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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1187825
審判番号 不服2007-11610  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-20 
確定日 2008-11-13 
事件の表示 特願2001-349707「内燃機関の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月21日出願公開、特開2003-148206〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成13年11月15日に出願されたものであって、平成18年9月28日付けで拒絶理由が通知され、同年11月27日に意見書が提出されたが、平成19年3月19日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、同年4月20日に同拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、次のとおりのものである。

「内燃機関の排出ガスの酸素濃度等のガス成分濃度、空燃比、リッチ/リーンのいずれかを検出する排出ガスセンサと、この排出ガスセンサに設けられたヒータの通電を制御して該排出ガスセンサのセンサ素子の温度(以下「素子温度」という)を活性温度に昇温するヒータ制御手段とを備え、前記排出ガスセンサの出力に基づいて内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、
内燃機関の運転中に所定の自動停止条件が成立したときに内燃機関を自動的に停止する自動停止制御手段を備え、
前記ヒータ制御手段は、内燃機関の自動停止中に前記排出ガスセンサの素子温度が活性温度よりも低い温度に設定された所定の予熱温度付近に維持されるように前記ヒータの通電を制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。」

3.当審の判断
(1)引用例等
1)特開2001-295678号公報(平成13年10月26日公開。以下、「引用例1」という。)
2)特開平5-202785号公報(以下、「引用例2」という。)
3)特開2001-74693号公報(平成13年3月23日公開。以下、「参考文献」という。)

(2)引用例の記載事項
1)引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された、本願出願前に頒布された刊行物である上記引用例1には、次の事項が記載されている。(なお、下線は引用箇所等を特に明示するために当審で付した。)

ア.「【請求項1】エンジンと、
このエンジンに同期して回転する電動機と、
エンジン及び電動機の出力を駆動輪に伝達する装置と、
車両の走行条件によってエンジンの自動停止、再始動を行うエンジンコントロールユニットと、
エンジン制御用の電気負荷と、
この電気負荷の電源となるバッテリと
を備えた車両において、
エンジンの自動停止中に前記電気負荷に対する電源供給を遮断する手段を備えることを特徴とする車両のエンジン自動停止再始動装置。
・・・
【請求項10】前記電気負荷は、ホットワイヤ式のエアフローメータ、空燃比センサの加熱手段、燃料ポンプの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載の車両のエンジン自動停止再始動装置。
【請求項11】前記電気負荷が空燃比センサの加熱手段である場合に、前記再始動に必要となるコントロールユニットにより、エンジンの自動停止中、空燃比センサの素子温が活性温度を保持するように空燃比センサの加熱手段を制御することを特徴とする請求項10に記載の車両のエンジン自動停止再始動装置。」(公報特許請求の範囲の請求項1、請求項10及び請求項11)

イ.「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、エンジン制御用の電気負荷にはエンジンの自動停止中にもバッテリ電力を消費するものがある。
【0005】しかしながら、エンジンの自動停止中はバッテリの充電ができないため、その間のバッテリに対する電気負荷が大きいと、バッテリの容量が早く減少してしまい、エンジンの自動停止可能な時間が短くなってしまう。エンジンの自動停止は燃費の向上に結びつくものであるから、エンジンの自動停止可能な時間を長くできないと燃費の改善代が小さくなる。
【0006】そこで本発明は、エンジンの自動停止中にもバッテリ電力を消費することになる不要な電気負荷などへの電源供給を遮断することより、エンジンの自動停止可能な時間が短くならないようにすることを目的とする。」(公報段落0004ないし0006)

ウ.「【0023】エンジンの自動停止中にエンジンの制御用電気負荷である空燃比センサ加熱手段の電源を遮断して空燃比センサの素子温が活性温度を下回ってしまうと、自動停止の解除後に空燃比センサ加熱手段の制御を開始したのでは空燃比センサの素子温が活性温度に回復するまで空燃比フィードバック制御を行うことができず、排気性能が悪化することが考えられるが、第11の発明によればエンジンの自動停止中に空燃比センサの素子温が活性温度を維持するので、エンジンの再始動直後から空燃比フィードバック制御を行うことが可能になり、排気性能を悪くすることがない。」(公報段落0023)

エ.「【0025】図1において、1はエンジン、3は無段自動変速機であり、これらの間にはモータジェネレータ(電動機)2が配置される。エンジン1またはモータジェネレータ2の回転が無段自動変速機3からドライブシャフト7を介して図示しない駆動輪に伝達される。
・・・
【0031】また、車両の一時停止時などにエンジン1を自動的に停止し、その後に発進させるときにエンジン1を自動的に再始動させるために、自動停止再始動機能を有するエンジンコントロールユニット10が備えられ、車両停止時にエンジン1の作動を停止させ、また発進時にモータジェネレータ2によりエンジン1を始動させるようになっている。」(公報段落0025及び0031)

オ.「【0036】このフラグはFCOND=1のときエンジンの一時停止許可条件が成立していることを、FCOND=1のとき一時停止許可条件が外れたことを示す。上記の条件がすべて成立していない状態ではFCOND=0であるので、上記の条件のすべてが初めて成立したときにはS6に進み、エンジンを停止させるまでのデイレイ時間をS7で設定するとともに一時停止許可フラグFCOND=1とする。ディレイ時間としては例えば2秒程度が設定され、条件が成立してから2秒後にエンジンを停止する。」(公報段落0036)

カ.「【0059】図4には車両制御に関わる主な構成要素をブロックで示す。・・・なお、図1と同一部分には同一符号を付けている。
・・・
【0061】また、27は電動の燃料ポンプ、28は吸気通路の上流位置に設けられるホットワイヤ式のエアフローメータ、29は排気通路に設けられるO_(2)センサで、これらはエンジンの運転中、バッテリ21の電力を消費する電気負荷(エンジン制御用の電気負荷)である。たとえば、・・・O_(2)センサ29はセンサ素子温が活性温度にないと働かないので、活性温度となるようにセンサ付属のヒータ(以下「O_(2)センサヒータ」という)29A(図5参照)にバッテリ21からの電流を流している。・・・」(公報段落0059及び0061)

キ.「【0081】第1実施形態はエンジンの一時停止中、継続してO_(2)センサヒータへの通電を停止するものであったが、第2実施形態はエンジンの一時停止中においてO_(2)センサの素子温が活性温度を下回ったとき、O_(2)センサヒータ(空燃比センサ加熱手段)への通電を再開することにより、エンジンの一時停止の解除直後から直ちに空燃比フィードバック制御の開始を可能とするものである。
【0082】これを図8で説明すると、センサ素子温が活性温度域にあるかどうかを判断するためのスライスレベルS/Lにヒステリシスを設けている(2つスライスレベルTO2とTO3の間がヒステリシスである)。エンジン一時停止のタイミングであるt1でO_(2)センサヒータへの通電を停止すると、センサ素子温が低下してゆくので、この低下するセンサ素子温を推定する。この推定されるセンサ素子温TO1が、低い側のスライスレベルTO2に達するt2のタイミングでO_(2)センサヒータへの通電を再開する。この通電再開でセンサ素子温がふたたび上昇するので、この上昇するセンサ素子温を推定する。この推定されるセンサ素子温TO1が、高い側のスライスレベルTO3に達するt3のタイミングでO_(2)センサヒータへの通電を停止する。以後はエンジンの一時停止が続く限りこの通電再開と通電遮断を繰り返して、センサ素子温を活性温度に維持する。」(公報段落0081及び0082)

ク.「【0088】図10のS68ではスライスレベルS/Lに所定値TO2が入っているかどうかみる。ここでTO2はセンサ素子温の活性温度の下限値を定める値で固定値である。エンジンの一時停止許可条件が外れたときにはS/Lに所定値TO2が入っているので(図9のS63、S66参照)、エンジンの一時停止許可条件へと切換わった直後にはS/LにTO2が入っている。これよりS69に進み、センサ素子温TO1とスライスレベルS/L(=TO2)を比較する。TO1>S/Lであるときにはセンサ素子温が活性温度にあるのでエンジンの一時停止中のバッテリ消費を軽減するため、S70に進みバッテリ21からO_(2)センサヒータへの通電を停止する。」(公報段落0088)

ケ.「【0096】このように第2実施形態では、エンジンの一時停止中はセンサ素子が活性温度を保っている限りにおいてO_(2)センサヒータへの通電を停止することにしたので、エンジンの一時停止中におけるバッテリ21の電力消費を防ぎつつエンジンの一時停止の解除直後から直ちに空燃比フィードバック制御を行わせることができる。」(公報段落0096)

コ.上記カ.及びケ.の記載から、O_(2)センサヒータ29Aへ電流を流すこと(通電)により、O_(2)センサ29のセンサ素子温を活性温度に昇温する制御を行うことが分かり、そのためのO_(2)センサヒータ制御手段を当然備えていることが分かる。

上記ア.ないしコ.及び各図の記載によれば、上記引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。

「エンジン1の排気通路に設けられたO_(2)センサ29と、このO_(2)センサ29に設けられたO_(2)センサヒータ29Aの通電を制御して該O_(2)センサ29のセンサ素子温を活性温度に昇温するO_(2)センサヒータ制御手段とを備え、空燃比フィードバック制御するエンジン自動停止再始動装置において、
エンジン1の運転中に一時停止許可条件が成立したときにエンジン1を自動的に停止するエンジンコントロールユニット10を備え、
前記O_(2)センサヒータ制御手段は、エンジン1の自動停止中に前記O_(2)センサ29のセンサ素子温が活性温度のスライスレベルS/L付近に維持されるように前記O_(2)センサヒータ29Aの通電を制御するエンジン自動停止再始動装置。」(以下、「引用例1記載の発明」という。)

2)引用例2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された、本願出願前に頒布された刊行物である上記引用例2には、次の事項が記載されている。(なお、下線は引用箇所等を特に明示するために当審で付した。)

サ.「【請求項1】 内燃機関の排ガス濃度を検出するガス濃度検出部と、
該ガス濃度検出部を加熱して温度を上昇させるヒータと、
を備え、前記ガス濃度検出部の検出した排ガス濃度に基づいて空燃比制御を行なう内燃機関の空燃比制御装置において、
前記内燃機関の冷却水温又は吸入空気温等の前記ガス濃度検出部の周囲環境の機関温度を検出する機関温度検出手段と、
前記内燃機関の始動前の運転準備動作を検出する始動前状態検出手段と、
該始動前状態検出手段によって運転準備動作が検出された場合に、前記機関温度検出手段によって検出された機関温度が高いときには、前記ヒータの加熱による前記ガス濃度検出部の始動時までの目標温度を低く設定し、一方機関温度が低いときには、目標温度を高く設定する目標温度設定手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。」(公報特許請求の範囲)

シ.「【0002】
【従来の技術】近年では、内燃機関(エンジン)の燃費を向上させる目的や排ガスの浄化を促進する等の目的で、エンジンの始動直後から空燃比をフィードバック制御することが要求されている。この空燃比フィードバック制御は、通常、排ガス中の酸素濃度を酸素センサを使用して検出し、検出した酸素濃度に基づいて、エンジンに供給する燃料の混合比を調整する制御である。
【0003】前記フィードバック制御に使用される酸素センサは、通常、その出力特性が温度に大きく依存し、センサ素子が活性化する特定の温度範囲にて好適な出力が得られるので、エンジン始動後に速やかにセンサ素子の活性化を行うために、センサ本体にヒータが取り付けられている。」(公報段落0002及び0003)

ス.「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらのものは全て、エンジン始動時あるいは始動後からヒータに通電を開始するものなので、走行開始時に、空燃比フィードバックを開始するための十分な素子温度を達成するとは言えず、そのため、走行開始時には好ましい空燃比制御ができないという問題があった。
【0006】また、これとは別に、エンジン始動前に予熱を行う技術が提案されている(SAE900503号)。これは、自動車のシートにシートセンサ等を取り付け、運転者の着座によってシートセンサがオンとなると、ヒータ付触媒の温度を活性化温度まで上げるものであるが、この方法だと、始動時までに供給する電力が大きくなり、バッテリが低電圧や小容量の場合にはバッテリあがりが懸念され好ましくない。
【0007】本発明は、上記課題を解決するためになされ、電源の消費電力を低減し、内燃機関の始動時に好適に空燃比制御を行うことができる内燃機関の空燃比制御装置を提供することを目的とする。」(公報段落0005ないし0007)

セ.「【0010】そして、始動前状態検出手段M5によって、内燃機関M1の始動時(例えばイングニッションがオンされた時)より前の運転準備動作(例えば自動車のドアの開閉時,シートの着座時,イグニッションのキー挿入時等)を検出した場合には、目標温度設定手段M6により、機関温度検出手段M4によって検出された機関温度に対応して目標温度を設定する。即ち、機関温度が高いときには、ヒータM3の加熱によるガス濃度検出部M2の始動時までの目標温度を低く設定し、一方機関温度が低いときには、この目標温度を高く設定する。
【0011】つまり、従来より、図2に示す様に、ガス濃度検出部(酸素センサ等)は、各空燃比(A/F)において所定の高い温度にて安定した出力が得られるので、ヒータで例えば630℃以上に加熱して使用されるが、単にヒータで加熱するだけでは、始動時にセンサ素子の加熱に要する時間がかかり、また電源のバッテリ等の能力にも限界がある。そこで、本発明は、始動前の冷却水温等の機関温度の違いによって、始動後のセンサ素子の温度上昇の匂配が違う事に着目してなされたものである。
【0012】具体的には、図3に例示する様に、機関温度が低い時には(周囲の温度が低いのであるから)始動後の素子温の上昇率が低く、機関温度が高い時には逆に始動後の素子温の上昇率が高いことに着目し、始動前に達成すべき目標素子温を、始動前の機関温度が高い時には低く、低い時には高く設定する。これによって、始動後の任意の短い時間(例えば20sec)後に、センサ素子温がセンサ素子の活性化温度に達することができ、しかも始動前の供給電力は機関温度に対応して無駄なく使用されるので、電源の消費電力を低く抑えることが実現される。」(公報段落0010ないし0012)

ソ.「【0017】エンジン11の排気管26には、エンジン11から排出される排ガス中の有害成分(CO,HC,NOx 等)を低減させる三元触媒27が配置される。この三元触媒27の上流側には、エンジン11に供給される混合気の空燃比に応じたリニアな検出信号を出力する(酸素濃度センサである)空燃比センサ28が設けられ、更に下流側には、エンジン11に供給された混合気の空燃比が理論空燃比λ_(0) に対してリッチか或はリーンかに対応した信号を出力するO_(2) センサ29が設けられる。そして、空燃比センサ28には、始動時等にセンサ素子を加熱するためのヒータ28aが設けられている。」(公報段落0017)

タ.上記ス.の段落0005、セ.及びソ.の記載から、ヒータの通電により、空燃比センサのセンサ素子温を活性温度に昇温する制御を行うことが分かり、そのためのヒータ制御手段を当然備えていることが分かる。

チ.上記サ.、セ.及び図3の記載から、始動前状態検出手段により運転準備動作を検出した場合に、空燃比センサ28のセンサ素子温をセンサ素子の活性化温度よりも低い温度に設定された所定の温度付近に維持されるようにヒータの通電を制御することが分かる。

上記サ.ないしチ.及び各図の記載によれば、上記引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。

「内燃機関の空燃比センサ28と、この空燃比センサ28に設けられたヒータ28aの通電を制御して該空燃比センサ28のセンサ素子温を活性温度に昇温するヒータ制御手段とを備え、前記空燃比センサ28の出力に基づいて空燃比制御を行う内燃機関の空燃比制御装置において、
運転準備動作を検出する始動前状態検出手段を備え、
前記ヒータ制御手段は、運転準備動作を検出した場合に前記空燃比センサ28のセンサ素子温をセンサ素子の活性化温度よりも低い温度に設定された所定の温度付近に維持されるようにヒータの通電を制御する内燃機関の空燃比制御装置。」(以下、「引用例2記載の発明」という。)

(3)対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、構成又は機能からみて、引用例1記載の発明の「エンジン1」が本願発明の「内燃機関」に相当する。同様に、引用例1記載の発明の「O_(2)センサ29」が本願発明の「排出ガスの酸素濃度等のガス成分濃度、空燃比、リッチ/リーンのいずれかを検出する排出ガスセンサ」に、「O_(2)センサヒータ29A」が「ヒータ」に、「センサ素子温」が「センサ素子の温度」又は「素子温度」に、「O_(2)センサヒータ制御手段」が「ヒータ制御手段」に、「空燃比フィードバック制御」が「O_(2)センサ29の出力に基づいて内燃機関を制御」に、「エンジン自動停止再始動装置」が「内燃機関の制御装置」に、「一時停止許可条件」が「所定の自動停止条件」に、「エンジンコントロールユニット10」が「自動停止制御手段」に、それぞれ相当する。
また、引用例1記載の発明の「エンジン1の自動停止中に前記O_(2)センサ29のセンサ素子温が活性温度のスライスレベルS/L付近に維持されるように前記O_(2)センサヒータ29Aの通電を制御する」は、「内燃機関の自動停止中に前記排出ガスセンサの素子温度が所定の予熱温度付近に維持されるように前記ヒータの通電を制御する」という限りにおいて、本願発明の「内燃機関の自動停止中に前記排出ガスセンサの素子温度が活性温度よりも低い温度に設定された所定の予熱温度付近に維持されるように前記ヒータの通電を制御する」に相当する。

してみると、両者は、
「内燃機関の排出ガスの酸素濃度等のガス成分濃度、空燃比、リッチ/リーンのいずれかを検出する排出ガスセンサと、この排出ガスセンサに設けられたヒータの通電を制御して該排出ガスセンサのセンサ素子の温度を活性温度に昇温するヒータ制御手段とを備え、前記排出ガスセンサの出力に基づいて内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、
内燃機関の運転中に所定の自動停止条件が成立したときに内燃機関を自動的に停止する自動停止制御手段を備え、
前記ヒータ制御手段は、内燃機関の自動停止中に前記排出ガスセンサの素子温度が所定の予熱温度付近に維持されるように前記ヒータの通電を制御する内燃機関の制御装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点
所定の予熱温度付近に維持されるようにヒータの通電を制御することに関して、本願発明では、「活性温度よりも低い温度」に制御するのに対して、引用例1記載の発明では、「活性温度のスライスレベルS/L付近」に制御する点(以下、「相違点」という。)。

(4)判断
上記相違点について検討する。
本願発明と上記引用例2記載の発明とを対比すると、機能又は構成からみて、引用例2記載の発明の「空燃比センサ28」が本願発明の「排出ガスの酸素濃度等のガス成分濃度、空燃比、リッチ/リーンのいずれかを検出する排出ガスセンサ」に相当する。同様に、引用例2記載の発明の「ヒータ28a」が本願発明の「ヒータ」に、「センサ素子温」が「センサ素子の温度」又は「素子温度」に、「空燃比センサ28の出力に基づいて空燃比制御を行う内燃機関の空燃比制御装置」が「排出ガスセンサの出力に基づいて内燃機関を制御する内燃機関の制御装置」に、それぞれ相当する。また、引用例2記載の発明の「運転準備動作を検出した場合に前記空燃比センサ28のセンサ素子温をセンサ素子の活性化温度よりも低い温度に設定された所定の温度付近に維持されるようにヒータの通電を制御する」ことは、「始動が予測される内燃機関の停止中に排出ガスセンサの素子温度が活性温度よりも低い温度に設定された所定の予熱温度付近に維持されるように前記ヒータの通電を制御する」という限りにおいて、本願発明の「内燃機関の自動停止中に前記排出ガスセンサの素子温度が活性温度よりも低い温度に設定された所定の予熱温度付近に維持されるように前記ヒータの通電を制御する」ことに相当する。
そうすると、引用例2には、「内燃機関の排出ガスの酸素濃度等のガス成分濃度、空燃比、リッチ/リーンのいずれかを検出する排出ガスセンサと、この排出ガスセンサに設けられたヒータの通電を制御して該排出ガスセンサのセンサ素子の温度を活性温度に昇温するヒータ制御手段とを備え、前記排出ガスセンサの出力に基づいて内燃機関を制御する内燃機関の制御装置」なる、本願発明と同様の前提技術(以下、「前提技術」という。)において、始動が予測される内燃機関の停止中に、上記相違点に係る本願発明の「前記排出ガスセンサの素子温度が活性温度よりも低い温度に設定された所定の予熱温度付近に維持されるように前記ヒータの通電を制御する」ことに相当する技術事項(以下、「引用例2記載の技術事項」という。)が記載されているといえる。
そして、引用例1記載の発明と引用例2記載の技術事項とは、上記前提技術の点で共通しているといえる。
また、引用例1記載の発明の「活性温度のスライスレベルS/L付近」に制御することに関して、引用例1には、素子温度がスライスレベルS/L(=TO2)以上では、ヒータへの通電を停止して、エンジンの自動停止中のバッテリ消費を軽減する旨の記載がある(上記ク.及びケ.を特に参照。)ことから、引用例1記載の発明に接した当業者であれば、自動停止中のバッテリ消費の軽減と始動時に迅速に空燃比フィードバックを開始するという二律背反する課題を認識することができる。他方、上記引用例2の技術事項に接した当業者であれば、引用例2の記載から、運転準備動作が検出された場合のバッテリ消費の軽減と始動時に迅速に空燃比フィードバックを開始するという二律背反する課題を把握することができる(上記ス.及びセ.を特に参照。)。そして、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術事項から当業者が把握できることからみて、引用例1記載の発明と引用例2記載の技術事項とは、始動が予測される内燃機関の停止中における、二律背反する技術的課題の点でも実質的に共通しているといえる。
してみると、当業者であれば、引用例1記載の発明において、「活性温度のスライスレベルS/L付近」に制御することに換えて、引用例2記載の技術事項を適用し、上記相違点に係る本願発明のように構成することは、容易になし得ることである。

また、本願発明を全体として検討しても、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術事項から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

なお、本審決において新たに提示した、本願出願前に頒布された刊行物であって、本願出願人の出願の公開公報である上記参考文献には、特に、その請求項12及び第6の実施の形態の記載からみて、本願発明と同様の発明が記載されているので参照されたい。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-10 
結審通知日 2008-09-16 
審決日 2008-09-29 
出願番号 特願2001-349707(P2001-349707)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 啓  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 金澤 俊郎
森藤 淳志
発明の名称 内燃機関の制御装置  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 伊藤 高順  

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