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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1187334
審判番号 不服2006-19205  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-31 
確定日 2008-11-06 
事件の表示 平成11年特許願第 14537号「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月 4日出願公開、特開2000-214837〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年1月22日の出願であって、平成18年7月24日付け(発送日平成18年8月1日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年8月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成18年8月31日付けの手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成18年8月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

2 理由
(1)本件補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲である、
「【請求項1】 全体の処理を行う中央処理装置と、
表示用の表示部と、
第1および第2画像メモリと、
前記中央処理装置と通信を行う通信制御部、前記表示部で画像表示を行う際に使用される制御信号を生成する制御信号生成部、前記第1および第2画像メモリに対するアクセス用のアドレスを生成するアドレス生成部、前記制御信号およびアドレスを用いて前記第1および第2画像メモリの一方にアクセスを行うメモリアクセス部、前記第1および第2画像メモリをそれぞれ交互に書き込み用および読み出し用のいずれかの用途に切り換えるための切換信号を出力する切換信号出力部、前記通信制御部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在するとともに前記メモリアクセス部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在し前記切換信号に応じて前記第1および第2画像メモリの一方を読み出し用として前記メモリアクセス部に接続するとともに前記第1および第2画像メモリの他方を書き込み用として前記通信制御部に接続する切換部、および前記制御信号および前記メモリアクセス部を介して読み出される画像データを前記表示部に同期をとって出力する出力同期部により構成され、前記表示部に画像を表示する際に使用される画像データを前記画像メモリに記憶させるとともに、前記制御信号の生成および画像データの読み出しを自動的に行って、これら制御信号および画像データを周期的に前記表示部に出力する表示制御部と
を備える表示装置。
【請求項2】 全体の処理を行う中央処理装置と、
表示用の表示部と、
第1および第2画像メモリと、
前記中央処理装置と通信を行う通信制御部、前記表示部で画像表示を行う際に使用される制御信号を生成する制御信号生成部、前記第1および第2画像メモリに対するアクセス用のアドレスを生成するアドレス生成部、前記制御信号およびアドレスを用いて前記第1および第2画像メモリの一方にアクセスを行うメモリアクセス部、前記第1および第2画像メモリをそれぞれ交互に書き込み用および読み出し用のいずれかの用途に切り換えるための切換信号を出力する切換信号出力部、前記通信制御部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在するとともに前記メモリアクセス部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在し前記切換信号に応じて前記第1および第2画像メモリの一方を読み出し用として前記メモリアクセス部に接続するとともに前記第1および第2画像メモリの他方を書き込み用として前記通信制御部に接続する切換部、および前記制御信号および前記メモリアクセス部を介して読み出される画像データを前記表示部に同期をとって出力する出力同期部により構成され、前記表示部に画像を表示する際に使用される画像データを前記画像メモリに記憶させるとともに、前記制御信号の生成および画像データの読み出しを自動的に行って、これら制御信号および画像データを周期的に前記表示部に出力する表示制御部と
を備え、
前記表示制御部は、前記中央処理装置からの制御情報および当該表示制御部の状態を示す情報を記憶する共有メモリと、前記中央処理装置からのアクセスを制御するとともに当該表示制御部の状態を示す情報を前記共有メモリに記憶させる共有メモリ制御部とを有する
表示装置。
【請求項3】 全体の処理を行う中央処理装置と、
表示用の表示部と、
前記表示部の複数画面分の画像データを予め区分けされた各区間内に格納して記憶する第1および第2画像メモリと、
前記中央処理装置と通信を行う通信制御部、前記表示部で画像表示を行う際に使用される制御信号を生成する制御信号生成部、前記第1および第2画像メモリに対するアクセス用のアドレスであって前記各区間のうちオフセット信号から特定される区間内のアドレスを生成するアドレス生成部、前記制御信号およびアドレスを用いて前記第1および第2画像メモリの一方にアクセスを行うメモリアクセス部、前記第1および第2画像メモリをそれぞれ交互に書き込み用および読み出し用のいずれかの用途に切り換えるための切換信号を出力する切換信号出力部、前記通信制御部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在するとともに前記メモリアクセス部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在し前記切換信号に応じて前記第1および第2画像メモリの一方を読み出し用として前記メモリアクセス部に接続するとともに前記第1および第2画像メモリの他方を書き込み用として前記通信制御部に接続する切換部、および前記制御信号および前記メモリアクセス部を介して読み出される画像データを前記表示部に同期をとって出力する出力同期部により構成され、前記表示部に画像を表示する際に使用される画像データを前記画像メモリに記憶させるとともに、前記制御信号の生成および画像データの読み出しを自動的に行って、これら制御信号および画像データを周期的に前記表示部に出力する表示制御部とを備え、前記表示制御部は、前記中央処理装置からの制御情報および当該表示制御部の状態を示す情報を記憶する共有メモリと、前記中央処理装置からのアクセスを制御するとともに当該表示制御部の状態を示す情報を前記共有メモリに記憶させる共有メモリ制御部と、前記共有メモリ制御部を介して前記共有メモリから得られる所定情報から前記オフセット信号を生成して前記アドレス生成部に出力するオフセット切換部とを有する
表示装置。」
を補正後の、
「【請求項1】 全体の処理を行う中央処理装置と、
表示用の表示部と、
第1および第2画像メモリと、
前記中央処理装置と通信を行う通信制御部、前記表示部で画像表示を行う際に使用される制御信号を生成する制御信号生成部、前記第1および第2画像メモリに対するアクセス用のアドレスを生成するアドレス生成部、前記制御信号およびアドレスを用いて前記第1および第2画像メモリの一方にアクセスを行うメモリアクセス部、前記第1および第2画像メモリをそれぞれ交互に書き込み用および読み出し用のいずれかの用途に切り換えるための切換信号であって中央処理装置から出力された切換信号を制御信号生成部から出力される制御信号と同期させて出力する切換信号出力部、前記通信制御部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在するとともに前記メモリアクセス部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在し前記切換信号に応じて前記第1および第2画像メモリの一方を読み出し用として前記メモリアクセス部に接続するとともに前記第1および第2画像メモリの他方を書き込み用として前記通信制御部に接続する切換部、および前記制御信号および前記メモリアクセス部を介して読み出される画像データを前記表示部に同期をとって出力する出力同期部により構成され、前記表示部に画像を表示する際に使用される画像データを前記画像メモリに記憶させるとともに、前記制御信号の生成および画像データの読み出しを自動的に行って、これら制御信号および画像データを周期的に前記表示部に出力する表示制御部と
を備える表示装置。
【請求項2】 全体の処理を行う中央処理装置と、
表示用の表示部と、
第1および第2画像メモリと、
前記中央処理装置と通信を行う通信制御部、前記表示部で画像表示を行う際に使用される制御信号を生成する制御信号生成部、前記第1および第2画像メモリに対するアクセス用のアドレスを生成するアドレス生成部、前記制御信号およびアドレスを用いて前記第1および第2画像メモリの一方にアクセスを行うメモリアクセス部、前記第1および第2画像メモリをそれぞれ交互に書き込み用および読み出し用のいずれかの用途に切り換えるための切換信号であって中央処理装置から出力された切換信号を制御信号生成部から出力される制御信号と同期させて出力する切換信号出力部、前記通信制御部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在するとともに前記メモリアクセス部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在し前記切換信号に応じて前記第1および第2画像メモリの一方を読み出し用として前記メモリアクセス部に接続するとともに前記第1および第2画像メモリの他方を書き込み用として前記通信制御部に接続する切換部、および前記制御信号および前記メモリアクセス部を介して読み出される画像データを前記表示部に同期をとって出力する出力同期部により構成され、前記表示部に画像を表示する際に使用される画像データを前記画像メモリに記憶させるとともに、前記制御信号の生成および画像データの読み出しを自動的に行って、これら制御信号および画像データを周期的に前記表示部に出力する表示制御部と
を備え、
前記表示制御部は、前記中央処理装置からの制御情報および当該表示制御部の状態を示す情報を記憶する共有メモリと、前記中央処理装置からのアクセスを制御するとともに当該表示制御部の状態を示す情報を前記共有メモリに記憶させる共有メモリ制御部とを有する
表示装置。
【請求項3】 全体の処理を行う中央処理装置と、
表示用の表示部と、
前記表示部の複数画面分の画像データを予め区分けされた各区間内に格納して記憶する第1および第2画像メモリと、
前記中央処理装置と通信を行う通信制御部、前記表示部で画像表示を行う際に使用される制御信号を生成する制御信号生成部、前記第1および第2画像メモリに対するアクセス用のアドレスであって前記各区間のうちオフセット信号から特定される区間内のアドレスを生成するアドレス生成部、前記制御信号およびアドレスを用いて前記第1および第2画像メモリの一方にアクセスを行うメモリアクセス部、前記第1および第2画像メモリをそれぞれ交互に書き込み用および読み出し用のいずれかの用途に切り換えるための切換信号であって中央処理装置から出力された切換信号を制御信号生成部から出力される制御信号と同期させて出力する切換信号出力部、前記通信制御部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在するとともに前記メモリアクセス部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在し前記切換信号に応じて前記第1および第2画像メモリの一方を読み出し用として前記メモリアクセス部に接続するとともに前記第1および第2画像メモリの他方を書き込み用として前記通信制御部に接続する切換部、および前記制御信号および前記メモリアクセス部を介して読み出される画像データを前記表示部に同期をとって出力する出力同期部により構成され、前記表示部に画像を表示する際に使用される画像データを前記画像メモリに記憶させるとともに、前記制御信号の生成および画像データの読み出しを自動的に行って、これら制御信号および画像データを周期的に前記表示部に出力する表示制御部とを備え、前記表示制御部は、前記中央処理装置からの制御情報および当該表示制御部の状態を示す情報を記憶する共有メモリと、前記中央処理装置からのアクセスを制御するとともに当該表示制御部の状態を示す情報を前記共有メモリに記憶させる共有メモリ制御部と、
前記共有メモリ制御部を介して前記共有メモリから得られる所定情報から前記オフセット信号を生成して前記アドレス生成部に出力するオフセット切換部とを有する
表示装置。」
と補正する補正事項を含むものである。(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

(2)本件補正の適否について
本件補正における上記補正事項は、補正前の請求項1ないし3に記載した、発明を特定するために必要な事項である「切り換え信号を出力する」について、「切換信号であって中央処理装置から出力された切換信号を制御信号生成部から出力される制御信号と同期させて出力する」と限定するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(3)引用刊行物
ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-95538号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(ア-a)「【0001】【産業上の利用分野】本発明はダブルバッファを持つグラフィックディスプレイ装置に係り、特に、CPUのオーバーヘッドを低減するのに好適なグラフィックディスプレイ装置とその描画処理方法に関する。」

(ア-b)「【0003】ダブルバッファの表示面切り換えでは、表示面切り換え要求を処理するタイミングでの画面のちらつきを防止する観点から、表示面切り換えを、ディスプレイの垂直帰線区間内で行うことが要求される。このため、上記の従来技術では、表示面切り換え要求の処理を開始する時点から、垂直帰線が開始するまでの間に、待ちが発生する。この待ちの発生を、図2により説明する。
【0004】図2において、CPU200は、主記憶201に格納されているプログラムにより、図形描画処理,表示面切り換え処理を行う。
【0005】図形描画処理を行う場合、CPU200は、表示制御回路202に対し図形描画処理命令を設定する。表示制御回路202は、図形描画回路203を使用して、フレームメモリ(以下、FMという。)204Aまたは204Bに図形描画を行う。FMデータ読み出し回路205は、FM204Aまたは204Bの表示データを読み出し、D/A206に送る。D/A206は、表示データに従い、デジタル・アナログ変換を行ってディスプレイ207に表示する。ダブルバッファ機能は、表示データの読み出し元を、FM204AとFM204Bの間で切り換えることにより実現する。
【0006】表示面切り換え処理を実行する場合、CPU200は、表示制御回路202に新しい表示面としてFM204Aを読み出すかFM204Bを読み出すかの設定を行う。表示制御回路202は、D/A206から出力される「垂直帰線を開始したことを通知する開始信号」の入力後に、新しい表示面をFMデータ読み出し回路205に設定する。FMデータ読み出し回路205が、新しい表示面から表示データを読み出し、ディスプレイ207上に表示することで、表示面の切り換え処理が終わる。」

(ア-c)
「【0008】【発明が解決しようとする課題】図2に示す従来技術の場合、表示制御回路202に、新しい表示面の設定を行ってから、D/A206より表示制御回路202に垂直帰線開始信号が出力されるまで、表示制御回路202は待ち状態となる。つまり、図形描画処理等が行えない状態になる。・・・【0009】・・・CPU実行時間の有効活用という観点から無視できないオーバーヘッドとなる。・・・【0011】本発明の目的は、上記のオーバーヘッドを低減するグラフィックディスプレイ装置とその描画処理方法を提供することにある。」

(ア-d)
「【0012】【課題を解決するための手段】上記目的は、ダブルバッファを持ち図形描画機能を有するグラフィックディスプレイ表示装置において、ダブルバッファに対する表示面切換要求と図形描画処理要求が連続して発行されたときに表示面切換処理実行前の垂直帰線開始待ちを行っている間に図形描画処理を実行する実行することで、達成される。
【0013】【作用】従来では画面のちらつき防止のために待ち時間となっていた時間中に、後続の図形描画処理を実行するため、CPUのオーバーヘッドの削減が可能となる。」

(ア-e)「【0014】【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例に係るグラフィックディスプレイ装置の構成図である。図1において、CPU100は、主記憶101に格納されたプログラムにより図形描画処理と表示面切換処理を実行する。
【0015】図形描画処理を実行する場合、CPU100は、図形描画回路102に図形描画命令を設定する。図形描画処理回路102は、FM103AまたはFM103B上に図形を描画する。FMデータ読出回路104は、ディスプレイ106に表示する表示面の表示データを、FM103AまたはFM103Bから読み出し、D/A105に送る。D/A105は、表示データに従いデジタル信号をアナログ信号に変換し、ディスプレイ106に表示する。」

(ア-f) 「【0016】表示面切換処理を実行する場合、CPU100は、表示面選択回路107に新しく表示を行う表示面(103Aまたは103B)を登録する。表示面選択回路107は、D/A105から出力される垂直帰線区間開始信号を取り込んだ後、表示面をFMデータ読出回路104に設定する。この設定後に、表示面選択回路107はCPU100に対し表示面の設定が終了した事を通知する。」

(ア-g) 「【0030】次に、クランイアント301から、表示面切換処理の要求と図形描画処理の要求とが続けてされ、両方の処理を同じに実行するときの動作を説明する。表示面切換処理の要求は、表示面切換処理部308により処理される。表示切換処理部308は、表示面選択回路107の表示面切換要求記憶テーブル305に、新しい表示面を設定する。
【0031】後続の図形描画処理の要求で、表示面切換要求記憶テーブル305に登録された表示面を対象としないものは、分岐処理304により描画要求処理部307によって実行される。これにより、表示切り換えの待ちを表示面選択回路107が行っている間に、表示面切り換えに関係のない図形描画を実行可能である。」

上記摘記事項(ア-e)より、FM(フレームメモリ)103AまたはFM(フレームメモリ)103Bの一方にアクセスを行うFMデータ読出回路104が読み取れる。
また、上記摘記事項(ア-e)及び(ア-f)より、図形描画処理回路102、FMデータ読出回路104、D/A105、及び、表示面選択回路107は、全体としてディスプレイ106に出力する信号を制御しているから、これらを全体として表示制御手段といえるものである。

したがって、上記摘記事項(ア-a)ないし(ア-g)より、引用刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。
「主記憶101に格納されたプログラムにより図形描画処理と表示面切換処理を実行するCPU100と、
ディスプレイ106と、
FM(フレームメモリ)103AおよびFM(フレームメモリ)103Bと、
図形描画処理回路102、垂直帰線区間開始信号を出力するD/A105、FM103AまたはFM103Bの一方にアクセスを行うFMデータ読出回路104、D/A105から出力される垂直帰線区間開始信号を取り込んだ後、CPU100が登録した新しく表示を行う表示面をFMデータ読出回路104に設定する表示面選択回路107により構成され、図形描画処理回路102はCPU100に設定された図形描画命令によりFM103AまたはFM103B上に図形を描画し、FMデータ読出回路104はディスプレイ106に表示する表示面の表示データをFM103AまたはFM103Bから読み出してD/A105に送り、D/A105は表示データに従いデジタル信号をアナログ信号に変換し、ディスプレイ106に表示する表示制御手段と
を備えるグラフィックディスプレイ表示装置」

(4) 対比
本件補正発明1と刊行物1発明とを対比する。

ア 刊行物1発明の「CPU100」、「ディスプレイ106」、「FM(フレームメモリ)103AおよびFM(フレームメモリ)103B」、「表示制御手段」、「グラフィックディスプレイ表示装置」は、
本件補正発明1の「中央演算処理装置」、「表示部」、「第1および第2画像メモリ」、「表示制御部」、「表示装置」にそれぞれ相当している。

イ 刊行物1発明が、表示制御手段とCPU100とで通信を行うための手段を備えていることは明らかであるから、当該刊行物1発明の通信を行うための手段と、本件補正発明1の「通信制御部」とは、「中央演算処理手段と通信を行うための手段」を備える点で共通している。

ウ 刊行物1発明の「D/A105」はFM103AまたはFM103Bから読み出された表示データに従いデジタル信号をアナログ信号に変換し、ディスプレイ106に表示するとともに、垂直帰線区間開始信号を出力することから、刊行物1発明の「D/A105」と本件補正発明1の「制御信号生成部」とは「表示部で画像表示を行う際に使用される制御信号を出力する手段」である点で共通している。

エ 刊行物1発明の「FMデータ読出回路104」は、「ディスプレイ106に表示する表示面の表示データを、FM103AまたはFM103Bから読み出し」とされていて、
本件補正発明1の「メモリアクセス部」は「読み出し用として前記メモリアクセス部に接続する」ものであるから、
刊行物1発明の「FMデータ読出回路104」と本件補正発明1の「前記第1および第2画像メモリに対するアクセス用のアドレスを生成するアドレス生成部、前記制御信号およびアドレスを用いて前記第1および第2画像メモリの一方にアクセスを行うメモリアクセス部」とは、「前記第1および第2画像メモリの一方にアクセスを行うメモリアクセス手段」である点で共通している。

オ 刊行物1発明の「表示面選択回路107」は、「D/A105から出力される垂直帰線区間開始信号を取り込んだ後、CPU100が登録した新しく表示を行う表示面をFMデータ読出回路104に設定する」ものであるから、
刊行物1発明の「表示面選択回路107」と本件補正発明の「前記第1および第2画像メモリをそれぞれ交互に書き込み用および読み出し用のいずれかの用途に切り換えるための切換信号であって中央処理装置から出力された切換信号を制御信号生成部から出力される制御信号と同期させて出力する切換信号出力部」とは、
「前記第1および第2画像メモリをそれぞれ切り換えるための切換信号であって中央処理装置から出力された切換信号を制御信号生成部から出力される制御信号と同期させて出力する切換信号を出力する手段」
である点で共通している。

カ 刊行物1発明の「FMデータ読出回路104」はまた、本件補正発明1の「前記通信制御部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在するとともに前記メモリアクセス部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在し前記切換信号に応じて前記第1および第2画像メモリの一方を読み出し用として前記メモリアクセス部に接続するとともに前記第1および第2画像メモリの他方を書き込み用として前記通信制御部に接続する切換部」とは、「前記中央演算処理手段と通信を行うための手段と前記第1および第2画像メモリとの間に介在するとともに、
前記メモリアクセス手段と前記第1および第2画像メモリとの間に介在し前記切換信号に応じて前記第1および第2画像メモリの一方を読み出し用として前記メモリアクセス手段に接続する切換手段」
である点でも共通している。
また、刊行物1発明の「図形描画処理回路102」はCPU100に設定された図形描画命令によりFM103AまたはFM103B上に図形を描画するものであるから、
刊行物1発明の「図形描画処理回路102」と本件補正発明1の「前記通信制御部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在するとともに前記メモリアクセス部と前記第1および第2画像メモリとの間に介在し前記切換信号に応じて前記第1および第2画像メモリの一方を読み出し用として前記メモリアクセス部に接続するとともに前記第1および第2画像メモリの他方を書き込み用として前記通信制御部に接続する切換部」とは、「前記第1および第2画像メモリを書き込み用として、中央演算処理手段と通信を行うための手段に接続する手段」である点で共通している。

キ 刊行物1発明は、「ディスプレイ106に表示する表示面の表示データをFM103AまたはFM103Bから読み出してD/A105に送り、D/A105は表示データに従いデジタル信号をアナログ信号に変換し、ディスプレイ106に表示する」構成を備えるから、刊行物1発明の「D/A105」と、本件補正発明1の「前記制御信号および前記メモリアクセス部を介して読み出される画像データを前記表示部に同期をとって出力する出力同期部」とは、
「前記メモリアクセス手段を介して読み出される画像データを前記表示部に出力する出力手段」である点で共通している。

ク 刊行物1発明の「FM103AまたはFM103B上に図形を描画し」との構成の「図形」および「描画」は、本件補正発明1の「前記表示部に画像を表示する際に使用される画像データを前記画像メモリに記憶させる」との構成の「前記表示部に画像を表示する際に使用される画像データ」および「記憶させる」にそれぞれ相当しているから、
刊行物1発明の「図形描画処理回路102はCPU100に設定された図形描画命令によりFM103AまたはFM103B上に図形を描画し」は、本件補正発明の「前記表示部に画像を表示する際に使用される画像データを前記画像メモリに記憶させる」に相当している。
また、刊行物1発明の、「FMデータ読出回路104はディスプレイ106に表示する表示面の表示データをFM103AまたはFM103Bから読み出してD/A105に送り、D/A105は表示データに従いデジタル信号をアナログ信号に変換し、ディスプレイ106に表示する」との構成は、当該アナログ信号がディスプレイ106に表示するための信号であることからすれば、制御信号と画像データとの同期がとれている信号として周期的に出力されている信号であることは明らかであるから、刊行物1発明の上記構成は、本件補正発明1の「画像データを周期的に前記表示部に出力する」との構成に相当している。
してみると、刊行物1発明の「図形描画処理回路102はCPU100に設定された図形描画命令によりFM103AまたはFM103B上に図形を描画し、FMデータ読出回路104はディスプレイ106に表示する表示面の表示データをFM103AまたはFM103Bから読み出してD/A105に送り、D/A105は表示データに従いデジタル信号をアナログ信号に変換し、ディスプレイ106に表示する」構成は、本件補正発明1の「表示制御部」と、「前記表示部に画像を表示する際に使用される画像データを前記画像メモリに記憶させるとともに、画像データの読み出しを自動的に行って、画像データを周期的に前記表示部に出力する表示制御部」である点で共通している。

すると、本件補正発明1と刊行物1発明とは、次の点で一致し、
[一致点]
「全体の処理を行う中央処理装置と、
表示用の表示部と、
第1および第2画像メモリと、
前記中央処理装置と通信を行う中央演算処理手段と通信を行うための手段、表示部で画像表示を行う際に使用される制御信号を出力する手段、前記第1および第2画像メモリの一方にアクセスを行うメモリアクセス手段、前記第1および第2画像メモリをそれぞれ切り換えるための切換信号であって中央処理装置から出力された切換信号を制御信号生成部から出力される制御信号と同期させて出力する切換信号を出力する手段、前記中央演算処理手段と通信を行うための手段と前記第1および第2画像メモリとの間に介在するとともに、前記メモリアクセス手段と前記第1および第2画像メモリとの間に介在し前記切換信号に応じて前記第1および第2画像メモリの一方を読み出し用として前記メモリアクセス手段に接続する切換手段、前記第1および第2画像メモリを書き込み用として、中央演算処理手段と通信を行うための手段に接続する手段、および、前記メモリアクセス手段を介して読み出される画像データを前記表示部に出力する出力手段により構成され、前記表示部に画像を表示する際に使用される画像データを前記画像メモリに記憶させるとともに、画像データの読み出しを自動的に行って、画像データを周期的に前記表示部に出力する表示制御部と
を備える表示装置。」

次の相違点1ないし4で相違している。
[相違点1]
中央演算処理手段と通信を行うための手段が、本件補正発明1は、通信制御部を備え、該通信制御部に接続することで通信を行うものであるのに対して、刊行物1発明はどのような手段で行うものであるのか不明な点。

[相違点2]
前記第1および第2画像メモリの一方にアクセスを行うメモリアクセス手段が、本件補正発明1は「前記第1および第2画像メモリに対するアクセス用のアドレスを生成するアドレス生成部」、「前記制御信号およびアドレスを用いて前記第1および第2画像メモリの一方にアクセスを行うメモリアクセス部」を備え、画像データの読み出しを自動的に行なうものであるのに対して、刊行物1発明は、メモリへのアクセスに関しての具体的手段が不明である点。

[相違点3]
メモリアクセス手段に接続する切換手段、及び、第1および第2画像メモリを書き込み用として、中央演算処理手段と通信を行うための手段に接続する手段が、本件補正発明1は、「前記第1および第2画像メモリをそれぞれ交互に書き込み用および読み出し用のいずれかの用途に切り換えるための切換信号」を用いて、「前記切換信号に応じて前記第1および第2画像メモリの一方を読み出し用として前記メモリアクセス部に接続するとともに前記第1および第2画像メモリの他方を書き込み用として前記通信制御部に接続する切換部」であるのに対して、刊行物1発明はそのような構成ではない点。

[相違点4]
表示部で画像表示を行う際に使用される制御信号を出力する手段が、本件補正発明1は、制御信号を生成する制御信号生成手段であって、「画像データを前記表示部に出力する出力手段」を、「前記制御信号および前記メモリアクセス部を介して読み出される画像データを前記表示部に同期をとって出力する出力同期部」として表示部に制御信号と画像データを出力し、表示制御部により制御信号の生成を自動的に行って、これら制御信号および画像データを表示部に出力するものであるのに対して、
刊行物1発明は、表示部で画像表示を行う際に使用される制御信号を出力する手段である「D/A105」からは制御信号(垂直帰線区間開始信号)が出力されるものの、当該制御信号を生成する手段が明記されておらず、自動的に生成されるものであるのかも不明であって、その出力信号が制御信号と画像データとの同期がとれている信号であることは明らかであるとしても、どのような手段で同期をとっているものであるか、また、制御信号が表示部に出力されるか否かも不明である点。

(5)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
中央演算処理手段と通信を行うための手段として、通信制御をおこなう通信制御部を備えて、通信制御部に接続することで通信を行うことは例を挙げるまでもなく周知技術であるから、刊行物1発明に上記周知技術を適用して本件補正発明1の相違点1に係る構成のようになすことは当業者が適宜なし得たことである。

イ 相違点2について
画像メモリにアクセスを行う際に、メモリに対するアクセス用のアドレスを生成する手段を備えて、当該アドレスと表示用の制御信号とを用いて、画像データの読み出しを自動的に行うことは、例えば、特開平9-269762号公報にみられるように周知技術であるから、刊行物1発明に上記周知技術Bを適用して本件補正発明1の相違点2に係る構成のようになすことは当業者が適宜なし得たことである。

ウ 相違点3について
2つの画像メモリを書き込み用および読み出し用として用い、一方を読み出し用としてメモリアクセス部に接続して読み出される画像データを表示部に表示するようになした表示装置において、交互に書き込み用および読み出し用のいずれかの用途に切り換えるようにすることは、例えば、特開昭62-11889号公報、特開平5-35257号公報にみられるように周知技術である。したがって、刊行物1発明の切換信号を「前記第1および第2画像メモリをそれぞれ交互に書き込み用および読み出し用のいずれかの用途に切り換えるための切換信号」とし、また、刊行物1発明の切換手段を「前記切換信号に応じて前記第1および第2画像メモリの一方を読み出し用として前記メモリアクセス部に接続するとともに前記第1および第2画像メモリの他方を書き込み用として前記通信制御部に接続する切換部」とすることにより、本件補正発明1の相違点3に係る構成のようになすことは当業者が上記周知技術に基づいて容易に想到できたことである

エ 相違点4について
表示部に対して、表示部で画像表示を行う際に使用される制御信号と画像データとを同期をとって出力するようになした表示装置において、表示部で必要とする信号に応じて、制御信号を生成する手段および当該制御信号と画像データとの同期をとって出力する手段を表示部への画像データ出力部に備えることは、例えば、特開平7-72837号公報(特に、「表示制御回路15」参照。)にみられるように周知技術である。
したがって、刊行物1発明の表示部で画像表示を行う際に使用される制御信号を出力する手段である「D/A105」に対して、表示部で必要とする信号に応じて、制御信号を自動的に生成する手段を付加して制御信号を生成する制御信号生成手段となし、生成した信号と画像データとの同期をとって出力する手段を設けることにより、本件補正発明1の相違点4に係る構成のようになすことは当業者が周知技術に基づいて容易に想到できたことである。

オ 本件補正発明1が奏する作用効果について
本件補正発明1が奏する作用効果についても、引用刊行物1の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が予測可能な範囲内のものである。

カ したがって、本件補正発明1は、刊行物1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成18年8月31日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成18年2月27日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は、上記「第2」の「2」の「(1)」の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

第4 引用刊行物1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物1及びその記載事項は、上記「第2」の「2」の「(4)」に記載したとおりのものである。

第5 対比・判断
本願第1発明は、本件補正発明1の発明特定事項から、「切り換え信号を出力する」について、「切換信号であって中央処理装置から出力された切換信号を制御信号生成部から出力される制御信号と同期させて出力する」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願第1発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本件補正発明1が前記「第2」の「2」の(5)及び(6)に記載したとおり、刊行物1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願第1発明についても、同様の理由により、刊行物1発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願第1発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願第1発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2及び3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-03 
結審通知日 2008-09-09 
審決日 2008-09-24 
出願番号 特願平11-14537
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 575- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 山下 雅人
下中 義之
発明の名称 表示装置  
代理人 西川 惠清  
代理人 森 厚夫  

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