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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L |
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管理番号 | 1187346 |
審判番号 | 不服2006-23758 |
総通号数 | 108 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-19 |
確定日 | 2008-11-06 |
事件の表示 | 特願2004-305342「真空断熱材」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 2日出願公開、特開2006- 57826〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年10月20日(優先権主張:平成16年6月3日)の特許出願であって、平成18年9月13日付けで拒絶査定がなされ、同年10月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年6月16日付け手続補正書により補正された明細書及び図面によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。 「少なくとも芯材と、前記芯材を覆う外被材を有し、前記外被材の内部が減圧密封されてなる真空断熱材であって、 前記外被材が、2層以上のプラスチックフィルム、金属箔層または蒸着層、及びそれを接合する接着剤層を有する積層体であり、 前記接着剤層の少なくとも一層に、脂肪族系ポリエステルポリオールと脂肪族系ポリイソシアネートからなるウレタン樹脂を適用しており、前記ウレタン樹脂の接着剤層のせん断強度が前記ウレタン樹脂の接着剤層の外側で隣接する層のせん断強度より低い真空断熱材。」 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-317986号公報(以下、「引用例1」という。)、同じく引用された特開2004-35799号公報(以下、「引用例2」という。)、同じく引用された特開平10-259222号公報(以下、「引用例3」という。)には、それぞれ図面と共に以下の事項が記載されている。 (1)引用例1 ・「【0002】 【従来の技術】冷蔵庫、低温コンテナ等には、従来から種々の断熱材が用いられており、特に、断熱性能の優れた断熱材として、内部に気密室を形成する外装体の内部に、断熱性コア材を充填し、気密室を真空排気した構成の真空断熱材が使用されている。この外装体は、内部を長期間真空状態を保持すると共に、外部からのガスの進入を防ぐため、ガスバリア性の優れた材料を使用していた。 【0003】このガスバリア性の優れた材料として、アルミニウム箔、またはアルミニウム蒸着フィルムが一般的に採用されていた。前記材料あバリア材として用いることで、ガスバリア性を満足するが、さらに突き刺し強度を付与するため、バリア材の外側に機械的な強度が優れたポリアミドフィルム、ポリエステルフィルムを合わせて使用することにより、バリア材のピンホール等の発生を防止していた。」 ・「【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、ポリアミドフィルムに金属酸化物を蒸着したフィルムを外層として用いた構成で、耐水性、耐熱性を改良し、簡単な構成で充分な機能を果たす真空断熱材を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は、少なくとも片面にポリエステル系ウレタン樹脂塗布層を設けたポリアミドフィルムの、前記塗布層に金属酸化物蒸着層を設け、蒸着層面に水溶性高分子と金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む被覆層を設けたバリア材を有する包装材料をより、真空の気密室を形成したことを特徴とする、真空断熱材である。第2の発明は、前記バリア材の内側の被覆層面に接着層を介して、アルミニウム箔、およびシーラント層を設けた真空断熱材である。第3の発明は、前記包装材料のシーラント層が高密度ポリエチレンからなる真空断熱材である。 【0008】 【発明の実施の形態】図1は、本発明の真空断熱材の構成を説明する断面図で、10はガスバリア性の包装材料で形成された気密室で、この気密室10内に断熱性コア材料9を、真空密封した、真空断熱材である。 【0009】この気密室10を形成する包装材料は、図2にに示すように、1はポリアミドフィルムであり、2は塗布層、3は金属酸化物蒸着層、この蒸着層3面に被覆層4を積層したバリア材被覆層4の面に接着層5を介して、アルミニウム箔7、シーラント層6を順に設けた構成からなる。 【0010】ポリアミドフィルム1は、機械的な強度を考慮して2軸延伸フィルム(延伸倍率3倍以上)を使用することが好ましい。このポリアミドフィルムには、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤など公知の添加剤を加えることができ、必要に応じて適宜添加される。さらに基材の表面(蒸着面)をコロナ処理、アンカーコート処理等の表面改質を行い、塗布層の密着性を向上させることも可能である。 【0011】また、塗布層2は、ポリエステル系ウレタン樹脂が、耐水性、耐熱性が優れ、少なくともポリアミドフィルムの金属酸化物蒸着層を形成する面に設ければよい。 【0012】金属酸化物蒸着層3は、珪素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫などの酸化物の単体、あるいはそれらの複合物からなり、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法(CVD法)などの真空プロセスにより形成される。金属酸化物蒸着層3の膜厚は、100Å?2000Åの範囲が、透明性、バリア性が適している。 【0013】被覆層4は、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシド及びその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤からなる。水溶性高分子と塩化錫を水系(水あるいは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、あるいはこれに金属アルコキシドを直接、あるいは予め加水分解させるなどの処理を行ったものを混合した溶液を、ポリアミドフィルム1に塗布層2を介して設けた金属酸化物蒸着層3にコーティング、加熱乾燥し、形成したものである。コーティング剤に含まれる各成分について以下に詳述する。 【0014】本発明でコーティング剤に用いられる水溶性高分子はポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。特にポリビニルアルコール(PVA)を本発明のガスバリア性積層体のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れる。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから、酢酸基が数%しか残存していない完全けん化PVAまでを含み、特に限定されるものではない。」 ・「【0019】そして、シーラント層6は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合体等ヒートシール性を有する樹脂であれば目的に応じて使用することができるが、耐熱性を考慮してシーラント層を高密度ポリエチレン単体、または高密度ポリエチレンと線状低密度ポリエチレンの共押し出しフィルムのように耐熱性を有する材料を用いればよい。このシーラント層は、フィルム化した材料を接着剤を介してラミネートして設けてもよいし、溶融した樹脂を直接押出しコーティングによりラミネートしてもよい。 【0020】この包装材料のヒートシール性樹脂層を内面として、断熱性コア材料を充填し真空包装することにより気密室10を得る。この断熱性コア材料は、シリカやパーライト等の粉末を一定の形状に成形した成形体、ケイ酸カルシウム成形体等が使用される。 【0021】本発明は、気密室を形成する包装材料として、ポリアミドフィルムの少なくとも蒸着面にポリエステル系ウレタン樹脂からなる塗布層2を設けたので、ポリアミドフィルムの優れた機械的強度、柔軟性を保持し、しかも耐水性を改良することができ、加熱の高湿度雰囲気下の状態でも充分使用が可能となった。 【0022】 【実施例】 <実施例1>片面にポリエステル系ウレタン樹脂からなる塗布層を形成した厚さ15μmのポリアミドフィルム(Ny)(商品名N7031 東洋紡績製)を基材とし、その塗布層面に膜厚400Åの酸化珪素からなる蒸着層を形成し、さらに下記組成からなる塗液をバーコーターにより塗布し、乾燥機で120℃、1分間乾燥させ、厚さ約0.5μmの被覆層を形成した。次に、この被覆層に2液硬化型ウレタン接着剤からなる接着層を介して、アルミニウム箔(6μm)、高密度ポリエチレンフィルム(60μm)からなるシーラント層を順に設けた包装材料を得た。 【0023】・被覆層塗液の成分 テトラエトキシシラン〔Si(OC2 H5 )4 〕10.4gに塩酸(0.1N)を89.6g加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2 換算)の加水分解溶液(A)と、ポリビニルアルコールの3.0wt%の水/イソプロピルアルコール(90/10)溶液(B)を混合した組成。 【0024】前記包装材料のシーラント層同士を向かい合わせ、周辺をヒートシールし、粉末シリカの成形体を真空密封し、図1に示す真空断熱材を得た。この真空断熱材に用いた包装材料のラミネート強度、および突き刺し強度を測定した。その結果を表1に示す。また、この包装材料を常温の水道水に浸漬し、基材と蒸着層との剥離状態を経時的に観察した。その結果を表2に示す。」 ・図2には、ウレタン接着剤の接着層5の外側で隣接するアルミニウム箔7を設けた真空断熱材が示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「少なくとも断熱性コア材料と、前記断熱性コア材料を覆う包装材料を有し、前記包装材料の内部が真空密封されてなる真空断熱材であって、 前記包装材料が、ポリアミドフィルム及び共押し出しフィルムからなるシーラント層、アルミニウム箔及び金属酸化物蒸着層、並びにそれを接着する接着層を有する積層体であり、 前記接着層が2液硬化型ウレタン接着剤からなり、前記ウレタン接着剤の接着層の外側で隣接するアルミニウム箔を設けた真空断熱材。」 (2)引用例2 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】 脂肪族ポリエステルポリオール(A)とポリイソシアネート(B)からのイソシアネート末端ウレタンプレポリマー(C)のブロック化物(D)、及びポリエステル系ウレタンプレポリマー(F)からなる反応性ホットメルト接着剤。」 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、反応性ホットメルト接着剤に関する。さらに詳しくは、自動車用部品や繊維用部品の製造に好適に用いられるホットメルト接着剤に関する。」 ・「【0008】 本発明において、ポリイソシアネート(B)としては炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6?20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2?18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4?15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8?15の芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの変性物及びこれらの2種類以上の混合物が含まれる。・・・」 (3)引用例3 ・「【請求項2】分子量が200未満の揮発性成分を実質的に含まないポリマーポリオールとポリイソシアネートから得られたウレタンプレポリマーを主成分としてなることを特徴とする湿気硬化性樹脂。」 ・「【0013】ポリエステルポリオールとしては任意のものを用いることができるが、・・・特に耐候性に優れた、脂肪族ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールが好ましい。」 ・「【0020】本発明のポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート・・・などを挙げることができる。」 ・「【0032】 【発明の効果】本発明で得られた湿気硬化性樹脂は、耐候性に優れ、塗料、シーラント、接着剤などの原料として好適である。」 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比する。 (ア)後者の「断熱性コア材料」が前者の「芯材」に相当し、以下同様に、 「包装材料」が「外被材」に、 「真空密封」が「減圧密封」に、 「ポリアミドフィルム及び共押し出しフィルムからなるシーラント層」が「2層以上のプラスチックフィルム」に、 「アルミニウム箔及び金属酸化物蒸着層」が「金属箔層または蒸着層」に、 「接着」が「接合」に、 「接着層」が「接着剤層」に、それぞれ相当する。 (イ)後者の「2液硬化型ウレタン接着剤」と前者の「脂肪族系ポリエステルポリオールと脂肪族系ポリイソシアネートからなるウレタン樹脂」とは、「2液硬化型ウレタン樹脂」という概念で共通し、 後者の「ウレタン接着剤の接着層の外側で隣接するアルミニウム箔」が前者の「ウレタン樹脂の接着剤層の外側で隣接する層」に相当することから、 後者の「接着層が2液硬化型ウレタン接着剤からなり、前記ウレタン接着剤の接着層の外側で隣接するアルミニウム箔を設けた真空断熱材」と 前者の「接着剤層の少なくとも一層に、脂肪族系ポリエステルポリオールと脂肪族系ポリイソシアネートからなるウレタン樹脂を適用しており、前記ウレタン樹脂の接着剤層のせん断強度が前記ウレタン樹脂の接着剤層の外側で隣接する層のせん断強度より低い真空断熱材」とは、 「接着剤層に2液硬化型ウレタン樹脂を適用した真空断熱材」なる概念で共通する。 したがって、両者は、 「少なくとも芯材と、前記芯材を覆う外被材を有し、前記外被材の内部が減圧密封されてなる真空断熱材であって、 前記外被材が、2層以上のプラスチックフィルム、金属箔層または蒸着層、及びそれを接合する接着剤層を有する積層体であり、 前記接着剤層に2液硬化型ウレタン樹脂を適用した真空断熱材。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 接着剤層に2液硬化形ウレタン樹脂を適用する態様に関し、本願発明では「接着剤層の少なくとも一層に、脂肪族系ポリエステルポリオールと脂肪族系ポリイソシアネートからなるウレタン樹脂を適用しており、前記ウレタン樹脂の接着剤層のせん断強度が前記ウレタン樹脂の接着剤層の外側で隣接する層のせん断強度より低い」態様であるのに対し、引用発明ではそのような特定はなされていない点。 5.判断 [相違点]について 引用例2及び3に示されるように、脂肪族系ポリエステルポリオールと脂肪族系ポリイソシアネートからなるウレタン樹脂を接着剤として採用することは単なる周知慣用技術であり、当該ウレタン樹脂のせん断強度がアルミ箔のせん断強度より弱いことは技術常識である。(社団法人日本機械学会、「機械工学便覧」、新版、1998年12月3日、B4編p.75、表79において一番弱い1060-O材の数値によれば、アルミニウム箔に用いられるアルミニウム展伸材のせん断強度は、約49MPa以上である。又、特開2004-35765号公報の段落【0054】の【表4】において、脂肪族系ポリエステルポリオールと脂肪族系ポリイソシアネートからなるポリウレタン樹脂系接着剤の剪断接着力(せん断強度と同義)の最大値が、78.3kgf/であり、換算すれば7.7MPaとなっている。) そうすると、積層構造を有する包装体において、接着強度が弱い層を設けることにより、破袋やピンホールを防止するという周知の課題(例えば、本願明細書の段落【0002】?【0005】に従来技術として示されている特開2003-340972号公報の【従来の技術】を参照)を解決するために、引用発明における積層体の2液硬化型ウレタン接着剤として上記周知慣用技術のように脂肪族系ポリエステルポリオールと脂肪族系ポリイソシアネートからなるウレタン樹脂を採用して、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。 そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果も引用発明及び上記周知慣用技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。 したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 6.むすび 以上のとおりであって、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-27 |
結審通知日 | 2008-09-02 |
審決日 | 2008-09-19 |
出願番号 | 特願2004-305342(P2004-305342) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩谷 一臣、谷口 耕之助 |
特許庁審判長 |
仁木 浩 |
特許庁審判官 |
田中 秀夫 小川 恭司 |
発明の名称 | 真空断熱材 |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 永野 大介 |
代理人 | 内藤 浩樹 |