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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1187397
審判番号 不服2006-9152  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-08 
確定日 2008-11-05 
事件の表示 特願2002-321548「プラズマディスプレイパネルおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月23日出願公開、特開2003-151450〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年11月5日(パリ条約による優先権主張平成13年11月5日、韓国、出願番号2001-68674号外2件;平成13年11月6日、韓国、出願番号2001-69011号外1件)の出願であって、平成18年1月31日付け(発送日同年2月7日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月5日付けで明細書又は図面についての手続補正がなされたものである。

第2 平成18年6月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年6月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成18年6月5日付けの手続補正の内容は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、補正前の、
「【請求項1】前面基板と、この前面基板と一定の間隔をおいて配置される後面基板と、前記前面基板上に平行に配列される複数の維持電極と、前記後面基板上に前記維持電極に交差する方向に配列される複数のデータ電極と、前記前面基板及び後面基板の間に一定の間隔で配置され、放電セルを区画する複数の隔壁とを含むプラズマディスプレイパネルにおいて、前記維持電極のそれぞれが、透明電極と、前記透明電極の上に配置されるバス電極とからなり、前記透明電極と前記バス電極との間にはブラック層が形成され、前記ブラック層が、前記前面基板の放電セルの間の非放電領域に形成され、前記バス電極は、透明電極上に形成されるブラック層の一部から前記非放電領域に形成されるブラック層の一部にかけて形成され、前記バス電極の幅をLとする時、前記非放電領域に形成されるブラック層に接するバス電極の幅は、1/8L?5/8Lの範囲であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。」
から、補正後の、
「【請求項1】前面基板と、この前面基板と一定の間隔をおいて配置される後面基板と、前記前面基板上に平行に配列される複数の維持電極と、前記後面基板上に前記維持電極に交差する方向に配列される複数のデータ電極と、前記前面基板及び後面基板の間に一定の間隔で配置され、放電セルを区画する複数の隔壁とを含むプラズマディスプレイパネルにおいて、前記維持電極のそれぞれが、透明電極と、前記透明電極の上に配置されるバス電極とからなり、前記透明電極と前記バス電極との間には厚さ0.1?5μmのブラック層が形成され、前記ブラック層が、前記前面基板の放電セルの間の非放電領域に形成され、前記バス電極は、透明電極上に形成されるブラック層の一部から前記非放電領域に形成されるブラック層の一部にかけて形成され、前記バス電極の幅をLとする時、前記非放電領域に形成されるブラック層に接するバス電極の幅は、1/8L?5/8Lの範囲であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。」(なお、アンダーラインは、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
へと補正する補正事項を含むものである。
上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ブラック層」に関して「厚さ0.1?5μmの」との限定を付加するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、上記補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「補正後第1発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)補正後第1発明を再掲すると、次のとおりである。
「【請求項1】前面基板と、この前面基板と一定の間隔をおいて配置される後面基板と、前記前面基板上に平行に配列される複数の維持電極と、前記後面基板上に前記維持電極に交差する方向に配列される複数のデータ電極と、前記前面基板及び後面基板の間に一定の間隔で配置され、放電セルを区画する複数の隔壁とを含むプラズマディスプレイパネルにおいて、前記維持電極のそれぞれが、透明電極と、前記透明電極の上に配置されるバス電極とからなり、前記透明電極と前記バス電極との間には厚さ0.1?5μmのブラック層が形成され、前記ブラック層が、前記前面基板の放電セルの間の非放電領域に形成され、前記バス電極は、透明電極上に形成されるブラック層の一部から前記非放電領域に形成されるブラック層の一部にかけて形成され、前記バス電極の幅をLとする時、前記非放電領域に形成されるブラック層に接するバス電極の幅は、1/8L?5/8Lの範囲であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。」

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-251744号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。
(ア)「【発明の属する技術分野】本発明は前面基板上に形成されるブラックマトリックス層の構造が改善されたプラズマディスプレイパネルに関する。」(段落【0001】)
(イ)「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、放電セル境界部分と、共通電極及び走査電極とバス電極との間にブラックマトリックス層を同一な材料で一体に形成させることにより製造工程を単純化したプラズマディスプレイパネルを提供することにある。」(段落【0012】)
(ウ)「【0018】図1は本発明の第1実施の形態によるプラズマディスプレイパネルを示したものである。【0019】図面を参照すれば、前面基板21aの下面にはストリップ状の複数の共通電極22aと走査電極22bとが交互に形成される。前記共通及び走査電極22a、22b上にはライン抵抗を減らすため、これらより小さな幅を有する導電性バス電極23が設けられる。前記電極22a、22bは前面基板21aの下面に塗布された誘電体層24に埋め込まれている。又、前記誘電体層24の下面には、例えば、酸化マグネシウムより成る保護膜層25がさらに形成される。【0020】前記前面基板21aと対向されて設けられる背面基板21b上には、前記共通及び走査電極22aと交差するようにストリップ状のアドレス電極26が形成される。前記アドレス電極26は誘電体層27に埋め込まれる。前記誘電体層27の上面には放電空間を限定する隔壁28が相互離隔されて形成される。前記放電空間内には蛍光体層29が塗布される。【0021】前記共通電極22aと走査電極22bとの間には維持放電が発生されるが、この一対の共通電極22aと走査電極22bとを含む空間は一つの放電セルを構成する。【0022】本発明の特徴によると、各放電セルの境界、即ち、走査電極22bと隣接する放電セルの共通電極22cとの間と、前記走査及び共通電極22b、22cとバス電極23との間にはブラックマトリックス層20が形成される。前記ブラックマトリックス層20はガラス粉末に酸化物と黒色顔料とが混合された絶縁性材料で形成される。【0023】前記のような構成を有するプラズマディスプレイパネルの製造方法を具体的に述べると、先ず透明な前面基板21a上にスパッタリングでITO膜を蒸着させて前記共通電極22aと走査電極22bとを形成する。続いて、放電セルの境界、即ち、一走査電極22bと隣接する放電セルの共通電極22cとの間に感光性のブラックマトリックス材料をストリップ状に塗布する。この際、前記ブラックマトリックス材料はバス電極23が形成される共通電極22aと走査電極22bとの上面一部にも塗布され、共通電極22a及び走査電極22bの上面でのブラックマトリックスの塗布厚さは前記放電セル境界領域の塗布厚さに比べて薄い。従って、前記共通及び走査電極22a、22bの下面に塗布されるブラックマトリックスの幅は前記バス電極23の幅と同一なことが望ましい。【0024】その後、前記ブラックマトリックス材料を露光及び現像して所望のパターンを得る。ブラックマトリックスパターンが形成された後、これを550℃-620℃の温度範囲内で加熱してブラックマトリックス層20を完成する。この際、前記共通及び走査電極22a、22bの下面に塗布されるブラックマトリックス層20の厚さは薄いので、熱処理中、前記共通及び走査電極22a、22bに含有された導電性粒子が熱拡散により前記ブラックマトリックス層20へ拡散され、前記共通及び走査電極22a、22bと前記バス電極23とは通電が可能になる。【0025】続いて、前記共通及び走査電極22a、22bの下面に塗布されたブラックマトリックス層20の下面にライン抵抗を減らすため所謂銀や銀合金より成った導電性ペーストを印刷するか或いはフォトリソグラフィ工程を通じてバス電極23を形成する。【0026】以後の製造工程は通常のプラズマディスプレイ製造方法と同一なので省略する。」(段落【0018】?【0026】)
(エ)「【発明の効果】本発明のプラズマディスプレイパネルによると、放電セルの境界部分と、共通及び走査電極の下面に同一な材料でブラックマトリックス層を同時に形成させ得るので、工程が非常に簡単で作業効率が向上され、ブラックマトリックス層を多様な形態で形成できることにより最適のコントラストが提供できる。」(段落【0040】)

そうすると、上記(ウ)から、ITO膜を蒸着させて形成された共通電極22a及び走査電極22bと、バス電極23との間にブラックマトリックス層20が形成されており、共通電極22aと走査電極22bとの間で維持放電が発生されるのであるから、これらの電極により維持電極が構成されていることが読み取れる。
したがって、引用例1には次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
【引用発明】
「前面基板21aと、この前面基板21aと一定の間隔をおいて配置される背面基板21bと、前記前面基板21a上に平行に配列される複数の維持電極と、前記背面基板21b上に前記維持電極に交差する方向に配列される複数のアドレス電極26と、前記前面基板21a及び背面基板21bの間に一定の間隔で配置され、放電セルを区画する複数の隔壁28とを含むプラズマディスプレイパネルにおいて、前記維持電極のそれぞれが、ITO膜を蒸着させて形成された共通電極22a及び走査電極22bと、前記ITO膜を蒸着させて形成された共通電極22a及び走査電極22bの上に配置されるバス電極23とからなり、前記ITO膜を蒸着させて形成された共通電極22a及び走査電極22bと前記バス電極23との間にはブラックマトリックス層20が形成され、前記ブラックマトリックス層20が、前記前面基板21aの放電セル境界部分、即ち、一走査電極22bと隣接する放電セルの共通電極22cとの間に形成されるプラズマディスプレイパネル。」

イ 原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-92325号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。
(ア)「【発明の属する技術分野】本発明はコンピュータの表示端末や表示装置等に用いられるガス放電表示パネル及びその製造方法に関するものである。【0002】ガス放電表示パネルとして知られるプラズマディスプレイパネル(PDP)は、一般に表示の輝度及びコントラストの点で優れていることから、OA機器の表示手段として広く用いられ」(段落【0001】?【0002】)
(イ)「【発明の実施の形態】以下図面を用いて本発明の実施例について詳細に説明する。図1は本発明のガス放電表示パネルの一実施例を示す要部断面図であり、図5と同等の機能を有する部分には同一符号を付している。【0017】本実施例では図示のように表示面側のガラス基板11上にストライプ状に設けられた一対のX, Yからなる表示電極38における、ネサ膜やITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明導電膜からなる透明電極12aと、それにそれぞれ重ねて設けた導電性を補う (低抵抗化) ための銀(Ag)膜からなる金属補助電極37との間と、配列された複数対の透明電極12aにおいて隣り合う一対の透明電極12a間の非放電部とに、該金属補助電極37よりも光の反射率が低い、例えばマンガン(Mn)-鉄(Fe)-銅(Cu)系の酸化物及びクロム(Cr)-Cu系の酸化物からなる黒色顔料とCu、Ni及びAgからなる金属微粒子を含む導電性の第1暗色遮光層33と第2暗色遮光層34とを同時に設けた構成とされている。」(段落【0016】?【0017】)
(ウ)「上記した構成の一対のX, Yからなる表示電極38と第2暗色遮光層34が配列された表示面側のガラス基板11上に、低融点ガラス等の絶縁ペーストをスクリーン印刷法等によって一様に塗布し、100?150℃程度の温度で乾燥させた後、その低融点ガラス等からなる絶縁膜を500?600℃程度の温度で焼成処理を行うことにより、前記透明電極12a上に1?3μmの厚さの第1暗色遮光層33と、1?5μmの厚さの金属補助電極37、また1?3μmの厚さの第2暗色遮光層34及び30?40μm程度の厚さの低融点ガラス等の絶縁膜からなる誘電体層13と、その全表面に更に数千Å程度の厚さのMgO膜からなる保護膜14を設けた表示面側のガラス基板11が得られる。」(段落【0027】)
(エ)「上述のような実施例によれば、第1暗色遮光層33と第2暗色遮光層34とを同じ金属ペーストを用い、塗布工程から硬化処理までを同時に平行して行って形成しているので、該第1暗色遮光層33と第2暗色遮光層34とを個別に形成する工程が不要となり、更に前記第1暗色遮光層33、第2暗色遮光層34及び金属補助電極37の焼成処理による形成も同時に行っているので当該ガス放電表示パネルを効率的に低コストで製造することができる。」(段落【0029】)

ウ 原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-156166号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。
(ア)「【発明の属する技術分野】本発明は、コンピュータおよびテレビ等の画像表示に用いる平面型ディスプレイ、特に、パネルの高コントラスト化を図り、金属抵抗値を下げることにより高効率化、高品位化、長寿命化を実現するプラズマディスプレイパネルに関する。」(段落【0001】)
(イ)「【0020】このように、PDPには効率の向上が重要であるが、従来の構造のPDPでは表示電極に起因する効率の低下が相加されており、改善が求められていた。・・・【0022】そこで、本発明は、陰になって表示輝度に影響の少ない光吸収帯部分を有効に利用して金属電極幅を広げることにより、表示電極抵抗を低下させてPDPの効率向上を図り、かつ、表示電極と光吸収帯との間隙を無くすことにより、高品位の画面表示を実現するプラズマディスプレイパネルを提供することを目的としてなされたものである。【0023】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、第一の発明は、A基板上に、複数の平行に形成された第1及び第2の表示電極と、前記第1及び第2の表示電極間に配置された光吸収帯群を具備し、これらが、誘電体とその上に形成された保護膜により覆われて形成され、前記A基板と対向して配置されたB基板上に、前記第1及び第2の表示電極に直交して複数の隔壁、及び、前記隔壁間に各画素に対応した蛍光体層が形成され、かつ、前記蛍光体層の下に誘電体に覆われたデータ電極が形成され、前記A基板と前記B基板とが封着材により封止され、放電により紫外線を放出する放電ガスが充填され、前記第1及び第2の表示電極が透明電極及びそれらに電気的に接触して形成された金属電極とからなり、前記金属電極の一部が前記光吸収帯に重なる様に配置することを特徴とする。」(段落【0020】?【0023】)
(ウ)「本発明者等は、透明電極と金属電極とからなる表示電極による放電発光強度分布の測定結果から、主(表示)放電間隙よりも遠い側程発光輝度が低い点に着眼し、金属電極を主放電間隙よりもできるだけ遠い方向に離すことにより、金属電極で陰となる蛍光体からの発光光束を低く押さえる構成とした。これは、従来から一般に用いられている設計方法であるが、本発明では、従来よりも更に、金属電極を光吸収帯に近づけて、光吸収帯に重ねる構成とした。」(段落【0030】)
(エ)「[実施の形態I](PDPの全体的な構成)図1及び図2は、第1の発明の実施形態に係る交流面放電型PDPの概略断面図である。尚、図1ではアドレス電極132方向の断面図を示し、図2は表示電極103方向の断面図が示されているが、両図は互いに直交する断面図を与える。・・・【0036】Aガラス基板101上には、表示電極群102、103、及び、光吸収帯104が形成され、その上に、誘電体ガラス、例えば、・・・からなる誘電体ガラス105と、その上に電子ビーム蒸着されたMgOからなる保護膜106が形成されている。・・・【0037】表示電極102a,103は間隙124(間隔g_(0))を開けて形成され、一対で放電セル140を形成する。また、隣接セルの表示電極102bと103間は間隙125(間隔g)を開けて、光吸収体104上に形成される。【0038】表示電極102a,103は、間隙124(間隔g_(0))を開けて形成された透明電極112a,113と、金属電極122a,123から構成される。金属電極122a,123は、それぞれ透明電極112a,113上に電気的に接続されるように形成され、かつ、図1に示すように、その一部が光吸収帯104に重なるように形成されている。放電セル140の隣接セルの表示電極102bの金属電極122bも、金属電極123と同様に、その一部が光吸収帯104に重なるように形成され、両者は間隔gを開けて形成されている。」(段落【0034】?【0038】)
(オ)「【0043】<PDPの作製>42形AC-PDPでセルピッチ・・・の場合について具体的に説明する。フロントカバーパネルは、A基板ガラス101上に表示電極102a、103を形成する。まず、透明電極(ITOまたはSnO_(2))を形成する。この厚みを200nm、主放電間隙124を、g_(0)=80μmとし、幅を360μmとした。この時の隣接セル間の間隔は280μmとなる。・・・【0045】更に、金属電極用の市販の感光性銀ペーストをスクリーン印刷した後に、露光現像して焼成する方法で形成する。尚、銀ペーストをスクリーン印刷してパターン形成して焼成しても良い。また、感光性銀ペーストの下に市販の感光性黒色電極材料を印刷しておき、乾燥後、露光、現像した後に焼成して形成しても良い。この時の金属電極の寸法は、厚みが5μm、間隙125の間隔をg=120μmとし、幅をw=150?200μmで作製した。」(段落【0043】?【0045】)

(3)対比
補正後第1発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「前面基板21a」、「背面基板21b」、「維持電極」、「アドレス電極26」、「隔壁28」、「プラズマディスプレイパネル」は、それぞれ、補正後第1発明の「前面基板」、「後面基板」、「維持電極」、「データ電極」、「隔壁」、「プラズマディスプレイパネル」に相当する。
引用発明の「ITO膜を蒸着させて形成された共通電極22a及び走査電極22b」、「バス電極23」、「ブラックマトリックス層20」は、それぞれ、補正後第1発明の「透明電極」、「バス電極」、「ブラック層」に相当する。
引用発明の「放電セル境界部分、即ち、一走査電極22bと隣接する放電セルの共通電極22cとの間」は、補正後第1発明の「放電セルの間の非放電領域」に相当する。
したがって、両者は、次の一致点で一致し、相違点1及び2で相違する。
【一致点】
「前面基板と、この前面基板と一定の間隔をおいて配置される後面基板と、前記前面基板上に平行に配列される複数の維持電極と、前記後面基板上に前記維持電極に交差する方向に配列される複数のデータ電極と、前記前面基板及び後面基板の間に一定の間隔で配置され、放電セルを区画する複数の隔壁とを含むプラズマディスプレイパネルにおいて、前記維持電極のそれぞれが、透明電極と、前記透明電極の上に配置されるバス電極とからなり、前記透明電極と前記バス電極との間にはブラック層が形成され、前記ブラック層が、前記前面基板の放電セルの間の非放電領域に形成されるプラズマディスプレイパネル。」
【相違点】
相違点1:補正後第1発明では、透明電極とバス電極との間には厚さ「0.1?5μm」のブラック層が形成されているのに対して、引用発明では、ITO膜を蒸着させて形成された共通電極22a及び走査電極22b(「透明電極」に相当)とバス電極23(「バス電極」に相当)との間のブラックマトリックス層20(「ブラック層」に相当)の厚さが不明である点。
相違点2:補正後第1発明では、バス電極は、透明電極上に形成されるブラック層の一部から「非放電領域に形成されるブラック層の一部にかけて形成され、前記バス電極の幅をLとする時、前記非放電領域に形成されるブラック層に接するバス電極の幅は、1/8L?5/8Lの範囲である」のに対して、引用発明では、バス電極23(「バス電極」に相当)は放電セル境界部分、即ち、一走査電極22bと隣接する放電セルの共通電極22cとの間(「非放電領域」に相当)に形成されるブラックマトリックス層20(「ブラック層」に相当)の一部にかけて形成されたものではない点。

(4)判断
上記相違点1及び2について検討する。
相違点1については、引用例2(特開平10-92325号公報)に、「透明電極12a上に1?3μmの厚さの第1暗色遮光層33と、1?5μmの厚さの金属補助電極37・・・」(上記摘記事項(ウ)参照)と記載されており、当該1?3μmの厚さの第1暗色遮光層33が、透明電極とバス電極との間のブラック層に相当し、その厚さの数値範囲「1?3μm」は、補正後第1発明の数値範囲「0.1?5μm」に包含される。そして、引用発明のITO膜を蒸着させて形成された共通電極22a及び走査電極22bとバス電極23との間に形成されたブラックマトリックス層20と、引用例2記載の第1暗色遮光層33とは、共にプラズマディスプレイパネルのいわゆる透明電極とバス電極との間に形成されたブラック層であるという点で共通するから、引用発明の共通電極22a及び走査電極22bとバス電極23との間に形成されたブラックマトリックス層20に引用例2記載の第1暗色遮光層33の構成を適用することに困難性はない。したがって、引用発明の共通電極22a及び走査電極22bとバス電極23との間に形成されたブラックマトリックス層20に引用例2記載の第1暗色遮光層33の厚みを適用して補正後第1発明のごとく構成することは、当業者であれば容易になし得たものである。
次に、相違点2について検討する。
引用例3(特開2000-156166号公報)には、「本発明は、陰になって表示輝度に影響の少ない光吸収帯部分を有効に利用して金属電極幅を広げることにより、表示電極抵抗を低下させてPDPの効率向上を図り」(上記摘記事項(イ)参照)、「金属電極を主放電間隙よりもできるだけ遠い方向に離すことにより、金属電極で陰となる蛍光体からの発光光束を低く押さえる構成とした。・・・本発明では、従来よりも更に、金属電極を光吸収帯に近づけて、光吸収帯に重ねる構成とした」(上記摘記事項(ウ)参照)と記載されており、これらの記載によれば、金属電極(「バス電極」に相当)を非放電領域の光吸収帯(「ブラック層」に相当)の一部にかけて形成することにより、効率の向上が図れ、また、金属電極で陰となる発行光束を低く抑えること、すなわち、輝度の向上が図れることが読み取れる。さらに、引用例3には、具体例として、「まず、透明電極(ITOまたはSnO_(2))を形成する。この厚みを・・・、主放電間隙124を、・・・、幅を・・・とした。この時の隣接セル間の間隔は280μmとなる。・・・この時の金属電極の寸法は、厚みが・・・、間隙125の間隔をg=120μmとし、幅をw=150?200μmで作製した」(上記摘記事項(オ)参照)と記載されており、これらの寸法から、算出すると、金属電極(「バス電極」に相当)の非放電領域に形成される光吸収帯104(「ブラック層」に相当)の一部にかける長さは80μmとなり、このとき金属電極の幅(「L」に相当)は150?200μmであるから、結局、金属電極の幅をLとする時、非放電領域に形成される光吸収帯に接する金属電極の幅は、80/200L?80/150L=3.2/8L?4.2/8Lで表されることとなる。
そして、引用発明では共通電極22a及び走査電極22b(「透明電極」に相当)とバス電極23(「バス電極」に相当)との間にもブラックマトリックス層20(「ブラック層」に相当)を有する点で引用例3記載のものとは異なるとしても、引用発明と引用例3記載のものとは、共にいわゆる非放電領域にブラック層を有する点で共通しているから、引用例3でいう、金属電極(「バス電極」に相当)を光吸収帯(「ブラック層」に相当)の一部にかけて形成することにより金属電極幅を広げて表示電極抵抗を低下させて効率の向上が図れるという効果、及び、金属電極を光吸収帯の一部にかけて形成することより、金属電極をできるだけ遠い方向に離して金属電極で陰となる発行光束を低く抑えて輝度の向上が図れるという効果は、引用発明においても同様に生じるとものと解される。そうすると、引用例3記載の構成を知悉する当業者が引用発明に接したとき、引用発明に引用例3記載の構成を適用して引用発明のバス電極23を放電セル境界部分(「非放電領域」に相当)に形成されるブラックマトリックス層20(「ブラック層」に相当)の一部にかけて形成しようとすることは容易に想到できることであり、その際に、どの程度をブラックマトリックス層20の一部にかけるかは、当業者が、効率・輝度、及び、消費電力等を考慮して最適化すべき設計的事項というべきである。
したがって、引用発明に引用例3記載の構成を適用して補正後第1発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たものである。

そして、補正後第1発明の奏する作用効果については、引用例1ないし3に記載された事項から当業者であれば予測できる範囲内のものにすぎない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、補正後第1発明は、引用発明及び引用例2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成18年6月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成17年7月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】前面基板と、この前面基板と一定の間隔をおいて配置される後面基板と、前記前面基板上に平行に配列される複数の維持電極と、前記後面基板上に前記維持電極に交差する方向に配列される複数のデータ電極と、前記前面基板及び後面基板の間に一定の間隔で配置され、放電セルを区画する複数の隔壁とを含むプラズマディスプレイパネルにおいて、前記維持電極のそれぞれが、透明電極と、前記透明電極の上に配置されるバス電極とからなり、前記透明電極と前記バス電極との間にはブラック層が形成され、前記ブラック層が、前記前面基板の放電セルの間の非放電領域に形成され、前記バス電極は、透明電極上に形成されるブラック層の一部から前記非放電領域に形成されるブラック層の一部にかけて形成され、前記バス電極の幅をLとする時、前記非放電領域に形成されるブラック層に接するバス電極の幅は、1/8L?5/8Lの範囲であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。」

第4 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1ないし3、及び、その記載事項は、上記「第2」の「2(2)引用例」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願第1発明は、上記「第2」の「2 独立特許要件について」で検討した補正後第1発明の発明特定事項からブラック層に関する「厚さ0.1?5μmの」の限定事項を省いたものである。
そうすると、本願第1発明の発明特定事項を全て含みさらに他の限定事項を付加したものに相当する補正後第1発明が、上記「第2」の「2 独立特許要件について」で検討したとおり引用発明及び引用例2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願第1発明も、同様の理由により、引用発明及び引用例2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願第1発明は、引用発明及び引用例2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願第1発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし14に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-04 
結審通知日 2008-06-10 
審決日 2008-06-23 
出願番号 特願2002-321548(P2002-321548)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01J)
P 1 8・ 575- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 剛  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 山田 昭次
堀部 修平
発明の名称 プラズマディスプレイパネルおよびその製造方法  
代理人 山川 茂樹  
代理人 西山 修  
代理人 黒川 弘朗  
代理人 紺野 正幸  
代理人 山川 政樹  

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