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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1188167
審判番号 不服2007-26063  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-24 
確定日 2008-11-25 
事件の表示 特願2005-309068号「腰部ガードル」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月12日出願公開、特開2007- 90008号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年9月26日の特許出願であって、平成19年7月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年8月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年8月24日付で明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成19年8月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年8月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成19年8月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「腰部を緊縛する腰部ガードルであって、腹部と臀部の上部を包含して緊縛する腹帯部と、該腹帯部の大腿部に相当する位置に大腿部外側をカバーする左右一対の大腿部の保護帯を前記腹帯部と一体的に形成し、前記保護帯の下端に足を挿通する伸縮性を呈する素材で形成された環状の裾口を設けたことを特徴とする腰部ガードル。」(下線部は補正箇所を示す。)

本件補正は、請求項1に記載された発明特定事項である「環状の裾口」について、「伸縮性を呈する素材で形成された」と限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献の記載事項について
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-89864号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「伸縮性素材からなる本体を備え、本体は腰部に巻き付けられる腰部ベルトと、大腿部に巻き付けられる大腿部ベルトとからなり、腰部ベルトと大腿部ベルトは装着状態の大腿部の外側部において連結されており、腰部ベルト、大腿部ベルトはそれぞれ両端に面ファスナーを有し、、腰部ベルトと大腿部ベルトとの連結部分において・・・(中略)・・・股関節用サポーター。」(特許請求の範囲、【請求項1】)

b.「図1、図6は一方の大腿部にのみベルトを装着する型のサポーターであるが、図7に示す実施例は、両大腿部に装着するベルトを有する例を示す。即ち、本体71は伸縮性素材からなり、腰部ベルト72と、左大腿部ベルト73と、右大腿部ベルト74と、腰部ベルト72と左大腿部ベルト73とを連結する連結部分75と、腰部ベルト72と右大腿部ベルト74とを連結する連結部分76とを備え、正中から左右対象に形成されている。腰部ベルト72は腰部に巻き付けられるだけの長さを有し、両端に面ファスナー77、78が取り付けられ、左大腿部ベルト73、右大腿部ベルト74は各大腿部の回りに巻き付けられるだけの長さを有し、両端にそれぞれ面ファスナー79、710、711、712が取り付けられている。腰部ベルト72からそれぞれ連結部分75、76を経て左大腿部ベルト73、右大腿部ベルト74に到る各領域に、・・・(後略)」(段落番号【0013】)

c.「【発明の効果】 本発明によれば、伸縮性素材からなる本体に重ねて、・・・(中略)・・・それらにより股関節に圧迫力を加えることにより、股関節に対する確実にして十分な圧迫支持力が得られ、・・・(中略)・・・しかもサポーター全体の重量は極めて軽く、フィット感も極めて良好で、体の動きも制限されないという顕著な効果を得ることができる。」(段落番号【0015】)

d.図5には、使用に当たり「腰部ベルト」が腹部と臀部の上部を包含するように腰部に巻き付けられて装着され、「腰部ベルト」と「大腿部ベルト」を連結する「連結部分」が大腿部の外側部に位置し、「連結部分」の下端に位置する「大腿部ベルト」が大腿部に巻き付けられてている様子が図示されている。

e.図7には、「腰部ベルト72」と「連結部分75」とが一体的に形成され、また、「腰部ベルト72」と「連結部分76」とが一体的に形成されている様子が図示されている。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「股関節に対する十分な圧迫支持力が得られる股関節用サポーターであって、本体71は、伸縮性素材からなり、腹部と臀部の上部を包含するように腰部に巻き付けられて使用される腰部ベルト72と、腰部ベルト72と一体的に形成される連結部分75と連結部分76を備え、連結部分75の下端に左大腿部ベルト73を設け、連結部分76の下端に右大腿部ベルト74を設け、股関節用サポーターは、使用に当たり、連結部分75と連結部分76が大腿部の外側部に位置し、左大腿部ベルト73と右大腿部ベルト74はそれぞれ左右の大腿部に巻き付けられる股関節用サポーター。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、後者の「腰部ベルト72」は前者の「腹帯部」に相当し、以下同様に、「大腿部の外側部」は「大腿部外側」に、「連結部分74」及び「連結部分75」は「左右一対の大腿部の保護帯」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「股関節用サポーター」は、「本体71」が「伸縮性素材」からなり、「腰部ベルト72」を「腰部に巻き付け」て使用するものであるから、「腰部」についても「十分な圧迫支持力が得られる」ことは明らかであるから、引用発明の「股関節用サポーター」は、「腰部を緊縛する腰部ガードル」であるといえる。
また、引用発明の「腰部ベルト72」は「伸縮性素材」からなり、「腹部と臀部の上部を包含するように腰部に巻き付けられて使用される」ものであるから、本願補正発明の「腹部と臀部の上部を包含して緊縛する腹帯部」であるといえる。
また、引用発明は、「腰部ベルト72」と「連結部分75」、及び、「腰部ベルト72」と「連結部分76」とが一体的に形成され、使用に際しては、「連結部分75と連結部分76が大腿部の外側部に位置」しているから、引用発明の「連結部分75」及び「連結部分76」は、本願補正発明の「腹帯部の大腿部に相当する位置に大腿部外側をカバーする左右一対の大腿部の保護帯を前記腹帯部と一体的に形成」しているものといえる。
また、引用発明の「連結部分75」と「連結部分76」の下端にある「左大腿部ベルト73」と「右大腿部ベルト74」も伸縮性素材からなる「本体71」を構成するものであるから、引用発明の「左大腿部ベルト73と右大腿部ベルト74はそれぞれ左右の大腿部に巻き付けられる」と本願補正発明の「保護帯の下端に足を挿通する伸縮性を呈する素材で形成された環状の裾口を設けた」とは、「保護帯の下端において使用時に左右の大腿部に止着される伸縮性を呈する素材で形成された左右の大腿部止着部材を設けた」という概念で共通している。

してみると、両者は「腰部を緊縛する腰部ガードルであって、腹部と臀部の上部を包含して緊縛する腹帯部と、該腹帯部の大腿部に相当する位置に大腿部外側をカバーする左右一対の大腿部の保護帯を前記腹帯部と一体的に形成し、保護帯の下端において使用時に左右の大腿部に止着される伸縮性を呈する素材で形成された左右の大腿部止着部材を設けた腰部ガードル。」の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明の左右の大腿部止着部材は、保護帯の下端に足を挿通する環状の裾口であるのに対し、引用発明の左右の大腿部止着部材は、左右の大腿部に巻き付けられる大腿部ベルト73と右大腿部ベルト74である点。

(4)当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
人体の腰部に装着されるバンド状の部材に接続され、足を挿通する環状の裾口は、例えば、特開平3-60655号公報(第2頁右上欄第10行?左下欄第10行参照)、実公昭52-14102号公報(明細書第2欄第6行?第34行参照)に示されるように周知であるから、これらの周知の事項を引用発明の左右の大腿部に巻き付けて足を保持する大腿部ベルト73と右大腿部ベルト74に適用し、この左右の大腿部ベルトを足を挿通する環状の裾口に形成し、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願補正発明による効果も、引用発明及び上記周知の技術から当業者が容易に予測し得た程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は引用発明及び上記周知の技術から、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成19年6月4日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「腰部を緊縛する腰部ガードルであって、腹部と臀部の上部を包含して緊縛する腹帯部と、該腹帯部の大腿部に相当する位置に大腿部外側をカバーする左右一対の大腿部の保護帯を腹帯部と一体的に形成し、前記保護帯の下端に足を挿通する環状の裾口を設けたことを特徴とする腰部ガードル。」

(1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から「環状の裾口」についての限定事項である「伸縮性を呈する素材で形成された」を省いたものである。
そうすると、本願発明を包含し、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」及び「2.(4)」で検討したように、引用発明及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-19 
結審通知日 2008-03-25 
審決日 2008-04-07 
出願番号 特願2005-309068(P2005-309068)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61F)
P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 克夫  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 鏡 宣宏
仲村 靖
発明の名称 腰部ガードル  
代理人 花田 吉秋  

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