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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B
管理番号 1188323
審判番号 不服2006-4546  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-10 
確定日 2008-11-19 
事件の表示 特願2002-270837「電子部品焼成用治具」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 8日出願公開、特開2004-107125〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年9月18日に特許出願されたものであって、平成18年1月25日付けで拒絶査定され、それに対し、同年3月10日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、本願の請求項1-3に係る発明は、平成17年12月12日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書の特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
【請求項1】基材、及び該基材上に形成されたジルコニア表面層を含んで成る電子部品焼成用治具において、ジルコニア表面層の表面粗さが中心面平均粗さSaで10?40μmであることを特徴とする電子部品焼成用治具。(以下、「本願発明1」という)
【請求項2】基材、該基材表面に被覆された中間層、及び該中間層上に形成されたジルコニア表面層を含んで成る電子部品焼成用治具において、ジルコニア表面層の表面粗さが中心面平均粗さSaで10?40μmであることを特徴とする電子部品焼成用治具。(以下、「本願発明2」という)
【請求項3】60?70重量%の100?200メッシュのイットリア安定化ジルコニアと、40?30重量%の平均粒径3μmのイットリア安定化ジルコニアとを混合してスラリーとし、該スラリーを基材上又は基材上を被覆した中間層上にコートしてジルコニア表面層を形成する工程を含む電子部品焼成用治具の製造方法。(以下、「本願発明3」という)
2.引用文献等の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として提示された特開2002-128583号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。
(A)基材、該基材表面に被覆された中間層、及び該中間層上に形成されたジルコニア表面層を含んで成る電子部品焼成用治具において、ジルコニア表面層の表面粗さが中心線平均値で10?40μmであることを特徴とする電子部品焼成用治具。(請求項1)
(B)ジルコニア表面層が、50?80重量%の100?200メッシュの粗粒骨材と、50?20重量%の平均粒径10μm以下の微粒ボンド相を含んで成る請求項1に記載の電子部品焼成用治具。(請求項2)
(C)基材、及び該基材上に形成されたジルコニア表面層を含んで成る電子部品焼成用治具において、ジルコニア表面層の表面粗さが中心線平均値で10?40μmであることを特徴とする電子部品焼成用治具。(請求項4)
(D)ジルコニア表面層が、50?80重量%の100?200メッシュの粗粒骨材と、50?20重量%の平均粒径10μm以下の微粒ボンド相を含んで成る請求項4に記載の電子部品焼成用治具。(請求項5)
(E)…更にジルコニアは?1100℃近傍で単結晶から正方晶への相変化が起こる。その結果繰り返し熱サイクルによる相変態に伴う熱膨張係数の変化により、ジルコニアの被覆層が脱離し易いという問題点がある。なお未安定化ジルコニアを表面層として使用する場合は、相変態に伴う粉化が生じるという問題点もある。(【0003】)
(F)従来から電子部品、例えば積層チップコンデンサを焼成する場合には数百℃に加熱して添加されたバインダーを分解し脱バインダーする必要がある。そして本発明者らの検討により、この脱バインダーの際に電子部品焼成用治具の表面層の状態が分解したバインダーに起因するガス等の表面層からの脱離に大きく関与することが見出された。つまりこの脱バインダーを円滑に進行させるためには生成するガスの抜けを良好にする望ましく、そのためにはジルコニア表面層の表面を適度な粗さに維持することが必要になる。更に電子部品を1000℃を超える高温で焼成する場合に、ジルコニア表面層に接触して置かれる電子部品とジルコニア表面層が密着し過ぎると、両者間で望ましくない反応が生じてしまう。本発明者らはこの反応発生の抑制を検討し、該反応抑制もジルコニア表面層の表面を適度な粗さに維持することにより達成できることを見出した。(【0006】)
(G)ジルコニア表面層の材質として具体的には、未安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア及び安定化ジルコニア等が使用できるが、該ジルコニア表面層は電子部品と直接接触するため、該電子部品に悪影響を与えるものであってはならず、従ってイットリア、カルシア及びマグネシア等により部分安定化又は安定化させたジルコニア又はそれらの混合物を使用することが望ましい。…ジルコニアにイットリアやマグネシア等の部分溶融結合材(安定化剤)を固溶させることにより、高温相である正方晶や立方晶を室温下で「安定化」できる。(【0011】)
(H)実施例1
基材として、シリカ成分が約10重量%までのアルミナ-ムライト基材を使用した。中間層としては、100メッシュのアルミナ粗粒骨材を70重量%及び平均粒径約3μmのアルミナ微粉を30重量%を準備した。これらをボールミル中で均一に混合し、水とバインダーであるポリビニルアルコールを加えてにスラリーとした。このスラリーを前記基材表面にスプレーコートし、約100℃で乾燥した。得られた中間層の厚さは約100μmであった。
ジルコニア表面層の粗粒骨材として100メッシュのイットリア(Y2O3)安定化ジルコニア骨材を70重量%、微粒ボンド相として平均粒径5μmのイットリア安定化ジルコニア粉末を30重量%準備した。これらをボールミル中で均一に混合し、水とバインダーであるポリビニルアルコールを加えてにスラリーとした。このスラリーを前記中間層表面にスプレーコートし、約100℃で乾燥した。ジルコニア表面層の厚さは約100μmであった。この2層コート積層体を1450℃で2時間保持し、電子部品焼成用治具を作製した。(【0015】-【0016】)
(I)実施例2
ジルコニア表面層の粗粒骨材を200メッシュのイットリア安定化ジルコニア骨材60重量%、微粒ボンド相を平均粒径3μmの未安定化ジルコニア粉末40重量%としたこと以外は実施例1と同様にして電子部品焼成用治具を作製した。(【0017】)
(J)実施例4
ジルコニア表面層の粗粒骨材を200メッシュのイットリア安定化ジルコニア骨材50重量%、微粒ボンド相を平均粒径3μmのイットリア安定化ジルコニア粉末50重量%とし、中間層の微粒ボンド相を平均粒径4μmのスピネル30重量%としたこと以外は実施例1と同様にして電子部品焼成用治具を作製した。この電子部品焼成用治具の表面粗さは13.7μmであった。(【0019】)
(K)実施例5
中間層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして電子部品焼成用治具を作製した。この電子部品焼成用治具の表面粗さは12.5μmであった。(【0020】)
(L)【0023】の【表1】には、実施例No.1-5のいずれも、「ぼろつき亀裂の有無」が「無」と記載されている。
(M)本発明に係わる電子部品焼成用治具では、ジルコニア表面層の表面粗さが適度なレベルに維持されているため、電子部品焼成時のバインダーから発生するガスの抜けを良好にしかつジルコニア表面層と電子部品間の反応を抑制して効率良く電子部品の焼成を実施できる。…又中間層を設けず基材表面に直接ジルコニア表面層を形成しても(請求項4及び5)ほぼ同等の効果が得られる。(【0024】-【0025】)
3.引用発明
引用例1の記載事項(C)には、「基材、及び該基材上に形成されたジルコニア表面層を含んで成る電子部品焼成用治具において、ジルコニア表面層の表面粗さが中心線平均値で10?40μmであることを特徴とする電子部品焼成用治具。(以下、「引用発明1」という)」が記載されている。
また、引用例1の記載事項(A)には、「基材、該基材表面に被覆された中間層、及び該中間層上に形成されたジルコニア表面層を含んで成る電子部品焼成用治具において、ジルコニア表面層の表面粗さが中心線平均値で10?40μmであることを特徴とする電子部品焼成用治具。(以下、「引用発明2」という)」が記載されている。
そして、引用例1の記載事項(I)には、「ジルコニア表面層の粗粒骨材を200メッシュのイットリア安定化ジルコニア骨材60重量%、微粒ボンド相を平均粒径3μmの未安定化ジルコニア粉末40重量%とした以外は実施例1と同様にし」たことが記載されている。
また、記載事項(H)の「実施例1」には、「スラリーを前記基材表面にスプレーコートし、乾燥し」て「得られた中間層」が記載され、「ジルコニア表面層の粗粒骨材としてジルコニア骨材、微粒ボンド相としてジルコニア粉末を準備し」、「これらを均一に混合し、水とバインダーを加えてスラリーとし」、「このスラリーを前記中間層表面にスプレーコートし、乾燥し」た「ジルコニア表面層」が記載され、「この2層コート積層体」から「電子部品焼成用治具を作製した」ことが記載されている。
してみれば、上記の記載を組み合わせ、本願発明3の記載ぶりに則して整理すると、引用例1には、「基材表面にスラリーをスプレーコートし、乾燥して中間層を得、200メッシュのイットリア安定化ジルコニア骨材を60重量%と、平均粒径3μmの未安定化ジルコニア粉末を40重量%を均一に混合し、水とバインダーを加えたスラリーを前記中間層表面にスプレーコートし、乾燥してジルコニア表面層を得、該2層コート積層体から電子部品焼成用治具を作製する方法。(以下、「引用発明3」という)」が記載されているといえる。
4.対比・判断
[1]対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「基材」、「該基材上に形成されたジルコニア表面層」、「電子部品焼成用治具」、「ジルコニア表面層の表面粗さ」及び「10?40μm」は、本願発明1の「基材」、「該基材上に形成されたジルコニア表面層」、「電子部品焼成用治具」、「ジルコニア表面層の表面粗さ」及び「10?40μm」と一致することが明らかである。
したがって、両者は、「基材、及び該基材上に形成されたジルコニア表面層を含んで成る電子部品焼成用治具において、ジルコニア表面層の表面粗さが10?40μmであることを特徴とする電子部品焼成用治具」である点で一致し、下記の点で一応相違する。
相違点a:本願発明1では、ジルコニア表面層の表面粗さが「中心面平均粗さSa」であるのに対し、引用発明1では「中心線平均値」である点
また、本願発明2と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「基材」、「該基材表面に被覆された中間層」、「該中間層上に形成されたジルコニア表面層」、「電子部品焼成用治具」、「ジルコニア表面層の表面粗さ」及び「10?40μm」は、本願発明の「基材」、「該基材表面に被覆された中間層」、「該中間層上に形成されたジルコニア表面層」及び「電子部品焼成用治具」、「ジルコニア表面層の表面粗さ」及び「10?40μm」と一致することが明らかである。
したがって、両者は、「基材、該基材表面に被覆された中間層、及び該基材上に形成されたジルコニア表面層を含んで成る電子部品焼成用治具において、ジルコニア表面層の表面粗さが10?40μmであることを特徴とする電子部品焼成用治具」である点で一致し、下記の点で一応相違する。
相違点b:本願発明2では、ジルコニア表面層の表面粗さが「中心面平均粗さSa」であるのに対し、引用発明2では「中心線平均値」である点
そして、本願発明3と引用発明3とを対比すると、引用発明3の「基材表面にスラリーをスプレーコートし、乾燥して中間層を得」ることにより、本願発明3の「基材上を被覆した中間層」が得られることは明らかであり、また、引用発明3の「イットリア安定化ジルコニア骨材」、「ジルコニア粉末」は、本願発明3の「イットリア安定化ジルコニア」、「ジルコニア」に相当する。
また、本願発明のイットリア安定化ジルコニアは、粒径が100?200メッシュ、配合量が60?70重量%なのに対し、引用発明3の安定化ジルコニア骨材は、粒径が200メッシュ、配合量が60重量%であるから、両者は粒径、配合量とも一致し、本願発明のジルコニアは、平均粒径が3μm、配合量が40?30重量%なのに対し、引用発明3のジルコニア粉末は、平均粒径が3μm、配合量が40重量%であるから、両者は平均粒径、配合量とも一致している。
そして、引用発明3の「スラリーを前記中間層表面にスプレーコートし、乾燥してジルコニア表面層を得」ることは、本願発明3の「スラリーを基材上を被覆した中間層上にコートしてジルコニア表面層を形成する工程」に相当する。
してみれば、本願発明3と引用発明3とは、「60重量%の200メッシュのイットリア安定化ジルコニアと、40重量%の平均粒径3μmのジルコニアとを混合してスラリーとし、該スラリーを基材上又は基材上を被覆した中間層上にコートしてジルコニア表面層を形成する工程を含む電子部品焼成用治具の製造方法」である点で一致し、下記の点で相違する。
相違点c:本願発明3では、「イットリア安定化」ジルコニアを用いるのに対し、引用発明3では「未安定化」ジルコニアを用いる点
[2]相違点a,bについて
上記相違点a,bは実質的に同一であるから、併せて検討する。
請求人が平成17年12月13日付け手続補足書にて提出した実験成績証明書には、引用例1に開示された実施例1は、表面粗さの中心線平均値が25.3μmと記載されているが、Sa値を測定すると41μmであった旨記載されている。
しかしながら、(1)引用例1の記載事項(J),(K)にも記載のとおり、引用発明1及び引用発明2には、上記実験成績証明書にて比較された引用例1の実施例1よりも表面粗さの中心線平均値が小さく、むしろ、本願の明細書に開示された実施例のRa値により近い値のものが含まれる点、(2)引用例1の記載事項(B),(D),(H),(I),(J),(K)に記載のとおり、引用発明1及び引用発明2の製造方法は、本願明細書【0030】-【0035】,【0038】に記載された本願発明1及び本願発明2の製造方法と略同一である点、及び、(3)引用例1の記載事項(L)に記載のとおり、引用発明1及び引用発明2は、いずれも表面層のぼろつき、亀裂が生じていない点からみて、引用発明1及び引用発明2におけるジルコニア表面層の中心面平均粗さSaが、本願発明1及び本願発明2と実質的に相違しているということはできない。
したがって、本願発明1及び本願発明2は、それぞれ引用発明1及び引用発明2と同一である。
また、本願発明1及び本願発明2における、「ジルコニア表面層の表面粗さが中心面平均粗さSaで10?40μm」という特定は、本願明細書の【0025】?【0027】の記載や、平成18年6月14日付けで補正された審判請求の理由における、「中心面平均粗さSaで評価することにより、…確実に電子部品焼成時のバインダーから発生するガス抜け性が良好で、かつジルコニア表面層と電子部品間の反応抑制に寄与する表面粗さを有する電子部品焼成用冶具を得ることができるものとなります。」との記載からみて、電子部品焼成用治具のジルコニア表面層に求められる表面粗さを、面を基準として表現したものであると理解される。
一方、引用発明1及び引用発明2は、ジルコニア表面層の表面粗さが中心線平均値で特定されるものであるが、引用例1の記載事項(F),(M)に記載のとおり、焼成用治具の表面を適度な粗さに維持することは、脱バインダー時におけるガス抜け性を良好にし、電子部品とジルコニア表面層の反応を抑制するためであり、本願発明1及び本願発明2と同様の課題に基づき、同様の効果を奏するものである。
また、焼成用治具上に載置される被焼成物が平面的な大きさを有することは自明であって、被焼成物と治具表面層との接触も平面的な広がりを有するものであるから、引用発明1及び引用発明2において特定される「中心線平均値」も、わずか一中心線平均値のみによって上記効果が得られるものでないことは明らかであって、治具表面層の平面的な表面粗さを最適な値にするためのものであるといえる。
してみれば、表面粗さを評価する際のパラメータとして、引用発明1及び引用発明2の中心線平均値にかえて、平面的な表面粗さを直接測定した平均面表面粗さSaを採用し、その値を最適化することは、当業者であれば容易になし得ることである。
また、相違点a,bに係る本願発明の構成を採ることにより奏される「電子部品焼成時のバインダーから発生するガスの抜けを良好にし、かつジルコニア表面層と電子部品間の反応を抑制して効率よく電子部品の焼成を実施できる。また、中間層を設けず基材表面に直接ジルコニア表面層を形成してもほぼ同等の効果が得られる」という効果も、引用例1の記載事項(M)から当業者であれば予測し得る範囲内のものである。
したがって、たとえ本願発明1が引用発明1と同一でなく、本願発明2が引用発明2と同一でないとしても、本願発明1及び本願発明2は、引用発明1及び引用発明2並びに上記引用例1の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
[3]相違点cについて
相違点cについて、引用文献1の記載事項(E)からは、「未安定化ジルコニアを表面層として使用する場合は、相変態に伴う粉化が生じるという問題点」が把握され、同記載事項(G)には、「ジルコニアにイットリアやマグネシア等の部分溶融結合材(安定化剤)を固溶させることにより、高温相である正方晶や立方晶を室温下で「安定化」できる。」ことが記載されている。
また、同じく引用文献1の記載事項(G)からは、「ジルコニア表面層は電子部品と直接接触するため、該電子部品に悪影響を与えるものであってはならない」という問題点が把握され、該問題点に対して、「イットリア、カルシア及びマグネシア等により部分安定化又は安定化させたジルコニア又はそれらの混合物を使用することが望ましい。」ことが記載されている。
してみれば、相変態に伴う粉化という問題点を解決するため、及び、被焼成物である電子部品に悪影響を与えないため、引用発明3の未安定化ジルコニアにかえて、イットリアで安定化されたジルコニアを採用することは、当業者であれば容易になし得ることである。
したがって、本願発明3は、引用発明3及び上記引用例1の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.請求人の主張について
[1]相違点a,bについて
(1)請求人は、審判請求書の「(c)本願発明と引用発明との対比」において、「…Ra値が同じでもSa値が異なることがあり、Ra値とSa値は正の相関をもつものではないから、引用文献1…の発明のSa値が、本願の発明と重複するとは必ずしもいえるものではありません。」と主張しているが、本願明細書に開示された実施例1-4及び比較例1,2におけるRa値及びSa値をXY平面上にプロットすれば、両者が正の相関を有することが推認される。
すなわち、請求人の「Ra値とSa値は正の相関をもつものではない」という主張は、請求人自らが本願明細書において開示する結果と矛盾するものであるから、採用することができない。
(2)また、請求人は、審判請求書の「(c)本願発明と引用発明との対比」において、「中心面平均粗さSaで評価することにより、正確に本願発明の目的を達成する表面粗さを評価することができ、ひいては確実に電子部品焼成時のバインダーから発生するガス抜け性が良好で、かつジルコニア表面層と電子部品間の反応抑制に寄与する表面粗さを有する電子部品焼成用冶具を得ることができるものとなります。」とも主張している。
しかしながら、本願発明1及び本願発明2は電子部品焼成用治具に関する物の発明であり、評価方法の発明ではない。すなわち、上記主張は本願発明1ないし本願発明2に基づくものではないから、採用することができない。
[2]相違点cについて
請求人は、本願発明3の効果に関し、審判請求書の「(c)本願発明と引用発明との対比」において、「本願の請求項3に係る発明は、100?200メッシュのイットリア安定化ジルコニアと平均粒径3μmのイットリア安定化ジルコニアとを用いることにより、ジルコニア表面層の面が均一になりやすく、中心面平均粗さSaが10?40μmとなる電子部品焼成用治具を製造できます。」と主張しているが、本願発明3はジルコニア表面層の中心平均粗さを特定するものではない。
すなわち、上記主張は本願発明3に基づくものではないから、採用することができない。
6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1,2は、本願出願前に頒布された引用例1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
また、本願発明1-3は、引用例1に記載された発明及び上記引用例1の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-02 
結審通知日 2008-09-09 
審決日 2008-09-24 
出願番号 特願2002-270837(P2002-270837)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C04B)
P 1 8・ 113- Z (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 賢一  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 木村 孔一
大工原 大二
発明の名称 電子部品焼成用治具  
代理人 市澤 道夫  
代理人 竹内 三郎  

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