• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1187388
審判番号 不服2005-22943  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-28 
確定日 2008-11-05 
事件の表示 特願2001-314045「アンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月25日出願公開、特開2003-124742〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成13年10月11日の出願であって、平成17年8月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年11月28日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。


第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年11月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の平成17年4月28日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「【請求項1】 2層のアンテナ放射素子を有し、
これらの2層のアンテナ放射素子のうち、一方のアンテナ放射素子によって逆F型アンテナを形成し、もう一方のアンテナ放射素子によって逆L型アンテナを形成し、
前記逆F型アンテナを形成するアンテナ放射素子と地板とを接続する接地端子と、前記逆F型アンテナを形成するアンテナ放射素子および逆L型アンテナを形成するアンテナ放射素子への給電を行う給電端子とを、前記地板の縁に配置した
ことを特徴とするアンテナ。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「【請求項1】 2層のアンテナ放射素子を有し、
これらの2層のアンテナ放射素子のうち、一方のアンテナ放射素子によって逆F型アンテナを形成し、もう一方のアンテナ放射素子によって逆L型アンテナを形成し、
前記逆F型アンテナを形成するアンテナ放射素子と地板とを接続する接地端子と、前記逆F型アンテナを形成するアンテナ放射素子および逆L型アンテナを形成するアンテナ放射素子への給電を行う給電端子とを、前記地板の縁に配置し、
前記2層のアンテナ放射素子のうち、地板に近い方のアンテナ放射素子によって逆F型アンテナを形成し、地板から遠い方のアンテナ放射素子によって逆L型アンテナを形成した
ことを特徴とするアンテナ。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。


2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「2層のアンテナ放射素子」に関し、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、
「地板に近い方のアンテナ放射素子によって逆F型アンテナを形成し、地板から遠い方のアンテナ放射素子によって逆L型アンテナを形成した」という構成を追加して限定することにより特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

(2)独立特許要件
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

[補正後の発明]
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

[引用発明及び周知技術]
A.原審の拒絶理由に引用された特開平10-93332号公報(以下、「引用例」という。)には「複共振逆F型アンテナ」として、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、移動通信等に使用される小型・低姿勢の逆F型アンテナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】移動通信機や携帯無線機においては、通信機を小型軽量にすることが望まれていることから、アンテナとしては小型・低姿勢のアンテナが要望されている。この種のアンテナとして、逆F型アンテナが知られている。逆F型アンテナは原理的に単共振のアンテナであるが、通信機としては複数の周波数で使用できると応用範囲が広がることから、複数の周波数で使用できる逆F型アンテナが提案されている。
【0003】この複共振逆F型アンテナの従来の構成例を図7に示す。この複共振逆F型アンテナは、大きな接地導体板100と、接地導体板100上に所定間隔離隔されて配置された第1放射導体板101と、第1放射導体板101上にさらに所定間隔離隔されて配置された第2放射導体板102と、第1放射導体板101と第2放射導体板102とを接地導体板100に接続する接続導体板103と、第1放射導体板101と第2放射導体板102とに高周波電力を供給する給電ピン104とから構成されている。
【0004】この複共振逆F型アンテナにおいて、給電ピン104は第1放射導体板101と第2放射導体板102とに接続されており、給電ピン104を伝播してきた高周波電力は、第1放射導体板101と第2放射導体板102とに同時に供給される。第1放射導体板101はその長さと幅から決まる第1の周波数に共振しており、第2放射導体板102はその長さと幅から決まる第2の周波数に共振する。また、第1放射導体板101と第2放射導体板102とは互いの動作に影響を与えないように配置されている。
【0005】したがって、給電ピン104から第1の周波数の高周波電力が給電されると、主に第1放射導体板101から電波が放射される。そして、給電ピン104から第2の周波数の高周波電力が給電されると、主に第2放射導体板102から電波が放射されるようになる。また、この複共振逆F型アンテナでは、上記第1の周波数および第2の周波数を中心帯域として受信することができ、その受信信号を給電ピン104を介してチューナ等へ供給することができる。」
(2頁1欄?2欄)

上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
引用例の「複共振逆F型アンテナ」は、引用例の図7からも明らかなように「第1放射導体板101」、「第2放射導体板102」よりなる2層の「放射導体板」を有しており、
逆F型アンテナの構造に関する技術常識を参酌すれば、これら2層の「放射導体板」はそれぞれ「逆F型アンテナ」を形成するものであって、
「第1放射導体板101によって第1の逆F型アンテナを形成し、第2放射導体板102によって第2の逆F型アンテナを形成」するということができる。
また、図7の「接続導体板103」は、「前記第1および第2の逆F型アンテナを形成する放射導体板と接地導体板100とを接続」するものであって、
「給電ピン104」は、「前記第1の逆F型アンテナを形成する第1放射導体板101および第2の逆F型アンテナを形成する第2放射導体板102への給電を行う」ものである。
そして、引用例の図7をみれば、「前記2層の放射導体板のうち、接地導体板100に近い方の第1放射導体板101によって第1の逆F型アンテナを形成」され、「接地導体板100から遠い方の第2放射導体板102によって第2の逆F型アンテナを形成」されていることを見て取ることができる。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

(引用発明)
「2層の放射導体板を有し、
これらの2層の放射導体板のうち、第1放射導体板101によって第1の逆F型アンテナを形成し、第2放射導体板102によって第2の逆F型アンテナを形成し、
前記第1および第2の逆F型アンテナを形成する放射導体板と接地導体板100とを接続する接続導体板103と、前記第1の逆F型アンテナを形成する第1放射導体板101および第2の逆F型アンテナを形成する第2放射導体板102への給電を行う給電ピン104とを有し、
前記2層の放射導体板のうち、接地導体板100に近い方の第1放射導体板101によって第1の逆F型アンテナを形成し、接地導体板100から遠い方の第2放射導体板102によって第2の逆F型アンテナを形成した
複共振逆F型アンテナ。」


[対比・判断]
補正後の発明と引用発明を対比する。
引用発明の「放射導体板」は、アンテナの放射素子として動作するものであるから、補正後の発明の「アンテナ放射素子」に相当し、
引用発明の「第1放射導体板101」を「一方のアンテナ放射素子」と呼んだ場合、「第2放射導体板102」を「もう一方のアンテナ放射素子」ということができるものである。
よって、引用発明の「第1放射導体板101によって第1の逆F型アンテナを形成し」は、補正後の発明の「一方のアンテナ放射素子によって逆F型アンテナを形成し」に相当する。
また、引用発明の「第2の逆F型アンテナ」と補正後の発明の「逆L型アンテナ」は、ともに「アンテナ」である点において一致する。
また、引用発明の「接地導体板100」、「給電ピン104」はそれぞれ、補正後の発明の「地板」、「給電端子」に相当する。
また、引用発明の「接続導体板103」は、その機能からして補正後の発明の「接地端子」に相当する。
そして引用発明の「複共振逆F型アンテナ」は、複数のアンテナが形成・集合し、全体として1つの「アンテナ」をなしているものである。

したがって、補正後の発明と引用発明は以下の点で一致し、また相違している。

(一致点)
「2層のアンテナ放射素子を有し、
これらの2層のアンテナ放射素子のうち、一方のアンテナ放射素子によって逆F型アンテナを形成し、もう一方のアンテナ放射素子によってアンテナを形成し、
前記逆F型アンテナを形成するアンテナ放射素子と地板とを接続する接地端子と、前記逆F型アンテナを形成するアンテナ放射素子およびアンテナを形成するアンテナ放射素子への給電を行う給電端子とを有し、
前記2層のアンテナ放射素子のうち、地板に近い方のアンテナ放射素子によって逆F型アンテナを形成し、地板から遠い方のアンテナ放射素子によってアンテナを形成した
アンテナ。」

(相違点1)
「もう一方のアンテナ放射素子」によって形成される「アンテナ」が、補正後の発明では「逆L型アンテナ」であるのに対し、引用発明では「第2の逆F型アンテナ」である点。

(相違点2)
「接地端子」が、補正後の発明では「逆F型アンテナを形成するアンテナ放射素子と地板とを接続する」のに対し、引用発明では「第1および第2の逆F型アンテナを形成する放射導体板と接地導体板100とを接続する」点、および、
「給電端子」が、補正後の発明では「前記逆F型アンテナを形成するアンテナ放射素子および逆L型アンテナを形成するアンテナ放射素子への給電を行う」のに対し、引用発明では「前記第1の逆F型アンテナを形成する第1放射導体板101および第2の逆F型アンテナを形成する第2放射導体板102への給電を行う」点。

(相違点3)
「接地端子」と「給電端子」の「配置」が、補正後の発明では「地板の縁に配置」されるのに対し、引用発明では記載がない点。

(相違点4)
「地板から遠い方のアンテナ放射素子」によって形成される「アンテナ」が、補正後の発明では「逆L型アンテナ」であるのに対し、引用発明では「第2の逆F型アンテナ」である点。

そこで、まず、上記相違点1、4について検討するに、「逆F型アンテナ」がいわゆる「変形逆L型アンテナ」として考案されたものであるのは周知のことであって(例えば、特開昭61-41205号公報(2頁左上欄1?6行)、特開昭59-77724号公報(1頁右下欄17?18行)を参照)、「逆F型アンテナ」は「逆L型アンテナ」の一形態として認識されるものであるから、引用発明の「第2の逆F型アンテナ」を「逆L型アンテナ」に変形する程度のことは、当業者であれば適宜になし得る事項に過ぎないものである。

ついで、相違点2について検討するに、上記のように引用発明の「第2の逆F型アンテナ」を「逆L型アンテナ」に変形すれば、「接地端子」との接続が「逆L型アンテナ」に関して不要となるのは自明なことであるから、「接地端子」に関する相違点2は格別のことではない。
同様に、「給電端子」に関しては、「逆F型アンテナ」を「逆L型アンテナ」に変形しても「給電」が必要なことには変わりがないから、これをそのまま残す必要があるのも自明なことであって、「給電端子」に関する相違点2も格別のものであるとはいえない。

相違点3について検討するに、アンテナの「接地端子」と「給電端子」の「配置」を「地板の縁」となすことは、これも周知の手法であって(例えば、特開平9-223916号公報(図1、11)、特開2001-189615号公報(図19)、特開2001-217641号公報(図1、2、5)を参照)、当業者であれば適宜になし得る事項に過ぎない。

また、補正後の発明が奏する効果も前記引用発明及び周知技術から容易に予測出来る範囲内のものである。

よって、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成17年11月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明及び周知技術
引用発明及び周知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の[引用発明及び周知技術]で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-04 
結審通知日 2008-06-10 
審決日 2008-06-26 
出願番号 特願2001-314045(P2001-314045)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
P 1 8・ 575- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 圭一郎右田 勝則  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 柳下 勝幸
竹井 文雄
発明の名称 アンテナ  
代理人 実広 信哉  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ