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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02P
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02P
管理番号 1188241
審判番号 不服2007-9210  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-30 
確定日 2008-11-20 
事件の表示 特願2003-101307「洗濯機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月21日出願公開、特開2003-333878〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、平成7年2月2日に出願した特願平7-16168号の一部を平成15年4月4日に新たな特許出願としたものであって、平成19年2月26日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成19年3月30日付の手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「モータと、このモータの速度を検出する回転速度検出手段と、前記モータのコイルへの通電で位相制御を行うモータ駆動手段と、商用電源のゼロクロス信号を検出するゼロクロス検出手段と、前記回転速度検出手段の出力信号と速度指令値に基づいてPI制御を行い前記モータ駆動手段へ出力タイミングを算出し駆動信号を出力する速度演算部を備え、前記速度演算部は前記モータの目標回転数に応じて設定する又は前記モータの目標回転数が得られるように前記モータの負荷量に応じて設定する前記PI制御の積分項に学習機能により初期値を設定し、前記出力信号と速度指令値から求められた回転数偏差を正規化し、この正規化した回転数偏差と電源周波数の半サイクル時間から駆動信号の出力タイミングを決定するモータ制御装置を搭載したことを特徴とする洗濯機。」と補正された。
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「PI制御の積分項」について「モータの目標回転数に応じて設定する又は前記モータの目標回転数が得られるように前記モータの負荷量に応じて設定する」ものと限定すると共に、同じく「初期値」について「学習機能により」設定するものと限定し、さらに「モータ制御装置」について、「モータ制御装置を搭載した」「洗濯機」と限定するものである。したがって、上記補正は平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(この発明を以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するか否か)について以下検討する。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-197585号公報(以下「引用文献」という。)には、「速度制御装置」と題して、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0006】
【実施例】図1は本発明の一実施例を示す回路図である。1は交流電源、2は半導体スイッチング手段、3は電動機、4はダイオード41、平滑用コンデンサ42、分圧抵抗器43、44等からなる電源電圧検出手段で、電源電圧の大きさを検出する。5はホトカプラ51、抵抗器52、53からなる零電圧検出手段で、電源電圧が零電圧の時パルスを発生する。6は可変抵抗器からなる速度設定手段、7は回転磁石71、マグネットピックアップ72、ホトカプラ73、ダイオード74、抵抗器75、76等からなる速度検出手段で、電動機3と連動して回転する回転磁石71の磁束の変化をマグネットピックアップ72により検出して速度に比例したパルスを発生する。8はホトトライアック81、抵抗器82、83からなる半導体駆動手段で半導体スイッチング手段2を駆動する。9はCPU91、ROM92、RAM93、タイマカウンタ94、A/Dコンバータ95、割込みポート96、出力ポート97、入力ポート98からなるマイコンであって、電動機3の速度を制御するための演算を行う。マイコン9は、速度設定手段6の設定速度と速度検出手段7の実際の速度との間の速度偏差を演算する演算手段、速度偏差に対する点弧位相角補正において補正量が正弦波形の各部に対応した重みづけを行って点弧位相角を補正する点弧位相角演算手段、点弧位相角演算手段にもとづく点弧位相角を記憶する記憶手段、零電圧検出手段5の零電圧信号に同期して前記記憶手段の点弧位相角に相当する時間をカウントするタイマカウンタ手段の機能を有する。
【0007】上記の構成において、零電圧検出手段5からの信号にもとづきマイコン9のタイマカウンタ94を動作させ、出力ポート97から半導体駆動手段8を介して半導体スイッチング手段2の点弧位相を制御し、交流電源1から電動機3へ供給される電力を制御して電動機3の速度を制御する。タイマカウンタ94のタイマ時間は、速度設定手段6の設定速度と速度検出手段7からの実際の速度との間の速度偏差に対し、マイコン9により以後に述べる補正をしたものである。
【0008】次に図2?図5のフローチャートにより動作の説明をする。図2は主ルーチンを示すフローチャートである。電源が投入されると、初期設定をし(ステップ201)、入力ポート98に入力する零電圧検出手段5のパルス間隔をマイコン9のタイマカウンタ94により測定して電源1の周波数が50Hzか60Hzかを判別し(ステップ202)、次いで外部割込み許可をし(ステップ203)、各種制御処理(ステップ204)を行う。図3に零電圧検出にもとづく外部割込み処理を行うフローチャートを示す。零電圧検出手段5の零電圧検出信号で割込み処理を開始する。タイマ時間をセットしてタイマ時間をスタートさせ(ステップ301)、速度設定手段6の設定速度をA/Dコンバータ95を介して入力し(ステップ302)、次いで速度検出手段7から入力ポート98を介して電動機3の実際の速度を測定し(ステップ303)、点弧位相角の演算をする(ステップ304)。図4にタイマ割込み処理を行うフローチャートを示す。零電圧検出手段5の零電圧検出信号でスタートしたタイマカウンタ94は設定時間経過により、マイコン9においてタイマ割込みが発生し、トリガパルスを出力ポート97を介して発生し(ステップ401)、半導体駆動手段8を介して半導体スイッチング手段2をスイッチングさせる。図5に点弧位相角演算のフローチャートを示す。設定速度と実速度との速度偏差補正を演算する(ステップ501)。本実施例では、速度偏差補正演算は比例制御を行うことを前提としているが、比例積分微分制御等の演算に置き換えることが可能である。次いで、電源電圧に対する補正をする(ステップ502)。本実施例では、電源電圧100Vを基準としている。次いで、電源電圧補正をした値ΔVsの正負すなわち設定速度と実速度との大小判別をする(ステップ503)。実速度が設定速度より大きい時は、実速度が設定速度まで減少するよう、点弧位相角を増加させる演算を行い(ステップ504)、電動機3への給電電圧を減少させて速度を低下させるように制御する。逆に、実速度が設定速度より小さい時は、実速度が設定速度まで減少するよう、点弧位相角を減少させる演算を行い(ステップ505)、電動機3への給電電圧を増加させて速度を上昇させるように制御する。次いで、演算後の点弧位相角を記憶し(ステップ506)、周波数判別データにより50Hzか60Hzかを判別し(ステップ507)、50Hzなら50Hz対応タイマカウンタ値演算をし(ステップ508)、60Hzなら60Hz対応タイマカウンタ値演算をする(ステップ509)。ここでΔVは速度偏差演算値、Keは速度偏差補正係数、Veffは実速度値、Vrefは設定速度値、ΔVsは電源電圧補正演算値、Ksは電源電圧補正係数、Sは実際の電源電圧、kは点弧位相角、Tは電源電圧零を検出した時から半導体スイッチング手段2を点弧させるまでの時間間隔、Kfは周波数補正係数である。
【0009】図6に180等分した時の下記式で求めた各点弧位相角における補正値f(k)を示す(ただしVmが1の時)。補正値f(k)の10~4を除いた数値をROM92に記憶して、点弧位相角の演算に使用する。」

・【図5】のステップ501-509には、「実際の速度と設定速度から求められた速度偏差と電源周波数の半サイクル時間から半導体駆動手段の時間間隔を決定する」ことが示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献には次の発明が記載されていると認めることができる。
「電動機と、この電動機の速度を検出する速度検出手段と、前記電動機への通電で位相制御を行う半導体駆動手段と、電源電圧が零電力の時パルスを発生する零電圧検出手段と、前記速度検出手段の実際の速度と設定速度に基づいて前記半導体駆動手段へ電源電圧零を検出した時から半導体スイッチング手段を点弧させるまでの時間間隔を演算しトリガパルスを出力するCPUを備え、前記CPUは前記実際の速度と設定速度から求められた速度偏差と電源周波数の半サイクル時間から半導体駆動手段の電源電圧零を検出した時から半導体スイッチング手段を点弧させるまでの時間間隔を決定する速度制御装置。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「電動機」は本願補正発明の「モータ」に相当し、以下同様に、「速度検出手段」は「回転速度検出手段」に、「半導体駆動手段」は「モータ駆動手段」に、「電源電圧が零電力の時パルスを発生する零電圧検出手段」は「商用電源のゼロクロス信号を検出するゼロクロス検出手段」に、「実際の速度」は「回転速度検出手段の出力信号」に、「設定速度」は「速度指令値」に、「電源電圧零を検出した時から半導体スイッチング手段を点弧させるまでの時間間隔」は「出力タイミング」に、「演算」は「算出」に、「トリガパルス」は「駆動信号」に、「CPU」は「速度演算部」に、「速度偏差」は「回転数偏差」に、「速度制御装置」は「モータ制御装置」にそれぞれ相当する。

すると、本願補正発明と引用発明は次の点で一致する。
「モータと、このモータの速度を検出する回転速度検出手段と、前記モータのコイルへの通電で位相制御を行うモータ駆動手段と、商用電源のゼロクロス信号を検出するゼロクロス検出手段と、前記回転速度検出手段の出力信号と速度指令値に基づいて前記モータ駆動手段へ出力タイミングを算出し駆動信号を出力する速度演算部を備え、前記速度演算部は、前記出力信号と速度指令値から求められた回転数偏差と電源周波数の半サイクル時間から駆動信号の出力タイミングを決定するモータ制御装置。」

一方で、本願補正発明と引用発明は、次の相違点1-3で相違する。

<相違点1>
「速度演算部」に関し、本願発明においては「PI制御を行い」かつ「モータの目標回転数に応じて設定する又は前記モータの目標回転数が得られるように前記モータの負荷量に応じて設定するPI制御の積分項に学習機能により初期値を設定」する限定が付されるのに対し、引用発明においてはかかる限定が付されない点。
<相違点2>
「回転数偏差」に関し、本願発明においては、出力信号と速度指令値から求められた「回転数偏差を正規化し、この正規化した」回転数偏差としているのに対し、引用発明においては、正規化はなされていない点。
<相違点3>
本願発明が、モータ制御装置「を搭載した洗濯機」としているのに対し、引用発明は、かかる用途が特定されていない点。

(4)判断
上記相違点1-3について検討する。
まず、上記相違点1について検討する。
速度制御の技術分野において、「PI制御を行い」かつ「目標回転数に応じて設定するPI制御の積分項に初期値を設定」することは、特開平5-263687号公報(段落【0030】等参照。)及び特開平3-12705号公報(第2頁右下欄第8-15行等参照。)に示されるように周知の技術といえる。しかも、「積分項に学習機能により初期値を設定」することも実願平3-96206号(実開平5-39846号)のCD-ROM(段落【0014】及び【0024】等参照。)に示されるように周知の技術といえる。そして、モータの回転速度の制御において、どのような制御理論を用いるかは、モータの使用条件等を考慮して当業者が適宜選択し得るものであるから、引用発明において、上記周知の技術を適用して上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が格段の困難性を伴うことなくなし得たことというべきである。

次に、上記相違点2について検討する。
「出力信号と速度指令値から求められた回転数偏差を正規化」することは、特開平4-200285号公報(第2頁右上欄第2行-右下欄第3行)に示されるように周知の技術といえる。そして、モータの回転速度の制御において、回転数偏差を正規化したものを用いるか正規化していないものを用いるかは駆動信号の出力タイミングを決定する際の計算アルゴリズムの違いでしかなく、いずれの回転数偏差を用いるかは、当業者が計算効率等を考慮して適宜選択し得るものといえるから、引用発明において、上記周知の技術を適用して上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が格段の困難性を伴うことなくなし得たことというべきである。

最後に、上記相違点3について検討する。
「モータ制御装置を搭載した洗濯機」は、特開平4-210794号公報に示されるように周知のものといえる。そして、引用発明のモータ制御装置をどのような機器に搭載するかは、当業者がモータ制御装置の適正を考慮して適宜選択し得るものと認められるので、引用発明において、上記周知のものにならい上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が格段の困難性を伴うことなくなし得たことというべきである。

そして、本願補正発明の全体構成が奏する効果も、引用発明、上記周知の技術及び上記周知のものから当業者が予測し得た範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は引用発明、上記周知の技術及び上記周知のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明については、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
平成19年3月30日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は平成18年8月8日付の手続補正で補正された明細書及び図面の記載からみて、以下のとおりのものと認める。
「モータと、このモータの速度を検出する回転速度検出手段と、前記モータのコイルへの通電で位相制御を行うモータ駆動手段と、商用電源のゼロクロス信号を検出するゼロクロス検出手段と、前記回転速度検出手段の出力信号と速度指令値に基づいてPI制御を行い前記モータ駆動手段へ出力タイミングを算出し駆動信号を出力する速度演算部を備え、前記速度演算部は前記PI制御の積分項に初期値を設定し、前記出力信号と速度指令値から求められた回転数偏差を正規化し、この正規化した回転数偏差と電源周波数の半サイクル時間から駆動信号の出力タイミングを決定することを特徴とするモータ制御装置。」(以下「本願発明」という。)

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から、「PI制御の積分項」の「モータの目標回転数に応じて設定する又はモータの目標回転数が得られるようにモータの負荷量に応じて設定する」ものへの限定を省き、同じく「初期値」の「学習機能により」設定するものへの限定を省き、さらに「モータ制御装置」の「モータ制御装置を搭載した」「洗濯機」への限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加した本願補正発明が、前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり、引用発明、上記周知の技術及び上記周知のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、しかも、本願発明と引用発明は上記相違点3を相違点とはしないものといえるから、本願発明は引用発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-16 
結審通知日 2008-09-24 
審決日 2008-10-08 
出願番号 特願2003-101307(P2003-101307)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02P)
P 1 8・ 575- Z (H02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山村 和人  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 谷口 耕之助
田良島 潔
発明の名称 洗濯機  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 高橋 省吾  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 村上 加奈子  

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