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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01G |
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管理番号 | 1188007 |
審判番号 | 不服2006-17504 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-08-10 |
確定日 | 2008-11-13 |
事件の表示 | 特願2003-365012「植物栽培マット」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月 5日出願公開,特開2004- 33228〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,平成13年5月8日に出願された特願2001-136918号の一部を平成15年10月24日に新たな出願としたものであり,平成18年6月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年9月11日付けで手続補正がなされたものであって,当審において,平成20年5月26日に平成18年9月11日付け手続補正に対する補正の却下の決定がなされ,同日付けで拒絶理由を通知したところ,平成20年8月4日付けで手続補正書が提出されるとともに,同年8月5日付けで意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成20年8月4日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 (本願発明) 「支持体における支持部上に繊維マット部が積層結合してなり、そのように積層結合したものを載置面上に載置して隣接配列するための植物栽培マットであって、 前記支持体は、その支持体全体がすのこ状部であるか又はその支持体のうちの部分がすのこ状部であり、 前記支持部は、前記すのこ状部の上面部を形成するものであり、 前記支持体におけるすのこ状部は、前記繊維マット部において生育した植物の根が挿通し得る上方開口の透孔を前記支持部の全上面部にわたり多数満遍なく有すると共に、前記支持部の下方に空間形成部を有し、 平面視において、すのこ状部の上面部の面積に対する透孔の総面積の割合が35乃至95%であり、 前記空間形成部は、下方に開放されており、前記支持体を載置面上に載置した状態において、前記透孔を通じて支持部の下方に伸びた植物の根が張ることができ、隣り合う透孔をそれぞれ通じて支持部の下方に伸びた植物の根同士が側方に張ることにより交錯し合い得、支持体の側方外部との間に空気及び水が流通し得るように支持体の側方外部に開口し、前記透孔は、空間形成部を介して支持体の側方外部と通じるものであることを特徴とする植物栽培マット。」 3.刊行物およびその記載事項 (1)当審より通知した拒絶理由で引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,実願平4-88267号(実開平6-46449号)のCD-ROM(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。 (イ)「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は主として屋上緑化地盤、坂路馬場、平坦馬場、運動場等に付帯する貯水、洗滌装置に関する。」 (ロ)「【0006】 上記排水処理用床材の単体は、プラスチックの成形により全体を、断面┌┐形箱体に形成されていて、複数の排水孔を穿設し、植生土層からの垂直方向の圧力に耐えることのできる複数本の下向き構造支柱を設けてなる上盤と、隣接する排水処理用床材の側辺に設けた排水孔に通じる排水孔及び隣接する排水処理用床材の側辺中央部に凹設される半円形凹部に整合する半円形凹部を構成し、・・・」 (ハ)「【0013】 【実施例】 また、本考案では、貯蔵水の洗滌作用に合わせ、必要に応じ洗滌水と液肥の混合水を噴射させると、緑化植物の植物根が、この養分を吸収するから、植物の生育が促進される。 以下、図面に基づいて本考案の実施例を説明する。 図1・図2・図3には、本考案で使用する排水処理用床材本体の単体が示されている。 該排水処理用床材本体1は、プラスチック成形により全体断面┌┐形箱体2に形成されていて、複数の排水孔3を穿設し、複数本の下向構造支柱4を設けてなる上盤5と、側辺6に、切欠排水孔7及び半円形凹部8を設け、さらに外角部に、敷設時に排水処理用床材本体1相互を接続する接続用凸状部9及び接続用凹状部10を設けてなる枠壁11とで構成する。 なお、排水処理用床材本体1の下向構造支柱4は、排水をスムーズにするために、円筒状支柱に形成することが好ましい。また、排水処理用床材本体1は、底板1aを備えており、この底板1aの上面には、排水処理用床材本体1に設けた所要の下向構造支柱4に嵌挿する突起部4aを構成し、排水処理用床材本体1相互の固定を強固にする。」 (ニ)「【0014】 上記排水処理用床材本体1は、その開口側を図4に示すように、コンクリート床面12の所要領域に連設配置して敷設され、この排水処理用床材本体1の上盤5に滲水性ネット13を敷設し、この滲水性ネット13の上面に植生土層14を構成し、この植生土層14の外周に用土流出防止壁15を囲設して土留めを行ない、植生土層14に緑化植物16を植栽して、屋上緑化地盤Aを構成する。なお、軟弱地盤に排水処理用床材本体1を敷設する場合は、底板17を使用する。」 (ホ)【図3】および【図4】には,上盤5の下方に空間形成部を有し,空間形成部は,下方に開放されており,排水処理用床材本体1の側方外部との間に空気及び水が流通し得るように排水処理用床材本体1の側方外部に開口し,排水孔3は,空間形成部を介して排水処理用床材本体1の側方外部と通じるものであることが示されている。 上記記載事項(イ)乃至(ホ)によれば,上記刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明) 「コンクリート床面12の所要領域に連設配置して敷設された排水処理用床材本体1の上盤5に滲水性ネット13を敷設し,この滲水性ネット13の上面に植生土層14を構築した屋上緑化地盤Aであって, 前記排水処理用床材本体1は,プラスチック成形により全体断面┌┐形箱体2に形成されていて、複数の排水孔3を穿設し、複数本の下向構造支柱4を設けてなる上盤5と、側辺6に、切欠排水孔7及び半円形凹部8を設け、さらに外角部に、敷設時に排水処理用床材本体1相互を接続する接続用凸状部9及び接続用凹状部10を設けてなる枠壁11とで構成し, 前記排水処理用床材本体1の前記上盤5は,前記上盤5の下方に空間形成部を有し, 前記空間形成部は,下方に開放されており,排水処理用床材本体1の側方外部との間に空気及び水が流通し得るように排水処理用床材本体1の側方外部に開口し,排水孔3は,空間形成部を介して排水処理用床材本体1の側方外部と通じるものである屋上緑化地盤A。」 (2)当審より通知した拒絶理由で引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2001-103836号公報(以下,「刊行物2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。 (ヘ)「【請求項1】 植物を育成可能な植物育成用マットであって、 水を通さない防水層部と、 前記防水層部の上部に設けられ、余分な水分を排出する排水層部と、 前記排水層部の上部に設けられ、水分を保持する保水層部と、 前記保水層部の上部に設けられ、自然培土よりも軽い人工培土層部と、 が層状をなして一体化されて形成されていることを特徴とする植物育成用マット。」 (ト)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、住宅やビルの屋上などの人工地盤上に設けて、植物、特に地被植物を育成する植物育成用マットおよび人工地盤の緑化方法に関する。」 (チ)「【0018】 【発明の実施の形態】以下、図を参照して本発明に係る植物育成用マットとこの植物育成用マットによる緑化方法の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明に係る植物育成用マットの構造を示した断面図である。図1に示す植物育成用マット1は、人工地盤G上に植物を育成させるためのマットである。その構造は断面視において、最下層に敷設された防水シートからなる防水層部2と、この防水層部2の上面に層状をなして設けられた防根シートからなる防根層部3と、この防根層部3の上面に層状をなして設けられた排水層部4と、この排水層部4の上面に層状をなして設けられた保水層部5と、この保水層部5の上面に層状をなして設けられた人工培土層部6と、によって構成され、各層が一体化されて形成されている。また、この植物育成用マット1は、大きさは任意であり、載置される人工地盤Gに合わせて適宜設定してもよいし、或いは複数の植物育成用マット1を繋ぎ合わせて用いても良い。」 (リ)「【0020】前記排水層部4は、余分な水分を速やかに外部に排出するためのものであり、例えば、エンカドレーン(商品名)を使用する。排水層部4は、90%以上の空隙を有する空間で構成され、プラスチック又は金属の線状物41を折り曲げたもので不織布42を支えることにより形成されている。」 (ヌ)「【0026】加えて、防根層部3を防水層部2の上面に設けたので、根が人工地盤Gのすき間に侵入して人工地盤を傷めることを防止することが出来るとともに、根が当該植物育成用マット1の厚みぎりぎりまで伸ばすことが出来て植物の発育が最大限よくなる。更に、人工培土層部6は、水で膨潤する水溶性シート或いは高吸収性高分子からなるので、水及び養分をいつも十分に供給可能な人工培土層部6を形成することが出来る。また、保水層部5は、所定の大きさの空隙を有する網目構造の成形体、或いは繊維質構造の成形体であるので、その空隙内に適量の水を保持するとともに、余分な水は排出することが出来ることとなって、植物育成に最適なものとすることが出来る。植物育成用マット1が人工地盤Gに配置され、次いで、植物育成用マット1の人工培土層部6にダイカンドラが植栽されるので、植物育成用マット1を配置するだけで他の設備を必要としないこととなって、容易に人工地盤Gの緑化が図れる。」 4.対比 本願発明と引用発明とを比較すると,引用発明の「排水処理用床材本体1」は,本願発明の「支持体」に,以下同様に,「上盤5」は「支持部」に,「排水孔3」は「透孔」に,それぞれ相当する。 そして,引用発明の「植生土層14」と本願発明の「繊維マット部」とは,「植生基材」である点で共通しており,「屋上緑化地盤」と「植物栽培マット」とは,「植物栽培資材」である点で共通している。 また,引用発明の「排水処理用床材本体1」は,「プラスチック成形により全体断面┌┐形箱体2に形成されていて、複数の排水孔3を穿設し、複数本の下向構造支柱4を設けてなる上盤5と、側辺6に、切欠排水孔7及び半円形凹部8を設け、さらに外角部に、敷設時に排水処理用床材本体1相互を接続する接続用凸状部9及び接続用凹状部10を設けてなる枠壁11とで構成し」たものであるから,全体としてすのこ状部を形成するものであり,引用発明の「上盤5」は,前記すのこ状部の上面部を形成するものであり,引用発明の「排水孔3」は上方開口の透孔であるといえる。 したがって,本願発明と引用発明は, <一致点> 「支持体における支持部上に植生基材を設けた植物栽培資材であって,前記支持体は,その支持体全体がすのこ状部であり, 前記支持部は,前記すのこ状部の上面部を形成するものであり, 前記支持体におけるすのこ状部は,上方開口の透孔を前記支持部に有すると共に,前記支持部の下方に空間形成部を有し, 前記空間形成部は,下方に開放されており,支持体の側方外部との間に空気及び水が流通し得るように支持体の側方外部に開口し,前記透孔は,空間形成部を介して支持体の側方外部と通じるものである植物栽培資材。」である点で一致し,次の点で相違する。 <相違点1> 植物栽培資材が,本願発明は,支持体における支持部上に,植生基材である繊維マット部が積層結合してなり,そのように積層結合したものを載置面上に載置して隣接配列するための植物栽培マットであるのに対し,引用発明は,連接配置した支持体である排水処理用床材本体1の上盤5に滲水性ネット13を敷設し,この滲水性ネット13の上面に,植生基材である植生土層14を構築したものである点。 <相違点2> 本願発明は,支持部の透孔が「支持部の全上面部にわたり多数満遍なく有する」とともに「平面視において、すのこ状部の上面部の面積に対する透孔の総面積の割合が35乃至95%」であって,植物の根が「透孔を通じて支持部の下方に伸びた植物の根が張ることができ、隣り合う透孔をそれぞれ通じて支持部の下方に伸びた植物の根同士が側方に張ることにより交錯し合い得」るものであるのに対し,引用発明は,支持部の透孔が全上面部にわたり満遍なく,上面部の面積に対して35?95%の割合で配置されているかどうか明らかでなく,植物の根が排水孔3を挿通しているかどうかも明らかでない点。 5.判断 まず,相違点1について検討する。植生基材として,繊維マットを用いることは例を挙げるまでもなく周知技術である。そして,特に,刊行物2には,排水のための構造である「排水層部4」の上部に,植生基材である「保水層部や人工培土層部」を層状をなして一体化した複数の植物育成用マット1をユニットとして,繋ぎ合わせて用いる技術が開示されている。したがって,引用発明において,排水のための構造である「排水処理用床材本体1」の上に,植生基材である繊維マットを積層結合し,そのように積層結合したものを載置面上に載置して隣接配列するための植物栽培マットとすることは,当業者が容易になし得たことである。 次に,相違点2について検討する。上記記載事項(ハ)によれば,植物根が噴射された洗滌水と液肥の混合水を吸収するのであるから,引用発明においても,植物の根は「排水孔3」や「滲水性ネット13」を突き抜けて,支持部の下方に伸びているものと認められる。また,仮にそうでなかったとしても,例えば, 刊行物2の記載事項(ヌ)の「【0026】加えて,防根層部3を防水層部2の上面に設けたので,根が人工地盤Gのすき間に侵入して人工地盤を傷めることを防止することが出来るとともに,根が当該植物育成用マット1の厚みぎりぎりまで伸ばすことが出来て植物の発育が最大限よくなる。」という記載をみれば,植物の根が,保水層部および人工培土層部からなる植生基材部分を突き抜けて,90%以上の空隙を有する排水層部を含めた植物育成用マット全体まで伸びることにより,植物の発育が最大限よくなるのであるから,引用発明においても植物の根が透孔を挿通し得るように構成することに特段の困難性はない。 そして,透孔が全面に満遍なく存在した方が透水性能や根の挿通性にばらつきが生じないことは自明であり,また,透孔の総面積が上面部の面積に対してある程度大きな割合で存在した方が水はけや根の挿通性がよくなることも自明であるのだから,引用発明においても,複数存在する透孔を支持部の全上面部にわたり満遍なく設置したり,その総面積を,すのこ状部の上面部の面積に対して35?95%程度の割合としたりして,植物の根が透孔を良好に挿通するように構成することは,当業者が容易になし得たことである。 また,植物の根が透孔を挿通して伸びれば,支持体を載置面上に載置した状態において,前記透孔を通じて支持部の下方に伸びた植物の根が張ることができ,隣り合う透孔をそれぞれ通じて支持部の下方に伸びた植物の根同士が側方に張ることにより交錯し合い得るのは自明なことである。 さらに,本願発明の奏する効果についても,自明なものに過ぎない。 したがって,本願発明は,引用発明,刊行物2記載の技術および周知技術から当業者が容易になし得たことであるから,特許を受けることができない。 6.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明,刊行物2記載の技術および周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願の他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-28 |
結審通知日 | 2008-09-02 |
審決日 | 2008-09-19 |
出願番号 | 特願2003-365012(P2003-365012) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A01G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 郡山 順 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
伊波 猛 関根 裕 |
発明の名称 | 植物栽培マット |
代理人 | 高良 尚志 |
代理人 | 高良 尚志 |