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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1188331
審判番号 不服2006-18559  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-24 
確定日 2008-11-19 
事件の表示 特願2001-391243「長さ調整可能の車用電源プラグ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 9日出願公開、特開2003-133016〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年12月25日の出願(パリ条約の例による優先権主張2001年10月25日、台湾)であって、平成18年5月19日付けで拒絶査定がなされ(発送:5月30日)、これに対し、同年8月24日に拒絶査定不服の審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲における請求項1?6に係る発明は、平成17年12月26日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲における請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下に記載された事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】 車両電源に電気的に接続されて車両電気機器に必要な電力を得るためのプラグ端と、電気機器に電気的に接続されて電力を電気機器に送るための車両電気機器接続端と、プラグ端に連結されてプラグ端を支持する第1のスリーブと、電気機器接続端に連結されて接続端を固定しかつ第1のスリーブと相互に嵌合連結された第2のスリーブと、第1のスリーブ上に取り付けられてその外面から突出する可撓性保持ユニットと、軸方向に対向して第2のスリーブの内面上に取り付けられて保持ユニットと形状的に合致係合する収受ユニットとを有してなり、保持ユニットが第1のスリーブを貫通する弾性要素と弾性要素の2個の端部に取り付けられた錠止要素とを有しており、第1のスリーブと第2のスリーブとの相対位置がスリーブに作用する外力に反応して変更され、外力が除かれたときには該相対位置が収受ユニット中の錠止要素により錠止され、これにより車両電力プラグの長さを調節することを特徴とする長さ調節可能の車用電源プラグ。」

3.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由において引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2000-200660号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。

ア.「【発明の属する技術分野】本発明は自動車の電源増設用プラグ一体式ソケット、特に、自動車のシガーライターソケット等の電源ソケットに差し込まれるプラグを有する、自動車の電源増設用プラグ一体式ソケットに関するものである。
【従来の技術】従来、複数の電装品を使用する目的で自動車の電源ソケットに差し込まれる電源増設用の自動車用プラグ一体式ソケットは既知であり、更に、例えばランプ付き、バッテリーチェック機能付きなどのものがある。」(段落【0001】、【0002】)

イ.「本発明の自動車の電源増設用プラグ一体式ソケットは図1?図4に示すように、その正面に電源増設用の例えば2つのソケット口4,4を互に隣接して有するソケット本体ケース5と、上記ソケット本体ケース5の背面に突設したプラグ部6とにより構成する。
上記プラグ部6は図5?図8に示すように筒状のプラグ本体7と、このプラグ本体7の先端に設けた小径の筒状リム部8と、このプラグ本体7とリム部8とに貫通して設けた貫通孔9と、この貫通孔9にその基部を進退自在に且つ回転自在に挿通しその先端が上記リム部8から外方に突出するようにした円筒状基部10と、図9に示すように、自動車のシガーライターソケット内のバイメタル部11に嵌合可能な形状の、上記円筒状基部10の頭部に設けた円板状部12と、上記円板状部12上面中央から外方に突出した状態で上記円筒状基部10内に貫通して設けた先端端子13と、上記プラグ本体7の側面に突出して設けた胴部端子14とにより構成する。
また、図8に示すように上記円筒状基部10の外周面には軸方向に伸びる溝15と、上記溝15の互に軸方向に離間した場所から円周方向に伸びる複数の切り欠き16とを設け、また、上記プラグ本体7の貫通孔9内の内周面には上記溝15及び切り欠き16に嵌合する大きさ、形状の突起17を設け、上記突起17が上記溝15,16にガイドされることにより上記円筒状基部10が上記プラグ本体7に対して相対的に進退でき、且つ、回転するように形成する。」(段落【0011】?【0013】)

ウ.「本発明の自動車の電源増設用プラグ一体式ソケットは、上記のような構成であるから、自動車の電源ソケットの深さ及びセンターパネル1のくぼみ1bの深さを考慮して、上記円筒状基部10を上記プラグ本体7に対して進退せしめ、上記突起17が所定の切り欠き16に位置したところで、上記円筒状基部10を上記プラグ本体7に対して相対的に回転せしめれば、上記円筒状基部10を所定の長さで上記プラグ本体7に固定でき、この際上記突起17が上記山部18を乗り越えて移動することでその固定が確実となり、また上記自動車の電源増設用プラグ一体式ソケットはその長さを種々に設定できるのでこれを自動車の種々のサイズの電源ソケットに適用できるようになる。」(段落【0015】)

以上を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「自動車の電源ソケットに差し込まれて電装品に必要な電力を得るための先端端子13と、電装品に電気的に接続されて電力を電装品に送るためのソケット本体ケース5と、先端端子13に連結されて先端端子13を支持する円筒状基部10と、ソケット本体ケース5に連結されてソケット本体ケース5を固定しかつ円筒状基部10と相互に嵌合連結されたプラグ本体7と、円筒状基部10の外周面には軸方向に伸びる溝15と、前記溝15の互に軸方向に離間した場所から円周方向に伸びる複数の切り欠き16とを設け、また、前記プラグ本体7の内周面には上記溝15及び切り欠き16に嵌合する大きさ、形状の突起17を設け 、円筒状基部10とプラグ本体7の相対位置が作用する外力に反応して変化し、外力が除かれたときには該相対位置が切り欠き16中の突起17により固定され、これにより自動車の電源増設用プラグ一体式ソケットの長さを調節可能な自動車の電源増設用プラグ一体式ソケット。」

4.発明の対比
本願発明と引用刊行物記載の発明を対比するに、引用刊行物記載の発明の「自動車の電源ソケット」は本願発明の「車両電源」に相当し、同様に、「電装品」は「(車両)電気機器」に、「先端端子13」は「プラグ端」に、「ソケット本体ケース5」は「車両電気機器接続端」に、「円筒状基部10」は「第1のスリーブ」に、「プラグ本体7」は「第2のスリーブ」に、「 切り欠き16」は「収受ユニット」に、「突起17」は「錠止要素」及び「(錠止要素を有する)保持ユニット」に、「自動車の電源増設用プラグ一体式ソケット」は「車両電力プラグ」及び「車用電源プラグ」に、各々相当する。
また、引用刊行物記載の発明の「差し込まれて」は本願発明の「電気的に接続されて」と同義であり、同様に「固定され」は「錠止され」と同義である。
さらに、本願発明における「第1のスリーブ上に取り付けられてその外面から突出する可撓性保持ユニットと、軸方向に対向して第2のスリーブの内面上に取り付けられて保持ユニットと形状的に合致係合する収受ユニットとを有してなり、保持ユニットが第1のスリーブを貫通する弾性要素と弾性要素の2個の端部に取り付けられた錠止要素とを有」する調節手段も、引用刊行物記載の「円筒状基部10の外周面には軸方向に伸びる溝15と、前記溝15の互に軸方向に離間した場所から円周方向に伸びる複数の切り欠き16とを設け、また、前記プラグ本体7の内周面には上記溝15及び切り欠き16に嵌合する大きさ、形状の突起17を設け」た調節手段も、共に、嵌合する二つのスリーブの一方に収受ユニットを、また、他方のスリーブに錠止要素を有する保持ユニットを設けた相対位置調節手段ということができる。
したがって、両者の一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
車両電源に電気的に接続されて車両電気機器に必要な電力を得るためのプラグ端と、電気機器に電気的に接続されて電力を電気機器に送るための車両電気機器接続端と、プラグ端に連結されてプラグ端を支持する第1のスリーブと、電気機器接続端に連結されて接続端を固定しかつ第1のスリーブと相互に嵌合連結された第2のスリーブと、嵌合する二つのスリーブの一方に収受ユニットを、また、他方のスリーブに錠止要素を有する保持ユニットを設けた相対位置調節手段とを有しており、第1のスリーブと第2のスリーブとの相対位置がスリーブに作用する外力に反応して変更され、外力が除かれたときには該相対位置が収受ユニット中の錠止要素により錠止され、これにより車両電力プラグの長さを調節することを特徴とする長さ調節可能の車用電源プラグ。

(相違点)
相対位置調節手段が、本願発明では「第1のスリーブ上に取り付けられてその外面から突出する可撓性保持ユニットと、軸方向に対向して第2のスリーブの内面上に取り付けられて保持ユニットと形状的に合致係合する収受ユニットとを有してなり、保持ユニットが第1のスリーブを貫通する弾性要素と弾性要素の2個の端部に取り付けられた錠止要素とを有する」ものであるのに対し、引用刊行物記載の発明では「第1のスリーブの外周面には軸方向に伸びる溝と、前記溝の互に軸方向に離間した場所から円周方向に伸びる複数の収容ユニットとを設け、また、前記第2のスリーブの内周面には上記溝15及び収容ユニットに嵌合する大きさ、形状の錠止要素を設け」たものである点。

5.当審の判断
以下、相違点につき検討する。
嵌合連結される2個の円筒形部材を多段に相対位置調整するための技術手段として、従来より多くの技術手段が提案されており、その一つとして、第1の円筒形部材上に取り付けられてその外面から突出する可撓性保持ユニットと、軸方向に対向して第2の円筒形部材の内面上に取り付けられて保持ユニットと形状的に合致係合する収受ユニットとを有してなり、保持ユニットが第1の円筒形部材を貫通する弾性要素と弾性要素の2個の端部に取り付けられた錠止要素とを有する相対位置調整手段を用いることも、従来より周知の技術手段である[例えば、実公昭8-12051号公報(従来技術についての記載)、特公昭55-18380号公報、実願昭58-48940号(実開昭59-155312号)のマイクロフィルム(第3図)参照]。
よって、引用刊行物記載の発明において、相対位置調節手段として前記周知の技術手段を適用し、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば、容易に想到し得た事項である。

そして、本願発明の奏する効果も、引用刊行物記載の発明及び周知の技術手段から、当業者が予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物記載の発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-19 
結審通知日 2008-06-25 
審決日 2008-07-08 
出願番号 特願2001-391243(P2001-391243)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 前田 仁
清水 富夫
発明の名称 長さ調整可能の車用電源プラグ  
代理人 菅原 一郎  

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