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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1187183
審判番号 不服2005-14189  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-25 
確定日 2008-10-29 
事件の表示 特願2000-274610「メディア・プランニング・システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月22日出願公開、特開2002- 83109〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年9月11日の出願であって、、平成17年6月20日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年7月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月19日付で手続補正がなされたものである。


2.平成17年8月19日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]

平成17年8月19日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成17年8月19日付の手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、以下のように補正された。

「【請求項1】
複数人を対象とするアンケート回答情報であって、対象者の複数の属性に関するプロフィール情報、対象者がいずれのメディアに接触したかを示すメディア接触情報、対象者がいずれの商品・サービスに対して消費行動をとるかを示す消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記録する記録手段と、
記録手段に記録されたアンケート回答情報中の消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する消費行動・プロフィール集計手段と、
記録手段に記録されたアンケート回答情報中のメディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計するメディア・プロフィール集計手段と、
消費行動・プロフィール集計手段およびメディア・プロフィール集計手段の集計結果に基づいて、個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択することにより、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する属性選択手段と、
選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した場合の、各個別商品・サービスおよび各個別メディアとの間の空間距離を算出する評価手段と、
を備えた評価装置。
【請求項2】
コンピュータを、下記機能を有する評価装置として動作せるためのプログラムであって、
複数人を対象とするアンケート回答情報であって、対象者の複数の属性に関するプロフィール情報、対象者がいずれのメディアに接触したかを示すメディア接触情報、対象者がいずれの商品・サービスに対して消費行動をとるかを示す消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記録する記録手段と、
記録手段に記録されたアンケート回答情報中の消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する消費行動・プロフィール集計手段と、
記録手段に記録されたアンケート回答情報中のメディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計するメディア・プロフィール集計手段と、
消費行動・プロフィール集計手段およびメディア・プロフィール集計手段の集計結果に基づいて、個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択することにより、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する属性選択手段と、
選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した場合の、各個別商品・サービスおよび各個別メディアとの間の空間距離を算出する評価手段と、
を実現するためのプログラム。
【請求項3】
複数人を対象とするアンケート回答情報であって、対象者の複数の属性に関するプロフィール情報、対象者がいずれのメディアに接触したかを示すメディア接触情報、対象者がいずれの商品・サービスに対して消費行動をとるかを示す消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記録する記録手段と、
記録手段に記録されたアンケート回答情報中の消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する消費行動・プロフィール集計手段と、
記録手段に記録されたアンケート回答情報中のメディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計するメディア・プロフィール集計手段と、
消費行動・プロフィール集計手段およびメディア・プロフィール集計手段の集計結果に基づいて、個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択することにより、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する属性選択手段と、
選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した画像を生成する評価手段と、
を備えた評価装置。
【請求項4】
コンピュータを、下記機能を有する評価装置として動作せるためのプログラムであって 複数人を対象とするアンケート回答情報であって、対象者の複数の属性に関するプロフィール情報、対象者がいずれのメディアに接触したかを示すメディア接触情報、対象者がいずれの商品・サービスに対して消費行動をとるかを示す消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記録する記録手段と、
記録手段に記録されたアンケート回答情報中の消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する消費行動・プロフィール集計手段と、
記録手段に記録されたアンケート回答情報中のメディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計するメディア・プロフィール集計手段と、
消費行動・プロフィール集計手段およびメディア・プロフィール集計手段の集計結果に基づいて、個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択することにより、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する属性選択手段と、
選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した画像を生成する評価手段と、
を実現するためのプログラム。
【請求項5】
複数人を対象とするアンケート回答情報であって、対象者の複数の属性に関するプロフィール情報、対象者がいずれのメディアに接触したかを示すメディア接触情報、対象者がいずれの商品・サービスに対して消費行動をとるかを示す消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記録する記録手段と、
記録手段に記録されたアンケート回答情報中の消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する消費
行動・プロフィール集計手段と、
記録手段に記録されたアンケート回答情報中のメディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計するメディア・プロフィール集計手段と、
消費行動・プロフィール集計手段およびメディア・プロフィール集計手段の集計結果に基づいて、個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択することにより、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する属性選択手段と、
選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した場合の、各個別商品・サービスの原点からの方向および各個別メディアとの原点からの方向の差を算出する評価手段と、
を備えた評価装置。
【請求項6】
コンピュータを、下記機能を有する評価装置として動作せるためのプログラムであって、
複数人を対象とするアンケート回答情報であって、対象者の複数の属性に関するプロフィール情報、対象者がいずれのメディアに接触したかを示すメディア接触情報、対象者がいずれの商品・サービスに対して消費行動をとるかを示す消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記録する記録手段と、
記録手段に記録されたアンケート回答情報中の消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する消費行動・プロフィール集計手段と、
記録手段に記録されたアンケート回答情報中のメディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計するメディア・プロフィール集計手段と、
消費行動・プロフィール集計手段およびメディア・プロフィール集計手段の集計結果に基づいて、個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択することにより、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する属性選択手段と、
選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した場合の、各個別商品・サービスの原点からの方向および各個別メディアとの原点からの方向の差を算出する評価手段と、
を実現するためのプログラム。
【請求項7】
コンピュータによって評価処理を実行する方法であって、
複数人を対象とするアンケート回答情報であって、対象者の複数の属性に関するプロフィール情報、対象者がいずれのメディアに接触したかを示すメディア接触情報、対象者がいずれの商品・サービスに対して消費行動をとるかを示す消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記録手段に記録しておき、
コンピュータが、記録手段に記録されたアンケート回答情報中の消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計するため、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出し、
コンピュータが、記録手段に記録されたアンケート回答情報中のメディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計するため、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出し、
コンピュータが、消費行動・プロフィール集計手段およびメディア・プロフィール集計手段の集計結果に基づいて、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択するため、個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択し、
コンピュータが、選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した場合の、各個別商品・サービスおよび各個別メディアとの間の空間距離を算出することを特徴とする評価方法。
【請求項8】
コンピュータによって評価処理を実行する方法であって、
複数人を対象とするアンケート回答情報であって、対象者の複数の属性に関するプロフィール情報、対象者がいずれのメディアに接触したかを示すメディア接触情報、対象者がいずれの商品・サービスに対して消費行動をとるかを示す消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記録手段に記録しておき、
コンピュータが、記録手段に記録されたアンケート回答情報中の消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計するため、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出し、
コンピュータが、記録手段に記録されたアンケート回答情報中のメディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計するため、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出し、
コンピュータが、消費行動・プロフィール集計手段およびメディア・プロフィール集計手段の集計結果に基づいて、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択するため、個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択し、
コンピュータが、選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した画像を生成することを特徴とする評価方法。
【請求項9】
コンピュータによって評価処理を実行する方法であって、
複数人を対象とするアンケート回答情報であって、対象者の複数の属性に関するプロフィール情報、対象者がいずれのメディアに接触したかを示すメディア接触情報、対象者がいずれの商品・サービスに対して消費行動をとるかを示す消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記録手段に記録しておき、
コンピュータが、記録手段に記録されたアンケート回答情報中の消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計するため、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出し、
コンピュータが、記録手段に記録されたアンケート回答情報中のメディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計するため、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出し、
コンピュータが、消費行動・プロフィール集計手段およびメディア・プロフィール集計手段の集計結果に基づいて、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択するため、個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択し、
コンピュータが、選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した場合の、各個別商品・サービスの原点からの方向および各個別メディアとの原点からの方向の差を算出することを特徴とする評価方法。」

(2)補正の目的について
本件補正は前記のとおりのものであって、その補正の前後の内容を対比してみると、本件補正は以下の補正事項を含むものと認められる。

(ア)補正前の請求項1-9に「記録手段に記録されたアンケート回答情報中の」を追加する補正事項。
(イ)補正前の請求項1-6に「各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、」を追加し、また、補正前の請求項7-9に「するため、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出」を追加する補正事項。
(ウ)補正前の請求項1-6に「個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択することにより、」を追加し、また、補正前の請求項7-9に「するため、個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択」を追加する補正事項。

上記各補正事項について補正の目的を以下に検討する。
補正事項(ア)-(ウ)は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当する。


(3)独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3-1)審判請求人の主張の概要
審判請求書における審判請求人の主張の概要は以下のとおりである。
『(1)請求項1?6においては、消費行動・プロフィール集計手段が「各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する」ために、具体的に「記録手段に記録されたアンケート回答情報に基づいて、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出する」という点を明確にし、コンピュータのハードウエア資源をどのように用いて情報処理が行われているかを明確にした。
(2)請求項1?6においては、メディア・プロフィール集計手段が「各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する」ために、具体的に「記録手段に記録されたアンケート回答情報に基づいて、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出する」という点を明確にし、コンピュータのハードウエア資源をどのように用いて情報処理が行われているかを明確にした。
(3)請求項1?6においては、属性選択手段が「対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する」ために、具体的に「個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択する」という点を明確にし、コンピュータのハードウエア資源をどのように用いて情報処理が行われているかを明確にした。』

(3-2)当審の判断
発明の詳細な説明の記載からみて、評価装置は、プロフィール情報、メディア接触情報、消費行動情報を情報処理しており、実質的にコンピュータであるので、本願補正発明は、その実施にソフトウエアを必要とする、いわゆるコンピュータ・ソフトウエア関連発明であると認められる。

このコンピュータ・ソフトウエア関連発明においては、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。ここで、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とは、ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されることをいう。

そこで、請求項1の記載において、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置が構築されることが提示されているかどうか、請求項1の記載を便宜上以下のとおり(a)?(e)に分けて検討する。

(a)複数人を対象とするアンケート回答情報であって、対象者の複数の属性に関するプロフィール情報、対象者がいずれのメディアに接触したかを示すメディア接触情報、対象者がいずれの商品・サービスに対して消費行動をとるかを示す消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記録する記録手段と、
(b)記録手段に記録されたアンケート回答情報中の消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する消費行動・プロフィール集計手段と、
(c)記録手段に記録されたアンケート回答情報中のメディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計するメディア・プロフィール集計手段と、
(d)消費行動・プロフィール集計手段およびメディア・プロフィール集計手段の集計結果に基づいて、個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択することにより、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する属性選択手段と、
(e)選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した場合の、各個別商品・サービスおよび各個別メディアとの間の空間距離を算出する評価手段と、
を備えた評価装置。

上記(a)の記載について検討すると、上記(a)の記載は、「記憶手段」というハードウエア資源の記載はあるものの、単に、メディア接触情報、消費行動情報、消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記憶手段に記憶することを特定するに留まる。

上記(b)の記載について検討すると、上記(b)には「記憶手段」というハードウエア資源が記載されているものの、単に記憶手段に記憶された情報に基づいて情報処理を行うことを特定したにすぎず、「消費行動・プロフィール集計手段」が実行する情報処理として「アンケート回答情報中の消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し」との記載では、対象者をグループ化させるという機能は特定できるものの、グループ化をするために、消費行動情報およびプロフィール情報に基づいてどのような情報処理を行って、どのような情報を処理結果として取得することによりグループ化という機能を実現しているのかが、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理として具体的に記載されていない。
また、上記(b)の記載は、消費行動・プロフィール集計手段が実行する演算や機能が特定されるに留まるもので、「個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する」という情報処理において何らハードウエア資源が利用されていないため、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって消費行動・プロフィール集計手段が構築されていない。
よって、上記(b)の記載では、当該処理が、どのようなハードウエア資源をどのように用いて実現されるのかが具体的に記載されておらず、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を行っていると把握できる程度に記載されているとは認められない。

上記(c)の記載について検討すると、上記(c)には「記憶手段」というハードウエア資源が記載されているものの、単に記憶手段に記憶された情報に基づいて情報処理を行うことを特定したにすぎず、「メディア・プロフィール集計手段」が実行する情報処理として「アンケート回答情報中のメディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し」との記載では、対象者をグループ化させるという機能は特定できるものの、グループ化をするために、メディア接触情報およびプロフィール情報に基づいてどのような情報処理を行って、どのような情報を処理結果として取得することによりグループ化という機能を実現しているのかが、ハードウエア資源を利用したソフトウエアによる情報処理として具体的に記載されていない。
また、上記(c)の記載は、メディア・プロフィール集計手段が実行する演算や機能が特定されるに留まるもので、「個別メディアごとに対象者をグループ化し、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出することにより、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計する」という情報処理において何らハードウエア資源が利用されていないため、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によってメディア・プロフィール集計手段が構築されていない。
よって、上記(c)の記載では、当該処理が、どのようなハードウエア資源をどのように用いて実現されるのかが具体的に記載されておらず、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を行っていると把握できる程度に記載されているとは認められない。

上記(d)の記載について検討すると、上記(d)には「消費行動・プロフィール集計手段」、「メディア・プロフィール集計手段」というハードウエア資源が記載されてはいるものの、集計処理を行う演算手段を特定したにすぎずない。また、上記(d)の記載は、属性選択手段が実行する演算や機能が特定されるに留まるもので、「個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択することにより、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する」という情報処理において何らハードウエア資源が利用されていないため、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって属性選択手段が構築されていない。
よって、上記(d)の記載では、当該処理が、どのようなハードウエア資源をどのように用いて実現されるのかが具体的に記載されておらず、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を行っていると把握できる程度に記載されているとは認められない。

上記(e)の記載について検討すると、上記(e)の記載について検討すると、上記(e)の「評価手段」が実行する情報処理として「選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した場合の、各個別商品・サービスおよび各個別メディアとの間の空間距離を算出する」との記載からでは、複数の属性をどのように選択し、どのような情報をどのように情報処理することにより空間距離を算出するのかが具体的に記載されていない。
また、上記(e)の記載は、評価手段が実行する演算や機能が特定されるに留まるもので、「選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した場合の、各個別商品・サービスおよび各個別メディアとの間の空間距離を算出する」という情報処理において何らハードウエア資源が利用されていないため、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって評価手段が構築されていない。
よって、上記(e)の記載では、当該処理が、どのようなハードウエア資源をどのように用いて実現されるのかが具体的に記載されておらず、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を行っていると把握できる程度に記載されているとは認められない。

そして、請求項1の記載では、全体としてみても、特定された機能を実現するために、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を行っていると把握できる程度に記載されているとは認められない。

なお、上記(3-1)の審判請求人の主張について検討する。
審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、『消費行動・プロフィール集計手段が「各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する」ために、具体的に「記録手段に記録されたアンケート回答情報に基づいて、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出する」という点を明確にし、メディア・プロフィール集計手段が「各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する」ために、具体的に「記録手段に記録されたアンケート回答情報に基づいて、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出する」という点を明確にし、属性選択手段が「対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する」ために、具体的に「個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択する」という点を明確にし、コンピュータのハードウエア資源をどのように用いて情報処理が行われているかを明確にした。』と主張している。
しかしながら、「記録手段に記録されたアンケート回答情報に基づいて、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出する」、「記録手段に記録されたアンケート回答情報に基づいて、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出する」との記載は、「記憶手段」というハードウエア資源が特定されたものの、単に算出に用いられる情報が記憶手段に記憶されたことを特定したにすぎず、この点については、通常の情報処理に付随する一般的な記憶手段の利用を記載したに留まるもので、本願発明特有の記憶手段の利用が特定されているものとはいえない。また、「アンケート回答情報に基づいて、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出する」、「アンケート回答情報に基づいて、各グループごとに、対象者の各属性が出現する割合を算出する」という記載も、算出処理を具体化しただけであって、該算出処理において、どのようなハードウエア資源を利用し、該ハードウエア資源どのよう協働させているのかが記載されていない。
また、「個別商品・サービスのグループにおける出現割合の偏差および個別メディアのグループにおける出現割合の偏差が所定値以上の属性を選択する」という記載も、算出処理を具体化しただけであって、該算出処理において、どのようなハードウエア資源を利用し、該ハードウエア資源どのよう協働させているのかが記載されていない。
よって、ソフトウエアとハードウエアとが協働した具体的な手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置が構築されたものということはできないから、出願人の主張は採用できない。

以上の検討によれば、請求項1の記載では、ソフトウエアによる情報の演算又は加工がコンピュータが備えるハードウエア資源を用いてどのように実現されるのか、という点に関しては、何ら具体的に記載されておらず、かつ、その情報の演算又は加工の具体的内容が、請求項1の記載から当業者にとって自明であると認められるものではない。

したがって、本願発明は、ソフトウエアとハードウエアとが協働した具体的な手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置が構築されたものということはできないから、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエアを用いて具体的に実現されている」とはいえず、本願発明は、特許法第2条第1項でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。

(4)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第2条第1項でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しないから、特許法第29条第1項柱書の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
(1)本願発明
平成17年8月19日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年10月22日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「複数人を対象とするアンケート回答情報であって、対象者の複数の属性に関するプロフィール情報、対象者がいずれのメディアに接触したかを示すメディア接触情報、対象者がいずれの商品・サービスに対して消費行動をとるかを示す消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記録する記録手段と、
消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する消費行動・プロフィール集計手段と、
メディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計するメディア・プロフィール集計手段と、
消費行動・プロフィール集計手段およびメディア・プロフィール集計手段の集計結果に基づいて、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する属性選択手段と、
選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した場合の、各個別商品・サービスおよび各個別メディアとの間の空間距離を算出する評価手段と、
を備えた評価装置。」

4.原審の拒絶理由の概要について
平成16年8月18日付の拒絶理由通知の記載からみて、当該拒絶理由通知で示された特許法第29条第1項柱書の規定に関する拒絶理由の概要は以下のとおりである。
「理由1:
この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。

(請求項1、3について)
請求項1の記載は、業務の手順又は機能を機能的記載によって特定した手段からなり、なんらかの自然法則を利用した技術的手段によって構成されているようには記載されていない。
したがって、請求項1に記載されたものは自然法則を利用しておらず、特許法第29条第1項でいう「発明」には該当しない。
請求項3についても同様であるので省略する。
(請求項2について)
請求項2に記載されたものは、技術的手段を「コンピュータによって実現するためのプログラムを記録した記録媒体」であるが、それぞれの技術的手段についての記載は、「?に基づいて?を集計する」という、その入力と所望される機能を抽象的に特定する記載からなる「消費行動・プロフィール集計手段」、「メディア・プロフィール集計手段」と、「選択された1以上の個別プロフィール情報を座標軸とするプロフィール空間上において、各個別商品・サービス又は各個別メディアを評価する評価手段」という、業務の内容を機能的手段として延べた記載からなり、これらの技術的手段についての記載は、ソフトウェアによる情報処理がコンピュータのハードウェア資源を用いて具体的に実現されているという程度には記載されていない。
してみれば、請求項2に記載されたものは自然法則を利用しておらず、特許法第29条第1項でいう「発明」には該当しない。
(請求項4について)
請求項4の記載は「評価手段」について「視覚的に提示する」という抽象的な機能を特定する記載を付加するものであるが、この点をもってソフトウェアによる情報処理がコンピュータのハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。
したがって、請求項4に記載されたものは全体として自然法則を利用しておらず、特許法第29条第1項でいう「発明」には該当しない。
(請求項5について)
請求項5の記載は、その結果についての希望的記載によって特許を受けようとする発明を限定するものであり、この点においてソフトウェアによる情報処理がコンピュータのハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。
したがって、請求項5に記載されたものは全体として自然法則を利用しておらず、特許法第29条第1項でいう「発明」には該当しない。
(請求項6について)
請求項6の記載は「評価手段」について「距離に基づく評価を行う」という、その処理についての希望的記載によって特許を受けようとする発明を限定するものであり、この点においてソフトウェアによる情報処理がコンピュータのハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。
したがって、請求項6に記載されたものは全体として自然法則を利用しておらず、特許法第29条第1項でいう「発明」には該当しない。
(請求項7について)
請求項7における「?プロフィール空間上におけるベクトルに基づく評価を行う」という記載は、その所望される情報処理において用いられるデータがベクトルである、という断片的な情報処理についての特定であり、この点をもってソフトウェアによる情報処理がコンピュータのハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。
したがって、請求項7に記載されたものは全体として自然法則を利用しておらず、特許法第29条第1項でいう「発明」には該当しない。
(請求項8,9について)
請求項8には「コンピュータを用いて」という記載はあるものの、各ステップについての記載は、その用いられるデータと所望される処理後のデータが希望的に延べられているという程度の記載であり、(特に「解析」についての「?によって特徴づけた○○データを生成し」という記載)、コンピュータのソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。
したがって、請求項8に記載されたものは、自然法則を利用しておらず、特許法第29条第1項でいう「発明」には該当しない。
請求項9についても同様であるので省略する。」

また、平成17年6月20日付の拒絶査定の備考に示された理由1の概要は、以下のとおりである。
「補正後の請求項1における「消費行動・プロフィール集計手段」、「メディア・プロフィール集計手段」、「属性選択手段」、「評価手段」のそれぞれについての記載は、依然としてその所望される業務の結果が希望的に特定されているものであり、依然としてなんらかの自然法則を利用した技術的手段によって構成されているようには記載されていない。
したがって、請求項1に記載されたものは自然法則を利用しておらず、特許法第29条第1項でいう「発明」には該当しない。
請求項3、5についても同様である。
補正後の請求項2の各手段についての記載は依然としてソフトウェアによる情報処理がコンピュータのハードウェア資源を用いて具体的に実現されているという程度には記載されていない。
してみれば、請求項2に記載されたものは自然法則を利用しておらず、特許法第29条第1項でいう「発明」には該当しない。
請求項4、6についても同様である。
補正後の請求項7の記載は、「コンピュータを用いて」、「コンピュータが」という記載はあるものの、単に道具として用いられることを明示する記載にとどまり、各手順についての記載は、依然としてコンピュータのソフトウェアによる情報処理がコンピュータのハードウェア資源を用いて具体的に実現されているという程度には記載されていない。
してみれば、請求項7に記載されたものは自然法則を利用しておらず、特許法第29条第1項でいう「発明」には該当しない。
請求項8、9についても同様である。」

5.当審の判断
発明の詳細な説明の記載からみて、評価装置は、プロフィール情報、メディア接触情報、消費行動情報を情報処理して、個別商品・サービス及び各個別メディアとの評価をおこなう装置であり、実質的にコンピュータであるので、本願発明は、その実施にソフトウエアを必要とする、いわゆるコンピュータ・ソフトウエア関連発明であると認められる。

このコンピュータ・ソフトウエア関連発明においては、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。ここで、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とは、ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されることをいう。

そこで、請求項1の記載において、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置又が構築されることが提示されているかどうか、請求項1の記載を便宜上以下のとおり(a)?(e)に分けて検討する。

(a)複数人を対象とするアンケート回答情報であって、対象者の複数の属性に関するプロフィール情報、対象者がいずれのメディアに接触したかを示すメディア接触情報、対象者がいずれの商品・サービスに対して消費行動をとるかを示す消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記録する記録手段と、
(b)消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する消費行動・プロフィール集計手段と、
(c)メディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計するメディア・プロフィール集計手段と、
(d)消費行動・プロフィール集計手段およびメディア・プロフィール集計手段の集計結果に基づいて、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する属性選択手段と、
(e)選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した場合の、各個別商品・サービスおよび各個別メディアとの間の空間距離を算出する評価手段と、
を備えた評価装置。

上記(a)の記載について検討すると、上記(a)の記載は、「記憶手段」というハードウエア資源の記載はあるものの、単に、メディア接触情報、消費行動情報、消費行動情報を少なくとも含むアンケート回答情報を記憶手段に記憶することを特定するに留まる。

上記(b)の記載について検討すると、上記(b)の「消費行動・プロフィール集計手段」が実行する情報処理として「消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する」との記載からでは、消費行動情報およびプロフィール情報をどこから取得しているのか具体的に記載されておらず、また、どのような情報処理を行って対象者をグループ化し、どのような集計処理を行って対象者の消費行動の傾向を集計するのかが具体的に記載されていない。
また、上記(b)の記載は、消費行動・プロフィール集計手段が実行する機能が特定されるに留まるもので、「消費行動情報およびプロフィール情報に基づいて、個別商品・サービスごとに対象者をグループ化し、各個別商品・サービスが、統計的にどのような属性を有する対象者によって消費行動の対象とされているかの傾向を集計する」という情報処理において何らハードウエア資源が利用されていないため、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって消費行動・プロフィール集計手段が構築されていない。
よって、上記(b)の記載では、当該処理が、どのようなハードウエア資源をどのように用いて実現されるのかが具体的に記載されておらず、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を行っていると把握できる程度に記載されているとは認められない。

上記(c)の記載について検討すると、上記(c)の「メディア・プロフィール集計手段」が実行する情報処理として「メディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計する」との記載からでは、メディア接触情報およびプロフィール情報をどこから取得しているのか具体的に記載されておらず、また、どのような情報処理を行って対象者をグループ化し、どのような集計処理を行って対象者のメディア接触の傾向を集計するのかが具体的に記載されていない。
また、上記(c)の記載は、メディア・プロフィール集計手段が実行する機能が特定されるに留まるもので、「メディア接触情報およびプロフィール情報に基づいて、個別メディアごとに対象者をグループ化し、各個別メディアが、統計的にどのような属性を有する対象者によって接触されているかの傾向を集計する」という情報処理において何らハードウエア資源が利用されていないため、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によってメディア・プロフィール集計手段が構築されていない。
よって、上記(c)の記載では、当該処理が、どのようなハードウエア資源をどのように用いて実現されるのかが具体的に記載されておらず、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を行っていると把握できる程度に記載されているとは認められない。

上記(d)の記載について検討すると、上記(d)には「消費行動・プロフィール集計手段」、「メディア・プロフィール集計手段」というハードウエア資源が記載されてはいるものの、「属性選択手段」が実行する情報処理として「集計結果に基づいて、対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する」との記載からでは、集計結果が具体的にどのような情報からなり、該集計結果の情報をどのように情報処理することのよって、消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択しているのかが具体的に記載されていない。
また、上記(d)の記載は、属性選択手段が実行する機能が特定されるに留まるもので、「対象者の複数の属性のうち、その属性を有する傾向が変化するにつれて消費行動の変化および接触するメディアの変化が大きいような属性を複数個選択する」という情報処理において何らハードウエア資源が利用されていないため、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって属性選択手段が構築されていない。
よって、上記(d)の記載では、当該処理が、どのようなハードウエア資源をどのように用いて実現されるのかが具体的に記載されておらず、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を行っていると把握できる程度に記載されているとは認められない。

上記(e)の記載について検討すると、上記(e)の「評価手段」が実行する情報処理として「選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した場合の、各個別商品・サービスおよび各個別メディアとの間の空間距離を算出する」との記載からでは、複数の属性をどのように選択し、どのような情報をどのように情報処理することにより空間距離を算出するのかが具体的に記載されていない。
また、上記(e)の記載は、評価手段が実行する演算や機能が特定されるに留まるもので、「選択された複数の属性を座標軸とするプロフィール空間上に、各個別商品・サービスおよび各個別メディアを配置した場合の、各個別商品・サービスおよび各個別メディアとの間の空間距離を算出する」という情報処理において何らハードウエア資源が利用されていないため、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって評価手段が構築されていない。
よって、上記(e)の記載では、当該処理が、どのようなハードウエア資源をどのように用いて実現されるのかが具体的に記載されておらず、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を行っていると把握できる程度に記載されているとは認められない。

そして、請求項1の記載では、全体としてみても、特定された機能を実現するために、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を行っていると把握できる程度に記載されているとは認められない。

以上の検討によれば、請求項1の記載では、ソフトウエアによる情報の演算又は加工がコンピュータが備えるハードウエア資源を用いてどのように実現されるのか、という点に関しては、何ら具体的に記載されておらず、かつ、その情報の演算又は加工の具体的内容が、請求項1の記載から当業者にとって自明であると認められるものではない。

したがって、本願発明は、ソフトウエアとハードウエアとが協働した具体的な手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置が構築されたものということはできないから、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエアを用いて具体的に実現されている」とはいえず、本願発明は、特許法第2条第1項でいう「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第2条第1項でいうところの「自然法則を利用した技術的思想の創作」には該当しないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-28 
結審通知日 2008-09-01 
審決日 2008-09-12 
出願番号 特願2000-274610(P2000-274610)
審決分類 P 1 8・ 1- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅原 浩二  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 小山 和俊
山本 穂積
発明の名称 メディア・プランニング・システム  
代理人 松下 正  
代理人 古谷 栄男  
代理人 鶴本 祥文  

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