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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D |
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管理番号 | 1187939 |
審判番号 | 不服2007-17842 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-06-27 |
確定日 | 2008-11-14 |
事件の表示 | 特願2003- 2672「磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月 5日出願公開、特開2004- 37441〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年7月2日に出願した特願2002-192908号(優先権主張 平成13年9月25日、以下、「原出願」という)の一部を平成15年1月8日に新たな特許出願(優先権主張 平成13年9月25日)としたものであって、平成19年5月23日付け(発送日:同月29日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月26日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成19年7月26日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年7月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 平成19年7月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容 本件補正は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲に補正することを含むものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 円周方向に交互に磁極を形成した磁気ディスクからなる多極磁石と、 この多極磁石を支持する芯金とを備えた自動車用の磁気エンコーダにおいて、上記多極磁石が、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体であり、上記磁性粉がSmFeN粉であり、前記非磁性金属粉がスズ粉であることを特徴とする磁気エンコーダ。 【請求項2】 上記多極磁石が、前記混合粉を加圧成形して得た圧粉体を焼結させたディスク形状の焼結体である請求項1に記載の磁気エンコーダ。 【請求項3】 上記混合粉中の配合において、非磁性金属粉の体積含有率は、1vol %以上で90vol %以下である請求項1または請求項2に記載の磁気エンコーダ。 【請求項4】 上記焼結体からなる多極磁石の線膨張係数が、0.5×10-5以上で9.0×10-5以下である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁気エンコーダ。 【請求項5】 上記焼結体の板厚が0.3mm以上で5mm以下である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁気エンコーダ。 【請求項6】 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の磁気エンコーダを備えた車輪用軸受。 【請求項7】 上記車輪用軸受が、複列の転走面を内周面に形成した外方部材と、この外方部材の転走面と対向する転走面を形成した内方部材と、これら両転走面間に介在された複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受であって、 上記外方部材と内方部材との環状空間を密封するシール装置を設け、このシール装置は、上記外方部材または内方部材のうちの回転側部材に嵌合される第1のシール板と、この第1のシール板に対向し、上記外方部材または内方部材のうちの固定側部材に嵌合される断面L字状の第2のシール板とからなり、上記第1のシール板は、上記回転側部材に嵌合される嵌合側の円筒部と、立板部と、他筒部とでなる断面概ね逆Z字状とされ、上記第1のシール板の立板部に摺接するサイドリップ、および円筒部に摺接するラジアルリップが上記第2のシール板に固着され、上記第1のシール板が上記磁気エンコーダにおける芯金となり、その立板部に重ねて上記多極磁石が設けられる請求項6に記載の車輪用軸受。 【請求項8】 請求項7に記載の車輪用軸受おいて、第1のシール板の立板部が、内周側部分と外周側部分とで互いに軸方向にずれた段付き形状を成す車輪用軸受。 【請求項9】 請求項7または請求項8に記載の車輪用軸受おいて、第1のシール板の上記他筒部により、上記多極磁石を加締固定した車輪用軸受。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 円周方向に交互に磁極を形成した磁気ディスクからなる多極磁石と、 この多極磁石を支持する芯金とを備えた自動車用の磁気エンコーダにおいて、上記多極磁石が、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体であり、上記磁性粉がSmFeN粉であり、前記非磁性金属粉がスズ粉であり、上記多極磁石が、前記混合粉を加圧成形して得た圧粉体を焼結させたディスク形状の焼結体であり、このディスク形状の多極磁石は、外周縁を、被検出面よりも後退した段差部とした磁気エンコーダ。 【請求項2】 上記混合粉中の配合において、非磁性金属粉の体積含有率は、1vol %以上で90vol %以下である請求項1に記載の磁気エンコーダ。 【請求項3】 上記焼結体からなる多極磁石の線膨張係数が、0.5×10-5以上で9.0×10-5以下である請求項1または請求項2に記載の磁気エンコーダ。 【請求項4】 上記焼結体の板厚が0.3mm以上で5mm以下である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁気エンコーダ。 【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁気エンコーダを備えた車輪用軸受。 【請求項6】 上記車輪用軸受が、複列の転走面を内周面に形成した外方部材と、この外方部材の転走面と対向する転走面を形成した内方部材と、これら両転走面間に介在された複列の転動体とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受であって、 上記外方部材と内方部材との環状空間を密封するシール装置を設け、このシール装置は、上記外方部材または内方部材のうちの回転側部材に嵌合される第1のシール板と、この第1のシール板に対向し、上記外方部材または内方部材のうちの固定側部材に嵌合される断面L字状の第2のシール板とからなり、上記第1のシール板は、上記回転側部材に嵌合される嵌合側の円筒部と、立板部と、他筒部とでなる断面概ね逆Z字状とされ、上記第1のシール板の立板部に摺接するサイドリップ、および円筒部に摺接するラジアルリップが上記第2のシール板に固着され、上記第1のシール板が上記磁気エンコーダにおける芯金となり、その立板部に重ねて上記多極磁石が設けられる請求項5に記載の車輪用軸受。 【請求項7】 請求項6に記載の車輪用軸受おいて、第1のシール板の上記他筒部により、上記多極磁石を加締固定した車輪用軸受。」 なお、アンダーラインは、補正箇所を示すために請求人が付したものである。 2 本件補正についての当審の判断 本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「多極磁石」に関して、「上記多極磁石が、前記混合粉を加圧成形して得た圧粉体を焼結させたディスク形状の焼結体であり、このディスク形状の多極磁石は、外周縁を、被検出面よりも後退した段差部とした」との限定を付加するものである。 したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の規定を満たすものである。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。 (1)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平9-133698号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明に係るトーンホイール付転がり軸受ユニットは、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する為の回転速度検出装置を構成する為に利用する。」 イ 「【0010】 【課題を解決するための手段】本発明のトーンホイール付転がり軸受ユニットは、前述した従来のトーンホイール付転がり軸受ユニットと同様に、固定周面に固定軌道面を有し使用時に回転しない固定輪と、回転周面に回転軌道面を有し使用時に回転する回転輪と、上記固定軌道面と回転軌道面との間に設けられた複数の転動体と、全体を円環状に形成され、上記回転輪に支持された芯金と、この芯金の側面に支持された、円周方向に亙ってS極とN極とを交互に配置した円環状の多極磁石であるトーンホイールとを備える。 【0011】特に、本発明のトーンホイール付転がり軸受ユニットに於いては、上記芯金は磁性材製であり、上記トーンホイールは軸方向両側面が着磁されている。そして、このトーンホイールは自身の磁力により上記芯金に支持されている。 【0012】 【作用】上述の様に構成される本発明のトーンホイール付転がり軸受ユニットにより、車輪を回転自在に支持すると共に、センサとの組み合わせにより回転輪に固定された車輪の回転速度を検出する際の作用自体は、前述した従来の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを構成するトーンホイール付転がり軸受ユニットと同様である。 【0013】特に、本発明のトーンホイール付転がり軸受ユニットの場合、トーンホイールは自身の磁力により上記芯金に支持される為、予め磁石メーカーで着磁したトーンホイールを、シールリングを構成する芯金と結合できる。従って、設備費や搬送費の増大に伴うコスト上昇を抑える事ができる。」 ウ 「【0014】 【実施例】図1?3は、本発明の第一実施例を示している。前述した従来構造の場合とは逆に、回転周面である外周面に回転軌道面である内輪軌道2、2を形成した、それぞれが回転輪である内輪1、1は、使用時に回転する車軸に外嵌自在される。これら各内輪1、1の周囲には、使用時に回転しない固定輪である外輪14を、上記各内輪1、1と同心に配置している。そして、固定周面であるこの外輪14の内周面に形成した、固定軌道面である外輪軌道4、4と上記各内輪軌道2、2との間に、転動体である複数個の玉5、5を設けて、上記外輪14の内側に各内輪1、1を、回転自在に支持している。 【0015】上記外輪14の内端部と内方の内輪1の内端部外周面との間には組み合わせシール15を設けて、上記外輪14の内周面と上記内輪1の外周面との間に存在する空間の内端開口部を塞いでいる。又、上記外輪14の外端部と外方の内輪1の内端部外周面との間には別の組み合わせシール16を設けて、上記外輪14の内周面と上記内輪1の外周面との間に存在する空間の外端開口部を塞いでいる。 【0016】上記2組の組み合わせシール15、16のうち、内方に設けられた組み合わせシール15は、上記内方の内輪1の内端部外周面に外嵌固定されたシールリング17と、上記外輪14の内端部内周面に内嵌固定されたシールリング18とから成る。これら両シールリング17、18のうち、一方のシールリング17は、特許請求の範囲に記載した芯金に相当する、鋼板等の磁性金属板製の芯金19と、ゴム、エラストマー等の弾性材製のシール材20と、ゴム中に強磁性粉末を混入して全体を円輪状に形成した、ゴム磁石製のトーンホイール21とから構成される。 【0017】このトーンホイール21は、円周方向に亙ってS極とN極とを交互に配置している。又、このトーンホイール21は、軸方向(図1?2の左右方向、図3の表裏方向)に亙って着磁されている。従ってこのトーンホイール21は、軸方向両側面(内外両側面)が何れも着磁されている。又、このトーンホイール21の内側面内周縁部(当審注:図面の図1ないし3及び「【0019】・・・上記トーンホイール21の外周縁と上記保持筒部25の内周面との係合に基づき、このトーンホイール21が前記内輪1に、同心に保持される。」との記載からみて、該「内周縁部」は「外周縁部」の誤記である。)には段部22を形成して、この内周縁部(当審注:上述したように、該「内周縁部」は「外周縁部」の誤記である。)の厚さ寸法をそれ以外の部分よりも小さくしている。 【0018】又、上記芯金19は、円輪部23と、この円輪部23の外周縁から外方に向け直角に折れ曲がった嵌合筒部24と、上記円輪部23の内周縁から内方に向け直角に折れ曲がった保持筒部25とを備える。この保持筒部25の内径は、上記トーンホイール21の外径と同じか、この外径よりも僅かに大きい。又、上記保持筒部25の円周方向複数個所(好ましくは円周方向等間隔に位置する3個所以上)には、直径方向内方に突出するかしめ部26を形成している。そして、これら複数のかしめ部26の最大内接円の直径を、上記トーンホイール21の外径よりも小さくしている。 【0019】上記トーンホイール21は、この様な芯金19を構成する円輪部23の内側面に、自身の磁力と、上記段部22とかしめ部26との係合とにより、結合支持している。即ち、上記トーンホイール21を弾性変形させつつ、このトーンホイール21の内周縁部を上記各かしめ部26の外側を通過させて、このトーンホイール21の外側面と上記円輪部23とを密着させている。この状態でこれらトーンホイール21と芯金19とは、これら両部材21、19同士の間に作用する磁気吸着力により、不離に結合される。又、上記トーンホイール21の外周縁と上記保持筒部25の内周面との係合に基づき、このトーンホイール21が前記内輪1に、同心に保持される。 【0020】一方、上記円輪部23の外側面外径側半部には、複数のシールリップ27、27を有するシール材20の基部を、焼き付け、接着等により結合固定している。又、前記組み合わせシール15を構成する1対のシールリング17、18のうち、他方のシールリング18を構成し、前記外輪14の内端部内周面に内嵌固定された芯金28の内周縁部には、シール材29の基端部を、やはり焼き付け、接着等により結合固定している。そして、上記各シールリップ27、27の先端縁を上記他方のシールリング18を構成する芯金28の内側面及び内周面に、上記シール材29の内周縁を上記芯金19を構成する嵌合筒部24の外周面に、それぞれ摺接させている。 【0021】上述の様に構成される本発明のトーンホイール付転がり軸受ユニットは、懸架装置を構成する保持ケース30の内側に車輪を回転する為の車軸を回転自在に支持すると共に、上記保持ケース30に支持されたセンサ13との組み合わせにより、回転輪である内輪1、1或は上記車輪の回転速度を検出する。」 エ 「【0024】次に、図5?6は本発明の第三実施例を示している。本実施例の場合は、トーンホイール21を、プラスチック磁石、フェライト磁石、希土類磁石等、可撓性を持たない永久磁石により構成し、しかも段部22と複数のかしめ部26との係合により、芯金19とトーンホイール21との分離防止の確実化を図っている。この為に本実施例の場合には、上記トーンホイール21の外周縁部で段部22に対応する部分の円周方向複数個所に上記かしめ部26と同数の切り欠き31を、このかしめ部26と等ピッチで形成している。各切り欠き31は、各かしめ部26を通過させられるだけの大きさを有する。 【0025】上記芯金19とトーンホイール21とを結合する際には、図5に示す様に、上記かしめ部26と切り欠き31とを整合させた状態で、上記トーンホイール21の外周縁部を上記かしめ部26を通過させ、このトーンホイール21の外側面と上記芯金19を構成する円輪部23の内側面とを当接させる。次いで、上記芯金19に対してトーンホイール21を少し(上記かしめ部26及び切り欠き31のピッチより少ない分)だけ回転させて、これらかしめ部26と切り欠き31とをずらせる。芯金19とトーンホイール21とは、これら両部材19、21同士の間に作用する磁気吸着力に基づき、外力を加えない限り相対回転する事はない。この結果、前記第一実施例を示す図2?3と同様に、上記円輪部23とトーンホイール21との間に作用する磁気吸着力に加えて、複数のかしめ部26とトーンホイール21の外側面との係合に基づき、上記両部材19、21の分離防止が図られる。その他の構成及び作用は、前述した第一実施例と同様である。」 オ 「【0028】 ・・・ 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第一実施例を示す断面図。 【図2】図1のA部拡大図。 【図3】図2の右方から見た図。 【図4】本発明の第二実施例を示す、図2と同様の図。 【図5】同第三実施例を示す、図3と同様の図。 【図6】第三実施例に使用するトーンホイールの断面図。」 カ 図面の図1ないし図3から、トーンホイール21の外周縁には段部22が形成され、該段部22はトーンホイール21のセンサ13に面した軸方向側面よりも後退した段差により形成されていることが見て取れる。 また、図面の図5及び図6からも、トーンホイール21の外周縁には段部22が形成され、該段部22はトーンホイール21の軸方向側面よりも後退した段差により形成されていることが見て取れる。 上記摘記事項ア?カ及び図面の記載から次のことが読み取れる。 ・摘記事項エから、引用刊行物における「本発明」には、第三実施例としてトーンホイール21を希土類磁石により構成したものが含まれること。 ・図面の図3と図5は、切り欠き31を除いては同一の図面であるから、図3が図2の右方、すなわち、センサ側から見た図であるのと同様に図5もセンサ側から見たものであり、そこに描かれた段部22の記載と、図面の図6、摘記事項ウ、エ、カの記載とを併せて勘案すると、第一実施例と同様に、第三実施例においても、トーンホイール21の外周縁には段部22が形成され、該段部22はトーンホイール21のセンサ13に面した軸方向側面よりも後退した段差により形成されていること。 したがって、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「全体を円環状に形成され、上記回転輪に支持された芯金と、この芯金の側面に支持された、円周方向に亙ってS極とN極とを交互に配置した円環状の希土類磁石により構成した多極磁石であるトーンホイールとを備えた、自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する為の回転速度検出装置を構成するために利用するトーンホイール付転がり軸受ユニットであって、トーンホイールの外周縁には段部が形成され、該段部はトーンホイールのセンサに面した軸方向側面よりも後退した段差により形成されているトーンホイール付転がり軸受ユニット。」 (2)対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ・引用発明の「円環状」、「段差」、「トーンホイールのセンサに面した軸方向側面」は、それぞれ、本願補正発明の「ディスク形状」、「段差部」、「被検出面」に相当する。 ・引用発明の「円周方向に亙ってS極とN極とを交互に配置した円環状の希土類磁石」は、本願補正発明の「円周方向に交互に磁極を形成した磁気ディスク」に相当する。 ・引用発明の「芯金」と「多極磁石」である「トーンホイール」との両者よりなるものは、本願補正発明の「磁気エンコーダ」に相当する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、磁気エンコーダに関して、 「円周方向に交互に磁極を形成した磁気ディスクからなる多極磁石と、この多極磁石を支持する芯金とを備えた自動車用の磁気エンコーダにおいて、上記多極磁石がディスク形状であり、このディスク形状の多極磁石は、外周縁を、被検出面よりも後退した段差部とした磁気エンコーダ。」 である点で一致し、次の相違点で相違する。 [相違点] ディスク形状の多極磁石が、本願補正発明では、磁性粉と非磁性金属粉との混合粉を焼結させた焼結体であり、上記磁性粉がSmFeN粉であり、前記非磁性金属粉がスズ粉であり、前記混合粉を加圧成形して得た圧粉体を焼結させた焼結体であるのに対し、引用発明では、希土類磁石により構成したものではあるもののその詳細は明らかではない点。 上記相違点について検討する。 希土類元素Smを含有する希土類磁石であって、SmFeN粉とスズ粉を混合した混合粉末を圧縮成形して熱処理を行うことにより形成された希土類磁石は、例えば、特開平4-354104号公報、特開平4-360501号公報、特開平4-338604号公報、特開平5-175023号公報、特開平5-343216号公報(特に、段落【0006】の記載参照)に示されるように周知である。 したがって、引用発明の希土類磁石として上記周知の希土類磁石を用いることにより相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。 そして、本願補正発明の奏する効果は、引用刊行物の記載事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであり、格別のものではない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 平成19年7月26日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成19年5月2日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2」の「1」の「(1)」の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。 第4 引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、上記「第2」の「2」の「(1)」の「ア」ないし「カ」に記載したとおりのものである。 第5 本願発明と引用刊行物に記載された発明との対比・判断 本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明の発明特定事項から発明を特定するために必要な事項についての上記限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2」の「2」の「(2)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 そして、本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし9に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-01 |
結審通知日 | 2008-09-09 |
審決日 | 2008-09-24 |
出願番号 | 特願2003-2672(P2003-2672) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G01D)
P 1 8・ 121- Z (G01D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 昌宏 |
特許庁審判長 |
杉野 裕幸 |
特許庁審判官 |
下中 義之 山下 雅人 |
発明の名称 | 磁気エンコーダおよびそれを備えた車輪用軸受 |
代理人 | 野田 雅士 |