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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1187298
審判番号 不服2005-16602  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-31 
確定日 2008-11-06 
事件の表示 平成 7年特許願第338045号「電子ゲーム機」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月10日出願公開、特開平 9-149960〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は平成7年11月30日の出願であって、平成17年7月28日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年8月31日付けで本件審判請求がされるとともに、同年9月29日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年9月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正内容
本件補正は特許請求の範囲の補正を補正事項に含んでおり、特許請求の範囲の補正に限ってみると、請求項2を削除するとともに、請求項1を次の(補正前)から(補正後)へと変更するものである(ただし、(補正前)については下線部を省略)。

(補正前)
「内部に電子制御部が組み込まれるボックスに、前記電子制御部の外周を取り囲むシールド層を構成する金属箔が貼設されて成る電子ゲーム機において、
前記ボックスは、隣接する壁板材の一方の端面が他方の内面の端部に当接するようにして、複数の壁板材を連結して形成されており、
前記金属箔は、各壁板材の内面の全体にそれぞれ貼設されるとともに、各壁板材間の連結部において前記一方の壁板材の端面側に折り込まれ、
この折り込まれた金属箔と前記他方の壁板材の内面の金属箔とが互いに重なった状態で密接して壁板材間に挟着されて成る電子ゲーム機。」

(補正後)
「内部に電子制御部が組み込まれるボックスに、前記電子制御部の外周を取り囲むシールド層を構成する金属箔が貼設されて成る電子ゲーム機において、
前記ボックスは、天板、底板、左右の側板、および背板の各壁板材を連結して形成された前面開口の直方体であり、前記側板と背板は、上端縁と下端部の内面にそれぞれ天板または底板の端部を係合するための切欠溝が全幅にわたって形成され、各切欠溝は、L字状をなす溝壁の一方を天板または底板の端面が当接する当接面となし、他方を天板または底板の端部内面を支持する支持面となしており、
前記金属箔は、全ての壁板材の内面の全体にそれぞれ貼設され、側板と背板に貼設された金属箔は、天板および底板との各連結部において、前記切欠溝内に折り込まれて支持面に貼設されるとともに、
この折り込まれた金属箔と天板および底板の内面の金属箔とが互いに重なった状態でそれぞれ密接して、天板と側板との間、天板と背板との間、底板と側板との間、および底板と背板との間にそれぞれ挟着されて成る電子ゲーム機。」

請求人は補正目的を示していないが、(補正後)の請求項1は(補正前)の請求項1に対して、ボックスを構成する壁板の構成とそれによって形成されるボックス形状を限定し、隣接する壁板材の連結態様のうち、側板又は背板と天板又は底板との連結態様を限定し、そこにおいて金属箔が壁板間に挟着される態様を限定した点で、発明の限定を目的としたものであるから、これらの点では特許請求の範囲の減縮(平成18年改正前特許法第17条の2第4項2号該当)を目的とするものと認め、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)について、特許出願の際独立して特許を受けることができるかを検討することとする。
なお、側板又は背板と天板又は底板との隣接箇所以外における、「隣接する壁板材」の連結態様、及びそこにおける金属箔の状態については、(補正前)においては特定されていた「当接」や「挟着」が(補正後)においては特定されておらず、その点では本件補正は拡張を含んでいるが、補正発明の独立特許要件が欠如すれば本件補正は却下されなければならないとの結論に至るから、この点についての検討はひとまずおいておく。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される、「1.補正内容」に(補正後)として示したとおりのものと認める。

3.引用刊行物に記載される事項の認定
本願出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭56-176036号(実開昭58-80290号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、次の記載がされている。
ア.「非金属製ボツクス(1)の前面にゲーム内容を点滅表示する表示部(2)を備えボツクス(1)内部には表示部(2)およびメダル等を送出する作動部(8)の動作を制御する電子制御部(7)を配備したものにおいて、前記ボツクス(1)の内面には薄膜金属をもつて外部信号の進入を阻止するシールド層(11)を形成したゲーム機。」(実用新案登録請求の範囲1)
イ.「シールド層(11)はアルミニウム等の金属箔を貼設して形成されている実用新案登録請求の範囲第1項記載のゲーム機。」(実用新案登録請求の範囲2)
ウ.「第1図はゲーム機の一例を示し、非金属製ボツクス(1)の前面にゲーム内容を点滅表示する表示部(2)を備え、表示部(2)に表示されるゲーム結果に応じて所定数のメダルや景品を下方位置の放出口(3)へ放出動作させるものであるが、本考案はこれに限らず、ゲーム結果に応じて点数を加算するタイプのゲーム機にも実施できる」(明細書第3頁4-10行)
エ.「この電子制御部(7)は、ゲーム機の動作プログラムや各種データを格納するメモリ、メモリからプログラムを取り出して解読し命令で指定された番地のデータをメモリから読み込んで演算を実行するマイクロコンピユータ回路等をもつて構成され、前記表示部(2)、メダル、景品等の送出や点数の加算を実行する作動部(8)等に対するデータの読込みおよび送出動作を制御する。」(明細書第3頁19行-第4頁7行)
オ.「図示例のボツクス(1)は、第3図に示す如く、合板等の木製基材(9)の表面に表板(10)を貼着して形成され、基材(9)の裏面へ薄肉金属をもつてシールド層(11)を形成してある。このシールド層(11)はアルミニウム等の金属箔を基材(9)の裏面へ接着剤等により貼着して形成される」(明細書第4頁10-15行)
カ.「図示例のゲーム機では、木製ボツクス(1)の内面にはアルミニウム箔の貼設により、また表示部(2)における樹脂製のランプボツクス(図示せず)等の表面には導電塗料の塗布や真空メツキ等により、夫々シールド層(11)が形成してあり、このシールド層(11)は、電子制御部(7)および電子制御部(7)に接続されるリード線(12)(13)(14)を完全包囲する。」(明細書第4頁18行-第5頁5行)
キ. 「またボツクス(1)に工夫を施こすだけであるから、内部回路の複雑化を招く虞れがなく、而も鉄板等でシールドする方法に依らず、アルミニウム箔等の薄肉金属をもつてシールド層(11)を形成するから、機械の軽量化や製造組立効率の向上を実現できる等、実用上幾多の優れた効果を奏する。」(明細書第5頁16行-第6頁2行)
ク.第1図及び第2図には、斜視図及び水平断面図から見て直方体のゲーム機が示されている。その前面には、表示部(2)などの部材が、図示で見て大きな割合を占めて設けられている。(第1図及び第2図)

4.引用刊行物記載の発明の認定
記載事項ア.によると、引用例には「非金属製ボツクス(1)」の「内部」に「電子制御部(7)」が配備され、「ボツクス(1)の内面」には薄膜金属をもつて「シールド層(11)」が形成されている「ゲーム機」が開示されている。また、記載事項イ.によると「シールド層(11)」は「金属箔」を「貼設」して形成されている。この「シールド層(11)」は、記載事項カ.によると「電子制御部(7)」を「完全包囲」するためのものである。そして、記載事項エ.からも明らかなとおり、「ゲーム機」は「電子制御部(7)」によって制御されるものである。
すなわち、引用例には「非金属製ボツクス(1)の内部に電子制御部(7)が配備され、ボツクス(1)の内面には電子制御部(7)を完全包囲するためのシールド層(11)を形成する金属箔が貼設されている、電子制御部(7)によって制御されるゲーム機」なる技術事項が開示されている。

記載事項ウ.によると、「非金属製ボツクス(1)の前面」には「表示部(2)」や「放出口(3)」が設けられている。また記載事項オ.によると、「ボツクス(1)」は「表面に表板(10)」を設けた「合板等」の「木製基材(9)」により形成されている。そして、記載事項オ.及びカ.からすると、「木製基材(9)」の「裏面」に金属箔を貼設することで「ボツクス(1)の内面」の「シールド層(11)」が形成されるとともに、前面に設けられた「表示部(2)」等には「導電塗料の塗布や真空メツキ等」により別途の「シールド層(11)」が形成されている。
すなわち、引用例には「非金属製ボツクス(1)の前面には表示部(2)や放出口(3)が設けられ、非金属製ボツクス(1)は表面に表板(10)を設けた合板の木製基材(9)から形成され、木製基材(9)の裏面に金属箔を貼設してボツクス(1)の内面のシールド層(11)は形成され、前面の表示部(2)等には導電塗料の塗布や真空メツキ等により別途のシールド層(11)を形成する」という技術事項が開示されている。

記載事項キ.によると、引用例のゲーム機では「製造組立効率の向上」にも配慮している。また、記載事項ク.として示したとおり、「斜視図及び水平断面図から見てゲーム機は直方体であり、その前面には表示部(2)などの部材が大きな割合を占めて」設けられている。

以上を整理すると、引用例には、
「非金属製ボツクス(1)の内部に電子制御部(7)が配備され、ボツクス(1)の内面には電子制御部(7)を完全包囲するためのシールド層(11)を形成する金属箔が貼設されている、電子制御部(7)によって制御されるゲーム機において、
非金属製ボツクス(1)の前面には表示部(2)や放出口(3)が設けられ、
非金属製ボツクス(1)は、表面に表板(10)を設けた合板の木製基材(9)から形成され、木製基材(9)の裏面に金属箔を貼設してボツクス(1)の内面のシールド層(11)は形成され、
前面の表示部(2)等には導電塗料の塗布や真空メツキ等により別途のシールド層(11)を形成する、
斜視図及び水平断面図で見てゲーム機は直方体であり、図示で見て前面に占める表示部(2)等の割合は大きい、
製造組立効率の向上にも配慮した、ゲーム機」

の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。

5.補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
引用発明の「ゲーム機」は「電子制御部(7)によって制御される」から、補正発明における「電子ゲーム機」に相当する。引用発明の「非金属製ボツクス(1)」「ボツクス(1)」は「内部に電子制御部(7)が配備され」るから、補正発明における「内部に電子制御部が組み込まれるボックス」に相当する。
引用発明において、「電子制御部(7)を完全包囲するためのシールド層(11)」のうち、「ボツクス(1)の内面に」「金属箔が貼設されて」「形成」された部分は、金属箔の貼着とは異なるシールド手法が用いられる表示部(2)等の存在するボツクスの前面部分を別としても、「ボツクス(1)」への「金属箔」の「貼設」による「シールド層」として、電子制御部の「外周」を「取り囲む」ことは明らかであるから、補正発明における「ボックスに、前記電子制御部の外周を取り囲むシールド層を構成する金属箔が貼設されて成る」に相当する。
引用発明において「非金属製ボツクス(1)」を形成する「表面に表板(10)を設けた合板の木製基材(9)」は、補正発明における「壁板材」に相当する。また、引用発明の「ボツクス(1)」は、図示から見て「直方体」であるから、「前面開口の直方体」であるかはさておき、かような壁板材を「複数」「連結して形成された略直方体」である点で、補正発明と共通する。なお、引用発明は製造組立効率の向上にも配慮したものであるから、「合板」の「木製基材」を用いながら、板状部材を連結することなくボツクスを一体形成するような、特殊なものであると考えることはできない。
引用発明における「金属箔」は、「木製基材(9)」の「裏面」に「貼設」されるとともに、ボツクス内に格納する「電子制御部(7)」を「完全包囲」するのであるから、「木製基材(9)」が存在しない「表示部(2)」等においては別途のシールド層を設けるとはいえ、全ての木製基材(9)において、少なくともボツクス内面となる箇所の全体には、それぞれ貼設されることが明らかである。そのため、「全ての壁板材の、少なくともボックス内面となる箇所の全体にそれぞれ貼設され」るという点で、補正発明における「全ての壁板材の内面の全体にそれぞれ貼設され」と共通する。

以上をまとめると、補正発明と引用発明は、

「内部に電子制御部が組み込まれるボックスに、前記電子制御部の外周を取り囲むシールド層を構成する金属箔が貼設されて成る電子ゲーム機において、
前記ボックスは、複数の壁板材を連結して形成された略直方体であり、
前記金属箔は、全ての壁板材の、少なくともボツクス内面となる箇所の全体にそれぞれ貼設されて、
成る電子ゲーム機」

である点で一致し、以下の各点で相違し、または一応のところ相違する。

<相違点1>
補正発明ではボックスが「天板、底板、左右の側板、および背板」を連結した「前面開口の直方体」であるのに対し、引用発明ではそのような記載がない点。

<相違点2>
補正発明では壁板材の連結態様が「側板と背板は、上端縁と下端部の内面にそれぞれ天板または底板の端部を係合するための切欠溝が全幅にわたって形成され、各切欠溝は、L字状をなす溝壁の一方を天板または底板の端面が当接する当接面となし、他方を天板または底板の端部内面を支持する支持面となして」いるのに対して、引用発明ではそのような記載がない点。

<相違点3>
補正発明では、金属箔が、壁板材の「内面の全体」に設けられるとともに、壁板材の連結部においては「側板と背板に貼設された金属箔は、天板および底板との各連結部において、前記切欠溝内に折り込まれて支持面に貼設されるとともに、この折り込まれた金属箔と天板および底板の内面の金属箔とが互いに重なった状態でそれぞれ密接して、天板と側板との間、天板と背板との間、底板と側板との間、および底板と背板との間にそれぞれ挟着されて」いるのに対し、引用発明においては、少なくともボツクスの内面となる箇所の全体には設けられていても、連結部において最終的にボツクスの内面とならない箇所も含めて「壁板材の内面の全体」に設けられているかは明らかでなく、そこにおいて補正発明のような「挟着」状態であることは記載されていない点。

6.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点1について
引用発明では、たしかにボックスが「天板、底板、左右の側板、および背板」を連結した「前面開口の直方体」であることは明記されていないが、図示から見て明らかに略直方体である形状を「直方体」とは異ならせる理由がなく、表示部(2)や放出口(3)等が設けられるわけではない上下左右及び裏面を、単純に「天板、底板、左右の側板、および背板」を「連結」して形成することは、単なる設計事項としてなし得る事項というほかはない。
また、引用発明におけるゲーム機の「前面」は、表示部(2)や放出口(3)等の多数の部材が設けられて、上下左右及び裏面とは異なり複雑な構成となっているとともに、ゲーム機の内部に各種部品を組み込むに際しても、そのための開口部はボツクスに当然に必要であるのだから、上下左右及び裏面とは異なる扱いが必要な前面を、製造の最終過程でボツクスに組み付ける「蓋部」として、ボツクス自体は「天板、底板、左右の側板、および背板」を連結した「前面開口の直方体」とすることも、単なる設計事項としてなし得る事項というほかはない。
すなわち、相違点1に係る補正発明の構成を得ることは、単なる設計事項として十分になし得たものである。

(2)相違点2について
引用発明における「ボツクス」を「天板、底板、左右の側板、および背板」を連結した「前面開放の直方体」とすることは、相違点1について検討したとおり設計事項であるところ、そのように板材を組み合わせて直方体形状の物品を構成するに際して、底板と側板、天板と側板といった、垂直な連結を行う板材端部において、係合のためのL字状の切欠溝を設け、L字状をなす溝壁の一方及び他方の面に、係合する板材の2面が当接し支持される形とする連結態様は、例えば特開平7-54421号公報の【図5】及び【図7】にも示されるとおり周知技術であり、このような板材の垂直連結態様を、引用発明のボツクスにおける板材の垂直連結部に採用することは、位置合わせの容易という一般的な観点からしても、当業者にとって想到容易である。
その際、上記した特開平7-54421号公報【図5】及び【図7】の例では、シールドルームを構成するために、係合する垂直な板材の双方にL字溝を設け、また当該箇所には「端面板11」を「表面板12」の内側に設けているが、引用発明の如く木製合板によりゲーム機のボツクスを構成する場合に、上述したL字型の切欠溝という周知技術を適用するに際して、連結する物品のサイズや強度に応じて必要のない部材や構成を適宜省略することは設計的になし得る事項であり、強度の観点から端面板を内部に埋め込むことを省略し、また加工の手間の観点からL字型の溝を連結する板材の一方である側板及び背板の上下端全幅にのみ設けることとして、当該溝面に天板及び底板の端面及び端部内面が当接され支持される形として、相違点2に係る補正発明の構成を得ることは、当業者にとって容易である。

(3)相違点3について
電磁ノイズに対するシールドを完全とするために、シールド層を構成する金属材を、複数部材の連結部において当接面まで折り込み及び/あるいは延長して設け、金属材が互いに重なった状態で複数部材間で密接挟着されるようにすることは、例えば特開平6-120683号公報の【図2】に図示されるシールド部材の11b及び21b、実願昭63-105186号(実開平2-26293号公報)のマイクロフィルムにおける第5図及び第6図、特開平7-45982号公報の【図1】における側壁アース板80の折り曲げ端部82,83及びアースパターン54a、55a、並びに実願平4-52230号(実開平6-13197号公報)のCD-ROMの【図2】における銅メッキ鋼板13、13‘及び22にも見られるように、周知技術である。また、特開平7-54421号公報【図5】及び【図7】においても、「各表面板12・・・は、金属製の板材からなり」(段落【0017】)、「表面板12、12は、端面板11に沿って屈曲し」(段落【0019】)、当該金属板12がL字状係合部に重なって挟着されることが示されている。【図5】及び【図7】にはL字状係合部の一部に金属製のシールドテープ11tも図示されているが、シールドテープ11tは「介装することができ」(段落【0022】)るものであるから、表面板12相互の密着度合いに応じて適宜省略できることも明らかであり、省略した場合はL字型係合連結部において上記周知技術が採用された例を示すものとなる。
ここで、引用発明の金属箔によるシールド層(11)は、外部信号の進入を阻止するために電子制御部(7)を完全包囲するものであるから、ボツクス(1)を形成する合板の木製基材(9)の連結について相違点1及び2で検討した構成をとる場合においても、電磁シールドを完全なものとするために連結部における金属箔を相互に密着させることは当然に配慮すべき事項であり、そのために上記周知技術を採用して、側板及び背板については内面全体に加えてL字溝内に折り込んで金属箔を設け、天板及び底板側の金属箔もこれと当接する内面端部も含めて内面全体に金属箔を設けて、当接面において両金属箔が密接挟着されて電気的に隙間のない完全包囲のシールドとすることで、相違点3に係る補正発明の構成を得ることは、当業者にとって容易である。

(4)補正発明の独立特許要件の判断
相違点1-3の構成上の容易想到性は上述のとおりであり、これら相違点に係る補正発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
すなわち、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上述べたとおり、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反しているので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求についての判断

1.本願発明の認定
平成17年9月29日付け手続補正は当審において却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年3月3日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される、「第2 補正の却下の決定」の「1.補正内容」において(補正前)として示したとおりのものと認める。

2.引用刊行物記載の発明の認定
本願出願前に頒布された刊行物である、原査定の拒絶の理由に引用された引用例には、「第2 補正の却下の決定」の「4.引用刊行物記載の発明の認定」において認定したとおりの引用発明が記載されている。

3.本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
本願発明は補正発明に対して、「第2 補正の却下の決定」の「1.補正内容」で認定した補正がされる前のものであり、すなわち「ボックス」は単に「隣接する壁板材の一方の端面が他方の内面の端部に当接するようにして、複数の壁板材を連結して形成」され、金属箔は「各壁板材の内面の全体にそれぞれ貼設されるとともに、各壁板材間の連結部において前記一方の壁板材の端面側に折り込まれ、この折り込まれた金属箔と前記他方の壁板材の内面の金属箔とが互いに重なった状態で密接して壁板材間に挟着され」たというものである。
引用発明を補正発明と比較した場合の一致点及び相違点は「第2 補正の却下の決定」の「5.」で認定したとおりであるから、補正発明に対して上記の関係にある本願発明と引用発明を比較すると、両者は

「内部に電子制御部が組み込まれるボックスに、前記電子制御部の外周を取り囲むシールド層を構成する金属箔が貼設されて成る電子ゲーム機において、
前記ボックスは、複数の壁板材を連結して形成されており、
前記金属箔は、各壁板材の、少なくともボツクス内面となる箇所の全体にそれぞれ貼設されて、
成る電子ゲーム機」

である点で一致し、相違点1及び2に代えて次の相違点1‘で、また相違点3に代えて次の相違点3’で相違する。

<相違点1‘>
本願発明では壁板材の連結態様が「隣接する壁板材の一方の端面が他方の内面の端部に当接するように」したものであるのに対して、引用発明ではそのような記載がない点。

<相違点3‘>
本願発明では、金属箔が、壁板材の「内面の全体」に設けられるとともに、壁板材の連結部においては「各壁板材の内面の全体にそれぞれ貼設されるとともに、各壁板材間の連結部において前記一方の壁板材の端面側に折り込まれ、この折り込まれた金属箔と前記他方の壁板材の内面の金属箔とが互いに重なった状態で密接して壁板材間に挟着され」るのに対し、引用発明においては、少なくともボツクスの内面となる箇所の全体には設けられていても、連結部において最終的にボツクスの内面とならない箇所も含めて「壁板材の内面の全体」に設けられているかは明らかでなく、そこにおいて本願発明のような「挟着」状態であることは記載されていない点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1‘について
板材からボックスを形成するに際して、隣接する板材の一方の端面が他方の内面の端部に当接するようにして連結することは、最も単純な態様を単に選択したに過ぎず、引用発明にわざわざ記載がなくとも、そのようにすることは単なる設計事項というほかはない。

(2)相違点3‘について
電磁ノイズに対するシールドを完全とするために、シールド層を構成する金属材を、複数部材の連結部において当接面まで折り込み及び/あるいは延長して設け、金属材が互いに重なった状態で複数部材間で密接挟着されるようにすることは、原審の拒絶理由で示された特開平6-120683号公報、原査定の理由で示された特開平7-54421号公報にも示されるとおり、周知技術である。
引用発明の金属箔によるシールド層(11)は、外部信号の進入を阻止するために電子制御部(7)を完全包囲するものであるから、ボツクス(1)を形成する合板の木製基材(9)の連結について相違点1‘で検討した構成をとる場合においても、電磁シールドを完全なものとするために連結部における金属箔を相互に密着させることは当然に配慮すべき事項であり、そのために上記周知技術を採用して、金属箔を各壁板の内面全体、及び端面で当接する壁板材の端面側に折り込んで設け、当接面において両金属箔が密接挟着されて電気的に隙間のない完全包囲のシールドとすることで、相違点3’に係る本願発明の構成を得ることは、当業者にとって容易である。

(3)本願発明の進歩性
引用発明との相違点に係る本願発明の構成を得ることは、上に検討したとおりいずれも困難ではなく、そのようにして本願発明の構成を採用したことによる効果も格別のものとは認められない。
したがって、本願発明は原査定の理由に示された引用例に記載される引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-05 
結審通知日 2008-09-09 
審決日 2008-09-25 
出願番号 特願平7-338045
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎鉄 豊郎  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 有家 秀郎
森 雅之
発明の名称 電子ゲーム機  
代理人 鈴木 由充  

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