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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B02C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B02C
管理番号 1187853
審判番号 不服2006-7333  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-17 
確定日 2008-11-10 
事件の表示 特願2000-502874「材料をより小さな粒子に微粉化する装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 1月28日国際公開、WO99/03589、平成14年10月15日国内公表、特表2002-534242〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、1998年7月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年7月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成15年12月26日付けで拒絶の理由が通知され、平成16年7月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成17年1月27日付けで再度拒絶の理由が通知され、平成17年8月1日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成18年1月13日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し平成18年4月17日付けで拒絶査定に対する審判が請求された後、平成18年5月16日付けで手続補正書が提出され明細書が補正されるとともに、平成18年5月18日付け手続補正書(方式)により審判請求の理由が補正されたものである。

[2]平成18年5月16日付け手続補正書でした補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成18年5月16日付け手続補正書でした補正を却下する。

〔理由〕

1.本件補正の内容
平成18年5月16日付け手続補正書でした明細書の補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の下記(2)に示す請求項6を下記(1)に示す請求項6のように補正することを含むものである。

(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項6
「【請求項6】 湿ったまたは乾燥した分離対象物から成る材料をより小さな粒子に微粉化する装置であって、
長手方向中心軸を有するハウジングであって、前記ハウジング内に前記材料を導入するようにした導入口を具備する第1端部と、前記より小さな粒子を取り出すようにした取出口を具備する第2端部と、前記中心軸を取り囲む長手方向に延在する内部表面と、を含む、ハウジングと、
実質的に前記中心軸に沿って延在する回動可能なシャフトと、
前記ハウジング内に長手方向に間隔を空けて配置された複数のロータであって、各ロータが、前記中心軸を横切る面で共に回転できるように前記シャフトに結合されたロータ板と、前記ロータ板の片面に配置され、それぞれがほぼ半径内方に延在する複数の羽根と、を含む、複数のロータと、
前記ロータと交互に配置された複数のオリフィス板であって、各オリフィス板が、前記ハウジングの前記内部表面から前記シャフトの周りにオリフィスを提供する中心開口部まで内方に延在する複数のオリフィス板と、を具備し、
前記オリフィスは、前記第1端部からの距離が増すごとにサイズが増大する、装置。」(下線部は補正箇所を示す。)

(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項6
「【請求項6】 湿ったまたは乾燥した分離対象物から成る材料をより小さな粒子に微粉化する装置であって、
長手方向中心軸を有するハウジングであって、前記ハウジング内に前記材料を導入するようにした導入口を具備する第1端部と、前記より小さな粒子を取り出すようにした取出口を具備する第2端部と、前記中心軸を取り囲む長手方向に延在する内部表面と、を含む、ハウジングと、
実質的に前記中心軸に沿って延在する回動可能なシャフトと、
前記ハウジング内に長手方向に間隔を空けて配置された複数のロータであって、各ロータが、前記中心軸を横切る面で共に回転できるように前記シャフトに結合されたロータ板と、前記ロータ板の片面に配置され、それぞれがほぼ半径内方に延在する複数の羽根と、を含む、複数のロータと、
前記ロータと交互に配置された複数のオリフィス板であって、各オリフィス板が、前記ハウジングの前記内部表面から前記シャフトの周りにオリフィスを提供する中心開口部まで内方に延在する複数のオリフィス板と、を具備し、
前記オリフィスは、1以上のサイズのものである、装置。」

2.本件補正の適否
(1)本件補正の内容
請求項6に係る発明を特定する事項である「複数のオリフィス板」が備える「オリフィス」について、本件補正前は「1以上のサイズのものである」としていたことを、本件補正により「前記第1端部からの距離が増すごとにサイズが増大する」と、第1端部からの距離とオリフィスのサイズとの関係について限定を加えるものであり、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の、上記請求項6に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、以下に検討する。

(2)引用した刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第4886216号明細書(以下、「引用刊行物」という。)には、次のことが記載されている。

a)「The present invention relates to a mill for pulverizing rock and other material.
Rock is pulverized for a variety of purposes, one of which is to reduce the size of rock particles so that they may be effectively treated with chemicals to remove precious minerals contained therein. The degree of precious mineral recovery is inversely proportional to the size of the rock particles. 」(第1欄6?11行)
〔本発明は岩および他の物質を破砕するためのミルに関するものです。
岩は様々な目的のために破砕され、当該目的の1つは、化学物質により含まれていた貴重な鉱物を効果的に取り出す処理ができるように、岩粒子のサイズを減少させることです。〕(〔〕内は当審で作成した仮訳である、以下同じ。)

b)「The present will be described with reference to the accompanying drawings wherein like reference numerals refer to the same item. There is shown in FIGS. 1 and 2 a mill for pulverizing rock and other material. The mill includes a cylindrical, hollow container 10 having a cylindrical interior surface possessing a diameter of twenty-four inches and a height of twenty-three and one-eighth inches. A twenty horsepower electric motor 12 is mounted by bolts 14 to the container 10. A rotatable axle 16 extends centrally through the container 10, along the longitudinal axis thereof. The interior of the container 10 is enclosed by a top cover 18 and a bottom cover 20, each of which is provided with apertures. A funnel 21 is disposed below the bottom cover 20. The axle 16 extends through the top cover 18 and the bottom cover 20 and is journaled in a pair of corresponding ball bearing mountings 22, 24. A first series of pulleys 26 are mounted on the drive shaft of the motor 12 and a second series of pulleys 28 are mounted on the top end of the axle 16. The two sets of pulleys 26, 28 are operably connected by a series of endless drive belts 30 so that the motor 12 rotates the axle 16.」(第2欄19?40行)
〔本件(発明)は、同じ事項について同様の参照数字で言及する添付図面と共に記述される。図1および2の中で、岩および他の物質を破砕するためのミルが示されます。ミルは、直径24インチ、高さ23 1/8インチの円筒状の内部表面を有する円筒状の中空のコンテナ10を含んでいます。20馬力の電動機12はボルト14でコンテナ10にマウントされます。回転可能な軸16は、その縦軸方向に沿って、コンテナ10を通って中心に伸びます。コンテナ10の内部は、上カバー18および下カバー20によって囲まれ、両カバー各々開口が設けられています。漏斗21が下カバー20の下に配置されます。軸16は、上カバー18から下カバー20に伸び、1対の対応するボールベアリング支持部 22、24に支持されます(journaled)。第1群のプーリ26は、モータ12の駆動軸にマウントされます。また、第2群のプーリ28は軸16の上端部にマウントされます。モータ12が軸16を回転させるように、プーリ26、28の2つのセットは、一連の無限の駆動ベルト30によって動作可能に接続されます。〕

c)「The mill also includes five rotors 32 fixedly mounted on the axle 16 equidistantly from each other. Each rotor 32 includes a cylindrical plate 34 having a diameter of twenty inches. Preferably the plate 34 is fashioned of steel and is three-eighths inch thick. Each rotor 32 also includes a plurality of curved blades 36 equiangularly spaced about the periphery of the plate 34. Although the rotor 32 depicted in FIG. 3 includes nine blades 36, it should be appreciated that other numbers of blades 36 may be advantageously used in connection with the present invention. Each blade 36 is one inch high, is five and one-half inches long, and is curved with a radius curvature of four and one-half inches. The blades 36 are preferably fashioned of steel and are mounted by welding to the circular plate 34 so that their curvatures face in the same radial direction. The blades 36 are all mounted on the same side of the plate 34 and the rotors 32 are mounted on the axles 16 such that the blades 36 are disposed on the upper surface of each plate 34, as best shown in FIG. 1. The rotor 32 is designed to rotate in the direction of the arrow 38 as shown in FIG. 3.」(第2欄41?61行)
〔ミルはまた、互いに等距離で、軸16に可動にマウントされた5つのロータ32を含んでいます。ロータ32はそれぞれ、直径が20インチである円筒状プレート34を含んでいます。好ましくは、プレート34は鋼製で、厚さ3/8インチです。さらに、ロータ32はそれぞれ、プレート34の周囲に等角間隔で配置された複数の湾曲ブレード36を含んでいます。図3に描かれたロータ32は9枚のブレード36を含んでいますが、本件発明との関連で異なる数のブレード36が有利に使用され得ることが認識されるべきです。ブレード36はそれぞれ高さ1インチ、長さ5 1/2インチ、半径4インチ半の曲率半径で湾曲しています。ブレード36は鋼製で、それらの湾曲が同じ放射方向に面するように、円形のプレート34に溶接によりマウントされます。ブレード36はすべて、プレート34およびロータ32の同じ側に、軸16にマウントされ、図1に最もよく示されるように、ブレード36が各プレート34の上側表面に配置されます。ロータ32は、図3の中で示される矢印38の方向に回転するように設計されています。〕

d)「A dispersing rotor 46 is also mounted on the axle 16, within the container 10, as best shown in FIG. 1. The dispersing rotor 46 is designed and constructed very much like the rotor 32 except that the diameter of the rotor is smaller, and the dispersing rotor 46 possesses eight straight, radially extending, equiangularly spaced blades 48. As best shown in FIG. 1, each blade 48 is beveled on its radially inward end to improve the air pumping characteristics of the dispensing rotor 46. A ring-like plate 49 is mounted over the blades 48 such that the central aperture of the ring-like plate 49 exposes the beveled ends of the blades 48. The ring-like plate 49 also improves the air pumping characteristics of the dispensing rotor 46. The dispersing rotor 46 is mounted on the axle 16 in the same manner as the rotors 32. A chute 51 extends through the aperture in the top cover 18 such that the discharge end of the chute 51 is disposed above the central aperture of the ring-like plate 49.」(第3欄7?25行)
〔図1に最もよく示されるように、分散ロータ46もコンテナ10内に軸16にマウントされます。ロータの直径がより小さいという点を除いて、分散ロータ46は、ロータ32と非常に類似して設計・作成されており、また、分散ロータ46は、等角間隔で放射状に伸びる8枚のブレード48を有します。図1に最もよく示されるように、分散ロータ46の空気ポンピング特性を改善するため、それぞれのブレード48は、その放射状の内部端部に向けて傾斜付けて設けられます。リング状プレート49は、リング状プレート49の中央部開口がブレード48の傾斜端部に面するように、ブレード48の上にマウントされます。リング状プレート49もまた、分散ロータ46の空気ポンピング特性を改善します。分散ロータ46は、ロータ32と同じ方法で軸16にマウントされます。シュート51は、シュート51の放出端部がリング状プレート49の中央開口上に面するよう、上カバー18の開口部を通して延設されます。〕

e)「The mill also includes five equidistantly spaced baffles 50, each of which is disposed above a corresponding rotor 32. Each baffle 50 possesses a circular shape with a diameter of twenty-four inches -- equal to the diameter of the inner surface of the container 10. Each baffle also possesses a central, circular aperture having a diameter of ten inches, which is seven inches greater than the diameter of the axle 16. Each baffle 50 is preferably fashioned of a steel plate having a thickness of three-eighths inches. Adjacent baffles 50 are separated by a distance of three inches, and the circular plate 34 of a rotor 32 is separated from an adjacent, lower baffle 50 by a distance of seven-eighths inches.」(第3欄26?38行)
〔ミルはさらに等間隔で設けられたバフル50を含んでいます。その各々は対応するロータ32上に配置されています。各々のバフル50は直径24インチ-コンテナ10の内部の表面の直径と等しい-の円形状です。各々のバフルはさらに、直径10インチの中央部円形開口を有し、軸16の直径より7インチ大きい。各々のバフル50は、好ましくは厚さ3/8インチの鋼板により形成されます。隣接するバフル50は3インチ離れており、ロータ32の円形プレート34は、隣接する下側のバフル50と7/8インチ離れています。〕

f)「The mill also includes six rings 52. Each ring 52 is fashioned from nine identical rectangular pieces of steel plate welded together at their adjacent edges. Preferably the steel plate is three-eighths inches thick. As best shown in FIG. 6, the steel plates of the ring 52 form equiangular and equidistant chord of a circle. Such circle has a diameter of twenty-four inches so that the ring may be snugly inserted within the container 10, with the external corners of the ring 52 contacting the inner surface of the container 10, as best shown in FIG. 2. The preferred number of steel plates is nine, but a mill has been less advantageously used with eight steel plates and with twelve steel plates.」(第3欄39?51行)
〔ミルはさらに6つのリング52を含んでいます。リング52はそれぞれ、隣接した端部で堅く溶接された同一の長方形の9片の鋼板で形成されます。好ましくは、鋼板は厚さ3/8インチです。図6に最もよく示されるように、リング52の鋼板は円の等角・等距離の弦を形成します。その円の直径は24インチで、図2に最もよく示されるように、リングがコンテナ10の内部表面とリング52の外側角部で接し、コンテナ10内にきちんと挿入されます。鋼板の好ましい数は9であり、ミルは8枚の鋼板、および12枚の鋼板と共に使用されていたが、それほど便利ではなかった。〕

g)上記a)からみて、引用刊行物に記載されたミルは、貴重鉱物を分離するために、岩を破砕するものであることがわかる。

h)上記b)及びf)からみて、コンテナ10の内側に配置されたリング52は、それぞれの破砕空間の外側端部の内部表面を形成するものである。

上記のこと、及び図1乃至9の記載からみて、引用刊行物には、以下の発明が記載されているといえる。

「貴重鉱物を含む岩等の物質を小さく破砕するためのミルであって、
長手方向中心軸を有するコンテナ10であって、前記コンテナ10内に岩等の物質を導入するようにした開口部を具備する上部カバー18と、破砕された岩等の物質を取り出すようにした開口を有する最下部バフル50と、前記中心軸を取り囲む長手方向に延在するリング52の内部表面と、を含む、コンテナ10と、
実質的に前記中心軸に沿って延在する回転可能な軸16と、
前記コンテナ10内に長手方向に間隔を空けて配置された複数のロータ32、46であって、各ロータ32、46が、前記軸16を横切る面で共に回転できるように前記軸16に結合された円筒状プレート34と、前記円筒状プレート34の片面(上面)に配置され、それぞれがほぼ半径方向に延在する複数のブレード36、48と、を含む、複数のロータと、
前記ロータ32、46と交互に配置された複数のバフル50であって、各バフル50が、前記コンテナ10内のリング52の内部表面から前記軸16の回りの中央部円形開口まで内方に延在する複数のバフル50と、を具備する、装置。」(以下、「引用刊行物記載の発明」という。)

(3)本願補正発明と引用刊行物記載の発明との対比
本願補正発明と引用刊行物記載の発明とを対比すると、引用刊行物記載の発明の備える「ミル」、「上部カバー18」、「最下部バフル50」、「リング52の内部表面」、「コンテナ10」、「軸16」、「ロータ32、46」、「バフル50」及び「中央部円形開口」は、それぞれ本願補正発明の備える「微粒化する装置」、「第1端部」、「第2端部」、「内部表面」、「ハウジング」、「シャフト」、「ロータ」、「オリフィス板」及び「中心開口部」に相当し、また、引用刊行物記載の発明における「貴重鉱物を含む岩等の物質を小さく破砕するためのミル」は、含有される貴重鉱物を分離するために岩をより小さく破砕するものであるから、本願補正発明の「湿ったまたは乾燥した分離対象物から成る材料をより小さな粒子に微粉化する装置」に含まれるものであり、さらに引用刊行物記載の発明が備える「バフル50」の「中央部円形開口」は、その構造・機能からみて、本願補正発明の備えるオリフィス板の中央開口部と同様に「オリフィス」を提供するものといえる。

したがって、両者は、
「湿ったまたは乾燥した分離対象物から成る材料をより小さな粒子に微粉化する装置であって、
長手方向中心軸を有するハウジングであって、前記ハウジング内に前記材料を導入するようにした導入口を具備する第1端部と、前記より小さな粒子を取り出すようにした取出口を具備する第2端部と、前記中心軸を取り囲む長手方向に延在する内部表面と、を含む、ハウジングと、
実質的に前記中心軸に沿って延在する回動可能なシャフトと、
前記ハウジング内に長手方向に間隔を空けて配置された複数のロータであって、各ロータが、前記中心軸を横切る面で共に回転できるように前記シャフトに結合されたロータ板と、前記ロータ板の片面に配置され、それぞれがほぼ半径内方に延在する複数の羽根と、を含む、複数のロータと、
前記ロータと交互に配置された複数のオリフィス板であって、各オリフィス板が、前記ハウジングの前記内部表面から前記シャフトの周りにオリフィスを提供する中心開口部まで内方に延在する複数のオリフィス板と、を具備する、装置。」

である点一致し、次の相違点を有するものである。

a)相違点
本願補正発明の備えるオリフィスは「前記第1端部からの距離が増すごとにサイズが増大する」ものであるのに対し、引用刊行物記載の発明のオリフィスである「中央部円形開口」は、そのサイズが10インチとされている点。

(4)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。

回転破砕装置を縦に多段に設けたタイプの破砕装置において、上段から下段向けて、各破砕装置、及び各破砕装置の間に配置される隔板及び開口(すなわちオリフィス)を、順次サイズが増大するようにしたことは、特公昭43-9166号公報、実願平1-95125号(実開平3-34837号)のマイクロフィルム、又は特許第91428号明細書(特公昭6-538号)にも記載されているように、本願の優先日前に破砕技術において周知のこと(以下、「周知技術1」という。)であり、引用刊行物記載の発明に当該周知技術1を採用し本願補正発明のようにすることは、当業者にとり、格別な創作力を要することなくなし得る程度のことにすぎない。
また、本願補正発明のようにした結果、引用刊行物記載の発明及び周知技術1と比べ、予測されないような顕著な効果が生じたものとも認められない。

したがって、本願補正発明は引用刊行物記載の発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができないものである。

[3]本願発明について

1.本願発明
平成18年5月16日付け手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項6に係る発明は、平成17年8月1日付け手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項6に記載された以下の事項により特定されるものである(以下、「本願発明」という。)。
(1)本願発明(再掲)
「【請求項6】 湿ったまたは乾燥した分離対象物から成る材料をより小さな粒子に微粉化する装置であって、
長手方向中心軸を有するハウジングであって、前記ハウジング内に前記材料を導入するようにした導入口を具備する第1端部と、前記より小さな粒子を取り出すようにした取出口を具備する第2端部と、前記中心軸を取り囲む長手方向に延在する内部表面と、を含む、ハウジングと、
実質的に前記中心軸に沿って延在する回動可能なシャフトと、
前記ハウジング内に長手方向に間隔を空けて配置された複数のロータであって、各ロータが、前記中心軸を横切る面で共に回転できるように前記シャフトに結合されたロータ板と、前記ロータ板の片面に配置され、それぞれがほぼ半径内方に延在する複数の羽根と、を含む、複数のロータと、
前記ロータと交互に配置された複数のオリフィス板であって、各オリフィス板が、前記ハウジングの前記内部表面から前記シャフトの周りにオリフィスを提供する中心開口部まで内方に延在する複数のオリフィス板と、を具備し、
前記オリフィスは、1以上のサイズのものである、装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用した刊行物に記載された発明
引用刊行物には、上記[2]、2.、(2)に指摘したとおりの発明(引用刊行物記載の発明)が記載されている。

3.対比
本願発明と引用刊行物記載の発明とを対比すると、引用刊行物記載の発明の備える「ミル」、「上部カバー18」、「最下部バフル50」、「リング52の内部表面」、「コンテナ10」、「軸16」、「ロータ32、46」、「バフル50」及び「中央部円形開口」は、それぞれ本願発明の備える「微粒化する装置」、「第1端部」、「第2端部」、「内部表面」、「ハウジング」、「シャフト」、「ロータ」、「オリフィス板」及び「中心開口部」に相当し、また、引用刊行物記載の発明における「貴重物質を含む岩等の物質を小さく破砕するためのミル」は、その機能からみて、本願発明の「湿ったまたは乾燥した分離対象物から成る材料をより小さな粒子に微粉化する装置」に含まれるものであり、さらに本願補正発明の備える「バフル50」の「中央部円形開口」は、その構造・機能からみて、本願発明の備えるオリフィス板の中央開口部と同様に「オリフィス」を提供するものといえる。

したがって、両者は、
「湿ったまたは乾燥した分離対象物から成る材料をより小さな粒子に微粉化する装置であって、
長手方向中心軸を有するハウジングであって、前記ハウジング内に前記材料を導入するようにした導入口を具備する第1端部と、前記より小さな粒子を取り出すようにした取出口を具備する第2端部と、前記中心軸を取り囲む長手方向に延在する内部表面と、を含む、ハウジングと、
実質的に前記中心軸に沿って延在する回動可能なシャフトと、
前記ハウジング内に長手方向に間隔を空けて配置された複数のロータであって、各ロータが、前記中心軸を横切る面で共に回転できるように前記シャフトに結合されたロータ板と、前記ロータ板の片面に配置され、それぞれがほぼ半径内方に延在する複数の羽根と、を含む、複数のロータと、
前記ロータと交互に配置された複数のオリフィス板であって、各オリフィス板が、前記ハウジングの前記内部表面から前記シャフトの周りにオリフィスを提供する中心開口部まで内方に延在する複数のオリフィス板と、を具備する、装置。」

である点一致し、次の相違点を有するものである。

a)相違点
本願発明の備えるオリフィスは、「1以上のサイズのものである」のに対し、引用刊行物記載の発明のオリフィスである「中心開口部」は、そのサイズが「10インチ」と1のサイズのみである点(以下、「相違点2」という。)。

4.当審の判断
先に「[2]、2.、(4)」において周知技術として指摘したように、多段の回転破砕装置において、各段のオリフィスのサイズについて下段程大径とするというように、当該オリフィスのサイズを複数のものとすることは本願の優先日前において周知のこと(以下、「周知技術2」という。)であり、引用刊行物記載の発明に当該周知技術2を採用し、本願発明のようにすることは、当業者にとり通常の創作力の範囲でなしうる程度のことにすぎず、また、本願発明のようにした結果、顕著な効果が生じたものとも認められない。

5.むすび、
以上の通り、本願発明は、引用刊行物記載の発明及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、上記結論の通り審決する。
 
審理終結日 2008-06-16 
結審通知日 2008-06-17 
審決日 2008-07-01 
出願番号 特願2000-502874(P2000-502874)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B02C)
P 1 8・ 575- Z (B02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒石 孝志青木 良憲  
特許庁審判長 早野 公惠
特許庁審判官 金澤 俊郎
石井 孝明
発明の名称 材料をより小さな粒子に微粉化する装置  
代理人 大賀 眞司  
代理人 田中 克郎  
代理人 稲葉 良幸  

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