ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
---|---|
管理番号 | 1188210 |
審判番号 | 不服2006-6355 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-04-06 |
確定日 | 2008-11-20 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 34870号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月29日出願公開、特開2000-233058〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年2月12日の出願であって、平成17年9月9日付で拒絶の理由が通知され、これに対し同年10月21日付けで手続補正がされ、平成18年3月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し同年4月6日に拒絶査定不服審判が請求された。 2.本願発明 本願の請求項1に記載された発明は、平成17年10月21日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「遊技に関連する図柄の変動表示が可能な可変表示手段を備えたパチンコ遊技機において、 遊技領域内に設けられた入賞装置への遊技球の入賞を検出する入賞球検出手段のうち少なくとも一つからの検出信号により異常状態か否かを判別する異常状態判別手段を備え、 該異常状態判別手段によって異常状態との判別がされたときは、異常発生報知ランプの点滅と特定音とのいずれかもしくは両方と、前記可変表示手段の変動表示を異常状態判別時における表示態様で停止して当該表示態様を継続する異常発生表示との組合せによって異常状態の発生を報知し、 前記異常状態判別手段によって異常状態との判別がされてから前記異常状態が解除されるまでの間、異常状態発生前の遊技状態は保持され、当該遊技状態が前記異常状態の解除によって復帰可能とし、 前記異常状態の解除後、前記可変表示手段において停止していた図柄が、異常状態発生前の変動表示に復帰することを特徴とするパチンコ遊技機。」(以下、「本願発明」という。) 3.引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された特開平11-441号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 ・記載事項1 「表示状態が変化可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に遊技者にとって有利な遊技状態に制御可能となる遊技機であって、 遊技機の遊技状態を制御する遊技制御手段と、 前記可変表示装置を表示制御する可変表示制御手段と、 前記遊技制御手段から前記可変表示制御手段に、前記可変表示装置の表示制御に関する情報を伝送する情報伝送手段とを含み、 前記遊技制御手段は、前記遊技機に異常が発生した場合にその旨を判定する異常判定手段を含み、 前記情報伝送手段は、前記異常判定手段が異常の発生した旨を判定した場合に、異常が発生した旨の情報を前記遊技制御手段から前記可変表示制御手段に伝送し、 前記可変表示制御手段は、前記異常が発生した旨の情報を受信した場合に、異常が発生した旨を前記可変表示装置により表示させる制御を行なうことを特徴とする、遊技機。」(【特許請求の範囲】【請求項1】) ・記載事項2 「前記遊技制御手段は、 前記異常判定手段が異常の発生した旨を判定した場合に、異常発生時点での前記可変表示装置の表示状態を特定可能な情報を格納する表示状態格納手段と、 前記遊技機の異常状態が復旧した場合に前記表示状態格納手段に格納されている情報に基づいて前記異常発生時点の前記可変表示装置の表示状態に復帰させる表示状態復帰手段とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の遊技機。」(【特許請求の範囲】【請求項2】) ・記載事項3 「前記遊技制御手段は、 前記遊技機の遊技状態の進行を管理するための遊技制御時間管理手段と、 前記可変表示装置の可変表示状態の進行を管理するための可変表示制御時間管理手段とを含み、 前記異常状態判定手段が異常の発生した旨を判定してから当該異常状態が復旧するまでの間、前記遊技制御時間管理手段と前記可変表示制御時間管理手段との時間管理動作を停止させ、前記異常発生からその復旧までの間、前記遊技機の遊技状態の進行と前記可変表示装置の可変表示状態の進行とを停止させたことを特徴とする、請求項2に記載の遊技機。」(【特許請求の範囲】【請求項3】) ・記載事項4 「本発明は、パチンコ遊技機やコイン遊技機あるいはスロットマシンなどで代表される遊技機に関する。」(段落【0001】) ・記載事項5 「また、この種の従来の遊技機においては、たとえば異常発生報知ランプ等を設けて遊技機に何らかの異常が発生した場合にその異常発生報知ランプを点灯または点滅表示させ、遊技者や遊技場の係員に異常が発生した旨の表示を行なうように構成されていた。」(段落【0004】) ・記載事項6 「遊技領域2には、複数種類の識別情報を可変表示可能な、液晶表示装置を用いた可変表示装置3が設けられている」(段落【0016】) ・記載事項7 「図13?図16および図19?図37は、図9に示した制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。」(段落【0081】) ・記載事項8 「続いてS5では、アラームフラグがセットされているか否かについての判断が行なわれる。アラームフラグとは、後述するS75、S61、S153の処理によってセットされるフラグであって、入賞個数検出器9や特定入賞玉検出器8に異常が発生したか否かを判定するものである。アラームフラグがセットされていない場合には制御はS6に進み、プロセス処理が実行された後S7に進む。アラームフラグがセットされている場合にはS6のプロセス処理は実行されず、直接S7に進む。」(段落【0083】) ・記載事項9 「図15は、S7に示した表示プロセス処理の内容を示すフローチャートである。まずS28で、表示プロセスフラグの1桁目(16進数)が1?7Hのいずれであるかについての判断が行なわれる。(中略)そして7Hである場合にはS35のエラーメッセージ表示処理が行なわれる。」(段落【0092】) ・記載事項10 「図19は、S9に示したスイッチ入力処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。まずS52により、I/Oポート85から、各種検出器の検出信号を入力する処理が行なわれる。次にS53により、10カウントスイッチ(入賞個数検出器)9がオンしているか否かについての判断が行なわれる。判断の答えがNOであれば処理はS54に進み、10カウントスイッチのONカウンタをクリアする処理が行なわれ、S55に進む。この10カウントスイッチのONカウンタは、後述するS58で1ずつ加算され、S59における入賞判定のタイミングか否かの判断に用いられるものである。S55では、アラームフラグBがセットされているか否かについての判断が行なわれる。アラームフラグがセットされている場合には処理がS56に進み、それ以外の場合には処理はS67に進む。アラームフラグBは、後述するS61に処理が進んだ場合にセットされるアラームフラグであって、10カウントスイッチが所定時間を越えて連続してON入力となっていることを示すフラグである。アラームフラグBがセットされる場合には、入賞個数検出器9(10カウントスイッチ)が断線あるいはショートしたり玉詰まりを起したりしている場合が考えられる。」(段落【0114】) ・記載事項11 「S61は何らかのエラーが発生したと判断された場合に行なわれる処理である。エラーが発生した場合には前述のように可変表示装置を利用してエラーの発生を知らせる画面を表示する必要がある。そのため、一時この表示プロセスフラグにエラー画面表示のための値をセットする必要がある。その場合、エラーが修復された場合には再びエラー発生前の状態から遊技機を動作させる必要があるために、エラー発生時の表示プロセスフラグの値を一時格納し、このように再び表示プロセスフラグにセットすることによりエラー発生前の表示画面を復元することができる。」(段落【0115】) ・記載事項12 「パチンコ玉が可変入賞球装置4に入賞して入賞個数検出器9によって検出された場合、入賞個数検出器9からは所定のパルス幅を有する検出パルスが導出され、このゲーム制御用マイクロコンピュータに与えられる。」(段落【0117】) ・記載事項13 「図20は、図13のS14において行なわれるLED・ランプデータセット処理を行なうためのサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。S91により、アラームフラグA、B、Cのいずれかがセットされているか否かの判断が行なわれ、セットされていた場合にはS93に進み、アラーム時のデータセットが行なわれるとともに、ソレノイド13をOFFにするためのデータがセットされる。このセットされたデータは図13のS15により出力される。アラーム時のデータとは、装飾ランプ18?22や装飾LED23などにアラーム時の状態を点灯または点滅表示するためのデータなどである。また、ソレノイド13をOFFにするデータがセットされて出力されるために、可変入賞球装置4の開閉板6が閉成されて遊技者にとって不利な第2の状態となる。」(段落【0130】) ・記載事項14 「図21は、図13のS12において行なわれる音データセット処理を行なうためのサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。まずS94により、アラームフラグA、B、Cのいずれかがセットされているか否かの判断が行なわれる。セットされていた場合にはS96に進み、セットされていたアラームフラグの種類に応じて、対応するアドレスのアラーム時の音データのセットが行なわれる。またセットされていない場合にはS95に進み、表示プロセスフラグの値に応じ、対応するアドレスの音データがセットされる。ここでセットされたデータが図13のS13により出力される。」(段落【0132】) ・記載事項15 「そして、前記異常状態判定手段が異常の発生した旨を判定してから当該異常状態が復旧するまでの間、前記遊技制御時間管理手段と前記可変表示制御時間管理手段との時間管理動作が停止される(S5によりYESの判断がなされた場合にS6が実行されず、かつ、表示プロセスフラグが07HとなるためにS35以外の表示プロセス処理が実行されなくなる)。」(段落【0205】) ・記載事項16 「請求項2に記載の本発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、遊技機に異常状態が発生してその異常状態が復旧した場合に、異常状態発生時点の可変表示装置の表示状態に復帰するために、その時点から可変表示制御を進行させることができ、遊技者が、異常発生時点の可変表示状態から引き続き可変表示を楽しむことができる。」(段落【0207】) ・記載事項17 「請求項3に記載の本発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加えて、遊技機に異常が発生すればその時点からその異常の復旧までの間、遊技機の遊技状態の進行と可変表示装置の可変表示状態の進行とが停止されるために、異常復旧した場合に、異常発生時点での遊技状態から遊技が進行してかつ異常発生時点での可変表示状態から可変表示制御が進行するために、遊技制御と可変表示制御とがちぐはぐになることがなく、両者異常発生時点の状態から歩調を合わせて再開することが可能となる。」(段落【0208】) 以上の記載事項1?17及び図1?37によれば、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。 「複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置3を備えたパチンコ遊技機において、 遊技領域2に設けられた可変入賞球装置4へのパチンコ玉の入賞を検出する入賞個数検出器9の検出パルスにより異常が発生したか否かを判定する異常判定手段を備え、 異常判定手段が異常の発生した旨を判定した場合に、装飾ランプ18?22や装飾LED23などにアラーム時の状態を点灯または点滅表示するようにし、アラーム時の音データが出力されるようにするとともに、可変表示装置を利用してエラーメッセージの表示を行うことで、異常の発生を報知し、 前記異常状態判定手段が異常の発生した旨を判定してから当該異常状態が復旧するまでの間、遊技機の遊技状態の進行と可変表示装置の可変表示状態の進行とが停止され、表示プロセスフラグが07HとなるためにS35以外の表示プロセス処理が実行されなくなり、 異常復旧した場合に、異常発生時点での遊技状態から遊技が進行してかつ異常発生時点での可変表示状態から可変表示制御が進行するパチンコ遊技機。」(以下、「引用発明」という。) 3.対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「複数種類の識別情報」、「可変表示可能な」、「可変入賞球装置4」、「パチンコ玉」、「入賞個数検出器9の検出パルス」、「異常判定手段」、「異常復旧」は、本願発明の「遊技に関連する図柄」、「変動表示が可能な」、「入賞装置」、「遊技球」、「入賞球検出手段のうち少なくとも一つからの検出信号」、「異常状態判別手段」、「異常状態の解除」に相当する。 そして、以下の(1)?(3)のことがいえる。 (1)引用発明は「装飾ランプ18?22や装飾LED23などにアラーム時の状態を点灯または点滅表示」しており、本願発明とは「ランプによる点滅」で異常発生を報知している点で共通している。また、引用発明の「アラーム時の音データ」は「特定音」ということができる。 (2)引用発明では、異常状態が発生中は「表示プロセスフラグが07HとなるためにS35以外の表示プロセス処理が実行されなくな」るものであり、S35は「エラーメッセージ表示処理」(記載事項9参照)であるから、異常状態との判別がされてから前記異常状態が解除されるまでの間は「エラーメッセージ」が表示されるものと認められる。 そして、引用発明の「エラーメッセージ」は、可変表示手段の異常発生表示という点で、本願発明の「前記可変表示手段の変動表示を異常状態判別時における表示態様で停止して当該表示態様を継続する異常発生表示」と共通している。 (3)引用発明の「異常発生時点での可変表示状態から可変表示制御が進行する」が、本願発明の「異常状態発生前の変動表示に復帰する」に相当することは明らかである。 そうすると、本願発明と引用発明は、 「遊技に関連する図柄の変動表示が可能な可変表示手段を備えたパチンコ遊技機において、 遊技領域内に設けられた入賞装置への遊技球の入賞を検出する入賞球検出手段のうち少なくとも一つからの検出信号により異常状態か否かを判別する異常状態判別手段を備え、 該異常状態判別手段によって異常状態との判別がされたときは、ランプの点滅と特定音とのいずれかもしくは両方と、前記可変表示手段の異常発生表示との組合せによって異常状態の発生を報知し、 前記異常状態判別手段によって異常状態との判別がされてから前記異常状態が解除されるまでの間、可変表示手段の異常発生表示は保持され、異常状態発生前の遊技状態が前記異常状態の解除によって復帰可能とし、 前記異常状態の解除後、図柄が、異常状態発生前の変動表示に復帰することを特徴とするパチンコ遊技機。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 点滅するランプが、本願発明では「異常発生報知ランプ」であるのに対し、引用発明では「装飾ランプ18?22」である点。 <相違点2> 可変表示手段の異常発生表示が、本願発明では「変動表示を異常状態判別時における表示態様で停止して当該表示態様を継続する」ものであるのに対し、引用発明では「エラーメッセージの表示を行う」ものである点。 4.判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 異常発生の報知のためのランプを設けることは様々な分野で慣用されており、また、パチンコ機においても(上記引用文献の記載事項5参照)同様である。したがって、引用発明において、点滅させるランプを「異常発生報知ランプ」とすることは当業者であれば容易に想到できたものである。 (2)相違点2について 機器を操作するに際して、変動あるいは変化すべきものが静止してそれが継続する(このような事象を以下「フリーズ」という。)場合、それが機器の異常によるものであることは日常生活においてよくあることである。例えば、パソコンの操作中にディスプレイの表示が突然止まる現象はパソコン内部の異常によるものである。一方、パチンコ遊技機においても、異常時(球切れ時)に可変表示装置の表示動作を停止させることは、特開平9-173536号公報にみられるように従来知られていることである。 そして、「フリーズ」した場合に、それに接する者は機器の異常を想起することがよくあることから、「フリーズ」という事象が異常状態を人に感知させる機能を備えていることは明らかである。 そうすると、異常の発生を表示手段で報知するのにあたって、変動表示を停止してそれを継続させることによって行うか、「エラーメッセージの表示」によって行うかは、単なる設計的事項に過ぎないものである。したがって、引用発明において異常発生時に「変動表示を異常状態判別時における表示態様で停止して当該表示態様を継続する」ものとし、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到できたものである。 そして、本願発明の効果は、引用文献に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-17 |
結審通知日 | 2008-09-24 |
審決日 | 2008-10-07 |
出願番号 | 特願平11-34870 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 太田 恒明 |
特許庁審判長 |
伊藤 陽 |
特許庁審判官 |
三原 裕三 深田 高義 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 藤田 和子 |