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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1188138
審判番号 不服2006-8288  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-27 
確定日 2008-11-21 
事件の表示 特願2002-152260「成形機の稼働状況表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月2日出願公開,特開2003-340866〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は,平成14年5月27日の特許出願であって,平成17年12月22日付けで拒絶理由が通知され,平成18年2月23日付けで意見書及び手続補正書が提出され,同年3月24日付けで拒絶査定がされたものであるところ,同年4月27日に審判が請求され(同年6月6日付けで方式補正された。),同年5月26日付けで手続補正書が提出され,同年8月14日付けで前置報告がされ,その後,当審において平成20年5月19日付けで審尋がされ,同年7月28日付けで回答書が提出されたものである。

II.平成18年5月26日付け手続補正書によってした手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成18年5月26日付け手続補正書によってした手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成18年5月26日付け手続補正書によってした手続補正(以下,「審判時補正」という。)は,明細書の特許請求の範囲を以下のとおり補正する補正事項1を含むものである。
「【請求項1】複数台の成形機を管理する複数台管理システムにおける管理装置に備えられたディスプレイ装置の画面により各成形機の稼働状況を表示する表示方法において,
前記ディスプレイ装置は,前記複数台の成形機より受信したそれぞれのショット数を,画面分割形式にてすべての号機について一括して表示する運転状況画面を表示可能であり,該運転状況画面では分割表示されている各号機の分割画面内にそれぞれ,他の号機との識別を容易にするための任意に変更可能なアイコン画像と前記ショット数とともに表示するようにしたことを特徴とする成形機の稼働状況表示方法。
【請求項2】 請求項1に記載の稼働状況表示方法において,前記アイコン画像は,対応する号機の成形機の画像,成形されている成形品の画像,対応する号機の担当者の顔画像等であって,あらかじめ管理装置を通して入力,保存されているものであることを特徴とする成形機の稼働状況表示方法。
【請求項3】 請求項1あるいは2に記載の稼働状況表示方法において,前記分割画面には前記アイコン画像の他に成形機情報が表示されることを特徴とする成形機の稼働状況表示方法。
【請求項4】請求項1?3のいずれかに記載の稼動状況表示方法において,前記ディスプレイ装置では前記運転状況画面を表示可能であって,しかも,分割表示されている各号機の特定箇所をクリックすることで該当する号機のみの稼働状況を詳細に表す画面を,前記複数種類の画面における他の画面として表示可能にされていることを特徴とする成形機の稼働状況表示方法。
【請求項5】請求項1?4のいずれかに記載の稼動状況表示方法において,前記運転状況画面には,16台以上30台以下の成形機の運転状況が同時に表示可能とされることを特徴とする成形機の稼働状況表示方法。
【請求項6】請求項1?5のいずれかに記載の稼動状況表示方法において,前記運転状況画面には,横方向に6台分の成形機の運転状況が同時に表示可能とされることを特徴とする成形機の稼働状況表示方法。
【請求項7】請求項1?6のいずれかに記載の稼動状況表示方法において,前記運転状況画面には,縦方向に5台分の成形機の運転状況が同時に表示可能とされることを特徴とする成形機の稼働状況表示方法。
【請求項8】請求項1?5のいずれかに記載の稼動状況表示方法において,前記運転状況画面には,横方向,縦方向にそれぞれ少なくとも4台分の成形機の運転状況が同時に表示可能とされることを特徴とする成形機の稼働状況表示方法。」

2.新規事項の追加の有無の検討
補正事項1により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項5ないし8に係る発明は,本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下,「当初明細書等」という。)に記載されたものではない。
すなわち,請求項5に係る発明は,「16台以上30台以下の成形機の運転状況」が,請求項6に係る発明は,「横方向に6台分の成形機の運転状況」が,請求項7に係る発明は,「縦方向に5台分の成形機の運転状況」が,そして,請求項8に係る発明は,「横方向,縦方向にそれぞれ少なくとも4台分の成形機の運転状況」が,運転状況画面に同時に表示されることを発明を特定するために必要な事項(以下,「発明特定事項」という。)に備えるものである。
しかしながら,当初明細書等には,運転状況画面に同時に表示する“台数”又は“成形機の数”に関しては,「複数台」(請求項1,段落【0001】,【0006】等)又は「多数台」(図面の簡単な説明の【図1】の説明」)という記載があり,また,具体的な態様としては,「1号機?30号機」を同時に表示すること(段落【0012】,【図2】,【図7】)が記載されているが,「16台以上」,「横方向に6台分」,「縦方向に5台分」,及び「横方向,縦方向にそれぞれ少なくとも4台分」という特定の台数については記載がない。
したがって,補正事項1は,当初明細書等に記載されていない事項を明細書の特許請求の範囲に記載するものであるから,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
よって,補正事項1を含む審判時補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

なお,請求項5ないし8は,審判時補正によっては直接字句の変更がないものであるが,例えば,請求項5は,請求項1を引用するから,請求項1の補正によって,
「複数台の成形機を管理する複数台管理システムにおける管理装置に備えられたディスプレイ装置の画面により各成形機の稼働状況を表示する表示方法において,
前記ディスプレイ装置は,前記複数台の成形機より受信したそれぞれのショット数を,画面分割形式にてすべての号機について一括して表示する運転状況画面を表示可能であり,該運転状況画面では分割表示されている各号機の分割画面にそれぞれ,他の号機との識別を容易にするための任意に変更可能なアイコン画像と前記ショット数とを表示するようにしたものであって,
前記運転状況画面には,16台以上30台以下の成形機の運転状況が同時に表示可能とされることを特徴とする成形機の稼働状況表示方法。」を,
「複数台の成形機を管理する複数台管理システムにおける管理装置に備えられたディスプレイ装置の画面により各成形機の稼働状況を表示する表示方法において,
前記ディスプレイ装置は,前記複数台の成形機より受信したそれぞれのショット数を,画面分割形式にてすべての号機について一括して表示する運転状況画面を表示可能であり,該運転状況画面では分割表示されている各号機の分割画面内にそれぞれ,他の号機との識別を容易にするための任意に変更可能なアイコン画像と前記ショット数とともに表示するようにしたものであって,
前記運転状況画面には,16台以上30台以下の成形機の運転状況が同時に表示可能とされることを特徴とする成形機の稼働状況表示方法。」(以下,「新請求項5-1」という。)に補正されたといえる。
そして,新請求項5-1の発明は,先に述べたとおり,当初明細書等に記載されたものとは認められないから,新請求項5-1とすることを含む審判時補正は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

3.補正の目的についての検討
審判時補正によって,請求項1は,
「複数台の成形機を管理する複数台管理システムにおける管理装置に備えられたディスプレイ装置の画面により各成形機の稼働状況を表示する表示方法において,
前記ディスプレイ装置は,前記複数台の成形機より受信したそれぞれのショット数を,画面分割形式にてすべての号機について一括して表示する運転状況画面を表示可能であり,該運転状況画面では分割表示されている各号機の分割画面にそれぞれ,他の号機との識別を容易にするための任意に変更可能なアイコン画像と前記ショット数とを表示するようにしたことを特徴とする成形機の稼働状況表示方法。」から,
「複数台の成形機を管理する複数台管理システムにおける管理装置に備えられたディスプレイ装置の画面により各成形機の稼働状況を表示する表示方法において,
前記ディスプレイ装置は,前記複数台の成形機より受信したそれぞれのショット数を,画面分割形式にてすべての号機について一括して表示する運転状況画面を表示可能であり,該運転状況画面では分割表示されている各号機の分割画面内にそれぞれ,他の号機との識別を容易にするための任意に変更可能なアイコン画像と前記ショット数とともに表示するようにしたことを特徴とする成形機の稼働状況表示方法。」に補正された。
この補正の結果,補正前は,「アイコン画像と前記ショット数とを表示する」,すなわち,「アイコン画像」と「ショット数」の双方を表示することが字句上明確であったのが,補正後の,「アイコン画像と前記ショット数とともに表示する」との記載では,目的語を表す助詞「を」が削除された結果,何を表示するのかが明確でないものとなった。
そして,表示の対象を字句上明確でないものとする審判時補正は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものということはできないし,請求項の削除,いわゆる請求項の限定的減縮又は誤記の訂正のいずれかを目的とするものであるということもできないから,特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。

4.まとめ
以上のとおりであるから,審判時補正は,特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するものであるので,第159条第1項において読み替えて準用する第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

III.本願発明
II.で述べたとおり,審判時補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)は,平成18年2月23日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されるとおりの以下の事項を発明特定事項とするものと認める。
「複数台の成形機を管理する複数台管理システムにおける管理装置に備えられたディスプレイ装置の画面により各成形機の稼働状況を表示する表示方法において,
前記ディスプレイ装置は,前記複数台の成形機より受信したそれぞれのショット数を,画面分割形式にてすべての号機について一括して表示する運転状況画面を表示可能であり,該運転状況画面では分割表示されている各号機の分割画面にそれぞれ,他の号機との識別を容易にするための任意に変更可能なアイコン画像と前記ショット数とを表示するようにしたことを特徴とする成形機の稼働状況表示方法。」

IV.原査定の妥当性についての検討
1.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の理由の概要は,平成18年3月24日付けの拒絶査定及び平成17年12月22日付けの拒絶理由通知によれば,本願発明1は,以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,これについては特許を受けることができない,というにある。
引用文献1: 特開平10-143232号公報
引用文献2: 特開平4-247921号公報
引用文献3: 特開2000-238105号公報

2.引用文献の記載
2-1.引用文献1には,以下の記載がある。
ア: 「【請求項1】数値制御工作機械を制御する数値制御装置と,
この数値制御装置の各々と通信用インタフェースを介して通信回線で接続されるとともに,前記通信回線を介して受信される各前記数値制御工作機械に関する情報を処理する機械状況管理装置と,
この機械状況管理装置に設けられ処理された前記情報を表示する表示手段とからなる数値制御工作機械の機械管理システムであって,
前記表示手段の表示画面には,複数のアイコンが整列して表示されるとともに,各前記アイコンに対応して登録された数値制御工作機械が各アイコンごとに表示され,かつ,前記アイコンに表示された所定の数値制御工作機械の各種情報を選択するためのボタン部が設けられていること,
を特徴とする数値制御工作機械の機械管理システム。
【請求項2】 前記アイコンには,アイコンごとに登録された前記数値制御工作機械が,その特徴を示す図形として表示されること,
を特徴とする請求項1に記載の数値制御工作機械の機械管理システム。」(特許請求の範囲の請求項1,2)
イ: 「従来は,NC工作機械に発生した異常は,NC工作機械ごとに設けられた表示ランプの点灯状況によりオペレータに知らせるようにしていた。そのため,異常の発見が遅れて長時間にわたりNC工作機械の稼働が停止し,NC工作機械の稼働率を低下させる原因になっていた。
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので,NC装置と通信回線で接続されたサーバー側のディスプレイの表示画面を見るだけで各NC工作機械の機械状況を知ることができ,かつ,簡単な操作で前記NC工作機械に関する詳細な情報を入手できるNC工作機械の機械管理システムを提供しようとするものである。」(段落【0003】,【0004】)
ウ: 「[表示内容の説明]次に,サーバー1側のカラー表示が可能なディスプレイ7の表示画面20に表示されている「稼働状況管理」画面の内容について説明する。図1はディスプレイ7に表示される表示画面20を示したものである。図示するように,ディスプレイ7(図5参照)には複数(この実施形態では3行4列の合計12個)のアイコン(ファイル名,コマンド名等を文字でなく象徴的な図柄で図面状に表したもの)25_(1)?25_(12)が表示され,各アイコン25_(1)?25_(12)がパソコンNC装置N_(1),N_(2)・・・N_(n)に制御されるNC工作機械M_(1),M_(2)・・・ごとに割り付けられている(一部のアイコンについてはNC工作機械の図示を省略している)。従って,この実施形態では,表示画面20の一画面に最大12台のNC工作機械M_(1),M_(2)・・・を表示することができるようになっている。勿論,表示画面20をスクロールまたは頁めくりできるようにすることにより,さらに多台数のNC工作機械を表示画面20にアイコン化して表示することができるようになる。」(段落【0007】)
エ: 「表示画面20の最上段にはタイトルバー欄21が設定され,選択された表示画面の名称(タイトル)が表示されるようになっている。図1では,アプリケーションソフト「機械状況管理」(機械状況管理プログラム10a)を実行し,「稼働状況管理」画面を表示しているので,タイトルバー欄21には「稼働状況管理」と表示されている。なお,タイトルバー欄21の右端に設けられたボタン部21a,21bは,表示画面20の大きさを変えたり,表示画面20を閉じたりするためのものである。」(段落【0008】)
オ: 「各アイコン25_(1),25_(2)・・には,NC工作機械M_(1),M_(2)・・の種類をオペレータが肉眼で一目で確認できるように,各NC工作機械M_(1),M_(2)・・の外観形状を概略で示す図である図形(写真,概略形状他)で表示されている。この図形データの入力は,各NC工作機械M_(1),M_(2)・・のカタログの外観図等をイメージスキャナにより読み取り,ビットマップデータとして入力するものとしてもよいし,CAD/CAM装置から図形データを直接入力するものとしてもよい。また,図形作成のアプリケーションソフトを使って作成された図形データを入力するようにしてもよい。
図2はこの実施形態におけるアイコン25_(1)の拡大図である。以下,図2に従ってアイコン25_(1),25_(2)・・の説明を行う。なお,他のアイコン25_(2)?25_(12)についても変わりがないので,他のアイコン25_(2)?25_(12)については詳細な説明は省略する。アイコン25_(1)の上段26には,図形で示されたNC工作機械M_(1)の名称が表示されている。同じ機種のNC工作機械が複数台ある場合には,機械名の後ろに「1,2・・・」または「A,B,・・」のような番号や符号を付すことにより,NC工作機械を特定できるようにすればよい。また,符号26aはボタン部であり,マウスの操作でこの位置にカーソルを合わせてクリックすることにより,NC工作機械の選択を行うことができる。選択されたNC工作機械は機械名が明るい表示(例えば水色)で表示される。そして,その下段には,NC工作機械M1 の稼働状況を表示する稼働状況表示欄27であり,ライト欄27_(1),27_(2),27_(3)が配置されている。ライト欄27_(1),27_(2),27_(3)は,NC工作機械M_(1)の稼働状況を色別に表示するもので,ライト欄27_(1)はNC工作機械M_(1)の運転の「準備状態」を表示するもの,ライト欄27_(2)はNC工作機械M_(1)の「加工状態」を表示するもの,ライト欄27_(3)はNC工作機械M_(1)の「アラーム状態」を表示するものである。」(段落【0011】,【0012】)
カ: 「本発明の好適な実施形態を説明してきたが,本発明は上記の実施形態により何ら限定されるものではない。例えば,上記の説明では表示画面20には12個のアイコン25_(1),25_(2)・・,25_(12)が表示されるものとして説明したが,アイコンの数はこれに限定されるものではない。また,メニューバー欄22やツールバー欄23に表示される種類や数は上記の実施形態に限定されるものではない。また,ディスプレイ7はカラーディスプレイであるとして説明したが,モノクロのディスプレイディスプレイであってもよい。この場合は,白黒反転や明暗の変化による表示をすればよい。」(段落【0016】)
キ: 「【図1】本発明の一実施形態にかかり,ディスプレイに表示される表示画面を示したものである。
【図2】図1の表示画面に表示されたアイコンの拡大詳細図である。

【符号の説明】
M_(1),M_(2) ・・ 工作機械

23_(1)?23_(5) ボタン部
25_(1)?25_(12) アイコン」(【図面の簡単な説明】)
ク: 図1及び図2





2-2.引用文献2には,以下の記載がある。
ケ: 「複数台の射出成形機の生産管理を行うシステムであって,射出成形機に個別に取り付けられて各成形機のデータを読み取る端末装置と,これら端末装置と接続されるホストコンピュータを有し,各端末装置から入力される射出成形機のデータに基づいてホストコンピュータにより必要な生産管理の情報処理を行うと共に,ホストコンピュータで処理された生産管理情報を各端末装置にダウンロードして表示することを特徴とする射出成形生産管理システム。」(特許請求の範囲)
コ: 「図1は本発明に係る射出成形生産管理システムのシステム構成例を示す。図において,1は管理部門に設置されるホストコンピュータ,(2A?2N)は成形現場に設置される端末装置(現場端末;LIT)を示す。このシステムでは,ホストコンピュータ1には処理装置と記憶装置と入,出力装置(キーボード1a,デイスプレイ1b及びプリンタ1c)を有する市販のパソコンシステムが使用できる。一方,各端末装置(2A?2N)は,キーボード2aとデイスプレイ2bとを有する専用の入出力装置により構成されている。
端末装置(2A?2N)は,成形現場に設置されている複数台(実施例では最大8台)の射出成形機(3A?3N)に個別に取り付けられて,後述のように,射出成形機(3A?3N)で発生するショット信号(金型の開閉信号)を取り込んで各成形機から稼動,非稼動等のデータを読み取っている。
これらの端末装置(2A?2N)は,集中情報監視装置(CICU)4を介してホストコンピュータ1と接続され,上記ショット信号により読み取られる射出成形機(3A?3N)のデータが各端末装置(2A?2N)からホストコンピュータ1に逐次入力される。」(段落【0008】ないし【0010】)
サ: 「各端末装置(2A?2N)で読み取られるショット信号sは,勿論,ホストコンピュータ1により生産管理を行う上で最少限必要なロット生産数の実績管理にも使用される。
なお,射出成形機(3A?3N)に個別に取り付けられる端末装置(2A?2N)からは,上記ショット信号sを取り込んで読み取られる運転データと共に,必要な都度,現場作業者がキーボード2aを操作して,非稼動理由や目視検査によって判別される製品不良個数等,その他の必要な成形機データがホストコンピュータ1に入力されることになる。
この生産管理システムでは,各端末装置(2A?2N)から入力される射出成形機(3A?3N)のデータに基づいて,ホストコンピュータ1は,射出成形機(3A?3N)の群管理に必要な稼動監視業務,在庫管理業務の各機能を実行し,さらに受注入力を条件にスケジュール業務の機能を行うことができる。これらの機能は,通常,射出成形の生産管理を行う上で必要とされる業務内容をカバーするものである。」(段落【0013】ないし【0015】)
シ: 「図5?図8には,ホストコンピュータ1が行う上記基本機能のディスプレイ1b上での出力表示例が示されている。図5は稼動監視業務のうちの一つである現在稼動状況の表示例を示し,成形機の運転状態がリアルタイムに表示され,品番,予定数等のデータも同時に見ることができる。」(段落【0017】)
ス: 「【図1】実施例を示すシステム構成図である。

【図5】ホストコンピュータの出力表示例を示す画像図である。」(【図面の簡単な説明】)
セ: 図面の図1及び図5





3.引用文献1に記載された発明及び本願発明との対比
3-1.引用文献1に記載された発明
引用文献1には,摘示アの特に請求項2の記載からみて,
「数値制御工作機械を制御する数値制御装置と,
この数値制御装置の各々と通信用インタフェースを介して通信回線で接続されるとともに,前記通信回線を介して受信される各前記数値制御工作機械に関する情報を処理する機械状況管理装置と,
この機械状況管理装置に設けられ処理された前記情報を表示する表示手段とからなる数値制御工作機械の機械管理システムであって,
前記表示手段の表示画面には,複数のアイコンが整列して表示されるとともに,
各前記アイコンに対応して登録された数値制御工作機械が,その特徴を示す図形として,各アイコンごとに表示され,
かつ,前記アイコンに表示された所定の数値制御工作機械の各種情報を選択するためのボタン部が設けられている,
数値制御工作機械の機械管理システム。」の発明が記載されており,また,該システムにおいては,表示に関する事項が記載されていることから,「数値制御工作機械の機械管理システムにおける表示方法」に関する発明が記載されているものと認められる。
さらに,該数値制御工作機械の機械管理システムが,複数台の数値制御工作機械を管理するシステムであることは,自明であり,
また,摘示ウの「サーバー1側のカラー表示が可能なディスプレイ7の表示画面20に表示されている「稼働状況管理」画面の内容について説明する。図1はディスプレイ7に表示される表示画面20を示したものである。」及び摘示エの「図1では,アプリケーションソフト「機械状況管理」(機械状況管理プログラム10a)を実行し,「稼働状況管理」画面を表示しているので,タイトルバー欄21には「稼働状況管理」と表示されている。」から,表示手段の表示画面には,「稼働状況」が表示されているものと認められ,
摘示オの「各アイコン25_(1),25_(2)・・には,NC工作機械M_(1),M_(2)・・の種類をオペレータが肉眼で一目で確認できるように,各NC工作機械M_(1),M_(2)・・の外観形状を概略で示す図である図形(写真,概略形状他)で表示されている。」から,「特徴を示す図形」としては,「数値制御機械の種類をオペレータが肉眼で一目で確認できるように,数値制御機械の写真,概略形状等」があると認められる。
結局のところ,引用文献1には,
「複数台の数値制御工作機械を制御する数値制御装置と,
この数値制御装置の各々と通信用インタフェースを介して通信回線で接続されるとともに,前記通信回線を介して受信される各前記数値制御工作機械に関する情報を処理する機械状況管理装置と,
この機械状況管理装置に設けられ処理された前記情報を表示する表示手段とからなる数値制御工作機械の機械管理システムにおける表示方法であって,
前記表示手段の稼働状況を表示するディスプレイの表示画面には,複数のアイコンが整列して表示されるとともに,
各前記アイコンに対応して登録された数値制御工作機械が,数値制御機械の種類をオペレータが肉眼で一目で確認できるように,数値制御機械の写真,概略形状等その特徴を示す図形として,各アイコンごとに表示され,
かつ,前記アイコンに表示された所定の数値制御工作機械の各種情報を選択するためのボタン部が設けられている,
数値制御工作機械の機械管理システムにおける表示方法」の発明(以下,「引例1発明」という。)が記載されていると認められる。

3-2.本願発明と引例1発明との対比
本願発明(以下,「前者」という。)と引例1発明(以下,「後者」という。)とを対比すると,
まず,後者における「成形機」と,前者における「数値制御工作機械」とが,いずれも「機械」に属するものであることは明らかであるから,両者は,「複数台の機械を管理する複数台管理システムにおける管理装置に備えられたディスプレイ装置の画面により各機械の稼働状況を表示する表示方法」に関するものであると認められ,
次に,後者における「稼働状況を表示するディスプレイの表示画面」は,前者における「運転状況画面」に相当するものと認められ,
後者における「アイコン」に表示される「(数値制御)機械の写真,概略形状等その特徴を示す図形」は,前者における「アイコン画像」に相当し,
後者における「複数のアイコンが整列して表示」は,前者における「画面分割形式にてすべての号機について一括して表示」に相当し,
後者における「機械の種類をオペレータが肉眼で一目で確認できる」は,前者における「他の号機との識別を容易にする」に相当すると認められ,
さらに,後者における「通信回線を介して受信される各前記数値制御工作機械に関する情報」と,前者における「複数台の成形機より受信したそれぞれのショット数」とは,いずれも「受信した機械に関する情報」である点で一致すると認められる。
してみると,両者は,「複数台の機械を管理する複数台管理システムにおける管理装置に備えられたディスプレイ装置の画面により各機械の稼働状況を表示する表示方法において,
前記ディスプレイ装置は,前記複数台の機械より受信した機械に関する情報を,画面分割形式にてすべての号機について一括して表示する運転状況画面を表示可能であり,該運転状況画面では分割表示されている各号機の分割画面にそれぞれ,他の号機との識別を容易にするためのアイコン画像と前記機械に関する情報とを表示するようにしたことを特徴とする機械の稼働状況表示方法。」において一致し,
「機械」が,前者においては「成形機」であるのに対して,後者においては「数値制御工作機械」である点(相違点1),
「機械に関する情報」が,前者においては「ショット数」であるのに対して,後者においては「数値制御工作機械に関する情報」であり,具体的には,摘示オの「NC工作機械M_(1)の稼働状況を表示する稼働状況表示欄27であり,ライト欄27_(1),27_(2),27_(3)が配置されている。…ライト欄27_(1)はNC工作機械M_(1)の運転の「準備状態」を表示するもの,ライト欄27_(2)はNC工作機械M_(1)の「加工状態」を表示するもの,ライト欄27_(3)はNC工作機械M_(1)の「アラーム状態」を表示するものである。」のとおり,「準備状態」,「加工状態」及び「アラーム状態」である点(相違点2),及び,
「アイコン画像」が,前者においては「任意に変更可能」であるのに対して,後者においては,「(数値制御)機械の写真,概略形状等その特徴を示す図形」が「任意に変更可能」であるかどうかが不明である点(相違点3),において相違する。

4.相違点についての検討
4-1.相違点1についての検討
引用文献2には,摘示ケの「複数台の射出成形機の生産管理を行うシステムであって,射出成形機に個別に取り付けられて各成形機のデータを読み取る端末装置と,これら端末装置と接続されるホストコンピュータを有…する射出成形生産管理システム。」が記載されており,
更に,摘示コから,ホストコンピュータには,ディスプレイ1bが備えられ,また,端末装置は,集中情報監視装置(CICU)を介してホストコンピュータと接続され,ショット信号により読み取られる射出成形機のデータが各端末装置からホストコンピュータに逐次入力されることが記載され,
摘示サから,ホストコンピュータは,射出成形機の群管理に必要な稼動監視業務等の機能を実行することが記載されている。
また,引用文献2には,摘示シ及び摘示スの図5の記載から,ホストコンピュータのディスプレイ1bの表示例として,群管理の対象である射出成形機001?008のそれぞれについて,成形機に類した画像とともに,現在稼働状況,品番,予定数,実績数及び不良数のデータを表示する表示方法が記載されているものと認められる。
してみれば,引用文献2には,複数台の射出成形機を管理する複数台管理システムにおけるホストコンピュータに備えられたディスプレイ装置の画面により各成形機の稼働状況を表示する表示方法であって,
前記ディスプレイ装置は,前記複数台の射出成形機から逐次入力されたそれぞれの現在稼働状況,品番,予定数,実績数及び不良数のデータを,すべての射出成形機について一括して表示する画面を表示可能であり,該画面では表示されている各射出成形機に類した画像と前記それぞれの現在稼働状況,品番,予定数,実績数及び不良数のデータとを表示するようにした成形機の稼働状況表示方法の発明(以下,「引例2発明」という。)が記載されているものと認められる。
引例1発明と引例2発明は,いずれも「複数台の機械を管理する複数台管理システムにおける管理装置に備えられたディスプレイ装置の画面により各機械の稼働状況を表示する表示方法」に関するものである点で軌を一にし,更に,すべての機械を一括して表示する点,及び,機械に関わる画像とともに受信した機械に関する情報を表示する点でも共通するから,引例1発明の表示方法の適用対象として,「複数台の数値制御工作機械」を,同じく「機械」の一種である「複数台の成形機」に転換することは当業者にとって容易である。
したがって,相違点1は,当業者が容易に推考することができた程度のものである。

4-2.相違点2についての検討
4-1.で述べたとおり,相違点1は,当業者が容易に推考することができた程度のものであるところ,表示方法の適用対象を,「複数台の数値制御工作機械」から「複数台の成形機」に転換するとき,機械に関わる画像とともに表示する受信した機械に関する情報を,当該表示方法の適用対象に応じて選択することは当業者が当然行うべきことである。
そして,「ショット数」は,「複数台の成形機」,特に,具体例において採用される「成形機」である「射出成形機」を管理する際に,必須不可欠の情報にほかならず,引用2発明においても,「実績数」として,機械に関わる画像とともに表示されているものである。
してみれば,相違点2は,当業者が容易に推考することができた程度のものである相違点1に関わる表示方法の適用対象の転換に付随して何らの困難なく採用される技術的事項である。
したがって,相違点2は,結果として,相違点1と同じく,当業者が容易に推考することができた程度のものである。

4-3.相違点3についての検討
引用文献1には,摘示オに「各アイコン25_(1),25_(2)・・には,NC工作機械M_(1),M_(2)・・の種類をオペレータが肉眼で一目で確認できるように,各NC工作機械M_(1),M_(2)・・の外観形状を概略で示す図である図形(写真,概略形状他)で表示されている。この図形データの入力は,各NC工作機械M_(1),M_(2)・・のカタログの外観図等をイメージスキャナにより読み取り,ビットマップデータとして入力するものとしてもよいし,CAD/CAM装置から図形データを直接入力するものとしてもよい。また,図形作成のアプリケーションソフトを使って作成された図形データを入力するようにしてもよい。」と記載されている。
すなわち,「NC工作機械M_(1),M_(2)・・の外観形状を概略で示す図である図形(写真,概略形状他)」は,イメージスキャナにより読み取ったビットマップデータであれ,CAD/CAM装置からの図形データであれ,図形作成のアプリケーションソフトを使って作成された図形データであれ,いずれにしても,写真なり,概略形状なりの所与のデータを選択し,人為的に入力したものであって,システムとして自動的に表示されるようなものではない。
してみれば,引例1発明において,該写真なり,概略形状なりの所与のデータとして,機械ごとに複数のデータをあらかじめ用意しておいて,その一つを選択することは当業者にとって容易であり,また,いったん選択して表示したデータをあらかじめ用意された他のデータに変更するようにすることは,データの表示目的やメモリーの能力等を考慮して,当業者が適宜設計することができた程度のことであるから,「(数値制御)機械の写真,概略形状等その特徴を示す図形」を「任意に変更可能」とすることについては格別の阻害要因も見当たらない。
したがって,相違点3は,当業者が容易に推考することができた程度のものである。

5.まとめ
そして,本願発明において,相違点1ないし3を発明特定事項に備えることにより奏される,「より生産現場に近い状態を表示することが可能となり,号機別の稼働状況を短時間で把握し易くなる」(本願明細書段落【0029】)という効果は,当業者であれば容易に予測することができた程度のものと認められる。
よって,本願発明は,引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,これについては特許を受けることができない。

IV.むすび
以上のとおりであるから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶を免れないから,原査定はその結論において妥当なものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-10 
結審通知日 2008-09-16 
審決日 2008-10-01 
出願番号 特願2002-152260(P2002-152260)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
P 1 8・ 561- Z (B29C)
P 1 8・ 57- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大村 博一須藤 康洋杉江 渉  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 亀ヶ谷 明久
野村 康秀
発明の名称 成形機の稼働状況表示方法  
代理人 羽片 和夫  

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