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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服20061033 | 審決 | 特許 |
不服20057335 | 審決 | 特許 |
不服200517013 | 審決 | 特許 |
不服200421684 | 審決 | 特許 |
不服200013562 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N |
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管理番号 | 1187305 |
審判番号 | 不服2005-24083 |
総通号数 | 108 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-14 |
確定日 | 2008-11-06 |
事件の表示 | 平成11年特許願第134831号「カタラーゼ遺伝子」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月21日出願公開、特開2000-316584〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,平成11年5月14日を出願日とする出願であって,その請求項1に係る発明は,平成17年10月3日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「ヴィブリオ・ルモイエンシス(Vibrio rumoiensis)S-1株の遺伝子であって,配列番号1の塩基配列からなるカタラーゼ遺伝子。」(以下,「本願発明1」という。) 2.引用文献 (2-1)引用文献1に記載された発明 原査定の拒絶の理由に刊行物1として引用された,本願出願日前の1997年に頒布された刊行物である日本植物学会大会研究発表記録 (1997) 61, p.268 (2aD2)(以下,「引用文献1」という。)には, (a)「Vibrio sp.S-1株(以下S-1株)は過酸化水素を含む工場排水中から分離され,mMオーダーの過酸化水素存在下でも生育可能な過酸化水素耐性菌である。」(第1?2行) (b)「カタラーゼの高発現が高濃度過酸化水素に対する耐性の主要因と考えられる。」(第3?4行) (c)「今回は,S-1株からのカタラーゼ遺伝子のクローニングを試みた。S-1株より精製したカタラーゼをリジルエンドペプチダーゼで処理し,得られたペプチド断片のアミノ酸配列を基に5種類のオリゴヌクレオチドを作成した。これらのオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い,S-1株のゲノムDNAを鋳型としてPCR法により327bpの増幅断片(pp-327)を得た。」(第5?8行) (d)「pp-327をプローブにしてEcoRI,EcoRV,SalIで処理したS-1株ゲノムDNAを用いゲノミックサザンハイブリダイゼーションを行ったところ,ポジティブバンドはそれぞれ1本しか見られなかった。」(第9?11行) (e)「S-1株ゲノムDNAのEcoRI処理で得られた5kbpのポジティブバンド付近のDNA断片を用いてミニゲノムライブラリーを作成した。pp-327をプローブとしてこのライブラリーをスクリーニングしたところ,約10,000個のプラークからおよそ60個のポジティブクローンが得られた。そのうちおよそ4.5kbpのインサートを持つクローン(クローンgt11A1)の塩基配列を決定したところ,大腸菌のHP11型カタラーゼ遺伝子と相同性が高く,特にhktEと約80%の相同性を持つ領域(1kbp)を含むことが明らかになった。」(第12?17行) (f)「クローンgt11A1はカタラーゼのN-末端に対応する塩基配列(約500bp)を書いていると考えられ,カタラーゼ遺伝子の全長の塩基配列はまだ決定されていない。」(第17?18行) と記載されている。 すなわち,引用文献1には,Vibrio sp.S-1株(以下S-1株)よりカタラーゼを精製してリジルエンドペプチダーゼで分解し,解析したアミノ酸配列よりプライマーを設計してS-1株ゲノムを鋳型としてPCRを行い,得られたDNA断片をプローブとしてEcoRIで処理したS-1株ゲノムDNAを用いてサザンハイブリダイゼーションにより,N末端部を欠損するカタラーゼ遺伝子を取得したことが記載されていると認める。 (2-2)引用文献2に記載された発明 また,原査定の拒絶の理由に刊行物2として引用された,本願出願日前の1999年1月に頒布された刊行物であるAppl. Environ. Microbiol. (Jan. 1999) 65, p.67-72(以下,「引用文献2」という。)には, (g)「S-1株が,漂白剤としてH_(2)O_(2)を使用する魚肉製品加工工場の排水漕から単離され,予備的な性質が研究された」(第70頁右欄下から3行目?最終行), 「結論として,表現型の性質,系統学的分析,DNA-DNAハイブリダイゼーションに基づき,S-1株は新種であることが確認され,Vibrio rumoiensisと命名される。」(第71頁左欄第1?4行) (h)「V.rumoiensis S-1株は生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センターにFERM P-14531株として寄託された。」(第72頁左欄第16?19行) (i)「V. rumoiensis S-1株と他の菌株の細胞抽出物中のカタラーゼ活性」(第70頁表2) (j)「そこで我々は,S-1株が1種以上のカタラーゼを有するのか調べた。そのために,細胞抽出物は超遠心分離処理され,上清はポリアクリルアミドゲル電気泳動された。結果はカタラーゼ活性を示す単一バンドを示した(図3)。最初の精製ステップの陰イオン交換クロマトグラフィーにおいて,粗精製可溶性フラクションがカラムに添加された時,カタラーゼ活性を示す単一ピークが検出された(データは示されていない)。」(第70頁右欄第7?13行) と記載されている。 すなわち,引用文献2には,分離された新種微生物S-1株の菌種を解析の結果,新種「Vibrio rumoiensis」と命名したこと,S-1株をFERM BP-14531株として寄託したこと,Vibrio rumoiensis S-1株は高いカタラーゼ活性を有すること,S-1株よりカタラーゼをポリアクリルアミドゲル電気泳動や陰イオン交換クロマトグラフィーにより精製したことが記載されていると認める。 3.対比 本願発明1の「配列番号1に関連する核酸」によってコードされるカタラーゼと引用文献2に記載のカタラーゼは,それぞれ同一の株に由来すること,及び,引用文献2にカタラーゼが単一のピーク及び単一のバンドを示したことが記載されていることから同一の物質であると認められる。 よって,本願発明1の「配列番号1の塩基配列からなるカタラーゼ遺伝子」と引用文献2に記載された事項を比較すると,両者は,ヴィブリオ・ルモイエンシス(Vibrio rumoiensis)S-1株由来のカタラーゼに関連するものである点で共通するが,前者は,配列番号1の塩基配列からなるカタラーゼ遺伝子であるのに対して,後者には,カタラーゼ遺伝子については記載されていない点で相違する。 4.判断 上記相違点について検討する。 (4-1)引用文献2には,ヴィブリオ・ルモイエンシス(Vibrio rumoiensis)S-1株由来のカタラーゼについて,陰イオン交換クロマトグラフィーやポリアクリルアミドゲル電気泳動により単一のピークないしバンドを示したことが記載されていることから,そのカタラーゼの遺伝子をクローニングして組換えにより当該酵素を製造しようとすることは,当業者にとって自明の技術的課題であり,また,引用文献1にはVibrio sp.S-1株(以下S-1株)よりカタラーゼを精製してリジルエンドペプチダーゼで分解し,解析したアミノ酸配列よりプライマーを設計してS-1株ゲノムを鋳型としてPCRを行い,得られたDNA断片をプローブとしてEcoRIで処理したS-1株ゲノムDNAを用いてサザンハイブリダイゼーションにより,N末端部を欠損するカタラーゼ遺伝子を取得したことが記載されているのであるから,当業者であれば,ヴィブリオ・ルモイエンシス(Vibrio rumoiensis)S-1株由来のカタラーゼの全長遺伝子をクローニングしようとし,そのための手段として引用文献1に記載された発明の方法を参考にすることは自然な発想である。 請求人は,引用文献2は,ヴィブリオ・ルモイエンシスS-1株の酵素抽出液が高いカタラーゼ活性を有することを記載しているが,この高カタラーゼ活性が,単一酵素(カタラーゼ)の活性に依存しているのか,あるいは酵素抽出液に含まれる複数成分の総合的活性に依存しているのかは,不明であり,ヴィブリオ・ルモイエンシスS-1株の高いカタラーゼ活性が単一酵素の非常に高い活性によるものであることは,本願出願日より後に明らかにされたことであることから,本出願日において,引用文献2によって高カタラーゼ活性を有する菌株の存在が公知であったとしても,当業者にとっては,それは高活性のカタラーゼ遺伝子の存在を保証するものではなかったことを主張している。 ところが,引用文献2と共通する著者が発表した引用文献1に,同じヴィブリオ属に属し,株の固有名「S-1」においても共通する菌株から,全長ではないがカタラーゼ遺伝子を取得したことが記載されているのであるから,当業者であれば,引用文献1に記載されるS-1株は,引用文献2に記載されるヴィブリオ・ルモイエンシス S-1株と同じもので,カタラーゼ遺伝子が当然に存在していると考えるものであり,請求人の主張する点で,当業者がカタラーゼ遺伝子をクローニングしようとすることを阻害するようなことはないものである。 (4-2)引用文献2には,最初の精製ステップの陰イオン交換クロマトグラフィーで精製した,粗精製のカタラーゼが記載され,これを引用文献1に記載されるように,精製してリジルエンドペプチダーゼで分解し,解析したアミノ酸配列よりプライマーを設計してS-1株ゲノムを鋳型としてPCRを行い,得られたDNA断片をプローブとしてEcoRIで処理したS-1株ゲノムDNAを用いてサザンハイブリダイゼーションにより,N末端部を欠損するカタラーゼ遺伝子を取得しようとするときに,慣用の遺伝子工学の手法などによっても困難であるステップは特に見出せず,カタラーゼ遺伝子は容易にクローニングできたものと認められる。 なお,この点について請求人は,様々な工程(実施例1に記載されているような「カタラーゼ精製」,「ペプチド抽出」,「アミノ酸配列決定」,「プライマー設計」,「PCR増幅」,「塩基配列決定」等)を経て,カタラーゼ遺伝子の部分配列に相当すると思われるプローブを調製し,プローブの調製に当たっては,各工程における多くの試行錯誤を必要としたのであり,プローブの調製一つをとっても,本願発明のカタラーゼ遺伝子は,決して容易に単離することが可能なものではないことを主張しているが,本願明細書の実施例の記載を検討しても,どの工程にどのような試行錯誤を必要としたか何ら明らかにされていないので,どのように困難であったか全く理解できず,請求人の主張は採用できるものでない。 (4-3)引用文献1には,N末端部を欠損するカタラーゼ遺伝子を取得したことが記載され,また請求人は,引用文献1に記載された方法とは異なる方法(制限酵素SalIで処理したDNA断片から目的遺伝子をクローニングする方法)を採用することによって,細菌からの全長カタラーゼ遺伝子の単離に成功したもので,本願発明は,引用文献1の方法では不可能であった全長カタラーゼ遺伝子の単離に成功したこと,すなわち技術的な困難性を克服した点において優れて進歩的な発明であることを主張しているので検討する。 全長ではなく,N末端部を欠損するものが得られたということは,遺伝子中にEcoRI認識部位があったことが当然に予測されるのであるから,EcoRIで部分分解して製造したゲノムライブラリーを対象にスクリーニングするとか,他の制限酵素を用いるなどすれば全長の遺伝子が容易に得られるものであり,また,染色体歩行として知られた,遺伝子工学の慣用の技術によっても,N末端部を容易に補うことができるのであるから,全長カタラーゼ遺伝子の単離が不可能であるとか困難であったとすることはできない。 (4-4) そして,本願発明1の奏する効果についても,酵素の遺伝子をクローニングすれば得られる効果にすぎず,引用文献の記載及び本願出願当時の技術常識から予測できない程度に格別顕著なものではない。 請求人は,産業上利用可能な状態としたという点において,格別顕著は効果を奏するものであることを主張しているが,当業者が容易に産業上利用可能な状態にできるものが,特許という独占権に値しないことはいうまでもないことである。 (4-5)小括 以上の理由により,本願発明1は引用例1?2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上の通りであるから,他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。 よって,結論の通り審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-05 |
結審通知日 | 2008-09-09 |
審決日 | 2008-09-25 |
出願番号 | 特願平11-134831 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C12N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小暮 道明、田中 公子 |
特許庁審判長 |
平田 和男 |
特許庁審判官 |
鵜飼 健 鈴木 恵理子 |
発明の名称 | カタラーゼ遺伝子 |
代理人 | 西澤 利夫 |