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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1188334
審判番号 不服2006-26442  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-24 
確定日 2008-11-19 
事件の表示 特願2005-314616「ダイエット食品」拒絶査定不服審判事件〔平成19年5月17日出願公開、特開2007-117005〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成17年10月28日の特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成18年1月25日付け 拒絶理由通知
平成18年3月31日 意見書・手続補正書
平成18年10月13日付け 拒絶査定
平成18年11月24日 審判請求書・手続補足書

第2 本願発明について
この出願の発明は、平成18年3月31日付けでした手続補正により補正された明細書及び図面(以下、「本願明細書等」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される下記のものである。(以下、順に、「本願発明1」?「本願発明3」といい、併せて「本願発明」という。)
【請求項1】「ビタミン、カゼインホスホペプチド(CPP)、カルシウム、及びフラクトオリゴ糖及び水飴を含む固形体、
ガルシニア、L-カルニチン、アカメガシワ、紅景天エキス、及びかき肉エキスを含む錠剤、
アミノ酸、有機酸、及び大豆レシチンを含む顆粒の3形態の組み合わせからなるダイエット食品。」
【請求項2】「請求項1において、ビタミンがビタミンA、B1、B2、B6、B12、及びCからなるダイエット食品。」
【請求項3】「請求項1において、アミノ酸がアルギニン、リジン、プロリン、及びアラニンであり、有機酸がクエン酸、及びリンゴ酸であるダイエット食品。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明についての原査定の拒絶の理由の概要は、「この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。

1.特開2003-339344号公報(原査定における引用例1。以下、「刊行物1」という。)
2.特開2003-52334号公報(原査定における引用例2。以下、「刊行物2」という。)
3.特開2005-2035号公報(原査定における引用例3。以下、「刊行物3」という。)
4.特開平9-227398号公報(原査定における引用例4。以下、「刊行物4」という。)
5.特開2002-316938号公報(原査定における引用例5。以下、「刊行物5」という。)
6.特開昭61-85168号公報(原査定における引用例6。以下、「刊行物6」という。)
7.特開平10-84880号公報(原査定における引用例7。以下、「刊行物7」という。)
8.特開2001-187732号公報(原査定における引用例8。以下、「刊行物8」という。)

第4 刊行物に記載された事項
1 刊行物1について
1-a「【請求項1】 (A)乳タンパク質および大豆タンパク質からなる群より選択される少なくとも1種、(B)酵母およびゴマからなる群より選択される少なくとも1種、ならびに(C)食物繊維を含む、ダイエット食品。
【請求項2】 さらに、(D)カルシウム化合物を含む、請求項1に記載のダイエット食品。
【請求項3】 さらに、(E)カゼインホスホペプチドを含む、請求項2に記載のダイエット食品。」(【特許請求の範囲】)

1-b「【発明が解決しようとする課題】
そこで、十分な栄養が摂取でき、ストレスがかかりにくいダイエット食品が望まれている。」(【0003】)

1-c「乳タンパク質としては、例えば、スキムミルク、脱脂粉乳、ミルクカゼイン、乳清タンパク質、およびそれらの加工品が挙げられる。乳タンパク質は、9種類の必須アミノ酸(イソロイシン、ロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、リジン、およびヒスチジン)を豊富に含んでいるので、栄養面からダイエット食品成分として適している。また、米を主食とする日本の食生活では、リジンやスレオニンを補う必要があり、これを補充することができる。
大豆タンパク質としては、例えば、きなこ、大豆粉、納豆、およびそれらの加工品が挙げられる。大豆タンパク質も、乳タンパク質と同様に必須アミノ酸を豊富に含むため、ダイエット食品成分として適している。」(【0010】?【0012】)

1-d「本発明のダイエット食品は、酵母またはゴマを、ビタミンおよびミネラルの供給を主たる目的として含む。近年、天然志向が高まっており、ビタミンおよびミネラルの供給源とし天然素材を用いることにより、ダイエット時に感じるストレスも軽減される。」(【0013】)

1-e「食物繊維には水溶性食物維繊維および不溶性食物繊維があり、いずれも便秘改善効果のほかに、腸内環境を整える作用を有する。本発明のダイエット食品には、水溶性食物維繊維および不溶性食物繊維のいずれを用いてもよい。」(【0021】)

1-f「本発明のダイエット食品は、上記の(A)?(C)を含み、必要に応じて(D)および(E)を含む。本発明のダイエット食品は、そのままか、あるいは必要に応じて、通常食品に用いられる種々の添加剤も含む。このような添加剤としては、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物などが挙げられる。例えば、栄養補助剤として、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、キトサン、レシチンなどを加え、さらに糖液や調味料を加えて、味を整えることができる。これらは、必要に応じて、ハードカプセル、ソフトカプセルのようなカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤の形状に成形され、または粉末状、顆粒状、飴状などの形態にされ得る。…(略)…」(【0029】)

1-g「[実施例2]
(A)乳タンパク質および大豆タンパク質として、1kgの粉末大豆タンパク質(株式会社向井珍品堂)、0.5kgの黄な粉(株式会社向井珍品堂)、0.5kgのスキムミルク(南日本酪農協同組合)、(B)酵母およびゴマとして、0.2kgのビール酵母(アサヒビール薬品株式会社)および0.2kgのすりゴマ(株式会社向井珍品堂)、(C)食物繊維として、0.5kgの難消化性デキストリン(パインファイバーC;松谷化学工業株式会社)、(D)カルシウム化合物として、0.1kgの卵殻カルシウム(キューピー株式会社)、ならびに(E)カゼインホスホペプチドとして、0.02kgのカゼインホスホペプチド(明治製菓株式会社)を混合して、粉末状の食品3(3.32kg)を製造した。この食品3には、カルシウム化合物に加えて、カゼインホスホペプチドも含まれているため、ダイエット時に生じやすいカルシウム不足を解消し、よりスムーズにダイエットを行うことができる。」(【0040】)

1-h「【発明の効果】
(A)乳タンパク質および大豆タンパク質からなる群より選択される少なくとも1種、(B)酵母およびゴマからなる群から選択される少なくとも1種、ならびに(C)食物繊維を含む食品を摂取することにより、十分に栄養を補給しながら、しかもダイエットによるストレスを感じることなく、優れたダイエット効果が得られる。」(【0041】)

2 刊行物2について
2-a「【請求項1】 麦若葉末とスピルリナとを含有する、ダイエット食品。
【請求項2】 さらに乳酸菌およびオリゴ糖からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項1に記載のダイエット食品。」(【特許請求の範囲】)

2-b「【発明が解決しようとする課題】
そこで、栄養摂取量を減らさずに肥満を解消できるダイエット食品が望まれている。」(【0005】)

2-c「オリゴ糖は、腸内細菌によって資化され、一般に腸内環境を整備すると考えられているので、不溶性食物繊維と同じ機能、すなわち、大腸がん予防効果、腸内環境の改善に作用すると考えられる。
オリゴ糖としては、ラクチュロース、パラチノース、パラチノースオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラフィノース、スタキオース、キシロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、トレハロース、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、ビートオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖などが挙げられる。」(【0020】?【0021】)

2-d「上記のようにして配合された健康食品は、そのまま用いられるか、あるいは賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などと混合され得る。例えば、栄養補助剤として、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、キトサン、レシチンなどが配合され、さらに糖液や調味料を加え、味を整えることができる。そしてこれらは、必要に応じて、ハードカプセル、ソフトカプセルのようなカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤としてか、または粉末状、顆粒状、飴状などの形状に成形され得る。…(略)…」(【0026】)

3 刊行物3について
3-a「【請求項1】 コエンザイムQ10および脂肪燃焼促進物質を含有することを特徴とするコエンザイムQ10含有組成物。
【請求項2】 脂肪燃焼促進物質が、ジアシルグリセロール、共役リノール酸、カプサイシン、ガルシニアエキス、L-カルニチン、アミノ酸およびカテキン類から選択される1種以上である請求項1記載の組成物。
【請求項3】 コエンザイムQ10を0.0001?50質量%、脂肪燃焼促進物質を0.005?50質量%含有する請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】 請求項1?3に記載の組成物を有効成分とするダイエット剤。
【請求項5】 請求項1?3に記載の組成物を含有する飲食品。」(【特許請求の範囲】)

3-b「本発明において用いるアミノ酸は、脂肪燃焼促進作用がある任意のL-アミノ酸であるが、好ましくは天然のタンパク質を構成するアミノ酸であり、より好ましくはリジン、アラニン、アルギニン、プロリンである。これらのアミノ酸は食品中に含まれているため安全性などには全く問題はなく、単独として用いても混合物として用いてもよいが、本発明の組成物および飲食品中のアミノ酸の含有量はその剤型や飲食品の形態により異なるが、通常は0.001?50質量%、好ましくは0.01?45質量%の範囲である。…(略)…」(【0018】)

3-c「L-カルニチンは、塩化カルニチンは消化機能亢進剤として用いられているほか、脂質代謝においてミトコンドリアへの脂肪酸の運搬に関与し、脂肪燃焼促進作用の他に疲労回復作用を有することが知られている。本発明の組成物および飲食品中のL-カルニチンの含有量はその剤型や飲食品の形態により異なるが、通常は0.001?50質量%、好ましくは0.01?45質量%の範囲である。…(略)…」(【0019】)

3-d「ガルシニアエキスは、(-)ヒドロキシクエン酸(HCA)を主な主成分とし、これらが糖質からの脂肪合成を抑制する。本発明の組成物および飲食品中のガルシニアエキスの含有量はその剤型や飲食品の形態により異なるが、通常は0.1?50質量%、好ましくは0.1?45質量%の範囲である。…(略)…」(【0020】)

3-e「コエンザイムQ10および脂肪燃焼促進剤を含有するダイエット剤の剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、坐剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤、注射剤等が挙げられる。」(【0024】)

4 刊行物4について
4-a「【請求項1】 ブドウ種子、カキ葉、プーアル茶、オトギリソウ、リンゴ、タラ、ウラジロガシ、バナバ葉、アカメガシワ、サンシュユ、訶子、トチュウ葉から選ばれる少なくとも1種の植物の抽出物を有効成分とする抗肥満剤。
…(略)…
【請求項6】 ブドウ種子、オトギリソウ、タラ、ウラジロガシ、アカメガシワ、サンシュユ、訶子から選ばれる少なくとも1種の植物の抽出物を食品又は飲料に加えてなる飲食物。」(【特許請求の範囲】)

4-b「肥満の治療及び予防法としては、肉体的及び精神的苦痛を強いることなく通常の食事形態をとりながら、余剰のエネルギーだけを最小限度の行為で除去し、なおかつエネルギー源以外の栄養成分はできるだけ除去しない方法が望まれる。食品中のエネルギー源はデンプン等の糖質や、脂肪、脂肪酸、グリセリド、グリセロール、コレステロール等の脂質が大部分であり、したがってこれらの消化吸収を抑制又は阻害すれば肥満の治療・予防ができるものと期待される。…(略)…」(【0003】)

4-c「【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記事情に鑑み研究を行った結果、ブドウ種子、カキ葉、プーアル茶、オトギリソウ、リンゴ、タラ、ウラジロガシ、バナバ葉、アカメガシワ、サンシュユ、訶子、トチュウ葉の抽出物が糖質及び脂質の消化吸収を阻害し、かつα-アミラーゼ及びリパーゼを阻害することを見出し、本発明を完成した。」(【0007】)

5 刊行物5について
5-a「【請求項3】 タラノキ植物(Aralia elata、ウコギ科)、紅景天属植物(Rhodiola属、ベンケイソウ科)、及び、サラシア属植物(Salacia属、ニシキギ科)の三種から成る糖類の吸収阻害能に優れた粉末及び/又は抽出物を有効成分とするダイエット剤。」(【特許請求の範囲】)

5-b「…(略)…即ち、本発明は、タラノキ植物(Aralia elata、ウコギ科)、紅景天属植物(Rhodiola属、ベンケイソウ科)、及びサラシア属植物(Salacia属、ニシキギ科)の三者を混合して用いると、エネルギーの源であるブドウ糖などの糖質の血中への移行を持続性を保って調整することができるという知見を生かした抗糖尿病剤に関するものである。また、本発明は、前記した三種混合体の特性、即ち、エネルギー源であるブドウ糖などの単糖の血中への移行を調整するという特性を利用したダイエット剤に関するものである。」(【0011】)

6 刊行物6について
6-a「(1)カキ(Ostrea gigas Thunb.)の全部位又は必要部位の粉末及び/又はこの抽出エキスを必須成分として配合してなる長期施用型抗肥満食品。」(特許請求の範囲)

6-b「以上詳述した如く、この発明に係る長期施用型抗肥満食品はカキ(Ostrea gigas Thunb.)の全部位又は必要部位の粉末及び/又はこの抽出エキスを必須成分として配合してなるカキ肉エキスを含む抗肥満食品であるから、…(略)…」

7 刊行物7について
7-a「【請求項1】 大豆から油脂を製造する工程で得られる粗大豆レシチンに含まれるリン脂質を有効成分とする脂質代謝促進作用を有するリン脂質含有組成物。」(【特許請求の範囲】)

7-b「本発明の課題は、これらの点に鑑みて、カロリー制限を必要とせず、かつ副作用がなく安全に体脂肪の代謝を促進させて肥満の改善および治療に利用できるような、脂質代謝促進作用を有する組成物を実現することにある。」(【0006】)

7-c「【課題を解決するための手段】
上記目的に対し、本発明者らは種々の植物成分と脂質代謝促進効果との関係について鋭意研究を重ねた結果、大豆中に含まれるリン脂質に脂質代謝を促進させる効果のあることを見い出した。さらに、植物成分ではないが、卵黄中に含まれるリン脂質にも同様の効果のあることを見い出し、本発明を完成するに至った。」(【0007】)

8 刊行物8について
8-a「【特許請求の範囲】
【請求項1】 トリカルボン酸回路関連有機酸、その誘導体又はそれらの塩を有効成分として含有することを特徴とする、レプチン分泌促進剤。
【請求項2】 リンゴ酸、コハク酸、それらの誘導体又はそれらの塩を有効成分として含有することを特徴とする、レプチン分泌促進剤。
…(略)…
【請求項6】 請求項1?4いずれか1項に記載のレプチン分泌促進剤を含有することを特徴とする体重増加抑制作用を有する健康食品。…」(【特許請求の範囲】)

8-b「以下本発明を詳細に説明する。本発明のレプチン分泌促進剤とは、哺乳動物に経口または非経口投与したとき、血液中のレプチン濃度を上昇せしめることのできる物質であり、レプチン濃度の上昇により、肥満やその関連疾患及びそれらの症状を制御し、予防治療する作用を有する物質である。上記関連疾患としては、II型糖尿病(非インスリン依存型糖尿病)、高血圧症及び高脂血症のような重要な疾患などが挙げられ、また上記症状の制御、予防治療作用としては、食欲抑制、体重減少(肥満抑制)、血液中の脂質量の減少、酸素消費量や活動性の増進、血糖値やインスリン分泌の低下、脂肪組織重量や肝臓重量の減少、動脈血栓の防止、高血圧の低下、胆石の防止などの種々の作用が挙げられる。」(【0008】)

8-c「本発明のレプチン分泌促進剤としては、血液中のレプチン濃度を上昇せしめることのできる物質であれば如何なる物質でもよく、例えば、トリカルボン酸回路関連有機酸、それらの物質の誘導体でもよく、それらの種々の塩なども挙げられる。更に、生薬の抽出物、例えば、ミズキ科の植物、好ましくは、サンシュユ(Cornus officinalis)などの抽出物などが挙げられる。トリカルボン酸回路関連有機酸としては、例えば、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、イソクエン酸、オキサロ酢酸、α-オキソグルタル酸、フマル酸、ピルビン酸などが挙げられるが、好ましくはリンゴ酸やコハク酸などが挙げられる。…(略)…」(【0009】)

8-d「本発明の分泌促進剤は、経口又は注射等により非経口投与することができるが、簡便に投与できる点で、経口投与が好ましい。投与する場合、それぞれの投与経路に適した任意の剤型に製剤化することができ、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、コーティング錠剤、カプセル剤、トローチ剤、液剤、シロップ剤などの経口投与に適した剤型;注射剤、点滴剤などの非経口投与に適した剤型にすることもできる。」(【0013】)

第5 当審の判断
1 刊行物に記載された発明
(1)刊行物1に記載された発明
刊行物1は、「(A)乳タンパク質および大豆タンパク質からなる群より選択される少なくとも1種、(B)酵母およびゴマからなる群より選択される少なくとも1種、ならびに(C)食物繊維を含む、ダイエット食品」に関し記載するものであり(摘記1-a【請求項1】)、刊行物1には、前記ダイエット食品はさらに、(D)カルシウム化合物および(E)カゼインホスホペプチドを含む旨の記載がされている(摘記1-a【請求項2】及び【請求項3】)。
そして、実施例2には、(A)乳タンパク質および大豆タンパク質、(B)酵母およびゴマ、(C)食物繊維、(D)カルシウム化合物および(E)カゼインホスホペプチドを含む粉末状の食品を製造した旨の記載がされている。(摘記1-g)
そうすると、刊行物1には、
「(A)乳タンパク質および大豆タンパク質、(B)酵母およびゴマ、(C)食物繊維、(D)カルシウム化合物および(E)カゼインホスホペプチドを含む、粉末状のダイエット食品」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2 本願発明と引用発明との対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明は、本願明細書等の【0014】に「固形体、錠剤、顆粒剤の3つの形態からなるダイエット食品によって」と記載されていることからすると、固形体、錠剤、顆粒のそれぞれがダイエット食品であると解され、そうすると、本願発明1は、
「ビタミン、カゼインホスホペプチド(CPP)、カルシウム、及びフラクトオリゴ糖及び水飴を含む固形体である第1のダイエット食品、
ガルシニア、L-カルニチン、アカメガシワ、紅景天エキス、及びかき肉エキスを含む錠剤である第2のダイエット食品、
アミノ酸、有機酸、及び大豆レシチンを含む顆粒である第3のダイエット食品、
の3形態の組み合わせからなるダイエット食品。」の発明であるといえ、一方、引用発明は、「ダイエット食品」を「第1のダイエット食品」と言い換えても全く同じ事であるから、
「(A)乳タンパク質および大豆タンパク質、(B)酵母およびゴマ、(C)食物繊維、(D)カルシウム化合物および(E)カゼインホスホペプチドを含む粉末状である第1のダイエット食品」といえる。
そこで、本願発明1の第1のダイエット食品と引用発明とを対比すると、引用発明の「カルシウム化合物」及び「カゼインホスホペプチド」は、本願発明1の第1のダイエット食品の「カルシウム」及び「カゼインホスホペプチド(CPP)」に相当する。
してみると、両者は、
「カゼインホスホペプチド(CPP)及びカルシウムを含む、第1のダイエット食品。」
という点で一致し、下記の点(i)?(ii)において相違するということができる。
(i)第1のダイエット食品が、引用発明においては、さらに、(A)乳タンパク質および大豆タンパク質、(B)酵母およびゴマ、(C)食物繊維を含み、かつ粉末状であるのに対して、本願発明1においては、さらに、ビタミン、フラクトオリゴ糖及び水飴を含み、かつ固形体である点
(ii)ダイエット食品が、引用発明においては、第1のダイエット食品のみであるのに対して、本願発明1においては、第1のダイエット食品に加えて第2及び第3のダイエット食品を含むものであって、第2のダイエット食品が、ガルシニア、L-カルニチン、アカメガシワ、紅景天エキス、及びかき肉エキスを含む錠剤であり、第3のダイエット食品が、アミノ酸、有機酸、及び大豆レシチンを含む顆粒である点

イ 判断
(ア)相違点(i)について
刊行物1には、(B)酵母およびゴマがビタミン及びミネラルの供給を目的として(摘記1-d)添加されている旨記載されていることから、(B)酵母およびゴマをビタミンに換えることは、当業者が適宜なし得るところといえる。
また、刊行物1には、(C)食物繊維には、水溶性食物繊維および不溶性食物繊維があり、これらが腸内環境を整える作用を有するものであることが記載されており(摘記1-e)、刊行物2には、フラクトオリゴ糖を含むオリゴ糖が、不溶性食物繊維と同じ機能、すなわち、腸内環境の改善に作用する旨記載されていることから(摘記2-c)、引用発明における食物繊維をフラクトオリゴ糖に換えることも、当業者が適宜なし得るところといえる。
そして、刊行物1及び刊行物2には、ダイエット食品が、必要に応じて、錠剤、粉末状、顆粒状などの様々な形態に成形される旨記載されており(摘記1-f、2-d)、一方、ダイエット食品において、固形状、すなわち固形体にすること、その際に水飴が用いられることも普通のことである(必要ならば、特開平9-183735号公報、特開平6-165656号公報、特開2002-85008号公報等参照)。
ここで、刊行物1には、(A)乳タンパク質および大豆タンパク質が必須アミノ酸を含んでいるので、栄養面からダイエット食品成分として適している旨記載されているが(摘記1-c)、ダイエット食品において、栄養補充を目的として、大豆蛋白などの蛋白質(プロテイン)を添加することは、普通に行われていることであるから(例えば、特開平6-165656号及び摘記2-d等参照)、他の成分から必須アミノ酸を摂取できるのであれば、必ずしも乳タンパク質及び大豆タンパク質を含ませる必要がないことは当然である。しかも、本願発明1の第3のダイエット食品には必須アミノ酸を含むアミノ酸が含まれているのであるから、ダイエット食品全体として、必須アミノ酸の有無が実質的な差異であるとまではいえない。そうしてみると、引用発明において、(A)乳タンパク質および大豆タンパク質を除くことも、当業者が適宜なし得ることである。
してみると、引用発明において、(A)乳タンパク質および大豆タンパク質を除き、(B)酵母およびゴマをビタミンに、(C)食物繊維をフラクトオリゴ糖に換えて、ビタミン、カゼインホスホペプチド(CPP)、カルシウム、及びフラクトオリゴ糖及び水飴を含む固形体のダイエット食品とすることは、当業者が日常的に検討し、試行してみる範囲内のものといえるから、この程度のことは、当業者が容易に想到することといえる。

(イ)相違点(ii)について
ダイエット食品の分野において、精神的及び肉体的負担を軽減し、栄養バランスの崩れを防止できるようにすることは、周知の課題であり(例えば、摘記1-b、2-b、4-b及び7-b)、このような課題解決のために、栄養成分に加えて、消化吸収阻害物質及び脂質代謝促進物質等のダイエット作用を有する物質を混合してダイエット食品とすることは、通常行われていることである(例えば、摘記1-c、4-c及び7-c)。さらに、ダイエット食品において、錠剤や顆粒などは通常用いられる形態であるといえる(例えば、摘記1-f、2-d、3-e、8-d)。
一方、刊行物3には、脂肪燃焼促進物質として、ガルシニアエキス、L-カルニチン、アミノ酸が記載され(摘記3-a、3-b、3-c及び3-d)、刊行物4には、糖質及び脂質の消化吸収を阻害するものとして、アカメガシワの抽出物が記載され(摘記4-c)、刊行物5には、単糖の血中への移行を調節する物質として、紅景天属植物の抽出物、すなわち紅景天エキスが記載され(摘記5-a及び5-b)、刊行物6には、カキ肉エキスを含む抗肥満食品が記載され(摘記6-a及び6-b)、刊行物7には、粗大豆レシチンに含まれるリン脂質が脂質代謝促進作用を有する旨が記載されており(摘記7-a及び7-c)、刊行物8には、リンゴ酸やコハク酸がレプチン分泌促進物質であり、レプチン濃度の上昇により肥満の予防や体重増加抑制作用を有する旨の記載がされている(摘記8-a、8-b及び8-c)。
してみると、引用発明において、より栄養バランスがよく、ダイエット作用を向上させることを目的として、ガルシニア、L-カルニチン、アカメガシワ、紅景天エキス、かき肉エキス、アミノ酸、有機酸、及び大豆レシチンを加えること、そして、これらの成分を適宜組み合わせて、錠剤及び顆粒とすることは、当業者であれば適宜なし得ることである。
したがって、引用発明において、さらに、第2のダイエット食品、第3のダイエット食品を加えることは、当業者が容易に想到することである。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1のビタミンを特定するものであるが、ビタミンA、B_(1)、B_(2)、B_(6)、B_(12)及びCが栄養成分として特に重要であることは、当該技術分野における技術常識であるから、引用発明において、ビタミンをビタミンA、B_(1)、B_(2)、B_(6)、B_(12)及びCとすることは、当業者が容易に想到することである。

(3)本願発明3について
本願発明3は、本願発明1のアミノ酸及び有機酸を特定するものであるが、刊行物3には、アルギニン、リジン、プロリン及びアラニンが脂肪燃焼促進作用を有することが記載されており(摘記3-b)、刊行物8には、クエン酸及びリンゴ酸がレプチン分泌促進剤であり(摘記8-c)、レプチン分泌促進剤が肥満やその関連疾患の予防や治療に用いられることが記載されているから(摘記8-b)、ダイエット作用を向上させるために、引用発明において、アミノ酸をアルギニン、リジン、プロリン及びアラニンに、有機酸をクエン酸及びリンゴ酸にすることは、当業者が容易に想到することである。

(4)本願発明の効果について
本願発明の効果は、本願明細書等の【0014】の記載からみて、次のとおりである。
ア 摂取カロリー制限を補助すると共に、体に必要なビタミン類をバランスよく配合してあるので食事の替わりとすることができる
イ 固形体を咀嚼することによって、カロリー制限だけでなくカロリー消費を促進するものである
ウ 食事の前に錠剤を摂取することによって、糖質の吸収、脂質合成が阻害され、更に、脂肪燃焼が促進されるので、太る原因となる物質が体内に貯まらず、ダイエット効果が得られる
エ 就寝前、または運動の前に顆粒を摂取することによって、体内に貯まった体脂肪等を効率よく燃焼する
オ 精神的、及び肉体的苦痛を伴うことなくダイエットをおこなうことができる
カ 必要な栄養分が添加してあるので、栄養不足によって体調を崩したり、骨の発育阻害や骨密度の低下を防止することができる
これに対して、引用発明は、摘記1-hに示されているように、「十分に栄養を補給しながら、しかもダイエットによるストレスを感じることなく、優れたダイエット効果が得られる」ものであるから、上記ア、カ及びオについては、予測できる範囲の効果であるといえる。
また、イについては、水飴を基材とする食品が咀嚼を要するものであることは、当該技術分野における技術常識であるから(必要であれば、特開2002-85008号公報参照)、上記「(1)イ(ア)」で示したように、引用発明において、水飴を基材として添加して得られる固形体は、咀嚼を必要とし、咀嚼することによって、筋肉が収縮し、カロリー消費がされることは自明であるといえる。
そして、ウ及びエについては、上記「(1)イ(イ)」で示したように、引用発明において、ガルシニア、L-カルニチン、アカメガシワ、紅景天エキス、かき肉エキス、アミノ酸、有機酸、及び大豆レシチン等の消化吸収阻害物質及び脂質代謝促進物質等を添加することにより、ダイエット効果が得られることは当然であり、しかも、これらの効果については裏付けられていないから、この程度の効果は予測できる範囲のものである。

さらに、本願明細書等の実施例を参酌すると、「動物実験(固形体の効果)」において、コントロール群には高脂肪食を、ダイエット群には高脂肪食の1/3を本発明の固形体に置換した飼料を与えた結果が図2に示されているが、4週目にはコントロール群もダイエット群もほぼ同じ体重増加率であることから、「ダイエット群はコントロール群に比較して体重増加率が抑制される傾向にある」とはいえない。
また、「固形体の摂取による顎関節周囲の体表面温度に及ぼす影響」について、【0020】の記載と共に、平成18年11月24日付け手続補足書においてサーモグラフィー撮影の結果を示しているが、被験者の顎付近の体表面温度が上昇していることは、明らかであるが、上述したように、咀嚼することによって、筋肉が収縮し、カロリー消費がされることは自明であるといえ、この結果が格別な効果であるとは認められない。
さらにまた、「ダイエットモニター試験」については、本願発明の3形態の組み合わせからなるダイエット食品をどのように摂取したのか(例えば、1日何回か、どの位の量か等)明らかではなく、その結果として、脂肪重量、体重及び筋肉量の変化量を示しているが、摂取前にどの程度の脂肪重量、体重及び筋肉量であったのか明らかではないので、この結果が格別顕著な効果であるとは認められず、かつ、公知のダイエット成分を組み合わせたものを摂取したのであるから、この程度の効果は十分に予測し得ることである。

(6)請求人の主張について
請求人は、平成18年11月24日付け審判請求書において、「特定の成分の固形体、錠剤、及び顆粒の3つの形態に各成分を分配して、全体としてダイエット食品とすることはいずれの引用文献にも記載されておらず、また、示唆されていないので、本願発明は、引用文献に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたとはいえない。」と主張する。
しかしながら、ダイエット食品において、固形体、錠剤、顆粒の形態がいずれも普通のものであることは、上記「(1)イ(イ)」に示したとおりであり、また、どの形態に何を配分するかは、作りやすさ、摂取しやすさ、各成分の作用の共通性や相反性、どのような人を対象にするか等により、適宜設定すれば足る程度のものであり、また、本願発明の3形態を採用したことによる効果が格別に優れたものでないことは上記したとおりであるので、このような3形態としたものが、上記引用文献に具体的に記載されていないことをもって、本願発明を容易でない、とすることはできない。
したがって、請求人の主張によっても、当審の判断に変わりはない。

3 小括
よって、本願発明1?3は、本願出願前に頒布された刊行物1?8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-10 
結審通知日 2008-09-16 
審決日 2008-09-29 
出願番号 特願2005-314616(P2005-314616)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内藤 伸一伏見 邦彦  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 鈴木 紀子
坂崎 恵美子
発明の名称 ダイエット食品  
代理人 石井 良和  

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