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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A45D
管理番号 1187321
審判番号 不服2006-9153  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-08 
確定日 2008-11-06 
事件の表示 特願2002-164585号「パッケージング及び(または)塗布装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年5月7日出願公開、特開2003-125846号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年6月5日(パリ条約による優先権主張2001年6月5日、フランス)の出願であって、平成18年2月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年5月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

第2.平成18年5月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年5月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「製品を取り上げるのに適した塗布部材の一部で、製品を塗布する複数の繊維と、塗布部材のハンドルとを備え、化粧品またはケア製品を塗布する装置において、
繊維の少なくとも一つが、粒子の重量と少なくとも等しい重量を有する、製品に含まれる量の液体と、製品に含まれる液体に溶解した状態の成分との少なくとも一つを吸収することの、少なくとも一つが可能な形態をした粒子を備えることを特徴とする装置。」(下線部は、補正箇所を示す)

2.補正の目的の適否
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「製品を塗布する複数の繊維」に、「製品を取り上げるのに適した塗布部材の一部で」との限定を付与し、「複数の繊維を備えた装置」に、「塗布部材のハンドル」「を備え」及び「化粧品またはケア製品を塗布する」との限定を付与するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、欧州特許出願公開第1099394号明細書(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.“Globalement ces applicateurs de l'art anterieur donnent des resultats satisfaisants. Cependant, notamment lors de leur chargement avec un produit determine, il est apparu souhaitable de disposer d'un applicateur permettant d'obtenir un maquillage a la fois tres charge et tres homogene, et ceci pour des produits de nature tres variable (hydrophile - lipophile) et. dont l'autonomie soit superieure a celle des applicateurs connus.En effet, les applicateurs de mascara cites ci-dessus peuvent presenter l'inconvenient de perdre une bonne partie de leur charge en produit, notamment lorsque l'organe d'application est soumis a une operation d'essorage, prealable a l'application du produit. Dans le cas d'une brosse de mascara, cet effet est d'autant plus sensible que les extremites libres des poils se trouvent raclees par une levre d'essorage, tandis que le centre de la brosse presente un amas de produit risquant de secher entre deux utilisations.”(段落[0008])(フォント制限のためにアクセントを省略して示す。以下同様。)
『一般的には、従来技術に属するこれらのアプリケータは満足な結果を与えるものである。しかし、広い範囲の特性(親水性-親油性)を有し、従来のアプリケータよりも親和性の高い、特定の製品を非常に厚くかつ均質にメイクアップすることができるアプリケータが必要とされていた。問題は、前出のマスカラ用アプリケータは、特に製品を塗布する前にこすり落とす操作をすると載っている製品の量がアンバランスになることである。マスカラ用ブラシの場合は、製品を塗布する前に剛毛の端部が余剰分を落とすための縁部でこすり落とされ、ブラシの中央部には製品が多量に含まれるので使用されない間に製品が乾燥してしまう可能性がある。』(『』内は当審による訳)
イ.“L'invention a pour but, de fournir des moyens universels pour un ensemble d'application permettant de maitriser le taux de chargement et la vitesse d'ecoulement du produit lors de l'application, quelle que soit la nature du produit. L'invention y parvient par une modification de l'etat de la surface des poils constituant l'applicateur. On ameliore ainsi la retention du produit, et on cree une affinite appropriee entre le produit et les poils.
Aussi, la presente invention a pour objet un ensemble d'application comportant un reservoir contenant un produit cosmetique et un applicateur, ledit applicateur comprenant un element de prehension formant un moyen d'ouverture/fermeture du reservoir, et solidaire d'un organe d'application qui, en position fermee de l'ensemble, est dispose a l'interieur du reservoir, ledit organe d'application comprenant un arrangement de poils dont au moins une partie contient des particules formant des asperites faisant saillie, de maniere aleatoire, sur tout ou partie de la surface desdits poils. ”(段落[0012]、[0013])
『本発明は、アプリケータを構成する剛毛の表面仕上げを変更することによってこの目的を達成する。この方法によって製品の保持力が改善され、製品と剛毛との間に適当な親和性が達成される。
従って、本発明の対象の1つは化粧製品を収容するリザーバとアプリケータを有するアプリケータ器具である。アプリケータは、リザーバの開閉手段を構成するとともに器具を閉じた状態ではリザーバの中に収容される、アプリケータ部材に取り付けられた把持部を有する。アプリケータ部材は、少なくともそのいくつかは、剛毛の全表面又は一部の表面から不規則に突出して表面に凹凸を形成する粒子を含有する剛毛配列を有する。』(『』内は当審による訳)
ウ.“Avantageusement, les particules utilisables pour la realisation des poils sont choisies parmi les particules d'origine minerale, vegetale ou synthetique. De preference, on choisit ces particules parmi les particules globulaires, lamellaires ou fibreuses.
Des essais effectues par la demanderesse ont montre qu'on pouvait obtenir des bons resultats, en choisissant un rapport compris entre 1,05 et 1,4, entre le diametre moyen d'un cercle dans lequel s'inscrit la section des poils au sommet des asperites, et le diametre moyen d'un cercle dans lequel s'inscrit la section des poils a la base des asperites.
A titre d'exemples non limitatifs, on peut citer les particules de mica, de carbonate de Ca, de ZnO, de TiO2, de MgO, de Al2O3, de coton, de cellulose, de silice, de silicates, de talc, d'argiles, d'uree/formaldehyde; de la poudre de bois, de graphite, de noir de carbone, d'oxydes de fer ou de metaux cosmetiquement compatibles, et leur melanges.”(段落[0021]?[0023])
『好ましくは、剛毛に使用することができる粒子は、無機材料、植物性又は合成材料の粒子である。粒子は、球状、平板状又は細長い形状の粒子である。
出願人が実施した試験によれば、剛毛の凹凸頂部が内接する円の直径と剛毛の凹凸基部が内接する円の直径の比が1.05から1.4の間のときに良好な結果が得られた。
これらに限定されるわけではないが、粒子としては、例えば、CaCO_(3),ZnO,TiO_(2),MgO,Al_(2)O_(3)、コットン、セルロース、シリカ、シリケート、タルク、粘土、ユリア樹脂、木粉、グラファイト、カーボンブラック、酸化鉄、化粧料として許容できる金属の粒子、あるいはこれらの混合物を例示することができる。』(『』内は当審による訳)
エ.“ En reference a la figure 1, on voit un ensemble d'application de mascara 1, d'axe longitudinal X, pour l'application d'un produit M, contenu dans un reservoir cylindrique 2, et equipe d'un applicateur 3. L'applicateur 3 est solidaire d'un bouchon 3a, apte a etre fixe, par vissage, sur le col 21 du reservoir et servant d'element de prehension. Le col 21 comporte un filetage externe 22, apte a cooperer avec un filetage complementaire 3b realise sur une portion inferieure de la surface interne du bouchon 3a. Le bouchon 3a presente une forme generale cylindrique allongee, permettant une prise en main aisee. Le bouchon 3a est pourvu d'une tige centrale 5 emergeant du cote inferieur du bouchon 3a. Cette tige 5 presente une extremite inferieure 5a sur laquelle est fixe, par exemple par collage ou emboitage, un organe d'application 4.”(段落[0039])
『図1には、長手方向の軸Xを有し、円筒状の容器2に収容された製品Mを塗布するための、アプリケータ3を具備するマスカラ用アプリケータ器具1が示されている。アプリケータ3は、容器のネック部21にねじ止めすることができる、把持部でもあるストッパ3aに固定されている。ネック部21の外部には、ストッパ3aの下部の内周面に形成された対応するネジの溝3bと螺合するネジ溝22が形成されている。ストッパ3aは全体としては縦長の円筒状であり、手に持ちやすい形状である。ストッパ3aはストッパ3aの下部から突出する中央支持軸5を有する。この軸5の下端部5aにはアプリケータ部材4が例えば接着又は圧入により固定されている。』(『』内は当審による訳)
オ.“L'organe d'application 4 montre sur la figure 1 est une brosse pour l'application de mascara sur les cils. Une telle brosse comprend une ame 4a allongee, formee par torsadage de deux branches d'un fil metallique prealablement replie en U. L'ame 4a est fixee par emmanchement a force, a l'extremite 5a de la tige 5. Des poils 9 sont implantes radialement entre les fils formant l'ame 4a. Lorsque les branches du fil sont torsadees, les poils 9 sont serres et maintenus entre les spires de l'ame 4a. La loupe A montre une vue agrandie d'un poil presentant des asperites B.
Ces asperites sont obtenues par incorporation de particules P dans la matiere constituant les poils 9, de maniere a former des micro-bossages B repartis de maniere aleatoire sur la surface des poils.”(段落[0041]、[0042])
『アプリケータ部材4は図1に示されているように睫にマスカラを塗布するためのブラシである。このブラシは、予めU字型に折り曲げられた2つの金属製の枝をより合わせて形成された細長いコア4aを有する。このコア4aは支持軸5の端部5aに圧入されている。剛毛9はコア4aを構成する金属の間に放射方向に植え込まれ、コア4aの間に挟まれて把持されている。ワイアを構成する金属を互いによりあわせるときに、剛毛9はコア4aの間に挟まれて保持される。詳細部Aは、凹凸Bを有する剛毛の拡大図である。
この凹凸は剛毛9を形成する材料に粒子Pを混ぜて、剛毛の全表面に渡ってランダムに微細なこぶBを突出させることによって形成されている。』(『』内は当審による訳)

図1及び上記オの記載事項から、アプリケータ部材4は複数の剛毛9を備えており、該剛毛9はアプリケータ部材4の一部であるといえる。
これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

「アプリケータ部材4の一部である、複数の剛毛9と、
ストッパ3aとを備えた、
マスカラ用アプリケータ器具1において、
剛毛9が、コットン、セルロース、シリカ、シリケート、タルク、粘土、木粉等である粒子Pを含有するマスカラ用アプリケータ器具1。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明1の「アプリケータ部材4」は、本願補正発明の「製品を取り上げるのに適した塗布部材」に相当し、以下同様に、「複数の剛毛9」は「製品を塗布する複数の繊維」に、「ストッパ3a」は「塗布部材のハンドル」に、「マスカラ用アプリケータ器具1」は「化粧品またはケア製品を塗布する装置」及び「装置」に、「含有する」は「備える」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「粒子P」は、コットン、セルロース、シリカ、シリケート、タルク、粘土、木粉が吸水性の材料であるから、本願補正発明の「粒子」とは、製品に含まれる液体を吸収する粒子という点で共通している。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「製品を取り上げるのに適した塗布部材の一部で、製品を塗布する複数の繊維と、
塗布部材のハンドルとを備え、
化粧品またはケア製品を塗布する装置において、
繊維の少なくとも一つが、製品に含まれる液体を吸収する粒子を備える装置。」

そして、両者は次の相違点で相違する。
(相違点)
粒子が吸収する液体の量に関して、本願補正発明は、粒子の重量と少なくとも等しい重量を有するであるのに対し、引用発明は、どの程度であるのか不明である点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
引用発明は、上記アの記載事項が示すように、化粧を均質にしやすくするためや、乾燥をしにくくするために、親水性等の性質を改善することを課題としており、粒子の吸水性を高めて親水性をよくすることは、必要に応じて適宜なし得る程度のことであるから、引用発明において、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、拒絶査定時の明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「製品を塗布するため複数の繊維を備えた装置において、
繊維の少なくとも一つが、粒子の重量と少なくとも等しい重量を有する、製品に含まれる量の液体と、製品に含まれる液体に溶解した状態の成分との少なくとも一つを吸収することの、少なくとも一つが可能な形態をした粒子を備えることを特徴とする装置。」

第4.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記3-1に記載したとおりである。

第5.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、「製品を塗布する複数の繊維」の限定事項である「製品を取り上げるのに適した塗布部材の一部で」との構成と、「複数の繊維を備えた装置」の限定事項である「塗布部材のハンドル」「を備え」及び「化粧品またはケア製品を塗布する」との構成とを省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記3-3に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-05 
結審通知日 2008-06-11 
審決日 2008-06-24 
出願番号 特願2002-164585(P2002-164585)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A45D)
P 1 8・ 575- Z (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 氏原 康宏  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 豊永 茂弘
八木 誠
発明の名称 パッケージング及び(または)塗布装置  
代理人 浜野 孝雄  
代理人 森田 哲二  
代理人 平井 輝一  

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