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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1187320
審判番号 不服2006-8766  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-02 
確定日 2008-11-06 
事件の表示 特願2003-111527「電気光学装置の駆動方法、電気光学装置および電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月11日出願公開、特開2004-317785〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年4月16日の出願であって、平成18年3月27日付け(同年4月4日発送。)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年5月30日付けで手続補正がされたところ、当審において、平成20年6月19日付け(同年7月1日発送。)で上記手続補正を却下するとともに、該手続補正の却下と同日付け(同年6月24日発送。)で拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、これに対して平成20年8月21日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1乃至4に係る発明は、平成20年8月21日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】 複数の走査線と複数の信号線の交差部に対応してマトリクス状に配置された複数の画素に設けられた複数の画素電極と、共通電極電位が供給される対向電極とを備え、前記各画素に、1フレームごとに前記共通電極電位を基準として極性反転するようにデータ信号を供給するように構成された電気光学装置の駆動方法において、
前記各フレームは、互いに周期の等しい第1のサブフィールドと第2のサブフィールドとを含み、
前記第1のサブフィールドにおいては、前記複数の走査線を選択して、前記データ信号を前記各画素に供給し、
前記第2のサブフィールドにおいては、前記各画素が供給された前記データ信号の電圧を保持している期間に、前記各画素を黒表示とする信号を前記複数の信号線に供給した後に、前記第1のサブフィールドにおける走査線の選択期間よりも短い期間で前記複数の走査線を走査して前記各画素を黒表示とする信号を前記各画素に供給すること
を特徴とする電気光学装置の駆動方法。」

第3 引用例記載の発明
当審拒絶理由で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特表平8-500915号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(1)「16.少なくとも実質的に透過状態と少なくともほぼ非透過状態とに駆動可能な光変調用画素の行および列のアレイと、前記表示パネルを照明して表示出力を生じる手段と、駆動手段であってこれに供給される所定のフィールドおよびライン速度を有するビデオ信号に従って前記画素を駆動することができる当該駆動手段とを具えるマトリックス表示システムの動作方法であって、前記画素の行が順次駆動され、前記供給されたビデオ信号の表示フィールドの表示情報が、ビデオ信号のフィールド周期よりかなり短い表示情報アドレス期間中に前記表示パネル内に書き込まれ、順次の表示情報アドレス期間がある時間間隔だけ分離されるマトリックス表示システムの動作方法において、前記表示パネルの表示フィールドが見る人に与えられる順次の期間が、ほぼ表示出力が生じない期間だけ分離されることを特徴とするマトリックス表示システムの動作方法。
・・・
21.請求項16に記載の方法において、前記配列の画素を、前記順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において、ほぼ非透過表示状態に駆動することを特徴とする方法。」(公報第4頁第14行-第5頁第12行。)

(2)「本発明による方法の第2の好適な実施例において、順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において、画素の配列を、ほぼ非透過表示状態に駆動する。
この第2の実施例において、順次の表示情報アドレス期間の間の時間間隔において画素をほぼ非透過、すなわち黒に駆動することによって、順次の表示フィールドの見る人への表示の間に上述した「暗い」期間が挿入され、知覚される動いている物の解像度が改善される。」(公報第11頁第2行-同頁第7行。)

(3)「図1および2を参照して、本表示システムは、ビデオ、例えばTVや画像を表示しようとするものであり、各行にn個の画素が水平に配置されたm行から構成される画素の行および列の配列を有するアクティブマトリックスアドレス液晶表示パネル10を各々具える。
表示パネル10は、各画素12が開閉装置として動作するTFT11に関連しており、且つ、行および列アドレス導線14および16の組の交点に各々隣接して配置されている、従来型のTFT型パネルを具える。同じ行の画素に関連する全てのTFT11のゲート端子を、共通列導線14に接続し、この導線には動作時に選択(ゲート)信号が供給される。さらに、同じ列の全ての画素に関連するソース端子を共通列導線16に接続し、データ(ビデオ情報)信号を供給する。TFTのドレイン端子を、画素の一部を形成し、この画素を規定する各々の透明画素電極18に各々接続する。行および列導線14および16と、TFT11および電極18とを、例えばガラスである透明プレート上に全て支える。このプレートと平行に、且つ分離して、パネルの全ての画素に共通の電極を構成する透明導電層がその上に形成された他の透明プレートがある。ツイストネマチック液晶材料をこの2枚のプレートの間に配置し、この2枚のプレートの周囲を適切に密封する。従来の方法においては、向かい合ったプレートに偏光層を設ける。
パネル10を、開閉装置であるダイオードまたはMIMのような2端子非線形装置を使用し、行および列アドレス導線の組が各々のプレート上に設けられた既知の形式のものとしてもよい。」(公報第13頁第12行-第14頁第2行)

(4)「LC材料の電気機械的な劣化を避けるために、既知の習慣に従って画素に供給される駆動信号の極性を周期的に反転する。しかし、簡単にするためにこれを達成する手段を図1および2に示していない。この極性反転を、表示パネルのフィールドが完結した後毎に行うことができる。」(公報第15頁第7行-同頁第10行。)

(5)「ここで図2のシステムの実施例を考えると、画素を、TVフィールド周期の他の半分内に同じ表示情報によって再びアドレスする欧州特許出願公開明細書第0487140号に記述されている方法とは異なり、上述したようなTV信号フィールド周期の半分から成る表示情報アドレス期間内で1TVフィールドに関するデータを表示パネル10に書き込むのに続いて、画素の配列を、TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に再びアドレスしてほぼ非透過(黒い)状態に駆動する。これを達成するために、TVフィールド期間の後半に等しいこの期間の間に、間隔の開始とほぼ一致する第1の行導線の選択信号によって、選択信号を行駆動回路20によって各行導線に順番に再び供給する。この期間が続いている間、画素をほぼ非透過状態に駆動するように選択される予め定めた基準電圧VBを列導線16の各々に印加する。基準電圧を、列駆動回路22の出力端子と列導線の組との間に接続され、回路21によって供給される切り換え信号Sの制御のもとに、列導線を行駆動回路の出力と基準電圧との間で切り換える切り換え回路35によって印加する。行導線を、あらかじめ、画素の行が時間間隔の終了時に最終行が完了するまで順番にほぼ非透過状態に設定されるように、選択信号によって同じ速度において走査する。したがって1TVフィールド周期において、2つの表示情報アドレス期間、すなわち、画素を液晶表示状態に駆動する表示情報アドレス期間と、それに続く、画素をほぼ非透過状態に駆動する時間間隔とが存在する。
TVフィールド期間の終わりにおいて、再びTV信号のフィールド速度の2倍の速度において、通常の2倍の速度における行導線の走査に同期して次のTVフィールドを第1の記憶装置にロードしている間、次のTVフィールドに関するデータ信号が他の記憶装置から回路24に読み出されるように、切り換えスイッチ28および32を動作する。この次のフィールドを表示パネル内にロードした後、以前のようにTVフィールド周期の残りの後半内で、ほぼ非透過表示状態に再び駆動する。この動作方法を、順次のTVフィールドに対して繰り返す。
したがって、表示パネルの動作は、各々がTV信号フィールド周期のほぼ半分、例えば10msに相当する連続したほぼ等しい期間を必要とし、一つ置きの期間は、画素が各々のTVフィールドに関する表示情報によってロードされる間の第1の表示パネルフィールド期間を構成し、それらの間の時間間隔は、配列の画素を黒い状態に駆動する間の第2の表示パネルフィールド期間を構成する。これを図4に図式的に示し、ここでここでTは時間を表し、F(A)からF(D)は供給されたTV信号VSの4つの連続するフィールド期間を示す。表示パネルの動作期間の相対的なタイミングDPは、f(A)からf(C)が第1の表示パネルフィールド(表示情報アドレス)期間を示し、期間f′がそれらの間の第2の表示パネルアドレス期間を示す。」(公報第18頁第7行-第19頁第13行。)

(6)「表示パネルの第1および第2アドレス期間(図4におけるfおよびf′の各々)の相対的な持続時間も、ある程度変化させることができる。上述したように、これらの期間の各々は、TV信号のフィールド周期(F)のほぼ半分に相当する。 しかしながら、パネルアドレス期間fおよびf′を、例え複雑な駆動になるとしても、例えばおのおのがTVフィールド周期の1/3および2/3、またはその逆となるように異ならせることができる。
特に本実施例において、画素の行を、時間間隔内に、時間間隔の開始および終了の各々によって、第1および最終行をほぼ同時に設定することによって行を交互に走査することによって非透過状態に設定する。しかしながら、画素をこの状態に駆動する他の方法を使用することもできる。例えば、行を、連続した行の組を順番に、またはできるかぎりほぼ全て同時に設定することができる。しかしながら、これらの後者の方法は、行駆動回路20を変更する必要がある。
さらに、画素の非透過状態への駆動は、間隔の開始時に始める必要はない。代わりに、図4に示すようなより短い予め定めた遅延時間を、画素をこの必要な状態に設定する前に、時間間隔の開始時に挿入してもよい。この遅延時間は、パネルが照明されている間の期間f(A)、f(b)、その他における、全ての画素が表示状態に設定された後に続く休止期間を構成する。この遅延時間dの終了時は、図4中に破線で示されるように、照明期間の終了時と一致させて選んでもよい。画素をこの間隔の残りの部分内でこの状態にするには、より速い走査速度を必要とする。これは行駆動回路をより高いクロック速度によって動作することによって達成することができる。」(公報第23頁第8行-同頁第28行。)

上記摘記事項(1)及び(3)並びに図2の記載から、m行の行導線(14)とn列の列導線(16)の交点に各々隣接してマトリックス状に配置された複数の画素(12)に設けられた複数の透明画素電極(18)と、パネルの全ての画素(12)に共通の電極を構成する透明導電層とを備えてなるアクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルの駆動方法を、読み取ることができる。

上記摘記事項(4)から、各画素(12)に、表示パネルのフィールドが完結した後毎に各画素(12)に供給される駆動信号の極性を周期的に反転して供給することを、読み取ることができる。

上記摘記事項(5)から、TV信号フィールド周期の半分から成る表示情報アドレス期間内で1TVフィールドに関するデータを表示パネル(10)に書き込み、続いて、TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に再びアドレスしてほぼ非透過(黒い)状態に駆動する2つの期間を、読み取ることができる。

上記摘記事項(5)から、表示情報アドレス期間内においては、m行の行導線(14)を順次選択して、1TVフィールドに関するデータを各画素(12)に書き込むことを、読み取ることができる。

上記摘記事項(5)及び(6)から、TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間においては、短い予め定めた遅延時間を前記TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間の時間間隔の開始時に挿入し、表示情報アドレス期間のときよりも、より速い走査速度でm行の行導線(14)を順次走査して各画素(12)をほぼ非透過(黒い)状態に駆動することを、読み取ることができる。

上記摘記事項(1)乃至(6)及び図面の記載からみて、引用例1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「m行の行導線(14)とn列の列導線(16)の交点に各々隣接してマトリックス状に配置された複数の画素(12)に設けられた複数の透明画素電極(18)と、パネル上の全ての画素(12)に共通の電極を構成する透明導電層とを備え、前記各画素(12)に、表示パネルのフィールドが完結した後毎に各画素(12)に供給される駆動信号の極性を周期的に反転して供給するように構成してなるアクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルの駆動方法において、
TV信号フィールド周期の半分から成る表示情報アドレス期間内で1TVフィールドに関するデータを表示パネル(10)に書き込み、続いて、TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に再びアドレスしてほぼ非透過(黒い)状態に駆動する、2つの期間を有し、
表示情報アドレス期間内においては、m行の行導線(14)を順次選択して、1TVフィールドに関するデータを各画素(12)に書き込み、
TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間においては、短い予め定めた遅延時間を前記TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間の時間間隔の開始時に挿入し、表示情報アドレス期間のときよりも、より速い走査速度でm行の行導線(14)を順次走査して各画素(12)をほぼ非透過(黒い)状態に駆動するアクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルの駆動方法。」(以下、「引用発明」という。)

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明の「m行の行導線(14)」は、本願発明の「複数の走査線」に相当し、以下同様に、「n列の列導線(16)」は「複数の信号線」に、「複数の透明画素電極(18)」は「複数の画素電極」に、「透明導電層」は「対向電極」に、それぞれ相当するから、引用発明の「m行の行導線(14)とn列の列導線(16)の交点に各々隣接してマトリックス状に配置された複数の画素(12)に設けられた複数の透明画素電極(18)と、パネル上の全ての画素(12)に共通の電極を構成する透明導電層とを備え」は、本願発明の「複数の走査線と複数の信号線の交差部に対応してマトリクス状に配置された複数の画素に設けられた複数の画素電極と、共通電極電位が供給される対向電極とを備え」に相当する。
(2)引用発明の「表示パネルのフィールドが完結した後毎」は、本願発明の「1フレームごと」に相当し、以下同様に、「駆動信号」は「データ信号」に、「アクティブマトリックスアドレス液晶表示パネル」は「電気光学装置」に、それぞれ相当するから、引用発明の「各画素(12)に、表示パネルのフィールドが完結した後毎に各画素(12)に供給される駆動信号の極性を周期的に反転して供給するように構成してなるアクティブマトリックスアドレス液晶表示パネルの駆動方法」は、本願発明の「各画素に、1フレームごとに前記共通電極電位を基準として極性反転するようにデータ信号を供給するように構成された電気光学装置の駆動方法」と、「各画素に、1フレームごとに極性反転するようにデータ信号を供給するように構成された電気光学装置の駆動方法」との限りにおいて一致する。
(3)引用発明の「TV信号フィールド周期の半分から成る表示情報アドレス期間」と「TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間」は、本願発明の「互いに周期の等しい第1のサブフィールドと第2のサブフィールド」に相当するから、引用発明の「TV信号フィールド周期の半分から成る表示情報アドレス期間内で1TVフィールドに関するデータを表示パネル(10)に書き込み、続いて、TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に再びアドレスしてほぼ非透過(黒い)状態に駆動する、2つの期間を有し」は、本願発明の「前記各フレームは、互いに周期の等しい第1のサブフィールドと第2のサブフィールドとを含み」に相当する。
(4)引用発明の「表示情報アドレス期間内においては、m行の行導線(14)を順次選択して、1TVフィールドに関するデータを各画素(12)に書き込み」は、本願発明の「第1のサブフィールドにおいては、前記複数の走査線を選択して、前記データ信号を前記各画素に供給し」に相当する。
(5)引用発明の「短い予め定めた遅延時間を前記TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間の時間間隔の開始時に挿入」することによって、残りの半分から成る期間内のデータ信号の電圧を保持している短い予め定めた遅延時間は、本願発明の「各画素が供給された前記データ信号の電圧を保持している期間」に相当することから、引用発明の「TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間においては、短い予め定めた遅延時間を前記TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間の時間間隔の開始時に挿入し、表示情報アドレス期間のときよりも、より速い走査速度でm行の行導線(14)を順次走査して各画素(12)をほぼ非透過(黒い)状態に駆動する」は、本願発明の「第2のサブフィールドにおいては、前記各画素が供給された前記データ信号の電圧を保持している期間に、前記各画素を黒表示とする信号を前記複数の信号線に供給した後に、前記第1のサブフィールドにおける走査線の選択期間よりも短い期間で前記複数の走査線を走査して前記各画素を黒表示とする信号を前記各画素に供給する」と、「第2のサブフィールドにおいては、前記各画素が供給された前記データ信号の電圧を保持している期間の後に前記第1のサブフィールドにおける走査線の選択期間よりも短い期間で前記複数の走査線を走査して前記各画素を黒表示とする信号を前記各画素に供給する」との限りにおいて一致する。

したがって、本願発明と引用発明の両者は、 以下の一致点で一致し、以下の相違点1、2で相違する。

<一致点>
「複数の走査線と複数の信号線の交差部に対応してマトリクス状に配置された複数の画素に設けられた複数の画素電極と、共通電極電位が供給される対向電極とを備え、前記各画素に、1フレームごとに極性反転するようにデータ信号を供給するように構成された電気光学装置の駆動方法において、
前記各フレームは、互いに周期の等しい第1のサブフィールドと第2のサブフィールドとを含み、
前記第1のサブフィールドにおいては、前記複数の走査線を選択して、前記データ信号を前記各画素に供給し、
前記第2のサブフィールドにおいては、前記各画素が供給された前記データ信号の電圧を保持している期間の後に前記第1のサブフィールドにおける走査線の選択期間よりも短い期間で前記複数の走査線を走査して前記各画素を黒表示とする信号を前記各画素に供給する電気光学装置の駆動方法。」

<相違点1>
本願発明では、各画素に、1フレームごとに「共通電極電位を基準として極性反転するようにデータ信号を供給」しているのに対して、引用発明では、各画素(12)に、透明導電層の電位を基準として極性反転するように駆動信号を供給しているのか明確ではない点。

<相違点2>
本願発明では、各画素が供給された前記データ信号の電圧を保持している期間に、「前記各画素を黒表示とする信号を前記複数の信号線に供給」しているのに対して、引用発明では、該期間にn列の列導線がどのような状態となっているのか不明である点。

第5 当審の判断
上記相違点1について検討する。
当審拒絶理由で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-312466号公報(以下、「引用例2」という。)には、

(1)「また各ラインL1?Lmにそれぞれ例えばNチャンネルFETからなるスイッチング素子M11,M21・・・Mn1,M12,M22・・・Mn2,・・・M1m,M2m・・・Mnmの一端が接続される。なおnは水平走査線数に相当する数である。このスイッチング素子M11?Mnmの他端がそれぞれ液晶セルC11,C21・・・Cnmを通じてターゲット端子(3)に接続される。」(公報第2頁左上欄第12行-19行。)

(2)「なお液晶で表示を行う場合には、一般にその信頼性、寿命を長くするため交流駆動が用いられる。そこで例えばテレビ画像の表示においては、1フイールドまたは1フレームごとに映像信号を反転させた信号を入力端子(1)に供給する。すなわち上述の入力端子(1)には第7図Eに示すように1フイールドまたは1フレームごとに反転された信号が供給される。」(公報第2頁左下欄第15行-同頁右下欄第2行。)

(3)図面の第6図及び第7図には、対向電極にターゲット電圧を供給するとともに、前記ターゲット電圧を基準として極性反転する映像信号を供給してなる構成が、見て取れる。

上記摘記事項(1)及び(2)並びに図面の記載によれば、液晶表示装置の駆動方法において、対向電極にターゲット電圧を供給するとともに、前記ターゲット電圧を基準として極性が反転した映像信号を各画素に供給する技術は、周知技術である。
してみると、上記引用発明と上記周知技術は、共に液晶表示装置の駆動方法に関する発明である点で共通していることから、上記引用発明において、各画素の極性を反転する基準として、上記周知技術を採用することに特段の困難性はない。
よって、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明に上記周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得たものである。

次に、上記相違点2について検討する。
当審拒絶理由で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-11032号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0055】信号線プリチャージは、画像信号の供給の直前に行われ、そのプリチャージ電圧の極性は、図26(a),(b)のような液晶の反転駆動の極性に対応して周期的に変化しなければならない。
【0056】本実施の形態では、第1のプリチャージ電位(高レベル電位)Vpcaと第2のプリチャージ電位(低レベル電位)Vpcbとを用意しておき、スイッチ(SW)を適宜に切り換えることにより、画像信号の極性に合致するように極性反転を行いながら信号線(S)をプリチャージする。つまり、信号線(S)の電位変化は、例えば、図1(b)に示すように周期的に変化する(周期T1)。」

(2)「【0075】(2)第2の実施の形態
本発明の信号線プリチャージ方法の第2の実施の形態が図2(b)および図3に示される。
【0076】本実施の形態の基本的動作は、図1(a)?(c)に示したものと同じである。但し、本実施の形態では、あらかじめ用意するプリチャージ用電位VA,VBの値を、信号線の実際のプリチャージ電位PV1,PV2より高く設定しておき、信号線とプリチャージ線との接続時間を制御することにより電荷の移動量(電荷の積分値=電流量)を制御して信号線を所望の電圧にプリチャージするものである。
【0077】本実施の形態では、図3に示すように、スイッチSWの信号線(S)との接続時間を、PWM回路60から出力されるパルスのパルス幅により制御する。PWM回路60には、タイミング制御回路70からのタイミング信号と、パルス幅制御信号CSが入力されるようになっている。
【0078】図2(a),(b)を用いて、本実施の形態のプリチャージ動作を説明する。図2(a)に示すように、走査線反転駆動により、画素22,24,26を順次に「黒」表示する場合を考える。
【0079】図2(b)のように、正極性の黒レベルを「B1」,負極性の黒レベルを「B2」とした場合、正極性のプリチャージ用電位VA,負極性のプリチャージ用電位VBの絶対値はそれぞれ、各黒レベルB1,B2の絶対値よりも大きく設定されている。
【0080】つまり、信号線とプリチャージ用電位との差電圧を大きくしておき、信号線の充放電を高速化するものである。黒レベルB1,B2に達した時点で図3のスイッチSWをオフすれば、図2(b)の下側に示すように、プリチャージに要する期間は「T2」,「T3」となり、図1の場合よりも短縮される。
【0081】なお、「プリチャージ用電位」という用語は、プリチャージのために用意される電位のことであり、信号線が実際にプリチャージされたときの電位とは区別されるものである。」

(3)「【0092】信号線のプリチャージは、水平選択期間の直前の水平ブランキング期間において行われる。」

上記摘記事項(1)乃至(3)によれば、空き時間である水平ブランキング期間において次に印加する画像信号に対応する信号を複数の信号線にプリチャージすることにより電圧応答の高速化を図るような技術は、周知技術にすぎない。一方、液晶表示装置の駆動に関する技術分野において、電圧応答の高速化を図り、高品位の表示を得るとの技術課題は、自明の技術課題にすぎないことから、上記引用発明において、上記周知技術を採用し、空き時間である遅延時間に、すなわち、各画素が供給されたデータ信号の電圧を保持している期間に、次に印加する画像信号に対応した信号である黒レベル信号を複数の信号線にプリチャージすることにより、電圧応答の高速化を図る構成を想到することは、当該技術分野の専門家にとって通常の創作能力の発揮程度のことにすぎない。
してみると、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、上記引用発明に上記周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

そして、本願発明の奏する効果も、引用例1の記載及び周知技術から当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件出願の請求項1に係る発明(本願発明)は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余の請求項2乃至4に係る発明についての判断を示すまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-09 
結審通知日 2008-09-16 
審決日 2008-09-24 
出願番号 特願2003-111527(P2003-111527)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱本 禎広  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 西島 篤宏
山川 雅也
発明の名称 電気光学装置の駆動方法、電気光学装置および電子機器  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 須澤 修  

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