも、顕微鏡法、コールカウンター法、ふるい分け法、沈降法、沈降分級法、遠心沈降法、慣性力法、電磁波散乱法、その他、多数のものがあることが当業者に広く知られており(例えば、「化学大辞典 縮刷版」共立出版(株) 1997年9月20日 縮刷版第36刷発行、「平均粒径」及び「粒度」の項参照)、さらに、発明の詳細な説明の記載をみても、1次粒子についてのものか2次粒子についてのものであるのかも不明であるから、単に「平均粒径」と記載しただけでは、どのような粒度測定法によるもので、どのような平均粒径を意味するものであるのか不明であり、一義的に決まるものではない。
そして、本件請求項4の記載によれば、「アルミノシリケートが、0.01μm?1μmの範囲の平均微結晶サイズおよび0.1μm?10μmの範囲の平均粒径を有する、」と記載しており、アルミノシリケートが「0.01μm?1μmの範囲の平均微結晶サイズ」を有すると同時に「0.1μm?10μmの範囲の平均粒径を有する」ことを規定している。
そうすると、「平均微結晶サイズ」と「平均粒径」とは相異なる対象物(形態)の大きさを規定しているものというべきであるから、それぞれは異なる手法に基づいて測定されるものというべきである(そうでないと微結晶と粒子との違いを区別する意味がないし、また、区別がつかない。)。
そうであれば、前記1.(2)に記載のとおり、特許明細書段落【0009】の記載から、「平均微結晶サイズ」は、「走査電子顕微鏡法画像」により測定できることが理解できるとしても、平均粒径については、その定義や測定方法については、特許明細書には何ら記載されていないし、平均粒径がいかなるものを意味するのかを示唆する記載もないのであるから、平均粒径をどのようなものとして把握すればよいのか不明確というべきである。
結局、本件発明4、5、21においては、「0.1μm?10μmの範囲の平均粒径を有する」こと、「0.1μm?3μmの範囲の平均粒径を有する」ことが、それぞれ発明特定事項である以上、その発明特定事項の技術的内容について当業者が明確に理解できることが必要であるにもかかわらず、請求項4、5、21には、平均粒径の技術内容を明確に理解できる程度に記載がされているとはいえない。
したがって、請求項4、5、21には、特許を受けようとする発明が明確に記載されていない。
また、本件発明4、5、21について、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載されているとはいえない。

4.無効理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許4,5、21は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
また、本件特許4、5、21は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

V.無効理由2について
本件発明1?34が、甲第1号証?甲第6号証のいずれかに記載された発明であるか、または、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるか否かについて検討する。

1.甲各号証に記載された事項
(1)本件出願の前に頒布されたことが明らかな甲第1号証(特公昭58-18939号公報)には、以下の事項が記載されている。
(1-1)「塩素含有重合体に対して、イオン交換容量が2.1ミリイクイバレント(m・eq)/g以上のA型ゼオライト結晶のアルミノケイ酸塩を熱安定剤として、塩素重合体100重量部当たり0.01乃至10重量部の量で配合することを特徴とする塩素含有重合体の熱安定化方法。」(特許請求の範囲第1項)

(1-2)「このアルミノケイ酸アルカリは、理想的には式
Na_(12)(Al_(12)Si_(12)O_(48))・15?30H_(2)O
で示される組成を有し、式中左のナトリウム分がイオン変換可能な成分である。」(5頁9欄9行?14行)

(1-3)「本発明に使用する結晶性アルミノケイ酸アルカリは、塩素含有重合体への分散性及び熱安定性の見地から、20ミクロン(μ)以下、特に15μ以下の一次粒径を有し、且つ2次粒径が50μ以下、特に40μ以下であることが望ましい。本明細書において、一次粒径とは、電子顕微鏡写真における粒子の最小の辺の長さであり、20μ以下とは全ての粒子の一次粒径が20μ以下であることを意味する。二次粒径とは、沈降法、より詳細には、日立製光走査迅速粒度分布測定機(PSA-2型)を用いて測定した粒子直径の最大なものを意味する。」(5頁第10欄4行?15行)

(1-4)「本発明の目的に最も好適なアルミノケイ酸アルカリは、後述する参考例、特に試料番号3-6、3-18および3-19に示す方法で合成される一次粒径が1μよりも小で且つ二次粒径が4μ以下であるアルミノケイ酸アルカリである。」(5頁10欄16行?21行)

(1-5)「本発明に用いる結晶性アルミノケイ酸塩は、A型ゼオライト或いはその他の合成ゼオライト或いはモレキュラーシーブスの名称で広く市販されており、従って、これらの市販のものの内前述した条件を満足するものを一般に使用することができる。勿論、これらの市販の結晶性アルミノケイ酸塩の粉末を微細化する目的で、乾式或いは湿式のそれ自体公知の手段で微粉砕し、或いは遊離のアルカリの存在による初期着色を防止する目的で、市販の結晶性アルミノケイ酸塩を、稀薄な酸、例えば0.05乃至1規定の稀塩酸で洗浄し或いはさらに水洗することもできる。」(6頁11欄6行?17行)

(1-6)「塩素含有重合体としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、……、塩化ビニル-スチレン-アクリロニトリル共重合体、……、塩化ビニリデン樹脂、……、塩素化ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、……を挙げることができる。」(7頁第13欄33行?第14欄31行)

(1-7)「結晶性アルミノケイ酸塩安定剤は、それ自体塩素含有重合体の配合剤として周知の無機及び/又は有機の安定剤、非金属安定剤、……のそれ自体の周知の配合量と共に塩素含有重合体に配合することができる。……
周期律表第II族或いは第IV族の金属成分を含有する有機安定剤としては、前記金属の有機酸塩や錯塩の任意のものをあげることができる。有機安定剤の最も適当な例は、高級脂肪酸・・・等のカルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ストロンチユウム塩、カドミウム塩、亜鉛塩、……鉛塩等が好適である。」(7頁第14欄32行?8頁15欄38行)

(1-8)「上記以外の無機安定剤としては、……、例えば1乃至4塩基性の硫酸鉛、2塩基性亜リン酸鉛、塩基性クロム酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、等を挙げることができる。」(9頁第17欄35行?第18欄6行)

(1-9)「2.多価アルコールと有機酸とのエステル:
炭素数8乃至22の飽和或いは不飽和脂肪酸例えばラウリン酸、パルミチン酸、……等の有機酸と上述の多価アルコール等のエステル。」(10頁第20欄28行?第11頁第22欄21行)

(1-10)「(V)一次粒子径(Dp)
本明細書において、一次粒径とは電子顕微鏡写真におけるアルミノケイ酸塩の立方体粒子の最小寸法、即ち、試料アルミノケイ酸塩粒子がよく分散された状態で、電子顕微鏡を用いて直接観察測定したときの立方体粒子1個の一辺の長さをいうか、もしくは、その粒子が非結晶もしくは立方体でない場合は、平均的粒子の径の長さをいう。」(13頁26欄40行?14頁27欄4行)

(1-11)「実施例1
本実施例においてゼオライトの結晶粉末をポリ塩化ビニル樹脂に配合して成る組成物について説明する。
こゝに用いたゼオライトの結晶粉末としては、参考例3に記載の方法で合成した試料番号3-6のゼオライト粉末を選んだ。
このゼオライト結晶粉末を配合して成る組成物としては、ポリ塩化ビニル樹脂(ゼオン103 EP)100重量部及び滑剤としてのステアリン酸0.3重量部を基礎配合とし、さらに第2表に表示した熱安定剤等の配合剤を第2表に示した配合割合(重量部、以下本明細書において“部”は重量部を示す。)を加え、混練ロールにて160℃で5分間混練し、次いで焼く0.5mm厚のシートとした。」(24頁47欄1行?16行)

(2)本出願の前に頒布されたことが明らかな甲第2号証(特開昭56-61449号公報)には、以下の事項が記載されている。
(2-1)「1.ポリ塩化ビニル100重量部に対して、
(a)13?25重量%の結合水を含有し、無水型の組成が0.7?1.1Na_(2)O・A1_(2)O_(3)・1.3?2.4SiO_(2)である、微粒子状の結晶性合成ナトリウムアルモシリケート0.2?5重量部、
(b)8?22個の炭素原子を有する脂肪酸のカルシウム塩0.05?1.5重量部、
(c)8?22個の炭素原子を有する脂肪酸の亜鉛塩0.05?0.5重量部、
(d)2?6個の炭素原子及び2?6個の水酸基を有するポリオールと、8?22個の炭素原子を有する脂肪酸との部分エステル(1分子当り平均して少なくとも1個の遊離のポリオール水酸基を有するもの)0.2?2.0重量部、及び、
(e)2?6個の炭素原子及び2?6個の水酸基を有するポリオールのチオグリコール酸エステル及び/又は8?22個の炭素原子を有する一価アルコールのチオグリコール酸エステル0.1?10重量部を添加することを特徴とする成形用ポリ塩化ビニル材料の安定化方法。
2.成分(a)の粒径が0.1?20μである第1項記載の方法。
3.成分(a)が水分18?25重量%含有する結合水保有ゼオライト4Aである第1項または第2項記載の方法。」(特許請求の範囲第1?3項)

(2-2)「上記の結晶性合成ナトリウムアルモシリケートは、それ自身公知の、有効な平均孔径が4ÅのNaA型のゼオライト(従ってこれはゼオライト4Aとも呼ばれる)である。」(4頁右上欄12?15行)

(2-3)「製造に際しては、沈殿によって生じた無定形の微粒子状のナトリウムアルモシリケートを50?200℃に加熱することによって結晶性状態に変えることができる。その後、この結晶性ナトリウムアルモシリケートを濾(原文の文字を表示できないため、「濾」で代用。)過により残留水溶液から分離し通常、50?200℃で乾燥して13?25重量%の水分含量となる様にする。
例えば西ドイツ特許第2412837号公開明細書に記述され、本発明によっても規定される結晶性生成物は特に0.1?50μの範囲の粒径を有するものであるが、本発明方法の実施には0.1?20μの粒径のナトリウムアルモシリケートを用いるのが好ましい。」(4頁左下欄6行?18行)

(2-4)「本発明方法に於て用いられる安定剤組成物には、上記の成分に加えて、安定化される成形用ポリ塩化ビニル材料の使用目的に応じて、更に周知の共安定剤(……)及び安定助剤を添加することが出来る。」(6頁左下欄17行?右下欄1行)

(2-5)「ナトリウムアルモシリケートAの製造条件 ……
組成:0.9Na_(2)O・1Al_(2)O_(3)・2.04SiO_(2)・4.3H_(2)O(=H_(2)O 21.6%)
結晶化度:完全に結晶化している。」(8頁右上欄3?18行)

(3)本出願の前に頒布されたことが明らかな甲第3号証(特開昭55-92752号公報)には、以下の事項が記載されている。
(3-1)「(1)ハロゲン含有樹脂にA型ゼオライトを配合してなるハロゲン含有樹脂組成物。
(2)ハロゲン含有樹脂は塩素含有樹脂である特許請求の範囲第1項記載のハロゲン含有樹脂組成物。
(3)塩素含有樹脂組成物は軟質の樹脂組成物である特許請求の範囲第2項記載のハロゲン含有樹脂組成物。」(特許請求の範囲第1?3項)

(3-2)「また他の無毒性の安定剤としてゼオライトを使用することが知られる。例えば、塩化ビニル樹脂の熱安定性を向上させるものとして、300℃以上の温度で脱水活性化したA型ゼオライトを用いる場合(米国特許3,245,946号明細書参照)……(中略)……がある。」(2頁左上欄10行?18行)

(3-3)「本発明において使用するA型ゼオライトとしては、一般式(1.0±0.2)M_(2)O・Al_(2)O_(3)・(1.9±0.5)SiO_(2)・(0.5?6)H_(2)O〔式中、Mは、1価のカチオンまたはそれと等量の多価カチオンであり、Na,K,NH_(4),Ca,Mg,Srを示す〕で表される含水アルミノ珪酸塩でX線的に他のゼオライトや珪酸塩から区別することができる特別の結晶構造を有するものである、特に代表的には、Na_(2)O・Al_(2)O_(3)・2SiO_(2)(1?5)H_(2)O近くの組成を有するものが望ましい。
従って本発明で使用するA型ゼオライトは必ず結晶構造に水分を有しており、またその粒子は一次粒子ができるだけ細かいものがよく、多くの場合10μ以下であることが望まれる。」(2頁右上欄18行?左下欄10行)

(3-4)「その他必要に応じて他の公知の安定剤を併用しても差しつかえなく、」(3頁左上欄3?4行)

(3-5)「実施例3 下記配合物を160℃のロールで5分間混練後シート状となし170℃で所定時間加熱してシートの変色の程度から熱安定性を調べた、結果を第3表に示す。」(4頁右下欄1?5行)

(3-6)そして、ゼオライト4A(Na型)Na_(2)O・Al_(2)O_(3)・2Si0_(2)・nH_(2)Oについて、4頁右下欄第3表には、ゼオライトの種類(含水量)の欄に、
実験No1において、nが4.5、含水量22.2重量%であること、実験No2において、nが3.3、含水量14.2重量%であること、実験No3において、nが1.1、含水量5.6重量%であることが記載されている。

(4)本出願の前に頒布されたことが明らかな甲第4号証(特開昭55-164236号公報)には、以下の事項が記載されている。
(4-1)「1) ハロゲン含有樹脂に安定剤として少なくとも亜鉛置換型のA型ゼオライトを配合してなる熱安定性良好なハロゲン含有樹脂組成物。
2) 安定剤として亜鉛置換型のA型ゼオライトおよびアルカリ土類金属置換型のA型ゼオライトを配合してなることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の熱安定性良好なハロゲン含有樹脂組成物。
3) 安定剤として亜鉛およびアルカリ土類金属を同時に置換したA型ゼオライトを配合してなることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の熱安定性良好なハロゲン含有樹脂組成物。
4) 安定剤の肋剤としてエポキシ化合物を配合することを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第3項のいずれかの項記載の熱安定性良好なハロゲン含有樹脂組成物。
5) アルカリ土類金属置換型のA型ゼオライトがカルシウムまたはマグネシウム置換型のA型ゼオライトであることを特徴とする特許請求の範囲第2項又は第3項記載の熱安定性良好なハロゲン含有樹脂組成物。
6) ハロゲン含有樹脂が塩化ビニル系樹脂であることを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第5項のいずれかの頃記載の熱安定性良好なハロゲン含有樹脂組成物。」(特許請求の範囲)

(4-2)「すなわち、本発明は、ハロゲン含有樹脂に安定剤として少なくとも亜鉛置換型のA型ゼオライト(以下A型亜鉛ゼオライトという)を配合してなる熱安定性良好なハロゲン含有樹脂組成物にかかる。本発明において使用するA型亜鉛ゼオライトとは、一般式(1±0.2)M_(2)O・Al_(2)O_(3)・(1.9±0.5)SiO_(2)・(0.5?6)H_(2)O
〔式中MはNa,K,NH_(4),Ca,Mg等の1価カチオンまたはそれと等量の多価カチオンを示す〕で表わされるA型ゼオライトのうち、置換可能なカチオンMの全部又は一部が亜鉛で置換して占められているものである。」(2頁左下欄13行?右下欄3行)

(4-3)「この場合の原料であるA型ナトリウムゼオライトの粒子は一次粒子ができるだけ細かいものがよく、多くの場合10μ以下のものであることが望まれる。」(2頁右下欄16行?19行)

(4-4)「これ等各種のA型ゼオライトは含水率18?25%のものでも、800℃以下の温度で焼成された殆んど含水率のないものでもその熱安定効果は変わらない。」(3頁左下欄2行?5行)

(5)本出願の前に頒布されたことが明らかな甲第5号証(特開昭57-28145号公報)には、以下の事項が記載されている。
(5-1)「(1)イオン交換により周期律表第II族、第IV族金属元素から選ばれた少なくとも1種の金属イオンで置換されたアルミノ珪酸塩の脱水物にハロゲン含有樹脂組成物を構成できる少なくとも1種の有機添加剤を配合処理してなることを特徴とするハロゲン含有樹脂用の安定剤。
(2)周期律表第I族、第IV族金属元素はマグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、カドミウム、錫又は鉛から選ばれたものであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のハロゲン含有樹脂用の安定剤。
(3)脱水物は少なくとも樹脂組成物の成形加工時の温度近くで実質的に水分蒸発が生じない程度の含水率であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のハロゲン含有樹脂用の安定剤。
(4)アルミノ珪酸塩はA型ゼオライトであることを特徴とする特許請求の範囲第1?3項のいずれかに記載のハロゲン含有樹脂用の安定剤。
(5)ハロゲン含有樹脂組成物を構成できる少なくとも1種の有機添加剤は、可塑剤、安定剤、キレーター、酸化防止剤、滑剤又は熱可塑性樹脂から選ばれたものであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のハロゲン含有樹脂用の安定剤。
(6)脱水物と有機添加剤との配合比は脱水物100重量部当り少なくとも10重量部の割合であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のハロゲン含有樹脂用の安定剤。
(7)脱水物と有機添加剤の配合処理されたものが造粒物であることを特徴とする特許請求の範囲第1項又は第6項記載のハロゲン含有樹脂用の安定剤。」(特許請求の範囲)

(5-2)「本発明において、該脱水物は少なくともハロゲン含有樹脂組成物の成形加工温度近辺において実質的に水分蒸発が生じない程度にまで含水率を低下させたものでなければならない。このような含水率は約8%以下、好ましくは5%以下に脱水されたものであり、多くの場合150?800℃、好ましくは200?700℃で1時間以上加熱することによって前記含水率の金属置換型ゼオライト脱水物を得ることができる。加熱温度が150℃以下では脱水不充分であり、一方、800℃以上ではゼオライト構造が壊れて安定剤としての性能が損われる。」(4頁左上欄13行?右上欄4行)

(6)本出願の前に頒布されたことが明らかな甲第6号証(特開昭57-25346号公報)には、以下の事項が記載されている。
(6-1)「(1)イオン交換により周期律表第II族又は/及び第IV族元素の金属イオンで置換され、かつ残留ナトリウムイオンがNa_(2)Oとして10重郎%以下の金属置換型結晶性アルミノ珪酸塩を有効成分とするハロゲン含有樹脂用の安定剤。
(2)周期律表第II族金属元素がマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、又はバリウム、亜鉛、カドミウムから選ばれた少なくとも1種の金属素であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のハロゲン含有樹脂用安定剤。
(3)周期律表第IV族金属元素が錫又は鉛から選ばれた金属元素であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のハロゲン含有樹脂用安定剤。
(4)金属置換型アルミノ珪酸塩は少なくとも樹脂の成形加工温度近辺で実質的に蒸発しない程度の含水率に脱水されたものであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のハロゲン含有樹脂安定剤。
(5)結晶性アルミノ珪酸塩がA型ゼオライトであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のハロゲン含有樹脂用安定剤。
(6)金属置換型アルミノ珪酸塩は鉛系安定剤と併用されたものであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のハロゲン含有樹脂用安定剤。
(7)金属置換型アルミノ珪酸塩は有機錫系安定剤と併用されたものであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のハロゲン含有樹脂用安定剤。
(8)金属置換型アルミノ珪酸塩がカルシウム置換型A型ゼオライトであることを特徴とする特許請求の範囲第6?7項のいずれかに記載のハロゲン含有樹脂用安定剤。」(特許請求の範囲)

(6-2)「本発明で適用できる原体の結晶性アルミノ珪酸塩としては、例えばA型、X型、Y型およびP型ゼオライト、……があげられ、またこれらは合成品又は天然品のいずれであってもよく、さらに合成品についてその製法は特に限定する必要はない。」(2頁右下欄17行?第3頁左上欄4行)

(6-3)「本発明に係る安定剤において、金属置換ゼオライトは通常結晶水を含有し、その有無に安定化能は影響を受けることはないが、樹脂の成形加工の態様や他の添加剤との配合如何によって樹脂の成形加工時にその含有水分の蒸発のために樹脂が発泡する場合が起りうる。従って、このような可能性のある場合には含水率の低い脱水されたものを用いることが望ましい。
即ち、ハロゲン含有樹脂組成物の成形加工温度近辺で実質的に水分蒸発が生じない程度にまで含水率が低下したものであればよい。このような含水率は約8重量%以下、好ましくは5重量%以下に脱水されたものであり、これは多くの場合150?800℃好ましくは200?700℃で1時間以上加熱することによって前記含水率の金属置換型ゼオライト脱水物となる。」(4頁左上欄3行?18行)

2.甲第1号証に記載された発明
甲第1号証に記載[摘示記載(1-2)]されている式「Na_(12)(Al_(12)Si_(12)O_(48))・15?30H_(2)O」で示されるA型ゼオライト結晶のアルミノケイ酸塩は、1モルのAl_(2)O_(3)当たりの組成に換算すると、
式「Na_(2)O・Al_(2)O_(3)・2SiO_(2)・2.5?5H_(2)O」で示されるものとなる。
そうすると、上記(1-1)?(1-9)に記載された事項から、甲第1号証には、
「塩素含有重合体に対して、イオン交換容量が2.1ミリイクイバレント(m・eq)/g以上のA型ゼオライト結晶の一次粒径が1μmよりも小で且つ二次粒径が4μm以下であるNa_(2)O・Al_(2)O_(3)・2SiO_(2)・2.5?5H_(2)Oのアルミノケイ酸塩を熱安定剤として、塩素重合体100重量部当たり0.01乃至10重量部の量で配合する塩素含有重合体の熱安定化法」の発明(以下、「甲第1発明」という。)が記載されているといえ、また、甲第1発明の方法は、塩素含有重合体にアルミノケイ酸塩を熱安定剤として配合するものであるから、甲第1号証には、塩素含有重合体とアルミノケイ酸塩を含有する組成物、即ち、
「塩素含有重合体に対して、イオン交換容量が2.1ミリイクイバレント(m・eq)/g以上のA型ゼオライト結晶の一次粒径が1μmよりも小で且つ二次粒径が4μm以下であるNa_(2)O・Al_(2)O_(3)・2SiO_(2)・2.5?5H_(2)Oのアルミノケイ酸塩を熱安定剤として、塩素重合体100重量部当たり0.01乃至10重量部の量で配合する塩素含有重合体組成物」の発明(以下、「甲第2発明」という。)が記載されているといえる。

3.対比・判断
(3-1)本件特許発明である以下の請求項に係る発明が、甲1号証に記載された発明であるか否か検討する。
【1】本件発明1について
本件発明1と甲第2発明とを対比すると、両者は、
「安定化されたハロゲン化ポリマー組成物であって、該組成物は、ハロゲン化ポリマー樹脂および安定剤を含み、該安定剤は、Na_(2)O.Al_(2)O_(3).2SiO_(2).2.5?5H_(2)Oの合成結晶性アルミノシリケートを含み、該アルミノシリケートは、ゼオライトAである組成物」の点で一致し、次の点で一応相違している。
相違点1
合成結晶性アルミノシリケートの形状について、本件発明1では「アルミノシリケートは、0. 01μm?1μmの範囲の平均微結晶サイズを有し」としているのに対し、甲第2発明では、このような規定はしていない点
相違点1について検討する。
甲第1号証には、結晶性アルミノケイ酸塩(アルミノシリケート)について、合成されるアルミノシリケートは、一次粒径が1μmよりも小で且つ二次粒径が4μm以下であるアルミノシリケートであることが記載[摘示記載(1-4)]されている。
そして、構造上「微結晶サイズ」は「一次粒径」よりも小さい値を示すものと解されるから、そうであれば、甲第1号証に記載されている「一次粒径が1μmよりも小」であるアルミノシリケートは、1μmよりもさらに小さい微結晶サイズを有しているものといえる。
一方、これらの粒子の大きさは、通常平均値で表されるものであることを参酌[摘示記載(1-10)]すると、甲第2発明の一次粒子についても平均粒子サイズで表されていると考えるのが相当である。
そうすると、甲第2発明における合成結晶性アルミノシリケートは、1μm以下の平均微結晶サイズを有しているということができ、これは本件発明1の「0. 01μm?1μm」と重複一致するものである。
したがって、相違点1は実質的な相違点とはいえず、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明である。

【2】本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【1】で述べた相違点1に加えて、以下の相違点2においても一応相違する。
相違点2
本件発明1の組成物において、一般式で表される合成結晶性アルミノシリケートの電荷均衡カチオンMについて「Mが、ナトリウム、カリウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、テトラアルキルアンモニウム、テトラアリールアンモニウム、リチウム、NH_(4)、Ag、Cd、Ba、Cu、Co、Sr、Ni、Fe、およびそれらの混合物からなる群より選択される、電荷均衡カチオンである」ことを発明特定事項に備える点。
相違点2について検討する。
甲第1号証には、合成結晶性アルミノケイ酸塩(シリケート)としてNa_(2)O.Al_(2)O_(3).2SiO_(2).2.5?5H_(2)Oを採用することが実質的に記載されている(2.参照)から、本件発明2において、Mがナトリウムである場合は甲第2発明におけるNa_(2)O.Al_(2)O_(3).2SiO_(2)・2.5?5H_(2)Oと重複一致するものである。
したがって、相違点2は実質的な相違点とはいえず、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明である。

【3】本件発明3について
本件発明3は、本件発明1を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【1】で述べた相違点1に加えて、以下の相違点3においても一応相違する。
相違点3
本件発明1の組成物において、一般式で表される合成結晶性アルミノシリケートの電荷均衡カチオンMについて「Mが、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選択される電荷均衡カチオンであり、ただし、Mが、ナトリウムおよびカリウムまたはカルシウムを含むアルカリ金属およびアルカリ土類金属の混合物である場合、該カリウムおよびカルシウムの含量は、総アルカリ金属およびアルカリ土類金属含量の35%未満である」ことを発明特定事項に備える点。
相違点3について検討する。
本件発明3のMについての規定は、以下の3つのケースのいずれかであると解される。
a.アルカリ金属のみの場合
b.アルカリ土類金属のみの場合
c.ナトリウムおよびカリウムまたはカルシウムを含むアルカリ金属およびアルカリ土類金属の混合物であって、カリウムおよびカルシウムの含量は、総アルカリ金属およびアルカリ土類金属含量の35%未満である場合
そうすると、ケースaは「Mが、アルカリ金属より選択される電荷均衡カチオンであり」さえすれば充足されるのであるから、甲第2発明の合成結晶性アルミノケイ酸塩(シリケート)「Na_(2)O.Al_(2)O_(3).2SiO_(2).2.5?5H_(2)O」は、このケースaに該当するものといえる。
したがって、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明である。

【4】本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【1】で述べた相違点1に加えて、以下の相違点4においても一応相違する。
相違点4
本件発明1の組成物において、一般式で表される合成結晶性アルミノシリケートについて「yが、2?5の範囲であり、前記アルミノシリケートが、0.01μm?1μmの範囲の平均微結晶サイズおよび0.1μm?10μmの範囲の平均粒径を有する」ことを発明特定事項に備える点。
相違点4について検討する。
甲第2発明は、2.で述べたように、合成結晶性アルミノシリケートとしてNa_(2)O・Al_(2)O_(3)・2SiO_(2)・2.5?5H_(2)Oを採用するものであり、このアルミノシリケートは、本件発明1で規定するyが2の場合のアルミノシリケートに相当するものである。
また、前記【1】で述べたように、このアルミノシリケートは、1μm以下の平均微結晶サイズを有するものといえ、さらに、甲第1号証[摘示記載(1-4)]には、一次粒径が1μmよりも小で且つ二次粒径が4μm以下であることが記載されている。
そうすると、本件発明4における「0.1μm?10μmの範囲の平均粒径」が一次粒径を示すものか、二次粒径を示すものか定かではないが、いずれの場合においても、本件発明4の「0.1μm?10μmの範囲の平均粒径」には、少なくとも甲第1号証に記載された一次粒径或いは二次粒径が4μm以下であるアルミノシリケートが含まれるものといえる。
そうであれば、本件発明4におけるアルミノシリケートと甲第2発明におけるアルミノシリケートとは重複一致するものである。
したがって、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明である。

【5】本件発明5について
本件発明5は、本件発明4を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【4】で述べた相違点1、4に加えて、以下の相違点5においても一応相違する。
相違点5
本件発明4の組成物において、一般式で表される合成結晶性アルミノシリケートについて「前記アルミノシリケートが、0.1μm?3μmの範囲の平均粒径を有する」ことを発明特定事項に備える点。
相違点5について検討する。
甲第1号証[摘示記載(1-4)]には、アルミノシリケートについて「一次粒径が1μmよりも小で且つ二次粒径が4μm以下」であることが記載されている。
そうすると、本件発明5における「0.1μm?3μmの範囲の平均粒径」が一次粒径を示すものか、二次粒径を示すものか定かではないが、いずれの場合においても、甲第1号証記載の「一次粒径が1μmよりも小で且つ二次粒径が4μm以下」のアルミノシリケートとはその粒径において重複一致するものである。
したがって、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明である。

【6】本件発明6について
本件発明6は、本件発明5を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【5】で述べた相違点1、4、5に加えて、以下の相違点6においても一応相違する。
相違点6
本件発明5の組成物において、「CPVC処方物または硬質PVC処方物を含む」ことを発明特定事項に備える点。
相違点6について検討する。
甲第1号証には、甲第2発明の塩素含有重合体として、ポリ塩化ビニル(PVCに相当するものと認める。)や塩素化ポリ塩化ビニル(CPVCに相当するものと認める。)を採用することが記載されている[摘示記載(1-6)]。
したがって、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明である。

【7】本件発明7について
本件発明7は、本件発明1を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【1】で述べた相違点1に加えて、以下の相違点7においても一応相違する。
相違点7
本件発明1の組成物において、「ハロゲン化ポリマー樹脂が、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、ポリクロロプレン(Neoprene)、 アクリロニトリル-塩化ビニルコポリマー(Dynel)、ポリ塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-塩化ビニルコポリマー、およびポリフルオロ-クロロエチレンポリマーからなる群より選択される」ことを発明特定事項に備える点。
相違点7について検討する。
甲第1号証には、甲第2発明の塩素含有重合体として、ポリ塩化ビニルや塩素化ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム(ポリクロロプレンに相当するものと認める。)、ポリ塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(ポリ塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマーに相当するものと認める。)、塩化ビニリデン樹脂(ポリ塩化ビニリデンに相当するものと認める。)を採用することが記載されている[摘示記載(1-6)]。
したがって、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明である。

【8】本件発明8について
本件発明8は、本件発明1を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【1】で述べた相違点1に加えて、以下の相違点8においても一応相違する。
相違点8
本件発明1の組成物において、「ハロゲン化ポリマー樹脂が、ハロゲン化ビニルポリマー樹脂を含む」ことを発明特定事項に備える点。
相違点8について検討する。
甲第1号証には、甲第2発明の塩素含有重合体として、ハロゲン化ビニルポリマー樹脂である「ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル」を採用することが記載されている[摘示記載(1-6)]。
したがって、本件発明8は、甲第1号証に記載された発明である。

【9】本件発明9について
本件発明9は、本件発明8を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【8】で述べた相違点1、8に加えて、以下の相違点9においても一応相違する。
相違点9
本件発明8の組成物において、「ハロゲン化ビニルポリマー樹脂が、ポリ塩化ビニルまたは塩素化ポリ塩化ビニルから選択される」ことを発明特定事項に備える点。
相違点9について検討する。
上記【8】でも述べたように甲第1号証には、甲第2発明の塩素含有重合体として、ハロゲン化ビニルポリマー樹脂である「ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル」を採用することが記載されている[摘示記載(1-6)]。
したがって、本件発明9は、甲第1号証に記載された発明である。

【10】本件発明10について
本件発明10は、本件発明9を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【9】で述べた相違点1、8、9に加えて、以下の相違点10においても一応相違する。
相違点10
本件発明9の組成物において、「ハロゲン化ビニルポリマー樹脂が、ポリ塩化ビニルである」ことを発明特定事項に備える点。
相違点10について検討する。
上記【8】でも述べたように甲第1号証には、甲第2発明の塩素含有重合体として、ハロゲン化ビニルポリマー樹脂である「ポリ塩化ビニル」を採用することが記載されている[摘示記載(1-6)]。
したがって、本件発明10は、甲第1号証に記載された発明である

【11】本件発明12について
本件発明12は、本件発明1を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【1】で述べた相違点1に加えて、以下の相違点11においても一応相違する。
相違点11
本件発明1の組成物において、「前記アルミノシリケートが、ゼオライトAである」ことを発明特定事項に備える点。
相違点11について検討する。
甲第2発明は、アルミノケイ酸塩として、「A型ゼオライト(ゼオライトAに相当するものと認める。)」を採用するものである[摘示記載(1-1)、(1-5)]。
したがって、本件発明12は、甲第1号証に記載された発明である。

【12】本件発明17について
本件発明17は、本件発明1を引用する形式ものであるから、甲第2発明と対比すると、【1】で述べた相違点1に加えて、以下の相違点12においても一応相違する。
相違点12
本件発明1の組成物において、「前記ゼオライトが、3?300m^(2)/gの範囲の外表面積を有する」ことを発明特定事項に備える点。
相違点12について検討する。
本件発明17のゼオライトについて、発明の詳細な説明には、外表面積をどのような方法(条件)で測定したのか何ら記載がされておらず(本件特許明細書段落【0023】および実施例参照)、その測定法が不明である。
一方、甲第1発明のゼオライトについても外表面積については、何ら記載がされていない。
しかしながら、本件発明1のゼオライトと甲第2発明のゼオライトについては、前記【1】【4】で述べたとおり、平均微結晶サイズ、平均粒径については重複一致するものであるから、本件発明1のゼオライトと甲第2発明のゼオライトとは、ゼオライトの粒子形状についても重複一致する蓋然性が高い。
ところで、ゼオライトについては、外表面積が、一般にBET法により測定された比表面積で表されることを勘案[参考資料1である再公表特許WO02/004350号(2002年1月17日国際公開)9頁10行?14行参照]すると、本件発明17においてもBET法で測定された比表面積を意味しているものと解するのが相当であって、参考資料1の9頁13?14行の記載によれば、通常のNaA型ゼオライトでは、比表面積が5m^(2)/g程度であることが示されており、しかも、本件発明17のゼオライトを製造する方法は格別特殊な方法によるものであるとはいえないから、本件発明17のゼオライトの外表面積の値は通常のゼオライトが有する外表面積の値と重複するものといえる。
そうであれば、本件発明17のゼオライトについて、「3?300m^(2)/gの範囲の外表面積を有する」と規定することは、通常のゼオライトが有する外表面積を規定したものにすぎず、甲第2発明のゼオライトも当然に有している外表面積の値というべきである。
したがって、本件発明17は、甲第1号証に記載された発明である。

【13】本件発明18について
本件発明18は、本件発明1を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【1】で述べた相違点1に加えて、以下の相違点13においても一応相違する。
相違点13
本件発明1の組成物において、「前記安定剤が、前記アルミノシリケートおよび1以上の共安定剤との組み合わせである」ことを発明特定事項に備える点。
相違点13について検討する。
甲第2発明においても、樹脂組成物に配合する安定剤として、アルミノ酸塩と共に無機およびまたは有機の安定剤を配合するものである[摘示記載(1-7)、(1-8)]。
したがって、本件発明18は、甲第1号証に記載された発明である。

【14】本件発明19について
本件発明19は、本件発明18を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【13】で述べた相違点1、13に加えて、以下の相違点14においても一応相違する。
相違点14
本件発明18の組成物において、「前記共安定剤が、マグネシウム、アンチモン、カドミウム、バリウム、スズ、カルシウム、亜鉛および 鉛からなる群より選択される従来の有機金属錯体安定剤、種々の脂肪酸の多価エステル、β-ジケトン、有機ホスファイト、ヒンダードアミン、有機メルカプタン、エポキシド化油、エポキシ化合物およびフェノールからなる群より選択される従来の有機錯体安定剤、硫酸鉛(二塩基)、硫酸鉛(三塩基)および硫酸鉛 (四塩基);亜リン酸鉛(二塩基);白鉛、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される従来の無機錯体安定剤である、組成物」であることを発明特定事項に備える点。
相違点14について検討する。
甲第2発明においても、アルミノ珪酸塩と共に配合する安定剤として、マグネシウム、カドミウム、バリウム、スズ、カルシウム、亜鉛、鉛等の有機金属錯体安定剤、脂肪酸の多価エステル、1乃至4塩基性の硫酸鉛等の無機安定剤が採用されている[摘示記載(1-7)]。
したがって、請求項19に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。

【15】本件発明20について
本件発明20は、「ハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法であって、該樹脂を、式M_(2/n)O.Al_(2)O_(3).ySiO_(2).wH_(2)Oの合成結晶性アルミノシリケートを含む安定剤と混合する工程を包含し、ここで、Mは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リチウム、亜鉛、カルシウム、 テトラアルキルアンモニウム、テトラアリールアンモニウムおよびそれらの混合物から選択される電荷均衡カチオンであり、nは、Mの原子価でありかつ1または2であり、yは、SiO_(2)のモル数でありかつ1.85?10であり、そしてwは、1分子の該アルミノシリケートあたりの水和水の モル数であり、ただし、Mが、ナトリウムおよびカリウムまたはカルシウムを含むアルカリ金属およびアルカリ土類金属の混合物である場合、該カリウムおよびカルシウムの含量は、総アルカリ金属およびアルカリ土類金属含量の35%よりも多くなく、ここで、該アルミノシリケートは、0.01μm?1μmの範囲の 平均微結晶サイズを有し、ここで、該アルミノシリケートは、ゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、およびそれらの混合物からなる群より選択されるゼオライトである、方法」の発明である。
本件発明20と甲第1発明とを対比すると、両者は、
「ハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法であって、該樹脂に式M_(2/n)O.Al_(2)O_(3).ySiO_(2).wH_(2)Oの合成結晶性アルミノシリケートを含む安定剤を配合する、ここで、yは、SiO_(2)のモル数でありかつ2であり、そしてwは、1分子の該アルミノシリケートあたりの水和水のモル数であり、該アルミノシリケートは、ゼオライトAからなる、方法」の点で一致し、次の点で相違している。
相違点15
合成結晶性アルミノシリケートの形状について、本件発明20では「アルミノシリケートは、0.01μm?1μmの範囲の平均微結晶サイズを有し」としているのに対し、甲第1発明では、このような規定はしていない点
相違点16
一般式で表される合成結晶性アルミノシリケートの電荷均衡カチオンMについて、本件発明20では「Mは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リチウム、亜鉛、カルシウム、テトラアルキルアンモニウム、テトラアリールアンモニウムおよびそれらの混合物から選択される電荷均衡カチオンであり、nは、Mの原子価でありかつ1または2であり、ただし、Mが、ナトリウムおよびカリウムまたはカルシウムを含むアルカリ金属およびアルカリ土類金属の混合物である場合、該カリウムおよびカルシウムの含量は、総アルカリ金属およびアルカリ土類金属含量の35%よりも多くなく」としているのに対し、甲第1発明では、Mがナトリウムであり、nが1である点
相違点17
本件発明20は「樹脂を、合成結晶性アルミノシリケートを含む安定剤と混合する工程を包含する」ものであるが、甲第1発明ではこのような規定はしていない点

相違点15について検討する。
本件発明20において配合される合成結晶性アルミノシリケートにの形状については、前記【1】で述べたとおりであり、甲第1発明と実質的に相違するものではない。
相違点16について検討する。
本件発明20において一般式で表される合成結晶性アルミノシリケートの電荷均衡カチオンMについては、前記【3】で述べたとおりであり、甲第1発明と実質的に相違するものではない。
相違点17について検討する。
甲第1発明においても、塩素含有重合体に対して合成結晶性アルミノシリケートを安定剤として配合(混練)するものである[摘示記載(1-1)、(1-11)]から、この点についても甲第1発明と実質的に相違するものではない。
したがって、請求項20に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。

【16】本件発明21について
本件発明21は、本件発明20を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【15】で述べた相違点15?17に加えて、以下の相違点18においても一応相違する。
相違点18
本件発明20のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「前記アルミノシリケートが、0.1μm?10μmの範囲の平均粒径を有する」ことを発明特定事項に備える点。
相違点18について検討する。
前記【4】、【5】で述べたとおり、甲第1発明においても、アルミノシリケートが、0.1μm?10μmの範囲の平均粒径を有するものを採用して樹脂の安定化を行っている。
したがって、本件発明21に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。

【17】本件発明22について
本件発明22は、本件発明20を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【15】で述べた相違点15?17に加えて、以下の相違点19においても一応相違する。
相違点19
本件発明20のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「yが、2?5の範囲である」ことを発明特定事項に備える点。
相違点19について検討する。
前記【4】で述べたとおり、甲第1発明においても、yが2のものが採用されている。
したがって、請求項22に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。

【18】本件発明23について
本件発明22は、本件発明20を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【15】で述べた相違点15?17に加えて、以下の相違点20においても一応相違する。
相違点20
本件発明20のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「前記ハロゲン化ポリマー樹脂が、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、ポリクロロプレン(Neoprene)、アクリロニトリル-塩化ビニルコポリマー(Dynel)、ポリ塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-塩化ビニルコポリ マー、ポリフルオロ-クロロエチレンポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーを含む」ことを発明特定事項に備える点。
相違点20について検討する。
前記【7】で述べたとおり、甲第1発明においても、ハロゲン化ポリマー樹脂として、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)が採用されている。
したがって、本件発明23発明は、甲第1号証に記載された発明である。

【19】本件発明24について
本件発明24は、本件発明20を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【15】で述べた相違点15?17に加えて、以下の相違点21においても一応相違する。
相違点21
本件発明20のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「前記ハロゲン化ポリマー樹脂が、ハロゲン化ビニルポリマー樹脂である」ことを発明特定事項に備える点。
相違点21について検討する。
前記【8】で述べたとおり、甲第1発明においても、ハロゲン化ポリマー樹脂として、「ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル」が採用されている。
したがって、本件発明24は、甲第1号証に記載された発明である。

【20】本件発明25について
本件発明25は、本件発明20を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【15】で述べた相違点15?17に加えて、以下の相違点22においても一応相違する。
相違点22
本件発明20のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「前記ハロゲン化ポリマー樹脂が、ポリ塩化ビニルまたは塩素化ポリ塩化ビニルから選択される」ことを発明特定事項に備える点。
相違点22について検討する。
前記【8】で述べたとおり、甲第1発明においても、ハロゲン化ポリマー樹脂として、「ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル」が採用されている。
したがって、本件発明25は、甲第1号証に記載された発明である。

【21】本件発明26について
本件発明26は、本件発明20を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【15】で述べた相違点15?17に加えて、以下の相違点23においても一応相違する。
相違点23
本件発明20のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「前記ポリマー樹脂が、ポリ塩化ビニルである」ことを発明特定事項に備える点。
相違点23について検討する。
前記【8】で述べたとおり、甲第1発明においても、ハロゲン化ポリマー樹脂として、「ポリ塩化ビニル」が採用されている。
したがって、本件発明26は、甲第1号証に記載された発明である。

【22】本件発明28について
本件発明28は、本件発明20を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【15】で述べた相違点15?17に加えて、以下の相違点24においても一応相違する。
相違点24
本件発明20のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「前記アルミノシリケートが、ゼオライトAである」ことを発明特定事項に備える点。
相違点24について検討する。
前記【11】で述べたとおり、甲第1発明は、アルミノケイ酸塩として、「A型ゼオライト(ゼオライトAに相当するものと認める。)」を採用するものである[摘示記載(1-1)、(1-5)]。
したがって、本件発明28は、甲第1号証に記載された発明である。

【23】本件発明31について
本件発明31は、本件発明20を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【15】で述べた相違点15?17に加えて、以下の相違点25においても一応相違する。
相違点25
本件発明20のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「前記ゼオライトが、3?300m^(2)/gの範囲の外表面積を有する」ことを発明特定事項に備える点。
相違点25について検討する。
前記【12】で述べたとおり、本件発明20のゼオライトについて、「3?300m^(2)/gの範囲の外表面積を有する」と規定することは、通常のゼオライトが有する外表面積を規定したものにすぎず、甲第1発明のゼオライトも当然に有している外表面積の値というべきである。
そうすると、このようなゼオライトを使用して樹脂を安定化する方法は甲第1号証に実質的に記載されているといえる。
したがって、本件発明31は、甲第1号証に記載された発明である。

【24】本件発明32に係る発明について
本件発明32は、本件発明20を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【15】で述べた相違点15?17に加えて、以下の相違点26においても一応相違する。
相違点26
本件発明20のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「前記安定剤が、前記アルミノシリケートおよび少なくとも1つの共安定剤との組み合わせである」ことを発明特定事項に備える点。
相違点26について検討する。
前記【13】で述べたとおり、甲第1発明においても、樹脂組成物に配合する安定剤として、アルミノ酸塩と共に無機およびまたは有機の安定剤を配合するものである。
したがって、本件発明32は、甲第1号証に記載された発明である。

【25】本件発明33に係る発明について
本件発明33は、本件発明32を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【24】で述べた相違点15?17、26に加えて、以下の相違点27においても一応相違する。
相違点27
本件発明32のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「前記共安定剤が、カドミウム、マグネシウム、アンチモン、バリウム、スズ、カルシウム、亜鉛およびそれらの混合物からなる群より選択される従来の有機金属錯体、種々の脂肪酸の多価エステル、β-ジケトン、有機ホスファイト、ヒンダードアミン、有機メルカプタン、およびフェノールからなる群より選択される従来の有機錯体、硫酸鉛(二塩基)、硫酸鉛(三塩基)および硫酸鉛(四塩基);亜リン酸鉛(二塩基)、および白鉛、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される従来の無機錯体である、方法」であることを発明特定事項に備える点。
相違点27について検討する。
前記【14】で述べたとおり、甲第1発明においても、アルミノ珪酸塩と共に配合する安定剤として、マグネシウム、カドミウム、バリウム、スズ、カルシウム、亜鉛、鉛等の有機金属錯体安定剤、脂肪酸の多価エステル、1乃至4塩基性の硫酸鉛等の無機安定剤が採用されている。
したがって、本件発明33は、甲第1号証に記載された発明である。

【26】本件発明34に係る発明について
本件発明34は、本件発明20を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【15】で述べた相違点15?17に加えて、以下の相違点28においても一応相違する。
相違点28
本件発明20のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「前記混合する工程が、前記樹脂の重合前、重合の間または重合後に行う」ことを発明特定事項に備える点。
相違点28について検討する。
甲第1発明において、安定剤は塩素含有重合体(ポリ塩化ビニル樹脂)に対して配合(混合)されるものである[摘示記載(1-1)、(1-11)]。
ここで、塩素含有重合体(ポリ塩化ビニル樹脂)は、塩素含有単量体(塩化ビニル)を重合して得られるものである。
そうすると、樹脂に安定剤を配合(混合)する処理は、樹脂の重合後に行うことにほかならない。
したがって、本件発明34は、甲第1号証に記載された発明である。

(3-2)本件特許発明である以下の請求項に係る発明が、甲各号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるか否か検討する。

【27】本件発明11について
本件発明11は、本件発明10を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【10】で述べた相違点1、8、9に加えて、以下の相違点29においても相違する。
相違点29
本件発明10の組成物において、「前記ポリ塩化ビニルが、任意の従来の重合方法によって作製されて、20,000?100,000の範囲の数平均分子量および41?98の範囲のフィッケンチャーK値を有する」ことを発明特定事項に備える点。
相違点29について検討する。
本件特許明細書段落【0001】?【0004】に記載された事項を参酌すると、本件発明のハロゲン化ポリマー樹脂(ポリ塩化ビニル)は、成形品に加工される樹脂を前提とするものであるといえる。
そして、成形加工に用いられるポリ塩化ビニルの数平均分子量および重合度を示すフィッケンチャーK値として、数平均分子量20,000?100,000、フィッケンチャーK値41?98は、通常の範囲の値である。
そうすると、同様に成形加工用として用いられる甲第2発明の塩素含有重合体において、数平均分子量を20,000?100,000およびフィッケンチャーK値を41?98の範囲に規定しようとすることは、当業者であれば適宜なし得ることである。
そして、本件発明11の効果も、当業者の予測し得る範囲内のものであり、格別顕著なものではない。
したがって、本件発明11は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものである。

【28】本件発明13について
本件発明13は、本件発明1を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【1】で述べた相違点1に加えて、以下の相違点30においても相違する。
相違点30
本件発明1の組成物において、「前記ゼオライトが、前記アルミノシリケートの0.1重量%と20重量%との間の水含量に脱水されている」ことを発明特定事項に備える点。
相違点30について検討する。
甲第3号証には、樹脂に配合するA型ゼオライトとして含水量が14.2重量%のもの、同じく5.6重量%のものが採用されることが記載されており[摘示記載(3-6)]、この程度に水含量が脱水されているA型ゼオライトは当業界において周知のものといえる。
さらに、甲第5号証には、ゼオライトの脱水物は、脱水物は少なくともハロゲン含有樹脂組成物の成形加工温度近辺において実質的に水分蒸発が生じない程度にまで含水率を低下させたものでなければならない、として、含水率は約8%以下、好ましくは5%以下に脱水されたものを採用することが記載され[摘示記載(5-2)]、また、甲第6号証には、金属置換ゼオライトは通常結晶水を含有し、その有無に安定化能は影響を受けることはないが、樹脂の成形加工の態様や他の添加剤との配合如何によって樹脂の成形加工時にその含有水分の蒸発のために樹脂が発泡する場合が起りうること、従って、このような可能性のある場合には含水率の低い脱水されたものを用いることが望ましいことが記載され、ハロゲン含有樹脂組成物の成形加工温度近辺で実質的に水分蒸発が生じない程度にまで含水率が低下したものであればよいこと、このような含水率は約8重量%以下、好ましくは5重量%以下に脱水されたものであることが記載されている[摘示記載(6-3)]。
そうすると、これらの技術事項を勘案して、甲第2発明のアルミノシリケートにおいて、水含量を調整し最適な水含量「0.1重量%?20重量%」を設定しようとすることは、当業者であれば適宜なし得ることであるといえる。
そして、本件発明13の効果も、当業者の予測し得る範囲内のものであり、格別顕著なものではない。
したがって、本件発明13発明は、甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証および甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものである。

【29】本件発明14について
本件発明14は、本件発明13を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【28】で述べた相違点1、30に加えて、以下の相違点31においても相違する。
相違点31
本件発明13の組成物において、「前記ゼオライトが、前記アルミノシリケートの0.1重量%と8重量%との間の水含量に脱水された、スチームか焼脱水ゼオライトを含む」ことを発明特定事項に備える点。
相違点31について検討する。
甲第5号証には、ハロゲン含有樹脂に安定剤として配合するゼオライトとして、含水率が約8%以下に脱水されたものが好ましいことが記載され、多くの場合150?800℃で1時間以上加熱することによって前記含水率の金属置換型ゼオライト脱水物を得ることができることも記載され、さらに、加熱温度が150℃以下では脱水不充分であり、一方、800℃以上ではゼオライト構造が壊れて安定剤としての性能が損なわれることも記載され[摘示記載(5-2)]ている。さらに、甲第6号証には、ハロゲン含有樹脂組成物の成形加工温度近辺で実質的に水分蒸発が生じない程度にまで含水率が低下したものであればよいこと、このような含水率は約8重量%以下、好ましくは5重量%以下に脱水されたものであり、これは多くの場合150?800℃好ましくは200?700℃で1時間以上加熱することによって前記含水率の金属置換型ゼオライト脱水物となることが記載され[摘示記載(6-3)]ている。
また、ゼオライトを脱水するための手段として「スチームか焼」は、本件明細書段落【0028】にも記載されているように本件出願前周知の事項である。
そうすると、甲第2発明において、必要とする水含量を有するゼオライトを得るに当たり、安定剤としてのゼオライトの構造が壊れて性能がそこなわれない程度において必要な水含量「0.1重量%?8重量%」を設定することは、甲第5号証、甲第6号証に記載の技術から当業者が適宜なし得ることといえ、その際スチームか焼脱水ゼオライトを採用することも格別予想外のこととはいえない。
そして、本件発明14の効果も、当業者の予測し得る範囲内のものであり、格別顕著なものではない。
したがって、本件発明14は、甲第1号証、甲第5号証および甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に成し得たものである。

【30】本件発明15について
本件発明15は、本件発明14を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【29】で述べた相違点1、30、31に加えて、以下の相違点32においても相違する。
相違点32
本件発明14の組成物において、「前記ゼオライトが、前記アルミノシリケートの10重量%よりも大きい水含量に再水和しない」ことを発明特定事項に備える点。
相違点32について検討する。
甲第5号証には、脱水物は少なくともハロゲン含有樹脂組成物の成形加工温度近辺において実質的に水分蒸発が生じない程度にまで含水率を低下させたものでなければならないこと、このような含水率は約8%以下、好ましくは5%以下に脱水されたものであることが記載され[摘示記載(5-2)]ている。さらに、甲第6号証には、ハロゲン含有樹脂組成物の成形加工温度近辺で実質的に水分蒸発が生じない程度にまで含水率が低下したものであればよいこと、このような含水率は約8重量%以下、好ましくは5重量%以下に脱水されたものであることが記載され[摘示記載(6-3)]ている。
そうすると、採用するゼオライトの含水率について、8重量%以下であることが必要であることが示されている以上、再水和した場合においても8重量%以下となるような水分含量とする必要があることは容易に理解できる。
そうすると、甲第2発明において、ゼオライトの含水率を、再水和した場合おいても10重量%よりも大きい値としないように調整しようとすることは当業者であれば適宜なし得ることである。
そして、本件発明15の効果も、当業者の予測し得る範囲内のものであり、格別顕著なものではない。
したがって、本件発明15は、甲第1号証、甲第5号証および甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に成し得たものである。

【31】本件発明16について
本件発明16は、本件発明1を引用する形式のものであるから、甲第2発明と対比すると、【1】で述べた相違点1に加えて、以下の相違点33においても相違する。
相違点33
本件発明1の組成物において、「前記ゼオライトが、2.8?8オングストロームの範囲の平均孔直径を有する」ことを発明特定事項に備える点。
相違点33について検討する。
甲第2号証には、成形用ポリ塩化ビニルの安定化に使用するアルミノシリケートとして平均孔径が4オングストロームのNaA型ゼオライト(これはゼオライト4Aとも呼ばれる)を採用することが記載され[摘示記載(2-2)]ている。
そうすると、甲第2発明のアルミノシリケートとして、平均孔径4オングストローム程度のアルミノシリケートを採用しようとすることは当業者であれば適宜なし得ることである。
そして、本件発明16の効果も、当業者の予測し得る範囲内のものであり、格別顕著なものではない。
したがって、本件発明16は、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に成し得たものである。

【32】本件発明27について
本件発明27は、本件発明26を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【21】で述べた相違点15?17、23に加えて、以下の相違点34においても相違する。
相違点34
本件発明26のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「前記ポリ塩化ビニルが、任意の従来の重合方法によって作製されて、20,000?100,000の範囲の数平均分子量および41?98の範囲のフィッケンチャーK値を有する」ことを発明特定事項に備える点。
相違点34について検討する。
前記(3-2)【27】「本件発明11について」で述べたと同様の理由により、甲第1発明の塩素含有重合体の安定化法において、塩素含有重合体を、数平均分子量を20,000?100,000およびフィッケンチャーK値を41?98の範囲に規定しようとする程度ことは、当業者であれば適宜なし得ることである。
そして、本件発明27の効果も、当業者の予測し得る範囲内のものであり、格別顕著なものではない。
したがって、本件発明27は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものである。

【33】本件発明29について
本件発明29は、本件発明20を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【15】で述べた相違点15?17に加えて、以下の相違点35においても相違する。
相違点35
本件発明20のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「前記ゼオライトが、前記アルミノシリケートの0.1重量%?20重量%の範囲内の水含量に脱水されている」ことを発明特定事項に備える点。
相違点35について検討する。
前記(3-2)【28】の「本件発明13について」で述べたと同様の理由により、甲第3号証、甲第5号証および甲第6号証に記載の技術事項を勘案して、甲第1発明のアルミノシリケートにおいて、水含量を調整し最適な水含量「0.1重量%?20重量%」を設定しようとすることは、当業者であれば適宜なし得ることであるといえる。
そして、本件発明29の効果も、当業者の予測し得る範囲内のものであり、格別顕著なものではない。
したがって、本件発明29は、甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証および甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものである。

【34】本件発明30について
本件発明30は、本件発明20を引用する形式のものであるから、甲第1発明と対比すると、【15】で述べた相違点15?17に加えて、以下の相違点36においても相違する。
相違点36
本件発明20のハロゲン化ポリマー樹脂を安定化するための方法において、「前記ゼオライトが、2.8?8オングストロームの範囲の平均孔直径を有する」ことを発明特定事項に備える点。
相違点36について検討する。
前記(3-2)【31】の「本件発明16について」で述べたと同様の理由により、甲第1発明の塩素含有重合体の安定化法において、アルミノシリケートとして、平均孔径4オングストローム程度のアルミノシリケートを採用しようとすることは当業者であれば適宜なし得ることである。
そして、本件発明30の効果も、当業者の予測し得る範囲内のものであり、格別顕著なものではない。
したがって、本件発明30は、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものである。

4.無効理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?10、12、17?26、28、31?34は、甲第1号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本件発明11、13?16、27、29?30は、甲第1?3、5、6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

VI.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項4、5、21に係る発明の特許は、特許法第36条第4項、第6項第2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであり、また、本件請求項1?10、請求項12、請求項17?26、請求項28、請求項31?34に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、さらに、本件請求項11、請求項13?16、請求項27、請求項29?30に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件請求項1?34に係る発明の特許は、同法第123条第1項第2号あるいは4号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-19 
結審通知日 2008-05-22 
審決日 2008-06-04 
出願番号 特願2001-514033(P2001-514033)
審決分類 P 1 113・ 537- Z (C08L)
P 1 113・ 536- Z (C08L)
P 1 113・ 113- Z (C08L)
P 1 113・ 121- Z (C08L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮本 純  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 野村 康秀
山本 昌広
登録日 2006-10-06 
登録番号 特許第3863778号(P3863778)
発明の名称 アルミノシリケート安定化ハロゲン化ポリマー  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 山本 秀策  
代理人 小野 尚純  
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