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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1187232
審判番号 不服2007-11274  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-19 
確定日 2008-11-06 
事件の表示 特願2001-227103「画像読取装置及びコンピュータ・ソフトウエア」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月14日出願公開、特開2003- 46773〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成13年7月27日の出願であって、平成19年3月14日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成19年4月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年5月14日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年5月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成19年5月14日付けの補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
当該補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりのものである。(下線部は補正箇所)

【請求項1】 複数の受光素子を有し、該受光素子で光を読み取り電子化の実施によって画像データを得るCCDラインセンサと、該CCDラインセンサの受光素子間のばらつきに対してシェーディング補正を行うためのデータを、シェーディングデータとして算出する手段とを備えた画像読取装置において、
前記CCDラインセンサで白色基準板を読み取ったときのデータが特異なデータであるか画素単位で判定する手段と、画素データが特異であるとされた場合に、特異なデータとされたCCDラインセンサの画素において白色基準板を読み取ることによって得られた他のデータを用いてシェーディング補正値を算出する手段とを備え、特異なデータと判定されたデータを用いることなく、それ以外の副走査方向における読み取りデータを用いて演算補正することを特徴とする画像読取装置。
(以下、「本願補正後発明」とする。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「シェーディング補正値を算出する手段」について、「特異なデータと判定されたデータを用いることなく、それ以外の副走査方向における読み取りデータを用いて演算補正する」とすることにより、その内容を限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができたものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物の記載

原査定の拒絶の理由で引用された刊行物3(特開平6-6589号公報)には、対応する図面と共に、以下の内容が記載されている。

(ア)
「 【0002】
【従来の技術】
電荷結合素子(以下、CCDと記す。)等のイメージセンサを用いた画像読取装置では、ランプの光量分布の影響やイメージセンサの各画素毎の感度のばらつきの影響を除くために、予め白や黒の濃度基準面を読み取って得られたデータに基づいてイメージセンサの各画素の読取データを補正する、いわゆるシェーディング補正が行われている。
【0003】
ところで、このような画像読取装置では、イメージセンサの画素自身の異常や、濃度基準面やレンズ上のごみ、傷等の光学系の異常によって、異常データを出力してしまう画素が生じることがある。そこで従来より、濃度基準面の読取データを用いて異常画素の検出を行う技術が知られている。例えば特開昭62-40874号公報には、基準濃度画像を副走査方向に数ライン読み取り、所定のしきい値と比較し、しきい値を越える信号が所定の数未満であれば異常画素とみなす技術が示されている。 」

(イ)
「 【0072】
また、副走査方向の複数の読取データを用いて異常画素のデータを補正しようとした場合には、濃度基準面に付いた副走査方向の筋状の汚れによる異常の場合には補正することが困難になってしまう。これに対し本実施例では、主走査方向の周辺画素の読取データを用いて異常画素のデータを補正するので、副走査方向の筋状の汚れによる異常の場合にも確実に補正することができる。 」

(ウ)
「【要約】
【目的】 濃度基準面の読み取りに際し、異常画素の検出および補正をより正確に行う。
【構成】 濃度基準面をイメージセンサによって複数回読み取り、データライン401からの読取データをCPU(1)基板209によって取り込み、各画素について読取データの平均値Dbaと周辺の複数画素のDbaの平均値Dlaを算出する。各画素ごとに|Dla-Dba|を2つの基準値と比較して、各画素が正常画素か欠陥画素か濃度基準面のごみ、傷等による異常画素かを判別する。欠陥画素のDbaを最低レベルに置き換え、異常画素のDbaをDlaに置き換える補正を行った後、1ライン分のDbaをシェーディングRAM406に書き込み、このデータを用いてシェーディング補正処理部407にてシェーディング補正を行う。 」

(エ)
「 【請求項7】 原稿を照明する照明手段と、
少なくとも主走査方向に複数の画素を有し、前記照明手段によって照明された原稿の像を読み取るイメージセンサと、
所定の濃度を有する濃度基準面と、
前記イメージセンサによって前記濃度基準面を読み取って得られる各画素ごとの読取データを用いてシェーディング補正を行うシェーディング補正手段と、
前記イメージセンサによって前記濃度基準面を読み取り、濃度基準面の主走査方向の複数の位置の読取データに基づいて異常画素の検出を行う異常画素検出手段と、
シェーディング補正に用いる読取データに関して、前記異常画素検出手段によって検出された異常画素の読取データを、異常画素の検出のために用いた読取データを用いて補正する補正手段とを具備することを特徴とする画像読取装置。 」

(オ)
「 【0061】
次に、図21ないし図24を用いて本実施例における異常画素の検出および補正とシェーディング補正に関わる動作について説明する。
【0062】
図21は異常画素の検出および補正の動作を示すフローチャートである。明シェーディング補正の場合、まずステップ(以下、Sと記す。)501で、図5に示すように濃度基準面として基準板312の白色面314をプラテンガラス316上に出し、これをイメージセンサ308によって読み取る。次にS502で、読取画像データライン401より入力される濃度基準面の1ライン分の読取データをシェーディングRAM406に書き込む。次にS503で、CPU(1)回路209がシェーディングRAM406から1ライン分の読取データを読み込む。次にS504で、以上の動作がn回繰り返されたか否かが判断され、繰り返されていない場合(“N”)はS501へ戻り、S501?503の動作がn回繰り返されることになる。S504でn回繰り返された(“Y”)と判断されると、S505へ進み、CPU(1)回路209によって以下の処理が行われる。
【0063】
まずS505で、各画素のn回、例えば2回の読取データの平均値Dbaが算出される。これは図20の注目画素平均値算出手段451の動作に対応する。次にS506で、注目画素の周辺m画素、例えば注目画素の前後2画素の合計4画素のDbaの平均値Dlaが算出される。これは図20の周辺画素平均値算出手段452の動作に対応する。
【0064】
図22はDbaおよびDlaを求める動作を示したもので、同図(a)に示すように1回目の読取値メモリエリアには各画素ごとに読取データ(0)、(1)、…、(K)、…が格納され、(b)に示すように2回目の読取値メモリエリアには各画素ごとに読取データ(0)′、(1)′、…、(K)′、…が格納され、(c)に示すように注目画素をKとすると2回の読取データの平均値{(K)+(K)′}/2としてDba(K)が算出される。さらに(d)に示すように、前後2画素の合計4画素の平均値{Dba(K-2)+Dba(K-1)+Dba(K+1)+Dba(K+2)}/4としてDla(K)が算出される。
【0065】
次にS507で、各画素ごとに|Dla-Dba|の演算が行われ、その結果が第1の基準値X(Xは正の値)より小さいか否かが判断される。小さい場合(“Y”)には、S508でその画素は正常画素であると判定され、そのままDbaは保存される。一方、S507で|Dla-Dba|が第1の基準値X以上と判定された場合(“N”)には、S509で、さらに|Dla-Dba|が第2の基準値Y(Y>X)より小さいか否かが判断される。小さい場合(“Y”)には、S510でその画素はイメージセンサ308の画素自体の欠陥以外の原因、例えばごみや傷による異常画素と判定され、S511でその画素のDbaがDlaに変更される。また、S509で|Dla-Dba|が第2の基準値Y以上と判定された場合(“N”)には、S512でその画素はイメージセンサ308の画素自体の欠陥による異常画素(以下、欠陥画素という。)と判定され、S513でその画素のDbaが最低レベルである“00h”(16進数)に変更される。ここで、欠陥画素の読取データを“00h”とするのは、明シェーディング補正後の欠陥画素の出力を高出力とし出力画像上において目立たない白細線とするためである。
【0066】
上記S507、S508、S509、S510およびS512が図20の判定手段453の動作に対応し、S511およびS513が図20のデータ補正手段454の動作に対応する。
【0067】
このようにして算出された1ライン分のDbaは、S514で再びVMEバス16および制御部26を通してシェーディングRAM406に書き込まれ、異常画素の検出および補正の動作を終了する。 」

当該(ア)から(オ)及び図面の記載を総合すると、刊行物には、特に(ア)(イ)の記載に関連する従来例としての次の(カ)なる発明と、請求項7に対応する(キ)なる発明の2つの発明が記載されている。

(カ)
複数の電荷結合素子を有し、該電荷結合素子は画像を画素として読み取るものであって、前後にも画素を有するCCDイメージセンサであり、該CCDイメージセンサラインセンサの感度のばらつきの影響を除くために、予め白や黒の濃度基準面を読み取って得られたデータに基づいてイメージセンサの各画素の読取データを補正する補正シェーディング補正を行うためのデータを、シェーディングデータとして算出する手段とを備えた画像読取装置において、
前記CCDラインセンサで濃度基準面板を読み取ったときのデータが異常なデータであるか画素単位で判定し、画素データが異常であるとされた場合に、異常なデータとされたデータについて、濃度基準面の読み取りにおける副走査方向の複数の読取データを用いて異常画素のデータを補正する画像読取装置。
(以下、「引用例第1発明」とする。)

(キ)
複数の電荷結合素子を有し、該電荷結合素子は画像を画素として読み取るものであって、前後にも画素を有するCCDイメージセンサであり、該CCDイメージセンサラインセンサの感度のばらつきの影響を除くために、予め白や黒の濃度基準面を読み取って得られたデータに基づいてイメージセンサの各画素の読取データを補正する補正シェーディング補正を行うためのデータを、シェーディングデータとして算出する手段とを備えた画像読取装置において、
前記CCDラインセンサで濃度基準面板を読み取ったときのデータが異常なデータであるか画素単位で判定し、画素データが異常であるとされた場合に、異常なデータとされたデータについて、濃度基準面の読み取りにおける主走査方向の複数の読取データを用いて異常画素のデータを補正するものであり、
補正は、異常画素の読取データDba(K)に対して、主走査方向の前後2画素の平均値Dla(前後2画素の合計4画素の平均値{Dba(K-2)+Dba(K-1)+Dba(K+1)+Dba(K+2)}/4)を算出し、これに変更することにより補正を行うものである画像読取装置。
(以下、「引用例第2発明」とする。)

3.対比

本願補正後発明と当該引用例第1発明(カ)とを対比する。

引用例発明における電荷結合素子、濃度基準面、異常なデータは、本願補正後発明における受光素子、白色基準板、特異なデータに相当する。

したがって、引用例発明における構成要素を本願補正後発明において用いられている用語に置き換えれば、本願補正後発明と引用例第1発明は以下の点で一致、あるいは相違する。

[一致点]

(ク)複数の受光素子を有し、該受光素子で光を読み取り電子化の実施によって画像データを得るCCDラインセンサと、該CCDラインセンサの受光素子間のばらつきに対してシェーディング補正を行うためのデータを、シェーディングデータとして算出する手段とを備えた画像読取装置において、
前記CCDラインセンサで白色基準板を読み取ったときのデータが特異なデータであるか画素単位で判定する手段と、画素データが特異であるとされた場合に、特異なデータとされたCCDラインセンサの画素において白色基準板を読み取ることによって得られた副走査方向における他のデータを用いてシェーディング補正値を算出する手段とを備えて演算補正する画像読取装置。

[相違点]

(ケ)本願発明が、シェーディング補正値を算出する補正演算において、特異なデータと判定されたデータを用いることなく、それ以外の副走査方向における読み取りデータを用いているものであるのに対し、引用例第1発明は、副走査方向における他のデータを用いることは明らかではあるものの、特異なデータと判定されたデータを用いるか否かは明らかでなく、それ以外のデータのみを利用して補正演算を行うか否か明らかでない点。

4.相違点の判断

当該相違点(ケ)について検討する。
引用例第2発明において、補正は、異常画素の読取データDba(K)に対して、主走査方向の前後2画素の平均値Dla(前後2画素の合計4画素の平均値{Dba(K-2)+Dba(K-1)+Dba(K+1)+Dba(K+2)}/4)を算出し、これに変更することにより補正を行うものである。
これは特異なデータと判定された値を用いることなく、それ以外の読取データを用いて補正する技術思想である。

してみれば、引用例第1発明においても、補正にあたって、特異なデータと判定された値を用いることなく、それ以外読取データを用いて補正することは当業者であれば容易に想到できることである。
第1引用例発明も第2引用例発明も、その前提構成において相違するものではないから、引用例第2発明の技術思想を引用例第1発明に適用することに困難性はなく、引用例第1発明は、副走査方向の読取データにより補正を行うものであるから、引用例第2発明の技術思想を引用例第1発明に適用した場合に、それ以外の読取データが副走査方向の読取データとなることは当然のことである。

したがって、本願補正後発明は、引用刊行物3に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正後発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができたものではない。

5.むすび

したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明の認定

平成19年5月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成18年11月17日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項7までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、下記のとおりである。

【請求項1】 複数の受光素子を有し、該受光素子で光を読み取り電子化の実施によって画像データを得るCCDラインセンサと、該CCDラインセンサの受光素子間のばらつきに対してシェーディング補正を行うためのデータを、シェーディングデータとして算出する手段とを備えた画像読取装置において、
前記CCDラインセンサで白色基準板を読み取ったときのデータが特異なデータであるか画素単位で判定する手段と、画素データが特異であるとされた場合に、特異なデータとされたCCDラインセンサの画素において白色基準板を読み取ることによって得られた他のデータを用いてシェーディング補正値を算出する手段とを備えることを特徴とする画像読取装置。

2.引用刊行物に記載の発明

原査定の拒絶理由に引用された刊行物3および、その記載事項は、前記「第2における[理由]の2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願請求項1に係る発明は、前記「第2における[理由]の1.」で検討した本願補正後発明から、補正手段が「特異なデータと判定されたデータを用いることなく、それ以外の副走査方向における読み取りデータを用いているもの」であるという限定事項を省いたものである。
そうすると、本願請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正後発明が、前記「第2における[理由]の4.」に記載したとおり、引用刊行物の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1に係る発明も、同様の理由により、引用刊行物の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用刊行物3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2から請求項7に係る各発明について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

第4 まとめ

審判請求の理由について審理した結果は上記のとおりであり、拒絶査定を取り消す理由は存在しないから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-04 
結審通知日 2008-09-09 
審決日 2008-09-24 
出願番号 特願2001-227103(P2001-227103)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金田 孝之西山 昇  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 伊藤 隆夫
原 光明
発明の名称 画像読取装置及びコンピュータ・ソフトウエア  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  

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