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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1188442
審判番号 不服2005-1789  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-03 
確定日 2008-11-28 
事件の表示 特願2003-161416「採点端末装置及び採点端末システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月24日出願公開、特開2004-361755〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年6月5日の出願であって、平成16年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年2月3日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月7日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成17年3月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年3月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲(請求項数5)を補正するものであって、補正前の請求項1が補正後の請求項1に対応することは明らかであり、請求項1についての以下の補正を含む。

「上筐体部と下筐体部とを備える採点端末装置本体と、採点端末装置本体の前面中央に位置している用紙ストッカーと、用紙ストッカー上部に位置している用紙取り出し口と、下筐体部の前面右寄りに位置するフレキシブルディスクドライブと、前記フレキシブルディスクドライブ近傍に設けた電源スイッチと、上筐体部の上面中央に設けたタッチパネル付き液晶表示部と、前記液晶表示部の右側に位置するキーボードユニットと、前記採点端末装置本体内部であって前記液晶表示部の裏面側に設けられるプリンタと、採点端末装置本体内に採点端末装置本体の動作の制御や採点及びその集計を担うCPUなどの演算制御部を備え、
前記液晶表示部は答案用紙に設けられている解答欄のうち採点対象の解答欄に対応する領域を識別表示するとともに当該領域に対応する出題番号及び前記答案用紙に記載されている受験番号を表示し、
前記タッチパネルは前記表示部に識別表示されている領域に対応する解答欄に記載されている解答の採点結果を入力し、
前記プリンタは前記答案用紙を搬入して前記採点結果入力部によって入力された採点結果を印字してから搬出する採点端末装置。」を

「上筐体部と下筐体部とを備える採点端末装置本体と、採点端末装置本体の前面中央に位置している用紙ストッカーと、用紙ストッカー上部に位置している用紙取り出し口と、採点端末装置本体内に採点端末装置本体の動作の制御や採点及びその集計を担うCPUなどの演算制御部と、下筐体部の前面右寄りに位置し前記演算制御部と接続されたフレキシブルディスクドライブと、前記フレキシブルディスクドライブ近傍に設けた電源スイッチと、上筐体部の上面中央に設けた前記演算制御部と接続されたタッチパネル付き液晶表示部と、前記液晶表示部の右側に位置し前記演算制御部と接続されたキーボードユニットと、前記採点端末装置本体内部であって前記液晶表示部の裏面側に設けられて前記演算制御部と接続されて答案用紙を吸入口から吸入してローラで搬入する上搬送ユニットと印字部を備える下搬送ユニットとからなるプリンタと、前記演算制御部と接続されたメモリとを備え、
答案用紙が液晶表示部に載置され前記液晶表示部は答案用紙に設けられている解答欄のうち採点対象の解答欄に対応するメモリに記憶してある領域を識別表示するとともに当該領域に対応する出題番号及び前記答案用紙に記載されている受験番号を表示し、
前記タッチパネルは前記表示部に識別表示されている領域に対応する解答欄に記載されている解答の採点結果を入力し、
前記プリンタは吸入口近傍のストッカーに前記答案用紙を搬入して上搬送ユニットと下搬送ユニットを経由して前記採点結果入力部によって入力された採点結果を印字してから搬出する採点端末装置。」とする補正。

(2)補正の内容についての検討
まず、請求項1に「前記採点結果入力部」との記載があるが、当該「前記採点結果入力部」に相当する部分は、それ以前に記載がないから、当該「前記採点結果入力部」は「採点結果入力部」の誤記と認定する。

本件補正のうち、請求項1についての補正には、以下の補正事項が含まれる。

a.「フレキシブルディスクドライブ」を「前記演算制御部と接続されたフレキシブルディスクドライブ」とする補正。
b.「タッチパネル付き液晶表示部」を「前記演算制御部と接続されたタッチパネル付き液晶表示部」とする補正。
c.「キーボードユニット」を「前記演算制御部と接続されたキーボードユニット」とする補正。
d.「プリンタ」を「前記演算制御部と接続されて答案用紙を吸入口から吸入してローラで搬入する上搬送ユニットと印字部を備える下搬送ユニットとからなるプリンタ」とする補正。
e.「前記演算制御部と接続されたメモリ」を追加する補正。
f.「答案用紙が液晶表示部に載置され」を追加する補正。
g.「採点対象の解答欄に対応する領域」を「採点対象の解答欄に対応するメモリに記憶してある領域」とする補正。
h.「前記プリンタは前記答案用紙を搬入して」を「前記プリンタは吸入口近傍のストッカーに前記答案用紙を搬入して上搬送ユニットと下搬送ユニットを経由して」とする補正。

a.?c.の補正事項は、「フレキシブルディスクドライブ」、「タッチパネル付き液晶表示部」、「キーボードユニット」がそれぞれ「演算制御部と接続された」ことを限定するものである。
d.及びh.の補正事項は、「プリンタ」が「演算制御部と接続されて答案用紙を吸入口から吸入してローラで搬入する上搬送ユニットと印字部を備える下搬送ユニットとからなる」ものであることを限定するとともに、「吸入口近傍のストッカー」に答案用紙を搬入し、「上搬送ユニットと下搬送ユニットを経由して」搬出されることを限定するものである。
e.及びg.の補正事項は、採点端末装置の構成として当然備えられている「メモリ」について記載し直したものであり、「採点対象の解答欄に対応する領域」が「メモリに記憶してある」ことを限定するものである。
f.の補正事項は、「答案用紙が液晶表示部に載置され」ることができる構成であることを単に述べたにすぎない。
したがって、本件補正は、いずれも平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3)引用刊行物
本願出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された特公平5-74825号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

ア.「解答欄が任意の様式で作成された答案用紙に対応して前記各解答欄と対応する位置で点灯して採点の表示を行う採点表示部を備える採点表示手段と、前記採点表示部上に答案用紙を載置してこの答案用紙の解答欄に対応して答案用紙上に記載された受験者に関するデータ、採点者に関するデータおよび解答に対する評価としての採点データを入力する採点入力手段とを備え、採点作業に際し、採点表示手段の採点表示部における解答欄の点灯表示位置を制御し、採点入力手段により点灯表示された解答欄に記載の解答を評価して採点データを入力することによりその評価内容に応じて予め設定した配点に基づいて演算処理を行い、その演算処理結果を記憶媒体に記憶保持し、さらに記憶されたデータを答案用紙にプリント出力する制御手段を備えることを特徴とする答案用紙の採点装置。」(請求項1)
イ.「〔産業上の利用分野〕
この発明はマイクロコンピユータを使用した答案用紙の採点装置に係り、特に採点者の評価によつて採点を行うと供に答案用紙毎の採点結果を各答案用紙に対しプリントすると共に所定の記憶媒体に記憶保持してこれら接点データをコンピユータ処理することができる答案用紙の採点装置に関する。」(第1ページ第2欄第8?15行目)
ウ.「まず、第2図は本発明装置を示し、参照符号22はキーボード部、24は採点表示部、26は操作内容表示部、28はプリンタ部、30はフロツピデイスク部を示し、内部には演算制御部としての電子回路構成部品が収納される。従つて、前記第2図の構成を簡略化して示せば、第3図に示す通りである。すなわち、第3図において演算制御部は参照符号32で示される。
そこで、本実施例装置において、採点表示部24は多数のX軸、Y軸配列からなる発光ダイオードLEDを使用して構成する。この場合の前記第3図に示す演算制御部32の詳細なシステム構成を示せば第4図に示す通りである。第4図において、演算制御部32は各種システムプログラムを内蔵したCPU部34を備え、まず発光ダイオードデータセツト部36と発光ダイオードドライバコントロール部38を介して発光ダイオードドライバ40を操作して採点表示部24の表示制御を行う。また、フロツピドライバコントロール部42を介してフロツピデイスク部30のフロツピデイスク44を駆動するフロツピドライバ46の制御を行う。さらにCPU部34から直接もしくは用紙にコントロール部48を介してプリンタ28の駆動制御を行う。」(第2ページ第4欄第24行目?第3ページ第5欄第4行目)
エ.「第6図は、本実施例装置に使用される多数の発光ダイオードLEDで構成された採点表示部24を示すものである。この場合、採点表示部24の上段には操作内容表示部26が設けられている。この操作内容表示部26は、例えば答案用紙の種別(国語、算数、社会、理科等の科目別と3、4、5、6年等の学年別)を発光ダイオードLEDにより点滅表示するようにする。一方、採点表示部24は、X軸方向およびY軸方向にそれぞれ多数の発光ダイオードLEDを整列配置した構成からなり、例えば第7図に示すように各解答欄がデイスプレイされた解答用紙20を載置した際、各解答欄に対応させて所定の発光ダイオード(図示例では35個)が順次または同時に点灯されるようフロツピデイスク44にフオーマツト形成される。」(第3ページ第5欄第7?22行目)
オ.「まず、第2図に示す装置において、電源スイツチ(図示せず)をON状態にし、フロツピデイスク部30採点対象となる所定のフロツピデイスクを挿入配置する。この時、操作内容表示部26には、予めフロツピデイスクに記憶設定された答案の種別に応じて所要の発光ダイオードLEDが点灯し、これにより採点者は採点すべき答案用紙とこの採点を実行するフロツピデイスクとの対応を確認することができる。このようにして、フロツピデイスクの初期状態を確認してから、所定の答案用紙を採点表示部24上に載置する。・・・
次に、答案用紙の採点に当つては、次の事項をキーボード部22のキー操作に入力する。なお、これらのデータの入力手順は予めプログラムされており、キー操作をそれぞれ行うことにより入力英文字、数字および評価記号を確認しながら実行することができる。
(1) 採点者のイニシヤル (例……M.TAKAGI)
(2) 受験者の番号 (例……NNN40001)
(3) 採点データ (例……○、×、レ)
そこで、採点データの入力について詳述する。採点の評価を行うため、キーボード部22に3つの評価「○」(正解)、「×」(誤答)、「レ」(不答)が設けられ、正解の場合は予め設定した配点が加算されるように構成される。また、採点に際しては、答案用紙20の解答欄1?nまで順次書き込む方式が採用され、例えば各解答欄につき評価キーを操作する毎に対応する位置の発光ダイオードが点灯する。・・・
このようにして、採点データの入力が完了すると、その評価内容に基づいて採点演算が行われ、フロツピデイスク部30において所定のフロツピデイスクにデータの記録保持がなされる。次いで、前記フロツピデイスクに記憶保持されたデータに基づいて答案用紙の採点表示をプリンタ部28を介して行うことができる。なお、プリンタ部28によるプリント印刷は、受験者番号をキー入力することにより随時データを読み出してプリント印刷することができる。従つて、答案用紙20にプリント印刷する時は、プリント部28において用紙の検出、用紙の先頭位置検出が行われて記録されたデータのプリント印刷が行われる(第7図参照)。」(第3ページ第5欄第29行目?同ページ第6欄第44行目)
カ.「なお、前述した実施例においては、採点表示部として多数の発光ダイオードを使用した場合を例示したが、本発明はこの実施例に限定されることなく、CRTデイスプレイ、液晶表示板、セグメント表示板およびデイジタイザを利用することも可能である。」(第4ページ第7欄第33?38行目)
キ.第2図より、採点装置本体が筐体部を備え、フロッピディスク部30が筺体部の前面下部右寄りに位置し、採点表示部24が筺体部の上面中央に設けられ、キーボード部22が採点表示部24の右側に位置し、プリンタ部28が採点装置本体内部にあることが把握できる。
ク.第3図より、フロッピディスク部30、採点表示部24、キーボード部22、プリンタ部28はそれぞれ演算制御部32と接続されていることが把握できる。

オ.の「従つて、答案用紙20にプリント印刷する時は、プリント部28において用紙の検出、用紙の先頭位置検出が行われて記録されたデータのプリント印刷が行われる(第7図参照)。」より、採点装置本体が、答案用紙20をプリント部28に搬入するための給紙口と、プリント印刷された答案用紙20を排出するための排出口を有するのは明らかであり、それぞれを「吸入口」、「用紙取り出し口」と称して差し支えない。
ア.の「採点入力手段により点灯表示された解答欄に記載の解答を評価して採点データを入力することによりその評価内容に応じて予め設定した配点に基づいて演算処理を行い、・・・制御手段を備える」、ウ.の「まず、第2図は本発明装置を示し、・・・、内部には演算制御部としての電子回路構成部品が収納される。」、「演算制御部32は各種システムプログラムを内蔵したCPU部34を備え、・・・採点表示部24の表示制御を行う。また、・・・フロツピデイスク44を駆動するフロツピドライバ46の制御を行う。さらに・・・プリンタ28の駆動制御を行う。」より、刊行物においては、「採点装置本体内に採点装置本体の動作の制御や採点及びその集計を担うCPU部34などの演算制御部32」を備えているものである。
ウ.の「演算制御部32は各種システムプログラムを内蔵したCPU部34を備え、・・・採点表示部24の表示制御を行う。また、・・・フロツピデイスク部30のフロツピデイスク44を駆動するフロツピドライバ46の制御を行う。さらに・・・プリンタ28の駆動制御を行う。」及びク.より、刊行物において、フロッピディスク部30、採点表示部24、キーボード部22、プリンタ部28はそれぞれ演算制御部32と接続されているものである。
カ.の「なお、前述した実施例においては、採点表示部として多数の発光ダイオードを使用した場合を例示したが、本発明はこの実施例に限定されることなく、CRTデイスプレイ、液晶表示板、セグメント表示板およびデイジタイザを利用することも可能である。」より、採点表示部24の一例として液晶表示板を利用することが記載されており、刊行物における液晶表示板を利用した採点表示部24を「液晶表示部」と称することができる。
エ.の「例えば第7図に示すように各解答欄がデイスプレイされた解答用紙20を載置した際、各解答欄に対応させて所定の発光ダイオード(図示例では35個)が順次または同時に点灯されるようフロツピデイスク44にフオーマツト形成される。」、 オ.の「そこで、採点データの入力について詳述する。採点の評価を行うため、キーボード部22に3つの評価「○」(正解)、「×」(誤答)、「レ」(不答)が設けられ、正解の場合は予め設定した配点が加算されるように構成される。また、採点に際しては、答案用紙20の解答欄1?nまで順次書き込む方式が採用され、例えば各解答欄につき評価キーを操作する毎に対応する位置の発光ダイオードが点灯する。」より、刊行物においては、「答案用紙20が液晶表示部に載置され前記液晶表示部は答案用紙20に設けられている解答欄のうち採点対象の解答欄に対応する領域を識別表示」し、「キーボード部22は前記表示部に識別表示されている領域に対応する解答欄に記載されている解答の採点結果を入力し」ているものである。
オ.の「そこで、採点データの入力について詳述する。採点の評価を行うため、キーボード部22に3つの評価「○」(正解)、「×」(誤答)、「レ」(不答)が設けられ、正解の場合は予め設定した配点が加算されるように構成される。」、「このようにして、採点データの入力が完了すると、その評価内容に基づいて採点演算が行われ、フロツピデイスク部30において所定のフロツピデイスクにデータの記録保持がなされる。次いで、前記フロツピデイスクに記憶保持されたデータに基づいて答案用紙の採点表示をプリンタ部28を介して行うことができる。」より、刊行物においては、「プリンタ部28はキーボード部22によって入力された採点結果を印字してから搬出する」ものである。

従って、上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明が開示されていると認められる。
「筺体部を備える採点装置本体と、採点装置本体に設けた用紙取り出し口と、採点装置内に採点装置の動作の制御や採点及びその集計を担うCPU部34などの演算制御部32と、筺体部の前面下部右寄りに位置し、前記演算制御部32と接続されたフロッピディスク部30と、電源スイッチと、筺体部の上面中央に設けた前記演算制御部32と接続された液晶表示部と、前記液晶表示部の右側に位置し前記演算制御部32と接続されたキーボード部22と、前記採点装置本体内部であって前記演算制御部32と接続されて答案用紙20を吸入口から吸入するプリンタ部28を備え、
答案用紙20が液晶表示部に載置され前記液晶表示部は答案用紙20に設けられている解答欄のうち採点対象の解答欄に対応する領域を識別表示し、
前記キーボード部22は前記表示部に識別表示されている領域に対応する解答欄に記載されている解答の採点結果を入力し、
前記プリンタ部28は吸入口に前記答案用紙20を搬入して前記キーボード部22によって入力された採点結果を印字してから搬出する採点端末装置。」(以下、「引用発明」という。)

(4)対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「採点装置」、「CPU部34」、「フロッピディスク部30」、「キーボード部22」、「プリンタ部28」は、それぞれ補正発明の「採点端末装置」、「CPU」、「フレキシブルディスクドライブ」、「キーボードユニット」、「プリンタ」に相当する。
補正発明と、引用発明は、フレキシブルディスクドライブを筺体部の下部前面右寄りに位置した点で共通する。
補正発明と、引用発明は、液晶表示部を筺体部の上面中央に設けた点で共通する。
引用発明の「キーボード部22」と補正発明の「タッチパネル」は「採点結果入力部」である点で共通する。
したがって、補正発明と引用発明を比較すると、
「筺体部を備える採点端末装置本体と、採点端末装置本体に設けた用紙取り出し口と、採点端末装置本体内に採点端末装置本体の動作の制御や採点及びその集計を担うCPUなどの演算制御部と、筺体部の前面下部右寄りに位置し前記演算制御部と接続されたフレキシブルディスクドライブと、電源スイッチと、筺体部の上面中央に設けた前記演算制御部と接続された液晶表示部と、前記液晶表示部の右側に位置し前記演算制御部と接続されたキーボードユニットと、前記演算制御部と接続されたプリンタと、を備え、
答案用紙が液晶表示部に載置され前記液晶表示部は答案用紙に設けられている解答欄のうち採点対象の解答欄に対応する領域を識別表示し、採点結果入力部は前記表示部に識別表示されている領域に対応する解答欄に記載されている解答の採点結果を入力し、
前記プリンタは前記答案用紙を搬入して採点結果入力部によって入力された採点結果を印字してから搬出する採点端末装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]採点端末装置全体の構成について、補正発明においては、「上筐体部と下筐体部とを備える」、「採点端末装置本体の前面中央に位置している用紙ストッカーと、用紙ストッカー上部に位置している」用紙取り出し口と、「下筺体部」の前面右寄りに位置したフレキシブルディスクドライブと「フレキシブルディスクドライブ近傍に設け」た電源スイッチと、「上筺体部」上面中央に設けた液晶表示部とを備え、プリンタが「液晶表示部の裏面側に設けられて」答案用紙を吸入口から吸入して「ローラで搬入する上搬送ユニットと印字部を備える下搬送ユニットとからなる」、「吸入口近傍のストッカーに」答案用紙を搬入して「上搬送ユニットと下搬送ユニットを経由して」搬出すると特定されているのに対し、引用発明では、上記特定を有していない点。
[相違点2] 液晶表示部について、補正発明においては、「タッチパネル付き」であり、タッチパネルから「表示部に識別表示されている領域に対応する解答欄に記載されている解答の採点結果を入力し」、液晶表示部は、「当該領域に対応する出題番号及び前記答案用紙に記載されている受験番号を表示し」と特定されているのに対し、引用発明では、上記特定を有していない点。
[相違点3] 補正発明においては、「演算制御部と接続されたメモリ」を備え、識別表示される領域が「メモリに記憶してある」と特定されているのに対し、引用発明では、メモリがあるか不明で前記特定を有していない点。

(5)判断
[相違点1]について検討する。
引用発明においても、採点端末装置は内部にプリンタを有しており、紙詰まり等のトラブルに対する対応やメンテナンスを行う際に、採点端末装置の筺体部が上下に分かれるようにすることが望ましいことは明らかであるから、引用発明記載の採点端末装置の筺体部を「上筐体部と下筐体部とを備える」ものとすることは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。採点端末装置の筺体部を「上筐体部と下筐体部とを備える」ものとした場合、フレキシブルディスクドライブを下筺体部の前面右寄りに、液晶表示部を上筺体部の上面中央に設けるようにすることに困難性は認められない。
また、プリンタが「液晶表示部の裏面側に設けられ」た点について、採点端末装置の小型化を図る点から、引用発明に記載されたプリンタと液晶表示部を左右に並べた配置を、プリンタが「液晶表示部の裏面側に設けられ」た配置とすることは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。
「用紙ストッカー」を設ける点、「ローラで搬入する上搬送ユニットと印字部を備える下搬送ユニットとからなる」、「吸入口近傍のストッカーに」答案用紙を搬入して「上搬送ユニットと下搬送ユニットを経由して」搬出する点については、プリンタの一般的な構成として、例を挙げるまでもなく周知である。
さらに、「用紙ストッカー」や「電源スイッチ」を採点端末装置のどこに設けるようにするかは、当業者が必要に応じ適宜設計する技術事項にすぎない。
したがって、採点端末装置全体の構成を、「上筐体部と下筐体部とを備える」、「採点端末装置本体の前面中央に位置している用紙ストッカーと、用紙ストッカー上部に位置している」用紙取り出し口とを備え、電源スイッチを「フレキシブルディスクドライブ近傍に設け」、プリンタが「液晶表示部の裏面側に設けられて」答案用紙を吸入口から吸入して「ローラで搬入する上搬送ユニットと印字部を備える下搬送ユニットとからなる」、「吸入口近傍のストッカーに」答案用紙を搬入して「上搬送ユニットと下搬送ユニットを経由して」搬出するとした相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。

[相違点2]について検討する。
「タッチパネル付き液晶表示部」は、例えば本願出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-266278号公報(【0024】)、特開2001-83870号公報(【0017】、【0037】)に示されるように周知である。
採点端末装置の小型化を図る点から、キーボード部による採点結果の入力を、タッチパネル付き液晶表示部によって行うようにすることに、困難性は認められない。
また、いずれから出題番号及び受験番号を入手するか、本件では定かでないものの、採点者は、採点にあたって、採点している出題番号と、採点対象になっている解答用紙の受験番号について、特に注意を払わなければいけないことは当然であるから、液晶表示部に「当該領域に対応する出題番号及び前記答案用紙に記載されている受験番号を表示し」た構成とすることは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。
したがって、引用発明において、液晶表示部を「タッチパネル付き」とし、タッチパネルから「表示部に識別表示されている領域に対応する解答欄に記載されている解答の採点結果を入力し」、液晶表示部は、「当該領域に対応する出題番号及び前記答案用紙に記載されている受験番号を表示し」た相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。

[相違点3]について検討する。
刊行物のエ.においては、「例えば第7図に示すように各解答欄がデイスプレイされた解答用紙20を載置した際、各解答欄に対応させて所定の発光ダイオード(図示例では35個)が順次または同時に点灯されるようフロツピデイスク44にフオーマツト形成される。」と記載されたように、識別表示される領域はフロッピディスクに記憶され、採点対象の解答欄に対応する領域を識別表示する際に、フロッピディスクにアクセスして実行しているのか、フロッピディスクに記憶されている情報をメモリに記憶させた上で実行しているのかは定かではない。しかしながら、「演算制御部と接続されたメモリ」を備え、識別表示される領域が「メモリに記憶してある」ようにすることは、例を挙げるまでもなく周知である。
したがって、引用発明において、「演算制御部と接続されたメモリ」を備え、識別表示される領域が「メモリに記憶してある」とした相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到しうる程度のことである。

そして、補正発明の作用効果も、刊行物記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、補正発明は、本願出願前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)補正却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明は、上記2.(1)に示した平成16年10月25日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されたとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

(2)進歩性について
本願発明は、補正発明のフレキシブルディスクドライブ」、「タッチパネル付き液晶表示部」、「キーボードユニット」がそれぞれ「演算制御部と接続された」こと、「プリンタ」が「演算制御部と接続されて答案用紙を吸入口から吸入してローラで搬入する上搬送ユニットと印字部を備える下搬送ユニットとからなる」ものであること、「吸入口近傍のストッカー」に答案用紙を搬入し、「上搬送ユニットと下搬送ユニットを経由して」搬出されること、「演算制御部と接続されたメモリ」を備え、識別表示される領域が「メモリに記憶してある」こと、「答案用紙が液晶表示部に載置され」ることの各限定を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに前記の限定を行ったものに相当する補正発明が、前記2.における「(5)判断」に記載したとおり、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願のその余の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-25 
結審通知日 2008-09-26 
審決日 2008-10-16 
出願番号 特願2003-161416(P2003-161416)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09B)
P 1 8・ 121- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 江成 克己
七字 ひろみ
発明の名称 採点端末装置及び採点端末システム  
代理人 浜田 治雄  

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