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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1187355
審判番号 不服2007-1499  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-16 
確定日 2008-11-06 
事件の表示 特願2001-350201「光導波回路モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月21日出願公開、特開2003-149495〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成13年11月15日に特許出願したものであって、その請求項に係る発明は、平成18年11月6日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「複数の光ファイバ配列ガイド溝を並列に配列したガイド基板と、該ガイド基板の前記光ファイバ配列ガイド溝に挿入された光ファイバと、該光ファイバを押さえる押さえ板とを有する光ファイバアレイの光ファイバ端面側を、光導波回路部品に接続して成る光導波回路モジュールにおいて、前記光ファイバ配列ガイド溝の配列方向をX方向としたとき、前記光ファイバアレイのX方向の両側面とそれぞれの側面に最も近い位置に配置された光ファイバ配列ガイド溝のそれぞれの側面がわの溝端位置とのX方向の距離をいずれも0.8mm以上として、85℃、85%RHで5000時間保持する長期高温高湿試験後の光損失増加量を0.5dB以下としたことを特徴とする光導波回路モジュール。」(以下「本願発明」という。)

2 刊行物の記載
(1)原査定の拒絶理由に引用した特開平5-264862号公報(以下「刊行物1」という。)には、下記の記載がある。

ア 「【0008】
【実施例】本発明の実施例を図面を参照して詳細にのべると、図1及び図2は本発明に係る光導波路モジュール10を示し、この光導波路モジュール10は、従来の光導波路モジュールと同様に、平面基板12上に光導波路14を有するプレーナ光波回路チップ16と、この光波回路チップ16の光導波路14に接続される光ファイバリボン18の光ファイバ18aが係入する複数のV溝20aを有する有溝基板20とこの有溝基板20に衝合して有溝基板20と共に光ファイバ18aを挟む抑え蓋22とを含むファイバ配列具24とから成っている。
【0009】プレーナ光波回路チップ16とファイバ配列具24とは、光導波路14とファイバ配列具24の光ファイバ18aとを調心して突合わせ面を接着剤により相互に接着して結合されている。」

イ 「【0015】
一方、ファイバ配列具の有溝基板用に幅が5mm、長さが6mm、厚さが1.09mmのシリコン基板を用意し、このシリコン基板上に異方性エッチングにより幅が240μmの8本のV溝を250μmの間隔で形成して有溝基板を完成した。抑え蓋は幅が5mm、長さが6mm、厚さが0.97mmのシリコン基板から形成した。有溝基板のV溝にシングルモード8心光ファイバリボンの各光ファイバを整列して係合し、抑え蓋で抑えながら接着剤で固定した後、有溝基板と抑え蓋の端面を研磨してファイバ配列具を完成した。
【0016】
このようにして完成されたプレーナ光波回路チップの両端面に2つのファイバ配列具との端面を突合わせて通光パワーをモニタしながら微調台上で光導波路と光ファイバとを調心し、突合わせ部に接着剤を塗布して固定した(図2参照)。」

(2)原査定の拒絶理由に引用した特開2000-111762号公報(以下「刊行物2」という。)には、下記の記載がある。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光部品に光ファイバを接続するための光ファイバ接続部品に係り、特に、溝を形成した光ファイバ整列部材と蓋によって光ファイバ心線を挟持して光ファイバを整列配置した光ファイバ接続部品に関するものである。」

イ 「【0003】
高い配列精度を有し、高信頼の光ファイバ接続部品としては、従来よりV溝を形成した光ファイバ整列部材を用いた光ファイバ接続部品が広く用いられている。この光ファイバ接続部品は図5に示すように、V溝15を形成した光ファイバ整列部材11と蓋12と被覆を除去した光ファイバ心線13とから構成され、光ファイバ整列部材11上に形成されたV溝15上に光ファイバ心線13を整列した後、蓋12を設置して光ファイバ整列部材11、蓋12、光ファイバ心線13との間にできた空隙に接着剤を充填し、接着剤を固化することによって光ファイバ整列部材11、蓋12、光ファイバ心線13を固定することによって光ファイバ心線13を整列固定している。・・・光ファイバ整列部材11と蓋12との接合において、V溝15が形成されている部分では蓋12と光ファイバ整列部材11との間に光ファイバ心線13を介して接着しているため、光ファイバ整列部材11と蓋12との接着面積が小さく接着強度が十分に取れない。このため、V溝形成部の両端にのりしろ部14を設けこの部分で光ファイバ整列部材11と蓋12との接着強度を確保する構造となっている。従って、長期にわたる信頼性を確保するためには、のりしろ部14の面積を大きくして十分な接着強度を確保するといった工夫がなされている。」

3 引用発明
上記2(1)によれば、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「平面基板12上に光導波路14を有するプレーナ光波回路チップ16と、この光波回路チップ16の光導波路14に接続される光ファイバリボン18の光ファイバ18aが係入する複数のV溝20aを有する有溝基板20とこの有溝基板20に衝合して有溝基板20と共に光ファイバ18aを挟む抑え蓋22とを含むファイバ配列具24とから成り、プレーナ光波回路チップ16とファイバ配列具24とは、光導波路14とファイバ配列具24の光ファイバ18aとを調心して突合わせ面を接着剤により相互に接着して結合されている光導波路モジュール10。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「光ファイバ18aが整列して係合する複数のV溝20a」及び「有溝基板20」は、それぞれ、本願発明の「光ファイバ配列ガイド溝」及び「ガイド基板」に相当し、引用発明の「複数のV溝20a」は「光ファイバリボン18の光ファイバ18aが係入する」ものであるから、「有溝基板20」に並列に配列されていることは明らかである。

イ 引用発明の「抑え蓋22」、「ファイバ配列具24」及び「プレーナ光波回路チップ」は、それぞれ、本願発明の「押さえ板」、「光ファイバアレイ」及び「光導波回路モジュール」に相当する。

ウ よって、両者は、
「複数の光ファイバ配列ガイド溝を並列に配列したガイド基板と、該ガイド基板の前記光ファイバ配列ガイド溝に挿入された光ファイバと、該光ファイバを押さえる押さえ板とを有する光ファイバアレイの光ファイバ端面側を、光導波回路部品に接続して成る光導波回路モジュール。」
である点で一致し、
「本願発明は、光ファイバ配列ガイド溝の配列方向をX方向としたとき、光ファイバアレイのX方向の両側面とそれぞれの側面に最も近い位置に配置された光ファイバ配列ガイド溝のそれぞれの側面がわの溝端位置とのX方向の距離をいずれも0.8mm以上とし、85℃、85%RHで5000時間保持する長期高温高湿試験後の光損失増加量を0.5dB以下としているのに対して、引用発明は、光ファイバアレイの両側面とそれぞれの側面に最も近い位置に配置された光ファイバ配列ガイド溝のそれぞれの側面がわの溝端位置との距離、及び、85℃、85%RHで5000時間保持する長期高温高湿試験後の光損失増加量が不明である点。」(以下「相違点」という。)
で相違するものと認められる。

5 判断
(1)ア 本願明細書には、相違点に係る構成に関して、下記の記載が認められる。

(ア)「【0025】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような光導波回路モジュールを実用化するためには、長期間の耐環境試験に合格する必要があり、耐環境試験の一つに、長期高温高湿試験がある。この長期高温高湿試験は、例えば11個の光導波回路モジュールを85℃、85%RHで5000時間保持することにより行われるものであり、全てのサンプルの試験後の光損失増加量を0.5dB以下にすることが要求されている。」、

(イ)「【0043】
その結果、表1に示すように、距離Dが0.8mm以上であれば、上記長期高温高湿試験後の光ファイバアレイ1と光導波回路部品30との接続損失増加量が0.5dB以下になることが分かったので、本実施形態例では、距離Dを0.8mmとした。」。

(ウ)段落【0042】の表1には、距離D(mm)を、0.3,0.5,0.8,1.1とした場合の、 最大損失増加量(dB)が、それぞれ、1,0.6,0.4,0.4であり、11個中の不合格数が、4,2,0,0であることが記載されているものと認められる。

イ 上記によれば、本願発明は、光ファイバ配列ガイド溝の配列方向をX方向としたとき、前記光ファイバアレイのX方向の両側面とそれぞれの側面に最も近い位置に配置された光ファイバ配列ガイド溝のそれぞれの側面がわの溝端位置とのX方向の距離(以下、単に「距離D」という。)を0.8mm以上とすることによって、耐環境試験の一つである、85℃、85%RHで5000時間保持する長期高温高湿試験後の光損失増加量を0.5dB以下とする要求を満たすようにしたものと認められる。
してみると、相違点1に関する本願発明の構成は、「85℃、85%RHで5000時間保持する長期高温高湿試験後の光損失増加量を0.5dB以下」にするとの要求を満たすための設計上の条件として、距離Dが「0.8mm以上」であることを定めたものと認められる。

(2)しかるところ、前記2(2)によれば、刊行物2には、V溝を形成した光ファイバ整列部材と蓋によって光ファイバ心線を挟持して光ファイバを整列配置した光ファイバ接続部品において、長期にわたる信頼性を確保するために、V溝形成部の両端のりしろ部の面積を大きくして十分な接着強度を確保する技術が記載されているものと認められる。
ここで、上記における「V溝形成部の両端のりしろ部」の幅は、本願発明でいう「光ファイバ配列ガイド溝の配列方向をX方向としたとき、前記光ファイバアレイのX方向の両側面とそれぞれの側面に最も近い位置に配置された光ファイバ配列ガイド溝のそれぞれの側面がわの溝端位置とのX方向の距離」、すなわち距離Dに相当することは明らかである。
そうすると、引用発明においても、距離Dを大きくすることにより長期にわたる信頼性を確保することは、当業者が容易になし得る程度のことである。
他方、長期にわたる信頼性をどのように評価するかは、必要とされる仕様等に応じて当業者が設計上適宜決定すべき事項であって、引用発明において、距離Dを定める際の設計上の条件として、本願発明で規定する「85℃、85%RHで5000時間保持する長期高温高湿試験後の光損失増加量を0.5dB以下」にするとの要求を満たすようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことというべきであり、本願発明において、距離Dを0.8mm以上としたことに、設計的事項の域を超えるほどの技術的意義があるものとは認められない。

(3)してみると、引用発明において、相違点に係る本願発明の構成となすことは、刊行物2記載の技術を適用して、距離Dを大きいものとし、その際に設計上の条件を適宜考慮することによって、当業者が容易になし得る程度のことである。

6 むすび
以上の検討によれば、本願発明は、引用刊行物1及び引用刊行物2にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-02 
結審通知日 2008-09-09 
審決日 2008-09-22 
出願番号 特願2001-350201(P2001-350201)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 公夫  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 三橋 健二
稲積 義登
発明の名称 光導波回路モジュール  
代理人 五十嵐 清  

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