• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1187965
審判番号 不服2005-12342  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-30 
確定日 2008-11-13 
事件の表示 特願2001-211842「スクリーン印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月29日出願公開、特開2003- 25540〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年7月12日の特許出願であって、拒絶理由通知に応答して平成17年2月18日付けで手続補正がされたが、平成17年5月27日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成17年6月30日付けで審判請求がされたものである。

第2 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明は、平成17年2月18日付けで手続補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
マスクプレート上でスキージヘッドを移動させることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、前記スキージヘッドをマスクプレートに対してそれぞれ水平方向に移動させ、昇降させる水平移動手段、昇降手段と、スキージヘッドをマスクプレートに対して押圧する押圧手段とを備え、前記スキージヘッドは、前記ペーストを収容し下面に形成された開口部を介してマスクプレートの表面に接触させる印刷空間と、前記印刷空間のスキージング方向の前後壁面を形成し下端部が前記マスクプレートの表面に摺接する相対向した2つの摺接部材と、前記スキージヘッドを移動させるスキージングにおいて前記押圧手段による前記2つの摺接部材のマスクプレートに対する印圧荷重を、スキージング方向に対して後ろ側に位置する摺接部材の印圧荷重の方が他の摺接部材の印圧荷重よりも大きくなるように荷重配分を設定する荷重配分設定手段とを備え、前記荷重配分設定手段は、前記押圧手段に結合された固定ベースと、この固定ベースに結合された回転ヒンジと、この回転ヒンジに回転変位が許容される状態で結合された可動ベースと、この回転ヒンジを回転支点として可動ベースを揺動させる駆動部とから成ることを特徴とするスクリーン印刷装置。」(以下、「本願発明」という。)

第3 引用例
本願の出願前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-39769号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の〈ア〉?〈ケ〉の記載が図示とともにある。
〈ア〉「【請求項1】 印刷材料としての半田ペーストを収納・混練・送給可能なハウジング構造体の該材料格納ユニットと、前記ユニットからの送給を受けて、印刷版としての印刷媒体主表上面へ上記半田ペーストを送給しうるスキージブレード部とからなるハウジング型スキージ装置に於いて、前記ブレード部を構成する印刷方向に沿って前後に並置された2枚1組の剛性超薄刃のスキージブレードの前記印刷方向と直交する印刷版の巾方向から眺めた断面が日本語片仮名文字「ハ」に酷似した構成で各1枚が相互に面対しており、印刷の進行方向の後方にある後ブレードの巾方向の先端部がたわむ程度に上記印刷媒体主表上面と圧接して該主表上面の開口部を介して上記印刷材料を被印刷物としてのプリント基板上に載着させると共に、残りの前ブレードの上記先端部は前記印刷媒体主表上面とは触れないか、たわまぬ程度に軽圧接し、上記と逆方向の印刷に於いては上記前後のブレードの役割ないし機能が交代するように、スキージブレード部が上記印刷媒体主表上面の巾方向を軸として僅かに回動しうる為の回動手段を具えて簡便に往復印刷が可能なように構成されたスキージ装置。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
〈イ〉「【産業上の利用分野】本発明は、電子回路基板上に電子部品が装着される前に、所定位置に半田ペースト等を印刷媒体を介して載着させる印刷装置に用いられるスキージ装置に関するものである。」(【0001】)
〈ウ〉「【従来の技術】電子回路基板上への印刷材料としての半田ペーストを載着させる印刷には、印刷媒体としてのマスクやスクリーンを用いるものがあるが、これらに使用されるスキージ装置は大別して以下の2種である。……一方、二番目のものは、前者の装置で用いられるブレードの厚みが数mm以上あるのに対し、該厚みが0.1mmから高々0.2mm程度の極めて薄い鋼板製の短冊状のブレードが、印刷方向に沿って前後10mm以下の距離を隔てて各1枚計2枚1組として、ハウジング構造を有するスキージ装置の最下部に設けられている。印刷の開始と共に、チャンバーと呼ばれる印刷材料収納容器から該スキージブレード部迄送給された該材料を、それまで前記2枚1組のブレードが協力して印刷媒体主表上面への出口を閉鎖・収納していた状態から該主表上面に向かって開口して送り出す。印刷終了後は前記1組のブレードが再び相協力して、上記余剰の材料を回収・収納し、それまで接していた上記主表上面から離れて浮上し印刷始点迄帰還する。この二番目のもにおけるスキージブレード部の構造を分かり易く拡大したものが図3で、印刷方向(P)と直交し、印刷媒体主表上面(S)の巾方向に平行な方向から眺めた要部構成横断面図で、点線で囲まれた部分(8)がスキージブレード部を、B_(1)′が後ブレードを、B_(2)′が前ブレードをそれぞれ表す。印刷材料は、この両ブレードの間にあって、印刷版の開口部を介して、P-板上に載着されるものである。」(【0002】)
〈エ〉「尚、前項で述べたスキージ装置の従来例の内、前者を後者との対比から敢えて非ハウジング型と名付けその構造は文献(特公平1-19275)のものが一般的である。後者におけるチャンバーやハウジング構造及びその構造を有するスキージ装置の概念・意味・構造は文献(特願平5-39222)に詳しい。例えば、前記文献で言うチャンバーとは前項の後半にも述べたように、印刷材料を収納しうる容器としてのスキージ装置の内、該材料を収納できる部屋の意味であり、該部屋の印刷方向に沿って前方・後方にある壁は同時にスキージ装置全体の前方・後方のブロックの内壁に各々相当する。上記チャンバーの下方即ち印刷媒体主表上面に向かっての印刷材料の供給は、前記後壁の一部である可動壁に取り付けられた上記後ブレードが後方に動き、前記前壁に固定されている前ブレードとの間に形成される開口部を通してなされる。当然、上記印刷材料が、徒に、上記チャンバーから逸出しないために上記前方・後方の各ブロックを連結する側壁及び上記スキージブレードの長さ方向即ち印刷方向と直交し印刷媒体の巾方向に平行な方向の両側側壁にも補助側壁が設けられる。その結果、印刷材料や該材料特性調整用の不活性ガスや溶剤などのスキージ装置内ないしはチャンバー内への送給口を除けば、上記各壁と天井と併せて、外気とは直接に触れない内部構造を有すると言う意味で、ハウジング構造と名付けられたものである。本明細書では、上記ハウジング構造の実体をハウジング構造体ないし略してハウジング体と称する。」(【0003】)
〈オ〉「【発明が解決しようとする課題】前項に説明したハウジング型スキージ装置は、一種の閉じたシステムとして、印刷材料特性の安定と高効率使用という特長を生かし、近年の導体線路の高精細化に対応しうるものとして期待されつつある。本発明は、該ハウジング型スキージ装置の一層の有用化を図る為に、簡便かつ迅速に、往復印刷を可能ならしめる機構を組み込んだ該装置を提供するものである。以下、スキージ装置と言う場合は、ハウジング型スキージ装置ないしハウジング体とスキージブレード部とが結合したものを指す。」(【0004】)
〈カ〉「【実施例】以下、本発明の要旨について、実施例に基づき図面を参照しながら、説明する。図1(a)?(c)は、本発明に基づくスキージ装置の主構成要素であるスキージブレード部と連結しうるハウジング体の例を示すもので、いずれもPに垂直でSの巾方向に平行な方向から眺めた要部構成横断面図である。符号1で示される斜線部が上記スキージブレード部を表し、2?4は、各々、変形六方体のハウジング体、円筒形のハウジング体及び二重円筒形ハウジング体の外筒をそれぞれ意味する。1のより具体的な構成と構造とは図2で説明するが、4(B_(1))と4(B_(2))は本発明で用いられるブレードの基本構造を示すものである。即ち、印刷方向に沿って前後に対置されるブレードB_(1)及びB_(2)が、図1(C)では、上記外筒と一体化されているので、図示の如き符号が付されているものである。図から容易に分かる通り、ブレードの長さ方向から眺めた断面は「ハ」の字に酷似しており、頭部の最短距離数mm?5,6mm程度で、高々10mm迄である。又、下方の開いた最長距離は7,8mm?十数mm程度である。この構造即ち、比較的近接して「ハ」の字型に対置されていることは本発明におけるスッピリットの一部をなす。図1は一種のコンセプト図面であるから、ハウジング体(2,3及び4の中筒)の内部構造については全く限定されない。要は、印刷材料としての半田ぺースト等がハウジング体の内部で混練されスキージブレード部迄該材料が送給される機能を有するものでさえあれば良いものである。」(【0011】)
〈キ〉「図2は、前項でふれたように、本発明に基づくスキージ装置の主要部をなすスキージブレード部の具体的な構成・構造とその働きを示す一種のコンセプト図面で、図1の(b),(c)が各々請求項2,3に対応するのに対し、図1(a)と併せて請求項1に対応するものである。上記迄に既出の符号を除いて説明すると、5がスキージブレード(B_(1),B_(2))の先端をSに対し強く圧接するか弱く圧接ないし殆ど触れさせないかの動きをさせる回動機構ないし回動手段で、枠内の弥次郎兵衛型の中央の小円を回動の中心軸とし、左右の角穴は、遊びのある一種の穴ぐりである。6の伝達棒ないし伝達手段を介し、符号7で表されるエアシリンダー、モーター或いは電磁弁等の駆動力を借りて、図の如き印刷方向(P)に進む時は反時計廻りに、又、その復路の印刷時には時計廻りに、僅かに回動することにより、これと直結しているブレードを、往路の場合にはB_(1)の先端がたわむ程度にSと強く圧接しB_(2)は従ってSと触れないか先端がたわまぬ程度に軽く圧接する。復路では、B_(1)とB_(2)の働きないし動きが交代されて、B_(2)が強くSと圧接しB_(1)は殆どSに触れぬ状態となる。尚、5?7の1に対する取り付け方は特に制限を受けるものではなく、図1のそれぞれのハウジング体に、その機能が十分果たされるよう、付設すればよいものである。この意味で本図も又一種のコンセプト図面であると述べたのである。」(【0012】)
〈ク〉「尚、上記実施例の他にも、本発明の要旨から逸脱しない限りに於いて、様々な構成・構造が許されるもので、特に上記実施例の図面等に限定されるものではない。例えば、スキージ装置の主要部であるハウジング体全体の移動機構やその駆動源更には、ハウジング体内部の印刷材料の混練・送給の機構等は、本発明のスピリットに直接係わるものでなく、それ故の図示の省略であることを改めて付言する。」(【0013】)
〈ケ〉【図2】において、枠内の弥次郎兵衛型の中央の小円で表された回動の中心軸を回転支点として、回動手段5がエアシリンダー7及び伝達棒6により揺動させられることが看取できる。

上記〈ア〉、〈キ〉、及び〈ク〉から、スキージ装置には、当該スキージ装置を印刷版としての印刷媒体に対して水平方向に移動させる移動機構が設けられていると解される。
上記〈ウ〉及び〈エ〉から、チャンバー下方の空間における印刷の進行方向の前後壁面がスキージブレードによって形成されること、並びに、当該チャンバー下方の空間に半田ペーストが収容されるとともに、当該チャンバー下方の空間の下面に形成された開口部を介して印刷版としての印刷媒体の表面に半田ペーストが接触させられること、が把握できる。
上記〈ア〉、〈キ〉、及び〈ケ〉から、スキージ装置を移動させる印刷においては、印刷の進行方向の後方にある後ブレードの先端部がたわむ程度に強く圧接し、残りの前ブレードの先端部がたわまぬ程度に軽く圧接するようにスキージブレードが回動させられるものと解される。
上記〈キ〉及び〈ケ〉から、回動手段5は回動の中心軸に回転変位が許容される状態で結合されるものと解される。

以上のことから、上記〈ア〉?〈ケ〉の記載等を含む引用例には、次の発明が記載されていると認めることができる。
「印刷版としての印刷媒体上でスキージ装置を移動させることにより、印刷版としての印刷媒体の開口部を介してプリント基板に半田ペーストを印刷する印刷装置であって、スキージ装置を印刷版としての印刷媒体に対して水平方向に移動させる移動機構を備え、スキージ装置は、半田ペーストを収容し下面に形成された開口部を介し印刷版としての印刷媒体の表面に接触させるチャンバー下方の空間と、チャンバー下方の空間の印刷の進行方向の前後壁面を形成し下端部が印刷版としての印刷媒体の表面に摺接する前後に並置された2枚1組のスキージブレードB_(1),B_(2)と、スキージ装置を移動させる印刷において2枚1組のスキージブレードB_(1),B_(2)を、印刷の進行方向の後方にある後ブレードの先端部がたわむ程度に印刷版としての印刷媒体に強く圧接し、残りの前ブレードの先端部がたわまぬ程度に印刷版としての印刷媒体に軽く圧接するように回動させる、回動の中心軸と、この回動の中心軸に回転変位が許容される状態で結合された回動手段5と、この回動の中心軸を回転支点として回動手段5を揺動させるエアシリンダー7及び伝達棒6とから成る印刷装置。」(以下、「引用発明」という。)

第4 対比・判断
a.引用発明における「印刷版としての印刷媒体」として上記〈ウ〉には「マスクやスクリーン」が記載されていることから、引用発明における「印刷版としての印刷媒体」は本願発明における「マスクプレート」に相当する。また、引用発明における「印刷版としての印刷媒体の開口部」は、本願発明における「マスクプレートのパターン孔」に相当する。さらに、「印刷装置」は、「マスクやスクリーン」を使用するものであるから、本願発明に倣って「スクリーン印刷装置」と称することができる。
b.引用発明における「スキージ装置」、「プリント基板」、「半田ペースト」、「移動機構」、及び「チャンバー下方の空間」は、それぞれ本願発明における「スキージヘッド」、「基板」、「ペースト」、「水平移動手段」、及び「印刷空間」に相当する。
c.引用発明における「スキージ装置を移動させる印刷」は、本願発明における「スキージヘッドを移動させるスキージング」と相違しない。同様に、引用発明における「印刷の進行方向」は、本願発明における「スキージング方向」と相違しない。
d.引用発明における「前後に並置された2枚1組のスキージブレードB_(1),B_(2)」は、本願発明における「相対向した2つの摺接部材」に相当する。そして、引用発明における「印刷の進行方向の後方にある後ブレード」及び「残りの前ブレード」は、それぞれ本願発明における「スキージング方向に対して後ろ側に位置する摺接部材」及び「他の摺接部材」に相当する。
e.引用発明における「印刷の進行方向の後方にある後ブレードの先端部がたわむ程度に印刷版としての印刷媒体に強く圧接し、残りの前ブレードの先端部がたわまぬ程度に印刷版としての印刷媒体に軽く圧接するように回動させる」機能は、本願発明における「2つの摺接部材のマスクプレートに対する印圧荷重を、スキージング方向に対して後ろ側に位置する摺接部材の印圧荷重の方が他の摺接部材の印圧荷重よりも大きくなるように荷重配分を設定する」機能と相違しない。
f.引用発明における「回動の中心軸」、「回動手段5」、及び「エアシリンダー7及び伝達棒6」は、それぞれ本願発明における「回転ヒンジ」、「可動ベース」、及び「駆動部」に相当する。そして、引用発明におけるこれら「回動の中心軸」、「回動手段5」、及び「エアシリンダー7及び伝達棒6」は総体として、本願発明と同様に「2つの摺接部材のマスクプレートに対する印圧荷重を、スキージング方向に対して後ろ側に位置する摺接部材の印圧荷重の方が他の摺接部材の印圧荷重よりも大きくなるように荷重配分を設定する」機能を奏するのであるから、本願発明に倣って「荷重配分設定手段」と称することができる。
してみれば、本願発明と引用発明とは
「マスクプレート上でスキージヘッドを移動させることにより、マスクプレートのパターン孔を介して基板にペーストを印刷するスクリーン印刷装置であって、スキージヘッドをマスクプレートに対してそれぞれ水平方向に移動させる水平移動手段を備え、スキージヘッドは、ペーストを収容し下面に形成された開口部を介してマスクプレートの表面に接触させる印刷空間と、印刷空間のスキージング方向の前後壁面を形成し下端部がマスクプレートの表面に摺接する相対向した2つの摺接部材と、スキージヘッドを移動させるスキージングにおいて2つの摺接部材のマスクプレートに対する印圧荷重を、スキージング方向に対して後ろ側に位置する摺接部材の印圧荷重の方が他の摺接部材の印圧荷重よりも大きくなるように荷重配分を設定する荷重配分設定手段とを備え、荷重配分設定手段は、回転ヒンジと、この回転ヒンジに回転変位が許容される状態で結合された可動ベースと、この回転ヒンジを回転支点として可動ベースを揺動させる駆動部とから成るスクリーン印刷装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点1〉
本願発明が、スキージヘッドをマスクプレートに対して昇降させる「昇降手段」と、スキージヘッドをマスクプレートに対して押圧する「押圧手段」とを備えると特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。
〈相違点2〉
本願発明が「押圧手段に結合された固定ベース」を備え、回転ヒンジが「この固定ベースに結合された」と特定されているのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

〈相違点1〉について
例えば、本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-133992号公報には、
「(8)は前記スキージベース(6)に取付けられたシリンダであり、これに取付けられたスキージ(10)を上下動させる。(9A)(9B)はスキージ(10)のシリンダ(8)による上下動をガイドするスキージ上下動ガイドである。
スキージ(10)はスクリーン板(11)を基板(2)に押圧しながら、前記スキージベース(6)の移動に応じて移動して、スクリーン板(11)上のクリーム半田を基板(2)に、塗布するものである。」(第2頁左下欄第11行?第19行参照;また第1図及び第2図も参照)と記載され、
また、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭62-140871号(実開昭64-46227号)のマイクロフィルムには、
「被印刷物上に配置されるスクリーン上方で水平方向に往復駆動される可動ブロックに対し昇降自在に保持されスクリーン上にインクを載せるとともにこのインクを押出して被印刷物の印刷面に印刷を行なうスクレッパおよびスキージ等の昇降部材を備えてなるスクリーン印刷機において、可動ブロックに対し昇降自在な状態で吊下げ保持されかつ前記昇降部材が設けられた昇降ブロックと、この昇降ブロックを昇降動作させるように前記稼働ブロック側に付設された昇降駆動手段を備え……たことを特徴とするスクリーン印刷機。」(第1頁第5行?第19行参照)と、
また「本考案によれば、印刷時において昇降駆動手段で昇降ブロックを下降させ、スキージ等の昇降部材摺接縁をスクリーン上に圧接させる」(第8頁第9行?第11行参照)と、それぞれ記載されている。
これらの記載から、スクリーン印刷装置において、スキージヘッドをマスクプレートに対して昇降させる手段及びスキージヘッドをマスクプレートに対して押圧する手段を設けることは、本願出願前に周知の技術であるといえる。そして、引用発明においてかかる周知の技術事項を採用することは、当業者が容易になし得ることである。
このように、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得る程度の事項であるといえる。

〈相違点2〉について
引用発明における「回動の中心軸」が、回動手段5を回動させる回転支点として機能するためには、「回動の中心軸」そのものがエアシリンダー7及び伝達棒6の作用によって変位することのないよう支持されている必要があることは、当業者にとって技術常識である。してみれば、引用例の【図2】等には明示されていないものの、引用発明において本願発明の「固定ベース」に相当するところの、「回動の中心軸」(回転ヒンジ)を支持する部材を設けることは、当業者が容易に想到し得る事項であるといえる。
そして、上記「〈相違点1〉について」ですでに検討した押圧手段に関して、当該押圧手段をスキージヘッドに結合する部位については、スキージヘッドをマスクプレートに対して押圧するという作用を奏する範囲において適宜選択し得るものであり、したがって押圧手段を固定ベースに結合するよう構成することは当業者が適宜なし得る事項であるといえる。
このように、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得る程度の事項であるといえる。

以上のように、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明及び周知の技術事項並びに技術常識に基づいて当業者が容易想到な事項であり、かかる発明特定事項を採用したことによる本願発明の効果も当業者が容易に予測し得る程度のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項並びに技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-10 
結審通知日 2008-09-16 
審決日 2008-10-01 
出願番号 特願2001-211842(P2001-211842)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 裕子  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 長島 和子
坂田 誠
発明の名称 スクリーン印刷装置  
代理人 永野 大介  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ