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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1188459 |
審判番号 | 不服2007-6505 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-03-02 |
確定日 | 2008-11-28 |
事件の表示 | 特願2002-139192「色変換方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月21日出願公開、特開2003-333350〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年5月14日の出願であって、平成18年8月16日付けで拒絶理由が通知され、これに対する応答がされることなく応答期間が経過し、平成19年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月2日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされたものであって、当審において平成20年6月11日付けで審尋が通知され、これに対し、同年7月25日付けで回答書が提出されたものである。 2.本願特許請求の範囲 本願の請求項1の記載は、平成19年3月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、請求項1の記載は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 第1の表色系のデータを第2の表色系のデータに変換する色変換データベースに基づいて、第2の表色系のデータを第1の表色系のデータに逆変換する色変換テーブルを算出する色変換方法において、 前記第1の表色系のデータの混色を抑制して、前記色変換データベースを順変換して出力する第1のステップと、 前記第1のステップで混色抑制された前記色変換データベースを逆変換する第2のステップと、 前記第2のステップで逆変換された前記色変換データベース、および前記第1のステップで行った混色抑制を元に、前記色変換テーブルを逆変換して算出する第3のステップとを備えたことを特徴とする色変換方法。」 3.特許法第36条第6項第2号について 原審において、平成18年8月16日付けで通知した拒絶の理由のうち、(理由1)では、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、というものであって、その中で次のように指摘している。 (a) 「請求項1に「彩度が高い色の混色抑制」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか不明である。 請求項1に「彩度が高い色の混色抑制をするステップ」が記載されているが、当該ステップが、請求項1に記載された「色変換テーブルを算出する色変換方法」に対して、具体的にどのように作用するのか不明である。 (中略) よって、請求項1,2に係る発明は明確でない。」 出願人は、原査定の理由となった上記拒絶理由に対して、平成19年3月2日付けで手続補正書を提出して、特許請求の範囲において、補正前に、 (b) 「【請求項1】 第1の表色系のデータを第2の表色系のデータに変換する色変換データベースに基づいて、第2の表色系のデータを第1の表色系のデータに逆変換する色変換テーブルを算出する色変換方法において、 彩度が高い色の混色抑制をするステップを備えたことを特徴とする色変換方法。 【請求項2】 前記色変換データベースに対して前記混色抑制を付加する第1のステップと、第1のステップで混色抑制された色変換データベースを逆変換する第2のステップと、第2のステップで逆変換された色変換データベースと前記混色抑制とを統合して前記色変換テーブルを算出する第3のステップとを備えたことを特徴とする請求項1に記載の色変換方法。」 とあったものを、上記2.に記載されたとおりに補正するとともに、審判請求の理由において、次のように説明している。 (c) 「手続補正書において、元の請求項1に元の請求項2の内容を盛り込み、「彩度が高い色の混色抑制」なる記載を削除しました。 また、第1のステップを、「前記第1の表色系のデータの混色を抑制して、前記色変換データベースを順変換して出力する」、第3のステップを、「前記第2のステップで逆変換された前記色変換データベース、および前記第1のステップで行った混色抑制を元に、前記色変換テーブルを逆変換して算出する」として、混色抑制と色変換テーブルの算出との作用を明らかにしました。このため、理由1の1)に係る拒絶理由は解消されたものと思料します。」 そして、平成20年6月11日付けの審尋で示した前置報告書において、次のように判断されている。 (d) 「請求項1に「混色を抑制して」と記載されているが、具体的にどのような構成であるのか依然として不明である。」 出願人は、上記前置報告書の内容に対して、平成20年7月25日付けの回答書において、次のように釈明している。 (e) 「請求項1の「混色を抑制して」の具体的な構成として、明細書段落[0017]?[0023]、図5?図8に記載の内容を例に挙げて説明致します。 本願発明の実施形態では、混色抑制部にて混色抑制を行っています。 混色抑制部は、まず、TA-RGBデータ(第1の表色系のデータ)の色相を算出します(色相算出ステップ)。 次に、例えば表1のデータ補正テーブルを参照しつつ、色相算出ステップで算出した色相に応じて、データ補正テーブルで設定されたTA-RGBデータの最大値(Cmax、Mmax、Ymax)を求めます(CMY最大値算出ステップ)。 通常の値(255)よりも低く設定された値のCmax、Mmax、Ymax(例えば、表1の色相0°のときのMmax(240)など)に関しては、低く設定された値を端点として、入力値(図6の横軸in)が下がるに連れて正規の値(図6のLUT_resで示す曲線の上に描かれた直線)に収束するような補正曲線LUT_resを生成し、通常の値と同じ値のCmax、Mmax、Ymaxに関しては、正規の値を用いるものとします(補正曲線生成ステップ)。 一方、TA-RGBデータをCMYデータに変換し(RGB→CMY変換ステップ)、CMYデータを最大値Dmax、中間値Dmid、最小値Dminに分類して(CMYソートステップ)、Dmax、Dmid、Dminを元に彩度Sを算出します(彩度算出ステップ)。 続いて、段落[0023]の各式を用いて、CMYデータに重み付け処理を施し、C’M’Y’データとします(重み付け処理ステップ)。この重み付け処理ステップにより、Sがある値よりも小さいときは図8からWeight_i=0であるので、各式より、C’(M’、Y’)は元々の値であるC(M、Y)となり、SがWeight_i=0となる値よりも大きいWeight_i=1.0となる値のときは、C’(M’、Y’)は補正曲線LUT_res_C(M、Y)で決定される値となり、SがWeight_i=0になる値とWeight_i=1.0となる値の中間の値のときは、Weight_iはSが大きくなるにつれて一次関数的に増加するので、SがWeight_i=0となる値からWeight_i=1.0となる値に近付くにつれて、元々の値であるC(M、Y)から補正曲線LUT_res_C(M、Y)で決定される値に近い値となります。 その後、重み付け処理を施したC’M’Y’データをTA-RGB’データに変換します(CMY→RGB変換ステップ)。以上をもって、混色抑制が完了します。 上記説明から「混色を抑制して」の意義が明らかであると思われます…」 4.当審の判断 本願の請求項1では、「混色」の起因となる前提が特定されていないから、「混色を抑制」することの技術的意義が不明である。仮に、「第1の表色系のデータ」が混色を内在するものとしたとしても、「第1の表色系のデータ」の構成と「混色」の技術的な関係が不明であるから、やはり「混色を抑制」することの技術的意義が不明である。 よって、請求項1の「混色を抑制」との記載は技術的に不明な記載といわざるを得ない。 この点について、請求人は、上記3.(e)のように釈明している。 しかしながら、本願の請求項1では、上記3.(e)で説示されている本願の実施形態の「混色制御部」の具体的な構成は特定されていないから、実施形態の「混色制御部」の機能に限定して解釈することはできない。 よって、この主張は採用することができない。 なお、上記のように「混色を抑制」することが技術的に不明であるから、請求項1の「前記第2のステップで逆変換された前記色変換データベース、および前記第1のステップで行った混色抑制を元に、前記色変換テーブルを逆変換して算出する第3のステップ」という記載も不明確である。 また、上記記載中の「混色抑制」という用語は、請求項1の「第1のステップ」における「混色を抑制」する事項を指していると解されるが、「混色を抑制」するとは機能を表現したものであり、これを「混色抑制を元に…算出する」という「混色抑制」がある物理的な意味を持つものとして表現されているため、技術的に不明確である。 さらに、上記記載中の「色変換テーブルを逆変換して算出する」という表現から、「色変換テーブル」自体を「逆変換」するものと解されるところ、請求項1の「色変換テーブルを算出する色変換方法」という記載から、「色変換テーブル」は算出の目的物であって、「逆変換」の対象は「色変換テーブル」でないと解される。すると、「前記第2のステップで逆変換された前記色変換データベース、および前記第1のステップで行った混色抑制を元に、前記色変換テーブルを逆変換して算出する第3のステップ」という記載のみでは、「逆変換」の対象が何か、また、どのようにして変換がなされるのか技術的に不明である。 したがって、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許を受けようとする発明が明確に把握できるように記載したものとはいえず、本件出願が特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものではないとした原査定の判断に誤りはない。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものではないから、特許法第49条第4号の規定に該当し、拒絶をすべきものである。 したがって、残る特許法第36条第4項(理由2)及び同第29条第2項(理由3)について検討するまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-25 |
結審通知日 | 2008-10-01 |
審決日 | 2008-10-16 |
出願番号 | 特願2002-139192(P2002-139192) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 豊田 好一 |
特許庁審判長 |
板橋 通孝 |
特許庁審判官 |
原 光明 井上 健一 |
発明の名称 | 色変換方法 |
代理人 | 小林 和憲 |