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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1188259
審判番号 不服2006-13421  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-26 
確定日 2008-11-14 
事件の表示 平成 8年特許願第519640号「多層記録媒体及びこの記録媒体を走査する装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 6月27日国際公開、WO96/19807、平成 9年 9月30日国内公表、特表平 9-509776〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許出願(以下「本願」という。)は、1995年12月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1994年12月19日、オランダ国、1995年9月14日、オランダ国)を国際出願日とする出願であって、平成17年7月29日付けの拒絶理由通知が通知され、それに対して平成18年2月9日付けで誤訳訂正がなされたが、平成18年3月17日付けで拒絶すべきものである旨の査定がなされ、これに対して、平成18年6月26日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

II.本願発明について

1.本願発明
本願請求項1乃至5に係る発明は、平成18年2月9日付けの誤訳訂正書により補正された明細書の特許請求の範囲からみて、特許請求の範囲1乃至5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1の記載は、以下のとおりである。

「透明基板及び少なくとも2個のほぼ平行な情報層を有し、前記透明基板の側から単一の光学式走査ヘッドの放射ビームにより走査するのに適当な記録媒体であって、各情報層が、当該情報層を走査するための情報を有する制御情報のブロックを有する記録媒体において、
情報層の前記ブロックは、記録媒体の情報層の数に関するインディケーション及び当該情報層の順序番号のインディケーションを有することを特徴とする記録媒体。」(以下「本願発明」という。)

2.刊行物及びその記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は、特開平3-219440号公報(平成3年9月26日出願公開、以下「刊行物」という。)である。

-刊行物の記載-
刊行物には、光学的に情報を記録再生する光ディスクの記録層が多層構造の多層記録光ディスクについて、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与。)

(i)「2.特許請求の範囲
(1)厚み方向には複数の記録層が形成されており、これら記録層のトラックに光ビームを集光させて記録層に情報を記録、再生する多層記録光ディスクにおいて、前記各記録層には、各記録層のアドレスが記録された識別部が形成されていることを特徴とする多層記録光ディスク。」(1頁左下欄4?11行)

(ii)「3.発明の詳細な説明
産業上の利用分野
本発明は、光学的に情報を記録再生する光ディスクに関し、特に記録層が多層構造の多層記録光ディスクに関する。」(2頁左上欄4?8行)

(iii)「作用
上記構成の如く、各記録層には各記録層のアドレスが記録された識別部を形成すれば、容易にどの記録層であるかを識別することが可能となる。
従って、光ビームを所望の記録層に合焦点することができるので、光ビームの集束ビーム直径を小さくすることができ、情報を高密度で記録することが可能となる。」(3頁左上欄11?18行)

(iv)「多層記録光ディスク1は、第1図に示すように、プラスチックから成るディスク基材2・2間に、第1記録層3及び第2記録層4と、紫外線硬化(UV)樹脂から成り上記両記録層3、4を分離するためのスペーサ5とが設けられているような構造である。」(3頁右上欄12?17行)

(v)「上記識別部ID_(a)・ID_(b)は、第3図に示すように、各識別部ID_(a)・ID_(b)のクロック引き込み用の同期部SYNCと、アドレス信号の始まりを示すアドレスマークAMと、トラックアドレスTAと、セクタアドレスSAと、記録層アドレスLAとを有している。」(3頁左下欄9?15行)

(vi)「また、多層記録光ディスクは各記録層がそれぞれ異なる波長感度をもつ波長多重媒体に限定されるものではなく、通常の光磁気媒体(TbFeCo)や、相変化媒体(TeGeSb)等を記録膜として多層構成にした多層記録光ディスクにも適用されることは勿論である。
発明の効果
以上の説明したように本発明によれば、多層膜の層数が多い場合であっても記録位置精度の高い高密度な多層記録を行うことができるといった効果を奏する。」(5頁右下欄19行?6頁左上欄9行)

(vii)第1図及び第4図は多層記録光ディスクの断面図であり、複数のほぼ平行に配置された記録層の記載がある。

上記摘示事項及び図面を総合整理すると、刊行物には、結局、以下のとおりの発明が記載されているものと認める。

「プラスチックからなる成るディスク基材及び複数のほぼ平行な記録層からなり、前記記録層には、クロック引き込み用の同期部SYNCと、アドレス信号の始まりを示すアドレスマークAMと、トラックアドレスTAと、セクタアドレスSAと、記録層アドレスLAとを有する識別部が形成された多層記録光ディスクにおいて、
前記記録層の前記識別部には、どの記録層であるかを識別することが可能となる各記録層のアドレスが記録された多層記録光ディスク。」(以下「刊行物発明」という。)

3.対比・判断

本願発明と刊行物発明とを対比する。

刊行物発明の「プラスチックから成るディスク基材及び複数のほぼ平行な記録層からなり」について、「プラスチックから成るディスク基材」は当該「プラスチック」自体が透明の素材であって光ディスクの基板として用いられることが技術常識であるので、本願発明の「透明基板」に相当し、「複数の記録層」は本願発明の「少なくとも2個のほぼ平行な情報層」に相当することが明らかであるので、結局、本願発明の「透明基板及び少なくとも2個のほぼ平行な情報層を有し」に相当する。

刊行物発明の「前記記録層には、クロック引き込み用の同期部SYNCと、アドレス信号の始まりを示すアドレスマークAMと、トラックアドレスTAと、セクタアドレスSAと、記録層アドレスLAとを有する識別部が形成された多層記録光ディスク」について、「記録層」が本願発明の「情報層」に相当することが明らかであり、「クロック引き込み用の同期部SYNCと、アドレス信号の始まりを示すアドレスマークAMと、トラックアドレスTAと、セクタアドレスSAと、記録層アドレスLA」の各種情報は記録層を光ビームで走査する際に用いられる情報である点で本願発明の「当該情報層を走査するための情報を有する制御情報」に相当し、「識別部」及び「多層記録光ディスク」はそれぞれ本願発明の「ブロック」及び「記録媒体」に相当するので、結局、本願発明の「各情報層が、当該情報層を走査するための情報を有する制御情報のブロックを有する記録媒体」に相当する。

刊行物発明の「前記記録層の前記識別部には、どの記録層であるかを識別することが可能となる各記録層のアドレスが記録された」について、上記で述べたように「記録層」及び「識別部」はそれぞれ本願発明の「情報層」及び「ブロック」に相当し、「どの記録層であるかを識別することが可能となる各記録層のアドレスが記録された」は当該各記録層のアドレスが各記録層に関する情報を表示するものである点で、本願発明の「当該情報層のインディケーションを有する」ことと共通するので、結局「情報層の前記ブロックは、当該情報層のインディケーションを有する」に相当する。

結局、両発明の[一致点]及び[相違点]は、以下のとおりである。

[一致点]
「透明基板及び少なくとも2個のほぼ平行な情報層を有し、各情報層が、当該情報層を走査するための情報を有する制御情報のブロックを有する記録媒体において、
情報層の前記ブロックは、当該情報層のインディケーションを有する記録媒体。」

[相違点]
(イ)記録媒体について、本願発明では「前記透明基板の側から単一の光学式走査ヘッドの放射ビームにより走査するのに適当な記録媒体」とするのに対し、刊行物発明では放射ビームとの関係について言及がない点。

(ロ)情報層のブロックが有するインディケーションについて、本願発明では「記録媒体の情報層の数」及び「当該情報層の順序番号」の2種類のインディケーションを有するものであるのに対し、刊行物発明では「どの記録層であるかを識別することが可能」なインディケーションである点。

[判断]
相違点(イ)について、
光記録媒体の技術分野において、記録媒体の基板として透明基板を用いること及び透明基板の側から単一の光学式走査ヘッドの放射ビームにより走査するのに適当な記録媒体とすることは周知(例:特開平5-101398号公報の図1及び【0100】参照。)であり、刊行物発明においても上記周知技術を適用して記録媒体の基板を「透明基板」及び「前記透明基板の側から単一の光学式走査ヘッドの放射ビームにより走査するのに適当な記録媒体」とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

相違点(ロ)について、
光記録媒体の技術分野において、複数の記録媒体から構成されるデータを連続再生する場合における当該記録媒体の全構成面数の情報および当該面がその第何面に当たるかの情報(再生順序情報)を光記録媒体に記録することは周知(例:特開平5-166285号公報の図2及び【0013】【0016】参照。)であり、刊行物発明においても上記周知技術を適用して「記録媒体の情報層の数」及び「当該情報層の順序番号」のインディケーションとすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、上記相違点についての判断を総合しても本願発明の奏する効果は刊行物及び周知技術から当業者が十分に予想可能なものであって、格別のものとはいえない。

以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-23 
結審通知日 2008-06-24 
審決日 2008-07-07 
出願番号 特願平8-519640
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 哲  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 溝本 安展
小林 秀美
発明の名称 多層記録媒体及びこの記録媒体を走査する装置  
代理人 宮崎 昭彦  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 津軽 進  

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