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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01F
管理番号 1188010
審判番号 不服2006-18536  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-24 
確定日 2008-11-13 
事件の表示 平成10年特許願第237100号「ガスメーター」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月 3日出願公開、特開2000- 65620〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年8月24日の出願であって、平成18年7月18日付け(同年7月25日発送)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成18年8月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年8月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正の内容は、特許請求の範囲の請求項1の記載を補正前の、
「プリント配線板にマイコンチップ、水晶振動子、リチウム電池、テストスイッチを搭載して形成した電子回路部を有するガスメーターにおいて、プリント配線板の表面及び/または裏面の部品を封止するように耐湿性のあるポッテング材を被着して防湿ポッテングするものであって、上記マイコンチップ及び水晶振動子は全体を覆うように上記ポッテング材を被着すると共に、リチウム電池、テストスイッチは端子部を覆うように上記ポッテング材を被着することを特徴とするガスメーター。」
から、補正後の、
「プリント配線板にマイコンチップ、水晶振動子、リチウム電池、テストスイッチを搭載して形成した電子回路部を有するガスメーターにおいて、プリント配線板の表面及び/または裏面の部品を封止するように耐湿性のあるポッテング材を被着して防湿ポッテングするものであって、上記マイコンチップ及び水晶振動子は全体を覆うように上記ポッテング材を被着すると共に、リチウム電池、テストスイッチは端子部を覆うように上記ポッテング材を被着し、該防湿ポッテングした電子回路部のプリント配線板を防湿材に浸して防湿材をコーテングして成ることを特徴とするガスメーター。」(なお、アンダーラインは補正箇所を示すために当審において付したものである。)
と補正する補正事項を含むものである。

上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「プリント配線板」に関して、「該防湿ポッテングした電子回路部のプリント配線板を防湿材に浸して防湿材をコーテングして成る」と限定したものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「補正後第1発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2 独立特許要件について
(1)補正後第1発明を再掲すると、次のとおりである。
「プリント配線板にマイコンチップ、水晶振動子、リチウム電池、テストスイッチを搭載して形成した電子回路部を有するガスメーターにおいて、プリント配線板の表面及び/または裏面の部品を封止するように耐湿性のあるポッテング材を被着して防湿ポッテングするものであって、上記マイコンチップ及び水晶振動子は全体を覆うように上記ポッテング材を被着すると共に、リチウム電池、テストスイッチは端子部を覆うように上記ポッテング材を被着し、該防湿ポッテングした電子回路部のプリント配線板を防湿材に浸して防湿材をコーテングして成ることを特徴とするガスメーター。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-334583号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
ア 「【産業上の利用分野】本発明は、ガスの流量、地震等の震度、あるいはガス圧等が異常値を示したときガス使用機器に対するガスの供給を遮断するガス遮断装置に関する。」(段落【0001】)
イ 「【従来の技術】従来、ガスメータと一体的に構成されて・・・ガス遮断装置は、ガスメータの上ケースを改造して取り付けられることが多い。・・・多くなってきた。」(段落【0002】)
ウ 「図7は、ガスメ-タ101の上ケ-ス102を改造して取り付けられた従来のガス遮断装置103のケ-ス104を部分カットしてガス遮断装置103の内部構成を示した斜視図である。図7に示すように、従来のガス遮断装置103にはガス使用機器に対するガスの供給を遮断する遮断弁105が設けられており、ガスメ-タ101を通過するガスの流量が異常設定値に達したとき、あるいは所定の震度を越える地震が発生したとき、あるいは所定の圧力以下にガス圧が低下したような異常状態になった場合にガス使用機器に対するガスの供給を遮断するように構成されている。上記遮断弁105を制御するためマイクロコンピュ-タ106を中枢とする制御回路がプリント基板107に構成されており、その制御回路の電源として小型のリチウム電池108が装着されている。」(段落【0003】)

そして、図面の図7には、
・プリント基板107にマイクロコンピュ-タ106、リチウム電池108が装着されている点
・プリント基板107が備えられたガス遮断装置103
・ガス遮断装置103とガスメータ101とが一体化された装置
が図示されている。

してみると、引用例1には、以下の事項が記載されている。
・プリント基板107にマイクロコンピュ-タ106、リチウム電池108が装着されて構成された制御回路(摘記事項ウ、図7)
・制御回路を備えたガス遮断装置とガスメータとが一体化された装置(摘記事項イ、図7)

したがって、引用例1には次のとおりの発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されているものと認められる。
【引用例発明】
「プリント基板107にマイクロコンピュ-タ106、リチウム電池108が装着されて構成された制御回路を備えたガス遮断装置103とガスメータ101とが一体化された装置。」

(3)周知例
ア 原査定の備考に記載され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭62-11293号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「〔発明の利用分野〕
本発明は、電子回路基板の封止方法に係り、特に、各種電子部品を搭載する電子回路基板の防湿、絶縁をするのに好適な封止処理に係る、電子回路基板の封止方法に関するものである。」(公報第1頁右下欄第12?16行)
「〔発明の目的〕
本発明は、防湿、絶縁性にすぐれ、かつ放熱性あるいは経済性にすぐれるポツティング・・・してなる電子回路基板を供しうるようにした、電子回路基板の封止方法の提供を、その目的とするものである。」(公報第2頁右上欄第13?17行)
「実施例 1
まず、第1図は、本発明の一実施例に係る。電子回路基板の封止方法により封止処理された、一部開披電子回路基板と、その処理に供されるポツテイング用型とを示す斜視図である。
そして、1は、ポツテイング封止処理に供される電子回路基板、2は封止材、3は充填材、4は電子部品を示し、このうち、4aはIC、4bはトランス、4cはコンデンサー、4dはトライアツク、4eは抵抗体である。
5は、ポツテイング用型である。
本実施例に係る封止方法で、ポツテイング方法は、まず、ポツテイング用型5に、電子回路基板1を定位置にセツトし、その隙間に充填材3を包囲充填する。・・・・・
次に、封止材2として、真空脱気した2液タイプウレタン樹脂(日本油脂製PQ-500)を注入含浸した。
その後、真空度10^(-2)torrで、5分間脱気処理し、乾燥炉で、80℃、1時間、加熱硬化した。
そして、常温に冷却後、離型し、目的とする、封止処理をされた電子回路基板を得たものである。」(公報第3頁左下欄第13行?同右下欄第19行)

そして、図面の第1図によると、電子部品4a?4dについてはその端子部を覆うように封止材・充填材(ポッテング材に相当)を被着し、電子部品4eについてはその全体を覆うように封止材・充填材(ポッテング材に相当)を被着していることが理解できる。

イ 原査定の備考に記載され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭58-121228号(実開昭60-30569号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「産業上の利用分野
本考案は、ポッティングしたプリント基板の構造に関し、例えば、洗濯機や自動車等に搭載する電子コントローラに好適に適用し得るものに関する。」(公報第1頁第17行?同第2頁第2行)
「第1図に示すように、紙とエポキシ樹脂を複合したプリント基板(1)に電子部品(2)を実装してプリント基板ユニット(3)を構成した後プリント基板(1)や電子部品(2)を水滴等から保護するためにケース(4)内にプリント基板ユニット(3)を配置し、プリント基板(1)や電子部品(2)及びその電気導体部(5)をエポキシ樹脂等の防水性充填材(6)に埋入させポッティングを行なっている。」(公報第2頁第5?13行)

そして、図面の第1図によると、一部の背の高い電子部品(2)についてはその電気導体部(5)(端子部に相当)を覆うように防水性充填材(6)(ポッテング材に相当)を被着し、他の背の低い電子部品(2)についてはその全体を覆うように防水性充填材(6)(ポッテング材に相当)を被着していることが理解できる。

ウ 原査定の備考に記載された上記刊行物1、2に示されるように、「プリント配線板の表面等の複数の部品を封止するように耐湿性のあるポッテング材を被着して防湿ポッテングするものにおいて、全体を覆うようにポッテング材を被着する部品と、端子部を覆うようにポッテング材を被着する部品とに区別する」ことは周知技術である。

エ 本願の出願前に頒布された刊行物である特公昭58-15956号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「本発明は、電子回路板のコーテング方法に係り、各種電子部品を搭載する電子回路板のコーテング方法に関するものである。」(公報第1頁第2欄第6?8行)
「本発明の特徴は、電子回路板のコーテングにおいて、その全面をコーテングする前に、まずリーク電流許容値の小さい部分又はコーテングが困難な部分を、熱溶融型の材料により予備コーテングにより肉盛りし、次いで当該全面をコーテングするようにした電子回路板のコーテング方法にある。」(公報第2頁第4欄第19?24行)
「具体的な実施例により説明するが、本発明に係るものは、これによりなんら限定されるものではない。
すなわち、試験用の電子回路板として、リーク電流許容値が300μA以上の部品が大部分で、リーク電流許容値が10μA以下のI.C1ヶと、トランジスタ1ヶとを搭載した回路板を作製し、これを用いてコーテングを実施した。
まず、ホットメルト接着剤、クルーステック(ボスチックジャパン製)を専用ガン(グルーガン260)を用いて、上記回路板のトランジスタ、およびI.Cのリード線の部分に肉盛り(予備コーテング)した。
この操作に要する時間は、2ヶ所で2?3秒であつた。
また、上記ホットメルト接着剤は、上記の操作後、ただちに流動性を失ない、そして約60秒でほぼ完全に固化する。
つぎに、上記のごとく予備コーテングした回路板を、粘度5.5ポイズ(25℃)のアクリル系のコーテング材にディップし、約30秒後に引きあげた。その後、室温で4時間乾燥し、さらに、60℃で4時間乾燥し、コーテングを完了したものである。
このようにしてコーテングを完了した電子回路板について、下記のリーク電流テストを行なった。
すなわち、上記コーテングを完了した当該回路板に通電し、電子部品側(表面)に、霧吹きを用いて水を噴霧したところ、その回路板は、誤動作をすることなく、正常に稼動した。」(公報第3頁第5欄第25行?同第6欄第10行)

オ 本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭59-161053号公報以下、「刊行物4」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「産業上の利用分野
本発明は安価で量産性はもちろんのこと、安全性、特に端子間の電位差が100V以上の回路に使用されるサイリスタに結露水や水が直接かかった場合でも耐トラッキング性に優れ、誤動作や発火の危険性のない実装基板に関するものである。」(公報第1頁右下欄第1?6行)
「通常の回路では端子間の電位差が15V以下で構成されているので、サイリスタのトラッキング性にまつわる問題はないが、端子間の電位差が100V以上の回路に使用されるサイリスタに、温度差によって水が結露したり、水が直接かかった場合でも、トラッキングによるサイリスタの誤動作・発火を防止するには、すべてベンゼン環を有しないポリエステル基板を用い、リード部分をチクソトロピック性のあるポリブタジエン系樹脂を有機過酸化物硬化させ、完全に被覆することによってのみ、安価で量産性を損なわずに可能なところに本発明のポイントがある。
そして端子間の電位差が100V以上の回路に使用されるサイリスタのトラッキング性に関して問題がない状態にすれば、サイリスタを含む電子回路を構成した実装基板に、浸漬やスプレー塗布により、簡単な防湿処理を行なえば、温度差によって水が結露したり、水が直接かかっても全く問題のない電子回路が得られる。」(公報第3頁右上欄第3行?同左下欄第1行)
「図は本発明の実施例におけるサイリスタを実装したプリント基板の断面図である。図において、厚さ1.6mmの片面のポリエステル基板1上に、回路パターン6、端子間の電位差が110Vのトライアック2、LED3、端子間の電位差が105Vの半導体整流型ダイオード4、電解コンデンサー5、チップ部品7からなる実装基板に、チクソトロピック性が4.2の主剤1.2-ポリブタジエン樹脂、硬化剤が有機過酸化物のオクタノイルパーオキサイドからなる樹脂でトライアック2、および半導体整流型ダイオード4のリード部分をディスペンサーを用いて被覆し、100℃、20分の硬化条件で硬化させ、ポリブタジエン樹脂による被覆8を作成した。次に、電子回路を構成した実装基板をアクリル樹脂中に浸漬し、100℃、15分の硬化条件で硬化させ、防湿処理被覆9を作成した。」(公報第3頁左下欄第8行?同右下欄第4行)

カ 上記刊行物3記載のものにおける「リーク電流許容値の小さい部分又はコーテングが困難な部分の予備コーテング」、及び、上記刊行物4記載のものにおける「トライアック2、半導体整流型ダイオード4のリード部分のポリブタジエン樹脂による被覆8形成」は、実質的に防湿ポッティングであることは明らかである。
してみると、上記刊行物3,4に示されるように、「防湿ポッテングした電子回路部のプリント配線板を防湿材に浸して防湿材をコーテングして成る」ことは周知技術である。

(3)対比
補正後第1発明と引用例発明を対比する。
ア 引用例発明の「プリント基板107」は、補正後第1発明の「プリント配線板」に相当し、以下同様に、「マイクロコンピュータ106」は「マイコンチップ」に、「リチウム電池108」は「リチウム電池」に、「装着されて構成された」は「搭載して形成した」に、「制御回路」は「電子回路部」に、「備えた」は「有する」に、それぞれ相当する。

イ 引用発明の対象である「ガス遮断装置103とガスメータ101とが一体化された装置」は、補正後第1発明の対象である「ガスメーター」に相当する。

したがって、補正後第1発明と引用例発明の両者は、次の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
「プリント配線板にマイコンチップ、リチウム電池を搭載して形成した電子回路部を有するガスメーター。」

【相違点】
相違点1:電子回路部の形成について、補正後第1発明では、プリント配線板にマイコンチップ、リチウム電池、水晶振動子、テストスイッチを搭載して形成しているのに対して、引用例発明では、プリント配線板にマイコンチップ、リチウム電池を搭載して形成しているものの、水晶振動子、テストスイッチのプリント配線板への搭載については明らかではない点。

相違点2:補正後第1発明では、プリント配線板の表面及び/または裏面の部品を封止するように耐湿性のあるポッテング材を被着して防湿ポッテングするものであって、マイコンチップ及び水晶振動子は全体を覆うように上記ポッテング材を被着すると共に、リチウム電池、テストスイッチは端子部を覆うように上記ポッテング材を被着しているのに対して、引用例発明では、そのように限定されていない点。

相違点3:補正後第1発明では、防湿ポッテングした電子回路部のプリント配線板を防湿材に浸して防湿材をコーテングしているのに対して、引用例発明では、当該コーテングをしていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。

ア 相違点1について
ガス遮断機能を備えたガスメータの技術分野において、ガスメータの制御装置に水晶振動子、テストスイッチを組み込むことは周知手段(例えば、水晶振動子に関しては特開昭58-150713号公報、特開昭59-112121号公報、テストスイッチに関しては特開平4-225723号公報等参照)にすぎない。
したがって、引用例発明の電子回路部について、プリント配線板にマイコンチップ、リチウム電池に加えて、当該周知手段を適用することにより、補正後第1発明のように、プリント配線板にマイコンチップ、水晶振動子を搭載して形成することは、当業者が適宜になし得る設計事項に過ぎない。

よって、相違点1に係る補正後第1発明の発明特定事項は格別なものではない。

イ 相違点2について
上記「ア 相違点1について」の項で述べたように、補正後第1発明のように、プリント配線板にマイコンチップ、水晶振動子を搭載して形成することは、当業者が適宜になし得る設計事項に過ぎない。
また、「2(3)周知例 ウ」の項で述べたように、原査定の備考に記載された上記刊行物1、2に示されるように、「プリント配線板の表面等の複数の部品を封止するように耐湿性のあるポッテング材を被着して防湿ポッテングするものにおいて、全体を覆うようにポッテング材を被着する部品と、端子部を覆うようにポッテング材を被着する部品とに区別する」ことは周知技術である。
そして、引用例発明のプリント基板に搭載される複数の部品に対して、上記周知のポッテング材の被着技術を適用することになんら阻害要因は見いだせない。

したがって、補正後第1発明のごとく、「プリント配線板の表面及び/または裏面の部品を封止するように耐湿性のあるポッテング材を被着して防湿ポッテングするものであって、マイコンチップ及び水晶振動子は全体を覆うように上記ポッテング材を被着すると共に、リチウム電池、テストスイッチは端子部を覆うように上記ポッテング材を被着」することは、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものである。
よって、相違点2に係る補正後第1発明の発明特定事項は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものである。

ウ 相違点3について
「2(3)周知例 カ」の項で述べたように、「防湿ポッテングした電子回路部のプリント配線板を防湿材に浸して防湿材をコーテングして成る」ことは周知技術である。
また、引用例発明のプリント基板に、プリント基板の一般的保護技術を適用することになんら阻害要因は見いだせない。

したがって、引用例発明のプリント基板107に、プリント基板の一般的保護技術である上記刊行物3、4記載の周知技術を採用し、補正後第1発明のごとく、「防湿ポッテングした電子回路部のプリント配線板を防湿材に浸して防湿材をコーテング」することは、当業者が容易になし得たものである。
よって、相違点3に係る補正後第1発明の発明特定事項は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものである。

そして、補正後第1発明の奏する効果は、引用例1の記載、及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別なものとはいえない。

(5)むすび
以上のとおり、補正後第1発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成18年8月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成18年6月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は次のとおりである。

「プリント配線板にマイコンチップ、水晶振動子、リチウム電池、テストスイッチを搭載して形成した電子回路部を有するガスメーターにおいて、プリント配線板の表面及び/または裏面の部品を封止するように耐湿性のあるポッテング材を被着して防湿ポッテングするものであって、上記マイコンチップ及び水晶振動子は全体を覆うように上記ポッテング材を被着すると共に、リチウム電池、テストスイッチは端子部を覆うように上記ポッテング材を被着することを特徴とするガスメーター。」

第4 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、及び、その記載事項は、前記「2(2)引用例」に記載したとおりである。

第5 対比
本願第1発明と引用例発明とを対比する。
1 引用例発明の「プリント基板107」は、本願第1発明の「プリント配線板」に相当し、以下同様に、「マイクロコンピュータ106」、「リチウム電池108」、「装着されて構成された」、「制御回路」、「備えた」は、それぞれ、本願第1発明の「マイコンチップ」、「リチウム電池」、「搭載して形成した」、「電子回路部」、「有する」に相当する。
2 引用発明の対象である「ガスメータと一体的に構成されるガス遮断装置」は、ガスメータの一構成要素ともいえるから、本願第1発明の対象である「ガスメーター」に相当する。

したがって、本願第1発明と引用例発明の両者は、次の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
「プリント配線板にマイコンチップ、リチウム電池を搭載して形成した電子回路部を有するガスメーター。」

【相違点】
相違点A:電子回路部の形成について、本願第1発明では、プリント配線板にマイコンチップ、リチウム電池、水晶振動子、テストスイッチを搭載して形成しているのに対して、引用例発明では、プリント配線板にマイコンチップ、リチウム電池を搭載して形成しているものの、水晶振動子、テストスイッチの搭載については明らかではない点。

相違点B:本願第1発明では、プリント配線板の表面及び/または裏面の部品を封止するように耐湿性のあるポッテング材を被着して防湿ポッテングするものであって、マイコンチップ及び水晶振動子は全体を覆うように上記ポッテング材を被着すると共に、リチウム電池、テストスイッチは端子部を覆うように上記ポッテング材を被着しているのに対して、引用例発明では、そのように限定されていない点。

第6 判断
相違点A、相違点Bは、前記「2(3)対比」に記載した相違点1、相違点2であるから、相違点A、相違点Bについての判断は、前記「2(4)判断」に記載した相違点1および2についての判断と同じである。
また、本願第1発明の奏する効果は、引用例1の記載及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別なものとはいえない。

したがって、本願第1発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願第1発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願第1発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2、3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-08 
結審通知日 2008-09-09 
審決日 2008-09-29 
出願番号 特願平10-237100
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01F)
P 1 8・ 121- Z (G01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 正治  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 杉野 裕幸
岡田 卓弥
発明の名称 ガスメーター  
代理人 森 厚夫  
代理人 西川 惠清  

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