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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1187173
審判番号 不服2003-17123  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-04 
確定日 2008-10-29 
事件の表示 平成 9年特許願第 45377号「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月11日出願公開、特開平10-240052〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年2月28日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に係る発明は、平成18年9月4日付け手続補正により補正された請求項1ないし請求項5に記載された事項によって特定されるとおりであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。

「感光体に形成された静電潜像に従ってトナーを供給してトナー画像を形成する現像手段と、前記感光体と対向配置され、かつ感光体上のトナー画像を用紙搬送装置から搬送された用紙上に転写する転写手段と、前記用紙に転写されたトナー画像を加熱して定着する定着手段とを備えた画像形成装置において、
前記用紙の搬送方向における前記転写手段の下流側に前記用紙の搬送経路と交差する方向に複数個設けられ、かつ前記トナー画像が形成された用紙の先端部の裏面に当接してその用紙の先端部を前記定着手段に向けるように作用するとともに、用紙の搬送経路と交差する方向における中央側が端部側よりも密に配された第1案内片と、
前記用紙の搬送方向における前記定着手段の上流側に前記用紙の搬送経路に沿って設けられ、かつ前記トナー画像が形成された用紙の先端部の裏面に当接してその用紙を前記定着手段に導入させる第2案内片とを備え、
前記第1案内片の間には、除電フィルムが配置され、
前記除電フィルムは、その中央に櫛歯状部を有し、櫛歯状部の両側には延出部が設けられており、前記櫛歯状部は前記各第1案内片の間に配置されており、前記各延出部は前記各第1案内片の基部に重ねられていることを特徴とする画像形成装置。」

2.引用例
これに対して、当審における平成18年6月29日付け拒絶理由通知書で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-56301号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。)

(2-a)「【請求項1】 表面にトナー画像が形成されている感光体に用紙を供給・接触させ、用紙の反感光体側より上記トナーと異なる極性の電荷を付与することにより用紙の感光体側の面にトナー画像を転写し、トナー画像が転写された用紙を用紙ガイド部により案内するとともに該用紙ガイド部に設けられた静電気除電手段により用紙の電荷を低減させるように構成した画像形成装置において、上記用紙ガイド部は、搬送ガイド台と、上記搬送ガイド台に取付けられ用紙と搬送ガイド台との間に所定の距離を存した状態で用紙を案内する複数個のリブとから構成され、上記静電気除電手段は上記搬送ガイド台に接着・固定された静電気除電シートであることを特徴とする画像形成装置。」

(2-b)「【0006】本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、構成が簡単であるとともにその取付作業が簡単であり、然も、転写後の用紙搬送経路に配設された導電性ガイド部材を用紙との間に生じるアーク放電の発生を防ぎ、排紙される用紙の帯電による不具合の発生を防ぐに必要な除電機能を発揮することが可能な静電気除電手段を備えた画像形成装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するべく本願発明による画像形成装置は、表面にトナー画像が形成されている感光体に用紙を供給・接触させ、用紙の反感光体側より上記トナーと異なる極性の電荷を付与することにより用紙の感光体側の面にトナー画像を転写し、トナー画像が転写された用紙を用紙ガイド部により案内するとともに該用紙ガイド部に設けられた静電気除電手段により用紙の電荷を低減させるように構成した画像形成装置において、上記用紙ガイド部は、搬送ガイド台と、上記搬送ガイド台に取付けられ用紙と搬送ガイド台との間に所定の隙間を形成した状態で用紙を案内する複数個のリブとから構成され、上記静電気除電手段は上記搬送ガイド台に接着・固定された静電気除電シートであることを特徴とするものである。
【0008】
【作用】本発明による画像形成装置の静電気除電手段は、静電気除電シートから構成されていて、この静電気除電シートを用紙ガイド部の搬送ガイド台に接着・固定したものである。その際、静電気除電シートと用紙との間隔は、複数個のリブによって、特に困難な作業を要することなく、確実かつ正確に保持されることになる。そして、トナー画像を転写された用紙は、複数個のリブに沿って搬送され、その途中で静電気除電シートの上を非接触の状態で通る。それによって、用紙の電荷が低減されることになる。
【0009】
【実施例】以下、図1乃至図5を参照して本発明の第1実施例を説明する。尚、本実施例は本発明を画像形成装置の一つである光プリンタに適用したものである。まず、光プリンタの概略構成を図1の断面図と図2の機能構成図を参照して説明する。まず、框体1があり、この框体1内には給紙カセット3が設置されている。この給紙カセット3内には複数枚の用紙(図中仮想線で示す)5が積層された状態で収容されている。これら複数枚の用紙5はガイド板6上に載置されていて、ガイド板6と給紙カセット3の底板との間に張設されたコイルスプリング7によって、上方向に常時付勢された状態にある。そして、給紙ローラ9によって、最上位に位置する用紙5から順次取り出されて搬送されていく。
【0010】給紙ローラ9によって搬送された用紙5は、一対のローラ11、11’の間、及び一対のローラ13、13’の間を通って、プロセスカートリッジ15の感光ドラム17と用紙ガイド部19との間に供給されていく。上記プロセスカートリッジ15は、上記感光ドラム17以外に、帯電部21、現像部25、トナー除去部27等を備えている。又、用紙ガイド部19には転写器29が設けられている。そして、まず、トナー除去部27によって感光ドラム17上に残留しているトナーを除去し、帯電部21によって電荷を付与する。次に、装置本体に設置された露光部23によって光を照射して、感光ドラム17上に所定の画像情報を形成する。つまり、所定の画像情報に基づいて光を照射することにより、感光ドラム17上に均一に付与された電荷を部分的に除去し、それによって、感光ドラム17上に所定の画像情報を形成する。
【0011】次に、現像部25によって感光ドラム17にトナーを供給して、感光ドラム17にトナー画像を形成する。そして、転写器29によってトナーと異極性の電荷を用紙5の裏側より付与することにより、用紙5の表側にトナーを吸着させる。それによって、用紙5の表側に感光ドラム17からトナー画像が転写されることになる。トナー画像が転写された用紙5は、用紙ガイド部19に設けられた静電気除電手段としての静電気除電シート31によって電荷を低減される。そして、一対の定着ローラ33、33’によってトナー画像が定着され、一対のローラ35、35’、ガイド部材37を介して、用紙排出部39上に排出されることになる。
【0012】次に、上記用紙ガイド部19及び静電気除電シート31の構成を詳細に説明する。用紙ガイド部19は図3に示すような構成になっている。まず、搬送ガイド台41が設けられていて、この搬送ガイド台41は、例えば、亜鉛メッキ鋼製であって框体1に接地されている。上記搬送ガイド台41は、図4にも示すように、用紙5が搬送されてくる側に溝部43を備えており、この溝部43に連続して傾斜部45を備えた形状になっている。上記溝部43には、放電ワイヤ30が張られている。又、傾斜部45には複数個のスリットが所定の間隔で用紙搬送方向に延長された状態で形成されている。
【0013】上記搬送ガイド台41には、図5にも示すように、複数個のリブ49を所定の間隔で備えたプラスチックス部品52が嵌め込まれており、図示しない複数個の固定螺子によって搬送ガイド台41に固定されている。上記プラスチックス部品51は、上記複数個のリブ49を連結部54を介して一体化させたものであり、上記複数個のリブ49を、搬送ガイド台41の複数個のスリット47に図中下側より差し込むようにして取付・固定されている。よって、図3に示すように、複数個のスリット47よりリブ49がそれぞれ突出した状態になっている。
【0014】上記リブ49の図中上面側には切欠部51がテーパ状に形成されている。上記切欠部51の図中左側部分は、プラスチックス部品52を搬送ガイド台41に嵌め込んだ状態で、搬送ガイド台41の上面より突出しないようになっている。そして、用紙搬送方向に向かってテーパ状に徐々に突出していくようになっている。上記切欠部51の図中左側部分の上方位置には、既に説明した静電気除電シート31が設置されている。この静電気除電シート31は搬送ガイド台41の傾斜部45の溝部43側端部の上面に接着剤によって接着・固定されている。この静電気除電シート31としては種々のものが考えられるが、本実施例ではその中から、株式会社トレックス社製の静電気防止トルデンシール(型名TPS-5)を使用している。尚、「トルデン」は登録商標である。上記静電気防止トルデンシールは、95%の紙と5%の静電気防止材とから構成されており、静電気防止材としてはカーボン繊維が使用されており、具体的には、株式会社東レ社製の「ソルディオン(登録商標)」が使用されている。このような静電気除電シート53によって、搬送されてくる用紙5の電荷を低減させるものである。
【0015】以上の構成を基にその作用を説明する。図3において、用紙5は図中左側より搬送されてくる。その際、転写器29によって用紙5の裏側にトナーと異極性の電荷を付与する。それによって、用紙5の表側にはトナーが吸着されてトナー画像が転写される。その後、用紙5は複数個のリブ49の上面によって案内されて図中右側に搬送されていく。その際、静電気除電シート31の上を非接触の状態で通ることになり、それによって、電荷が低減されることになる。又、リブ49の切欠部51は用紙搬送方向に向かって上り勾配のテーパ状に形成されているので、用紙5の先端が切欠部51に引っ掛かるようなことはなく、円滑に搬送されていく。その後の作用は前述した通りである。
【0016】ところで、帯電した用紙5の表面の帯電電荷が除電される様子は以下の通りである。即ち、静電気除電シート31に含まれた静電気防止材は導電体であり、用紙5の帯電電荷によって、該静電気防止材に用紙5の帯電電荷とは逆極性の電荷が集まり、両者の間でコロナ放電が発生する。コロナ放電による電荷の中和作用により用紙5の帯電状態は適宜除電されていく。
【0017】以上詳述したように本実施例によると次のような効果を奏することができる。まず、静電気除電手段の取付作業が極めて簡単になった。すなわち、静電気除電手段として静電気除電シート31を使用し、この静電気除電シート31を単に接着剤によって、搬送ガイド部41の所定位置に接着・固定するだけでよいからである。又、リブ49には切欠部51が形成されていて、静電気除電シート31を接着・固定する位置には何等突出する部材はないので、静電気除電シート31を接着・固定する際にも何等障害物はなく、接着・固定作業の作業性も良好である。又、静電気除電シート31の場合には、用紙5に対して非接触であるので、静電気除電シート31が徒に消耗したり、用紙5の搬送を阻害するようなこともなく、又、搬送ガイド台41の後端付近で発生していたアーク放電の発生を防ぐこととなり、転写されたトナー画像を不用意に乱すようなこともない。
【0018】又、静電気除電シート31の場合には、用紙5との間隔を一定に保持することは極めて簡単なことであり、従来の除電ブラシを使用した場合のように、間隔を一定に保持するために煩雑な作業を要することはない。つまり、静電気除電シート31の厚みは規格品であるために一定であり、又、紙状の薄いもので実質的に無視できる寸法のものであり、後は、複数個のリブ49によって用紙5との距離が一定に保たれるからである。よって、用紙5との間隔を確実に一定保持して高い除電効果を得ることができる。因みに、実験により確認したところ、用紙5と静電気除電シート31との距離は0.5乃至1.5mm程度が最適であり、これは、静電気除電シート31の場合には容易に実現できる数値である。又、静電気除電シートとして使用する素材によってこの値は変動するものである。さらに、除電ブラシを使用する場合に比べ、製造コストを大幅に低減させることができる(具体的には1/10程度)。これは、静電気除電シート31の構成そのものが極めて簡単であるからであり、又、取付作業も単に接着・固定するだけでよいからである。さらに、本実施例の場合には、搬送ガイド台41を導電性材料から形成
するとともに接地し、かつ、接着剤についても導電性のものを使用しているので、静電気除電シート31による除電効果を高くする上で効果的であるが、必ずしも、金属体上に設置しなければならないものもない。」

(2-c)「【0020】次に、図7を参照して第3実施例を説明する。この実施例の場合には、静電気除電シート31を溝部43の側壁に接着・固定したものであり、又、静電気除電シート31に複数個の屈曲状凸部31aを設け、これら複数個の屈曲状凸部31aを溝部43の角部に接着・固定したものである。つまり、用紙5の搬送経路に対して、静電気除電シート31を所定の角度をもって対向・配置させたものである。この場合にも、前記各実施例と同様の効果を奏することができる。
【0021】尚、本発明は前記各実施例に限定されるものではない。まず、静電気除電シート31の大きさ、形状、表面構造、個数等については、図示したものに限定されない。又、静電気除電シート31自体の材質についても実施例で示したもの以外にも種々のものがある。例えば、前記実施例では素材を紙としたが、織物、ゴム、不織布等であってもよい。又、前記実施例では画像形成装置として光プリンタを例にとって説明したが、その他、複写機等についても同様に適用可能であることは勿論である。」

(2-d)刊行物1における【図1】、【図3】、【図7】は、それぞれ以下に示すものである。

【図1】

【図3】

【図7】


上記【図1】に記載されている画像形成装置の定着手段はトナー画像が形成された用紙の先端部の裏面に当接してその用紙の先端部を定着手段に導入させる案内部を有しているといえること、及び、一対の定着ローラ33、33’がトナー画像を加熱して定着するものであることは技術常識であることを考慮して、上記摘記事項を総合して勘案すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が実質的に記載されている。

「感光体17に形成された所定の画像情報に従ってトナーを供給してトナー画像を形成する現像部25と、前記感光体17と対向配置され、かつ感光体17上のトナー画像を用紙搬送装置(ローラ11,11’、ローラ13,13’等)から搬送された用紙5上に転写する転写器29と、前記用紙5に転写されたトナー画像を加熱して定着する定着手段(定着ローラ33,33’等)とを備えた画像形成装置において、
前記用紙の搬送方向における前記転写器29の下流側に前記用紙5の搬送経路と交差する方向に複数個設けられ、かつ前記トナー画像が形成された用紙5の裏面に当接してその用紙5の先端部を前記定着手段に向けるように作用するリブ49と、
前記用紙5の搬送方向における前記定着手段の上流側に前記用紙5の搬送経路に沿って設けられ、かつ前記トナー画像が形成された用紙5の先端部の裏面に当接してその用紙5を前記定着手段に導入させる案内部とを備え、
前記リブ49の間には静電気除電シート31が配置され、
前記静電気除電シート31は、前記各リブ49と交差する方向に搬送ガイド台41に重ねられている画像形成装置。」

3.本願発明1(前者)と刊行物1記載発明(後者)の対比
後者の「感光体17」、「現像部25」、「用紙5」、「転写器29」、「リブ49」、「静電気除電シート31」、「搬送ガイド台41」は、それぞれ、前者の「感光体」、「現像手段」、「用紙」、「転写手段」、「第1案内片」、「除電フィルム」、「第1案内片の基部」に相当し、前者の第2案内片も案内部ということができ、両者ともに除電フィルム(静電気除電シート31)は第1案内片(リブ49)と交差する方向に配置されるのであるから、両者は、
「感光体に形成された静電潜像に従ってトナーを供給してトナー画像を形成する現像手段と、前記感光体と対向配置され、かつ感光体上のトナー画像を用紙搬送装置から搬送された用紙上に転写する転写手段と、前記用紙に転写されたトナー画像を加熱して定着する定着手段とを備えた画像形成装置において、
前記用紙の搬送方向における前記転写手段の下流側に前記用紙の搬送経路と交差する方向に複数個設けられ、かつ前記トナー画像が形成された用紙の裏面に当接してその用紙の先端部を前記定着手段に向けるように作用する第1案内片と、
前記用紙の搬送方向における前記定着手段の上流側に前記用紙の搬送経路に沿って設けられ、かつ前記トナー画像が形成された用紙の先端部の裏面に当接してその用紙を前記定着手段に導入させる案内部とを備え、
前記第1案内片の間には除電フィルムが配置され、
前記除電フィルムは前記各第1案内片と交差する方向に第1案内片の基部に重ねられている画像形成装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(3-1)相違点1
転写手段の下流側に用紙の搬送経路と交差する方向に複数個設けられ、用紙の先端部を定着手段に向けられるように作用する案内片について、前者は用紙の先端部の裏面に当接する第1案内片であって、用紙の搬送経路と交差する方向における中央側が端部側よりも密に配されているのに対して、後者は用紙の裏面に当接するリブ49であるものの、用紙の先端部の裏側がリブ49に当接するか否か、及び、用紙の搬送経路と交差する方向における中央側が端部側よりも密に配されているか否かは不明である点。

(3-2)相違点2
定着手段の上流側に用紙の搬送経路に沿って設けられ、トナー画像が形成された用紙の先端部の裏面に当接して用紙を定着手段に導入させる案内部として、前者は第2案内片を用いるのに対して、後者は案内片を用いるものではない点。

(3-3)相違点3
第1案内片の間に配置される除電フィルムについて、前者の除電フィルムは、中央部に櫛歯状部を有し、各櫛歯状部は各第1案内片の間に配置されているのに対して、後者の除電フィルム(静電気除電シート31)は、第1案内片(リブ49)の基部(搬送ガイド台41)に重ねられているものの、中央部に櫛歯状部を有し、各櫛歯状部は各第1案内片(リブ49)の間に配置されるものではない点。

4.相違点についての判断
(4-1)相違点1について
画像形成装置の転写手段の下流側の用紙搬送路に案内部を設けて用紙を定着手段に搬送するものにおいて、用紙の先端部が案内部に当接するように案内部を配置することは、特開平4-116060号公報、特開平5-289450号公報(【図2】、【図6】)、特開平8-6328号公報(【図1】)、特開平8-254912号公報(【図8】)に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項である。
また、画像形成装置において、用紙の搬送経路と交差する方向における案内片の配置構成は、特開平4-213530号公報(【図2】)や特開平6-314005号公報(【図2】)に示されるように、適宜設定されるべきものである。
そして、中央側が端部側よりも密になるように複数の案内片が配されているものとすることも、例えば実願昭62-166321号(実開平1-71776号)のマイクロフィルム(第4図)、特開平3-100665号公報(第2図)、特開平8-217288号公報(【図1】)に記載されているように周知である。
してみると、刊行物1記載発明に対して、用紙の先端部の裏面に第1案内片(リブ49)が当接するとともに、第1案内片は用紙の搬送経路と交差する方向における中央部が端部側よりも密になるように配されるものとすることにより、相違点1に係る構成を有するものとすることは、当業者が適宜行うことである。

(4-2)相違点2について
画像形成装置の転写手段の下流側に複数の第1案内片を配置するとともに、定着手段の上流側に第2案内片を配置することは、審査時に引用された実願昭57-124829号(実開昭59-30155号)のマイクロフィルムの他に、特開平3-242660号公報(第1図、第3図、第4図)、特開平4-146456号公報(第1図)に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項である。
してみると、刊行物1記載発明において、用紙を定着手段に導入させる案内部を、案内片を用いて構成することは、当業者が適宜行うことである。

(4-3)相違点3について
前記2.(2-c)で摘記した刊行物1の段落【0020】及び前記2.(2-d)で摘記した【図7】に、静電気除電シート31に複数個の屈曲状凸部31aを設け、これら複数個の屈曲状凸部31aを溝部43の角部に接着・固定することによっても所望の効果を奏することができることが記載されているから、刊行物1には、除電フィルム(静電気除電シート31)を櫛歯状部を設け、この櫛歯状部を各第1案内片の間に配置してもよいことが実質的に示されている。
しかも、前記2.(2-c)で摘記した刊行物1の段落【0021】に、「静電気除電シート31の大きさ、形状、表面構造、個数等については、図示したものに限定されない」と記載されており、刊行物1には除電フィルム(静電気除電シート31)の大きさや形状は、第1案内片(リブ49)の配置や転写後の用紙に対して要求される除電の程度などに応じて適宜決められるものであることが示唆されている。
してみると、刊行物1記載発明に対して、除電フィルム(静電気除電シート31)が、中央部に櫛歯状部を有し、各櫛歯状部は各第1案内片(リブ49)の間に配置されているものとすることにより、相違点3に係る構成を有するものとすることは当業者が適宜行うことである。
また、画像形成装置において、部材にトナーが付着しないようにするために、部材を除電することも、例えば特開昭63-286879号公報、特開平3-84579号公報、特開平4-90583号公報に記載されているように周知の技術的事項である。
したがって、刊行物1記載発明が静電気除電シートを用いて用紙を除電することにより、トナーが用紙の裏面に付着にくい効果を奏することは当業者にとって明らかである。
そして、転写手段の下流に配置された案内片の表面に付着しているトナーがトナー画像が転写された用紙の裏面に付着し、定着手段の案内部に再付着することによりジャムが発生することは、上記実願昭57-124829号(実開59-30155号)のマイクロフィルム、特開平3-242660号公報に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項であるから、刊行物1記載発明が、案内片(リブ49)の表面に付着しているトナーが用紙の裏面に付着しにくくすることにより、定着手段の案内部でのジャムが発生しにくい効果を奏することは、当業者にとって容易に想到し得ることである。

(2-e)審判請求人の主張についての検討
審判請求人は平成18年9月4日付けの意見書において、
『(L)・・・そして、請求項1に記載の画像形成装置は、「用紙の搬送経路と交差する方向における中央側が端部側よりも密に配された案内片」を有しているので、用紙の搬送経路と交差する方向の幅が狭い用紙が搬送されても、その用紙は密に配された第1案内片に確実に案内されます。この結果、用紙の挙動が安定して、ジャムが発生することが抑制されます。
一方、用紙搬送方向に交差する方向おける中央側において第1案内片が密に配されているので、第1案内片と用紙との接触する部位が多くなります。この結果、用紙に紙粉などが付着しやすくなる可能性があります。
ところで、除電フィルムは、用紙搬送方向に交差する方向における中央側で且つ前記第1案内片の間に配された櫛歯状部を有しているので、この櫛歯
状部により、用紙の、密に配された第1案内片に対向する部位が確実に除電されるので、そのように紙粉などが付着しやすくなる可能性を抑制することができます。
(M)上記引用文献1?11のいずれにも、本願特有の構成、「用紙の搬送経路と交差する方向における中央側が端部側よりも密に配された案内片」および「前記除電フィルムは、その中央に櫛歯状部を有し、櫛歯状部の両側には延出部が設けられており、前記櫛歯状部は前記各第1案内片の間に配置されており、前記各延出部は前記各第1案内片の基部に重ねられている」については、何ら開示も示唆する記載も無いのであるから、引用文献1?11に記載の発明に基づいて、本願請求項1に係る発明を当業者が容易に思いつくことができないと確信する次第であります。』
と主張している。
しかしながら、本願明細書には、用紙の搬送経路と交差する方向の幅が狭い用紙は搬送経路の中央部を搬送されることについて何ら記載されていないし、実際、幅が狭い用紙が搬送経路の中央部を搬送されないものとすることも、例えば、上記特開平4-213530号公報に記載されているように周知であるから、審判請求人の上記主張は明細書に記載された事項に基づくものではない。
また、前述したように、刊行物1に、静電気除電シート31の大きさや形状等は適宜選択することが示唆されており、最も除電が必要とされる用紙の箇所に応じて静電気除電シート31の大きさ等を選択することは当業者が必要に応じて適宜行う事項であるし、両端部の案内片の間には櫛歯上部を設けないことにより、本願発明1に係る構成としたことによって、予期せぬ格別の効果が奏せられるものでもない。
以上の理由により、上記審判請求人の意見を採用することはできない。

(4-4)まとめ
上述したように、刊行物1記載発明において、相違点1に係る構成ないし相違点3に係る構成を有するものとすることは、いずれも、当業者が適宜行うことである。
また、刊行物1記載発明において、相違点1に係る構成ないし相違点3に係る構成を組み合わせたことについても、その効果は、刊行物1記載発明に対して周知技術を適用することにより、当業者が容易に予測できる範囲内のものであって、本願発明1が刊行物1記載発明と比較して格別の効果を奏するものでもない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-27 
結審通知日 2008-09-02 
審決日 2008-09-16 
出願番号 特願平9-45377
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北川 清伸  
特許庁審判長 山下 喜代治
特許庁審判官 下村 輝秋
赤木 啓二
発明の名称 画像形成装置  

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