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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1187993 |
審判番号 | 不服2006-7439 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-04-19 |
確定日 | 2008-11-13 |
事件の表示 | 特願2002-521270「指示装置用の透明なパネル並びにこの種のパネルを備えた移動無線機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月28日国際公開、WO02/17287、平成16年 3月 4日国内公表、特表2004-507190〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年8月14日(パリ条約による優先権主張2000年8月25日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成18年1月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年4月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年4月19日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 平成18年4月19日付けの手続補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、 「指示装置(DP)用の透明なパネル(TS)であって、 1つまたは複数の3次元の凸部(3DLR*)および/または凹部(3DLR)による1つまたは複数のシンボルが、該パネルの裏面(RS)の部分領域内に、該シンボルがパネルの前面(VS)で読み取れるように設けられており、該部分領域はパネルの空いている指示ウィンドウ(AF)の外側にある 透明なパネル。」 という発明(以下、「補正発明」という。)に補正された。 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。 また、上記補正は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に係る発明を、「シンボル」の「パネルの裏面(RS)」における位置が、「該部分領域はパネルの空いている指示ウィンドウ(AF)の外側にある」、「部分領域内」である点により限定するものである。 したがって、上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件について 上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 3.1 補正発明 上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。 3.2 引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された実用新案登録第3054915号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項イ?ハが記載されている。 イ.「【0001】 【考案の属する技術分野】 本考案は、無線電話またはその他のハンドセットのためのディスプレイウインドウに関するものである。」(4頁2?5行) ロ.「【0011】 美観上の理由で、1つまたはそれ以上の突部は、ディスプレイウインドウを横切るように延長する単一の細長要素からなるとよい。この突部は、ディスプレイウインドウに与えられる文字またはグラフィック情報を目立たせるように配置されうる。例えば、突部は、ディスプレイウインドウに印刷されたブランド名を強調するのに使用されうる。細長突部は、その下にくる文字の拡大手段として作用するように配設されうる。」(6頁20?26行) ハ.「【0017】 ディスプレイウインドウは、LCDディスプレイ3と一致した透明領域19と、縁部領域20とを有している。この縁部領域20は、ディスプレイ領域を見やすくするために色付けされるのが好ましい。細長突部は、透明領域19を通して見られるディスプレイを歪ませないように縁部領域に配設されている。これは、図4の断面図に示されている。 【0018】 ディスプレイウインドウ4の形状は、図3により詳細に分かろう。ウインドウ4は、ハウジング2への取り付けのための突出部21と、ハンドセットのブランド名を表示しうるディスプレイ領域22とを有している。この位置において、ブランド名は、それに特別な強調を与える細長突部によって強調されている。細長突部は、その下にある縁部領域を拡大するレンズとして作用する。 【0019】 細長突部は、ディスプレイウインドウの一体部分であるのが好ましく、射出成形によって透明プラスチック材料で形成されうる。しかしながら、その他の材料およびプロセスにて、ディスプレイウインドウを形成することが考えられる。縁部領域20および文字またはグラフィック情報は、ディスプレイウインドウの後側にプリンティングにより、または、キュービックプリンティングの如き別の方法により形成されうる。」(8頁14行?9頁3行) 上記摘記事項ロの記載、上記摘記事項ハの段落【0018】?【0019】の記載、及び図3から、「文字」は「ディスプレイウインドウ」の「後側」の「縁部領域」内に、「ディスプレイウインドウ」の前面で読み取れるように設けられることが理解される。 したがって、上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例には、 「LCDディスプレイ用の透明なディスプレイウインドウであって、 文字が、該ディスプレイウインドウの後側の縁部領域内に、該文字がディスプレイウインドウの前面で読み取れるように設けられており、該縁部領域はディスプレイウインドウの空いている透明領域の外側にある 透明なディスプレイウインドウ。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 3.3 対比・判断 補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「ディスプレイウインドウ」は、上記摘記事項ハの段落【0018】の記載や図3より、パネル状の部材からなるものであることが読み取れるから、補正発明の「パネル」に相当する。 引用発明において、「LCDディスプレイ」は指示装置の一種であり、「文字」はシンボルの一例であり、「縁部領域」は「ディスプレイウインドウ」の全領域における部分領域である。 上記引用例の摘記事項ロ及びハの記載や図3に示されている「ディスプレイ領域22」の配置からみて、引用発明における「パネル」の「後側」とは、その裏面を意味するものと認められる。 引用発明において、「透明領域」は、上記摘記事項ハの段落【0017】の記載によればディスプレイを見るための領域であるから、補正発明の「指示ウィンドウ」に相当する。 したがって、両者は、 「指示装置用の透明なパネルであって、 シンボルが、該パネルの裏面の部分領域内に、該シンボルがパネルの前面で読み取れるように設けられており、該部分領域はパネルの空いている指示ウィンドウの外側にある 透明なパネル。」 で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 「シンボル」の個数が、補正発明では「1つまたは複数」であるのに対して、引用発明ではいくつか不明である点。 (相違点2) 「シンボル」の形成が、補正発明では「1つまたは複数の3次元の凸部(3DLR*)および/または凹部(3DLR)による」ものであるのに対して、引用発明ではそのようにはされていない点。 そこで、上記相違点について以下に検討する。 (相違点1について) 引用発明において、シンボルの個数は、それによって表示したい情報の内容に応じて適宜なしうる設計的事項にすぎない。 (相違点2について) 銘板等において、透明な板状の部材の裏面にシンボルを3次元の凹部により形成することは、例えば、特開平10-328384号公報(段落【0126】-【0127】等参照)、特開平10-10980号公報(段落【0013】-【0014】等参照)に開示されているように周知であり、引用発明に当該周知技術を適用することは、当業者であれば容易に想到しうることである。その際の凹部の個数をどの程度とするかは、相違点1について検討したシンボルの個数と同様に設計的事項である。 また、補正発明の作用効果についても、引用発明及び周知技術から当業者が予測しうる程度のものである。 したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成18年4月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)、及び、請求項2に係る発明(以下、「本願発明2」という。)は、出願当初の明細書又は図面の記載からみて、その特許請求の範囲のそれぞれ請求項1、請求項2に記載された、以下のとおりのものである。 (本願発明1) 「指示装置(DP)用の透明なパネル(TS)であって、 パネルの裏面(RS)に1つまたは複数の3次元の凸部(3DLR*)および/または凹部(3DLR)による1つまたは複数のシンボルが、該シンボルがパネルの前面(VS)で読み取れるように設けられている 透明なパネル。」 (本願発明2) 「移動無線機、例えば移動無線電話のディスプレイパネルとして使用する 透明なパネル。」 2.引用発明 上記引用例には、本願発明1と対比される発明として、上記「第2 補正却下の決定」の「3.2 引用発明」の項で認定したとおりの発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 また、上記引用例には図面とともに上記摘記事項イ?ハの記載があり、当該記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例には、本願発明2と対比される発明として 「無線電話のディスプレイウインドウとして使用する 透明なディスプレイウインドウ。」 の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 3.対比・判断 3.1 本願発明1について 本願発明1は、上記「第2 補正却下の決定」で検討した補正発明に係る限定を削除したものである。 そうすると、本願発明1の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加又は限定した補正発明が、上記「第2 補正却下の決定」の「3.3 対比・判断」の項に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.2 本願発明2について 本願発明2と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「無線電話」は移動無線電話であり、また、引用発明2の「ディスプレイウインドウ」は、上記摘記事項ハの段落【0018】の記載や図3より、パネル状の部材からなるものであることが読み取れるから、本願発明2の「ディスプレイパネル」及び「パネル」に相当する。 したがって、本願発明2は引用発明2と同一である。 なお、原審において引用例を引用したのは、特許法第29条第2項を理由とする拒絶理由の通知においてであるが、その拒絶理由には、本願発明と引用例に記載されている発明とが同一であることも実質的に含まれていることを、出願人が理解することが期待できるものであり、また、出願人には、そのことについて意見を述べる等の対応をする機会が与えられていたというべきである。よって、本願発明2について改めて第29条第1項を理由とする拒絶理由を通知することなく、審決する(例えば、平成3年(行ケ)第82号判決を参照されたい。)。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 また、本願の請求項2に係る発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-13 |
結審通知日 | 2008-06-19 |
審決日 | 2008-07-04 |
出願番号 | 特願2002-521270(P2002-521270) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M) P 1 8・ 575- Z (H04M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 萩原 義則 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
富澤 哲生 竹井 文雄 |
発明の名称 | 指示装置用の透明なパネル並びにこの種のパネルを備えた移動無線機 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | ラインハルト・アインゼル |