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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B24B
管理番号 1188461
審判番号 不服2007-25774  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-20 
確定日 2008-11-28 
事件の表示 特願2001-343727「眼鏡レンズ加工装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月20日出願公開、特開2003-145400〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件出願は、平成13年11月8日の出願であって、その請求項1乃至2に係る発明は、平成19年3月19日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 被加工レンズを保持して回転するレンズ回転軸を持つレンズ回転手段と、レンズコバに溝を形成する溝掘り砥石を回転する溝掘り砥石回転軸と、を有し、眼鏡レンズの周縁を加工する眼鏡レンズ加工装置において、前記レンズ回転軸に対する前記溝掘り砥石の回転軸の傾斜角を変更する傾斜角変更手段と、玉型形状データ及びレンズ形状データに基づいて被加工レンズのレンズコバに形成する溝掘り軌跡データを求め、該溝掘り軌跡データに基づいて溝掘り軌跡の各加工点における法線方向を求めて各傾斜角を決定し、溝掘り軌跡データ及び各加工点における傾斜角に基づいて溝掘り加工用データを得て、前記傾斜角変更手段を含む加工装置の動作を制御して溝掘り加工する加工制御手段と、を備えることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。」

2.引用刊行物の記載内容および引用発明
これに対して、当審において平成20年6月24日付けで通知した拒絶の理由には、本願の出願日前に頒布された刊行物である以下の刊行物1乃至2が引用されている。
[引用刊行物]
刊行物1:特開平4-183566号公報
刊行物2:特開平4-244365号公報

このうち、刊行物1には、以下の技術的事項が記載されている。

(1-ア)第1頁右下欄第19行-第2頁右下欄第7行
「[従来技術]
従来のいわゆる玉摺器は、荒摺砥石と同径のV溝を持つ仕上砥石が荒摺砥石と一体となって砥石モータやスピンドルユニットの回転軸に取り付けられ、レンズを保持するキャリッジや砥石をレンズ回転軸に対して平行移動することによりレンズの周縁部を加工していた。すなわち、玉型もしくは眼鏡フレームのトレーサから得られた動径情報に基づいて、眼鏡フレームのキャリッジを移動・制御して荒摺加工を行った後、レンズコバ厚やフレーム形状等からヤゲンカーブを自動的にあるいは加工者の判断で決定し、決定されたヤゲンカーブに従いキャリッジや砥石を平行移動することによりヤゲン加工を行っていた。
このようなキャリッジや砥石をレンズ回転軸に対して平行移動するヤゲン加工の方法では、レンズ回転軸に対してヤゲンつけの方向は常に一定となる。
[発明が解決しようとする課題]
上記のようなヤゲンつけは、フレームのレンズ溝が挿入されるレンズの光軸に対して常に一定方向にあることを前提としているが、本発明者が多数の眼鏡フレームを調べたところによると、眼鏡フレームのレンズ溝の方向は一定ではないことが判明した。
眼鏡フレームにはフレームカーブがつけられおり、標準的な眼鏡フレームは5乃至6のレンズカーブを有するレンズが容易に枠入れできるように、それに相当するフレームカーブを有している。主としてこのフレームカーブの形成工程で、レンズ溝の方向が付与されるものと推測される。
このようにレンズ溝の方向が一定ではないにもかかわらず、レンズ溝の方向が一定であることを前提としてヤゲンを形成すると、眼鏡フレーム、殊にフレームカーブが大きいものは、枠入れしたレンズが外れ易いという欠点があった。
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、様々なフレーム溝の方向に対応して、ヤゲンの方向を変えることができ、レンズをフレームにしっかり固定できる眼鏡レンズ研削加工機を提供することを技術課題とする。
[課題を解決するための手段]
上記課題を達成するために、本発明は次のような構成を有している。
第1の発明は、眼鏡フレームに枠入れするためにレンズ周縁を削成する眼鏡レンズ加工機において、眼鏡フレームのレンズ溝の溝方向の情報を入力する入力手段と、ヤゲン削成用V溝を有し該V溝を前記被削成レンズ回転軸に対して傾斜可能な研削手段と、該研削手段の傾斜を前記入力されたレンズ溝の溝方向に基づいて制御する制御手段と、を有することを特徴としている。
第2のものは、第1の発明の研削手段は、前記被削成レンズと当接する該V溝底をほぼ中心に回動する研削手段であることを特徴としている。
第3のものは、第2の発明の研削手段の回動機構とは、装置基部に一端が軸支されて回動する回動部材と、該基部に固定され該回動部材を駆動する駆動部と、該回動部材の他端に保持された中継部材と、該中継部材の一端に軸支された砥石と、からなることを特徴としている。
第4のものは、第1の発明の入力手段に入力されるレンズ溝の溝方向は眼鏡フレームのフレームカーブに基づいて算出されることを特徴としている。
第5のものは、第1の発明の研削手段は平加工またはヤゲン加工済みレンズに面取加工を行う面取部材及び平加工済みレンズに溝を削成する溝堀部材をも備えていることを特徴とする。」

(1-イ)第3頁右上欄第11行-右下欄第10行
「キャリッジ700にはシャフト701と平行かつ距離不変にレンズ回転軸704a、704bが同軸かつ回転可能に軸支されている。レンズ回転軸704bはラック705に回転自在に軸支され、さらにラック705は軸方向に移動可能であり、モータ706の回転軸に固定されたピニオン707により軸方向に移動することができ、これによりレンズLEをレンズ回転軸704a、704bに挟持しうる。なお、レンズ回転軸704a、704bにはそれぞれ同一歯数のプーリ708a、708bが取り付けられており、それらはタイミングベルト709a、709bによりプーリ703c、703bと繋がっている。
キャリッジ700の左側には中間板710が回転自在に固定されている。中間板710にはカムフォロア711が2個付いており、それがシャフト701と平行な位置関係でベース1に固定されたガイドシャフト712を挟んでいる。中間板710にはラック713がシャフト701と平行な位置関係でベース1に固定されたキャリッジ左右移動用モータ714の回転軸に取り付けられたピニオン715と噛み合っている。これらの構造によりモータ714はキャリッジ700をシャフト701の軸方向に移動させることができる。
キャリッジ700の左端には駆動板716が固定されており、駆動板には回転軸717がシャフト701と平行かつ回転自在に取り付けられている。回転軸717の左端にはプーリ708a、708bと同一歯数のプーリ718が付いており、プーリ718はプーリ703aとタイミングベルト719により繋がっている。
回転軸717の右端にはギヤ720が取り付けてあり、ギヤ720はモータ721についているギヤと噛み合っている。モータ721が回転するとギヤ720によりプーリ718が回転し、タイミングベルト719を介してキャリッジシャフト702が回軸し、これによりプーリ703b、703c、タイミングベルト709a、709b、プーリ708a、708bを介してレンズチャック軸704a、704bを回転させる。」

(1-ウ)第11頁右上欄第18行-右下欄第20行
「レンズ枠形状が・・・計測される。この計測データ・・・を極座標-直交座標変換した後のデータ・・・の任意の4点・・・よりフレームカーブCF及びフレームカーブの中心・・・を求める(計算式はレンズカーブの求め方と同一)。・・・被加工レンズの光学中心が位置すべき位置OS・・・を、・・・求める。
このOSから(xn、yn)をOSを中心とした極座標に変換し、加工データである(Srn、Sθn)(n=1、2、・・・・・・N)を得て、後述する未加工レンズ形状測定部5によりコバ厚を測定し、ヤゲンカーブ、ヤゲン位置を求める。」

(1-エ)第12頁左上欄第5行-第14行
「また、本実施例では、フレームカーブの形成工程でレンズ溝の方向が付与されることに着目し、フレームカーブCFから、レンズ溝の方向を簡略な方法で得る。即ち、フレームカーブである球の中心・・・と光学中心位置OSを通る直線に対して、フレームカーブの中心・・・と(xn、yn、zn)(n=l、2、・・・・・・N)の各点を通る直線との成す角をフレーム溝の方向の角度vθn(n=1、2、・・・・・・N)として求め、後述するヤゲン加工のときのデータとする。」

(1-オ)第15頁左上欄第3行-右上欄第17行
「第18図は、実施例のヤゲン加工部を示す側部断面図である。また第19図は、そのF矢視図である。
本装置は、玉摺器の本体に組み込まれている。
本体ベース1には支基801が固定されている。この支基801には回転支基802が軸受けによって回動自在に保持されている。支基801には回転支基駆動用モータ803が取付けられており、モータ803の回転軸に取付けられた歯車804と、回転支基802の取付けられた歯車805により、モータ803の回転が回転支基802に伝達される。回転支基802への駆動力の伝達は上記に限らず、歯車804、805をタイミングプーリに置換えて、タイミングベルトで駆動してもよい。
回転支基802にはアーム806が取付けられている。アーム806の一端にはヤゲン加工砥石駆動用モータ807が取付けられており、モータ807の回転軸にはプーリ808が取付けられている。アーム806の他端は直角に屈曲していて、ヤゲン加工砥石部810が取付けられた砥石軸814が軸受けにより回転自在に保持されている。ヤゲン加工砥石部810には円筒形のヤゲン加工砥石811、平加工砥石812が一体に取付けられている。
本実施例ではヤゲン加工部に、ヤゲン加工砥石811、平加工砥石812が取付けられているが、これに限定されず、面取砥石、溝堀砥石を取付けることによって、溝堀加工、面取加工まで自動的に行なうことができる。
砥石軸814には、プーリ815が取付けられており、プーリ815とプーリ808との間には、ベルト816が掛け渡されている。これによりモータ807の回転がヤゲン加工砥石810に伝達される。」

(1-カ)第15頁右下欄第4行-第16頁左上欄第18行
「ここで、レンズ枠の動径情報、フレーム溝の傾き、及び加工レンズのコバ厚情報からヤゲン加工を行うレンズ周縁部の形状は分かっており、また、ヤゲン砥石811上のヤゲン溝頂点がヤゲン砥石部810の傾斜角度に関係なく一定位置であるがら、キャリッジ7及びヤゲン加工部8をデジタル制御し、フレーム溝の角度vθi(n=1、2、・・・・・・N)だけヤゲン加工砥石を傾けることで、フレームの傾きに応じた所定のヤゲン加工を行うことができる。
すなわち前述したように、フレーム溝の角度がフレームカーブである球の中心と光学中心位置を通る直線に対してフレームカーブの中心と各測定点を通る直線のなす角度であると設定した場合、レンズが光学中心位置で保持されているので、光学中心位置とヤゲン溝頂点との距離(キャリッジの軸方向及びレンズの半径方向で表わせる。)とヤゲン加工砥石の角度をトレーサからのデータによって制御すれば所定のヤゲン加工ができる。・・・
本実施例では、研削部材がヤゲン加工砥石及び平加工砥石で構成されているが、必ずしもこの構成に限定されるものではない。例えば、ヤゲン加工砥石と一体にヤゲン加工済レンズに面取加工を行う円筒状の面取砥石及び平加工済レンズに溝を削成する溝堀砥石を有することで、荒摺加工終了後、ヤゲン加工と面取加工、または平加工と溝堀加工と面取加工を連続して自動的に行うことができる。」

(1-キ)第16頁右下欄第2行-第17頁左下欄第3行
「主演算制御回路は例えばマイクロプロセッサで構成され、その制御は主プログラムに記憶されているシーケンスプログラムで制御される。主演算制御回路はシリアル通信ポートを介して、ICカード、検眼システム装置等とデータの交換を行うことが可能であり、レンズ枠および型板形状測定部のトレーサ演算制御回路とデータ交換・通信を行う。
・・・
被加工レンズの形状を測定するポテンショメータ506はA/Dコンバータに接続され、変換された結果が主演算制御回路に入力される。主演算制御回路で演算処理されたレンズの計測データはレンズ・枠データメモリに記憶される。
キャリッジ移動モータ714、キャリッジ上下モータ728、レンズ回転軸モータ721はパルスモータドライバ、パルス発生器を介して主演算回路に接続されている。パルス発生器は主演算回路からの司令を受けて、それぞれのパルスモータへ何Hzの周期で何パルス出力するか、即ち各モータの動作をコントロールするための装置である。
・・・
レンズ枠・型板の形状を測定するポテンショメータ2130、2134およびフレームのリム厚を測定するポテンショメータ2046の出力はA/Dコンバータへ接続され、変換された結果はトレーサ演算制御回路へ入力される。フレーム確認用のマイクロスイッチ等の各マイクロスイッチユニットもトレーサ演算制御回路に接続されている。
トレーサ回転モータ2107はパルスモータドライバを介して、トレーサ演算制御回路により制御される。またトレーサ移動モータ2152、クランプ用モータ2010、測定子固定ソレノイド2164はトレーサ演算制御回路よりの司令を受けた各ドライブ回路により駆動される。
また、ヤゲン加工部8の回転支基駆動用モータ803とヤゲン加工砥石駆動用モータ807はモータドライバを介して主演算制御回路によって制御される。
トレーサ演算制御回路は例えばマイクロプロセッサで構成され、その制御はプログラムメモリに記憶されているシーケンスプログラムで制御される。
また、測定されたレンズ枠および型板の形状データは一旦トレースデータメモリに記憶され、主演算制御回路に転送される。
以上はフレームカーブを測定することにより、レンズ溝の方向の概略を求める実施例である。」

ここで、モータ721、ギヤ720、プーリ718、タイミングベルト719、キャリッジシャフト702、プーリ703b、703c、タイミングベルト709a、709b、プーリ708a、708b及びレンズ回転軸704a、704bがレンズ回転手段として機能していること、回転支基802、回転支基駆動用モータ803、歯車804、歯車805、アーム806及び砥石軸814が傾斜角変更手段として機能していることは、明らかである。
また、上記(1-ウ)、(1-エ)、(1-カ)の記載からみて、レンズコバに形成するヤゲンのヤゲンカーブ、ヤゲン位置のデータが、レンズ枠形状の計測データ及びコバ厚を測定して得られたデータに基づいて求められること、ヤゲン加工のヤゲンカーブ、ヤゲン位置の各加工点における砥石軸814の傾斜角がヤゲンカーブ、ヤゲン位置のデータに基づいて決定され、ヤゲンカーブ、ヤゲン位置のデータとともにヤゲン加工のときのデータとして用いられることは、技術常識を勘案すれば自明な事項である。

よって、上記記載事項を技術常識を勘案しながら本件発明に照らして整理すると、刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「レンズLEを保持して回転するレンズ回転軸704a、704bを持つレンズ回転手段と、レンズコバにヤゲン加工を行うヤゲン加工砥石811を回転する砥石軸814と、を有し、眼鏡レンズの周縁を加工する眼鏡レンズ加工機において、前記レンズ回転軸に対する前記砥石軸814の傾斜角を変更する傾斜角変更手段と、レンズ枠形状の計測データ及びコバ厚を測定して得られたデータに基づいてレンズLEのレンズコバに形成するヤゲンのヤゲンカーブ、ヤゲン位置のデータを求め、ヤゲンカーブ、ヤゲン位置のデータに基づいてヤゲン加工のヤゲンカーブ、ヤゲン位置の各加工点における各傾斜角を決定し、ヤゲン加工のヤゲンカーブ、ヤゲン位置のデータ及び各加工点における傾斜角に基づいてヤゲン加工用データを得て、前記傾斜角変更手段を含む加工機の動作を制御してヤゲン加工する加工制御手段と、を備える眼鏡レンズ加工機」

また、刊行物2には、以下の技術的事項が記載されている。

(2-ア)段落【0001】-【0005】
「【産業上の利用分野】本発明はレンズ周縁の溝堀り装置に関し、特にレンズ周縁に対し所定角度で溝堀りを可能にしたレンズ周辺の溝堀り装置に関する。
【従来の技術】従来より、レンズ周縁の溝堀装置としては、リムフレーム用眼鏡レンズの周縁にナイロン糸を通すための溝切削装置が知られている。これは、例えば、レンズ回転保持部と、切削作動部と、レンズ位置調整部とを有し、レンズ位置調整部によりレンズ回転保持部を移動してレンズ周縁を切削作動部のダイアモンドカッターの真上に位置させ、ダイアモンドカッターを回転させて周縁の溝掘りを行なうものである。
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる従来の溝掘り装置では、レンズ位置調整部によりレンズ回転保持部を上下左右に移動して、レンズの形状や肉厚の差異に応じてレンズ周縁をダイアモンドカッターの真上に位置させる機能は有しているが、ダイアモンドカッターに対するレンズ回転保持部の回転軸の角度を変化させる機能は有していない。したがって、レンズ周縁に対し所定の角度で溝を掘ることによってレンズの外周付近に生じる縞模様を解消できることが知られているにもかかわらず、レンズ周縁の傾斜の変化に応じて縞模様の解消に適するように一定の角度で溝を掘ることができない。また、かかる所定形状の溝を掘る方法として、熟練工により手作業でレンズ周縁の傾斜の変化に追随して溝を掘る方法が考えられるが、量産性に欠けコスト高になるという問題がある。
そこで、本発明は、上記問題点を解消するべくなされたもので、その目的は、熟練工に頼ることなく、レンズの形状や肉厚の差異のみならずレンズ周縁の傾斜の変化にも追随して所定角度で所定位置に溝を掘ることができるレンズ周縁の溝堀り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点を解消するべくなされたもので、その要旨は、レンズ周縁の溝掘り装置であって、回転カッターを備えた切削作動部と、レンズ中心部を両側から挟持してレンズを所定周速で回転させるレンズ保持回転部と、前記レンズ保持回転部を回動させる回動手段と、前記レンズ保持回転部を支持するとともに、前記切削作動部に対し上下及び左右に移動自在なキャリッジと、前記レンズ保持回転部の回転軸を前記切削作動部に対し任意の方向に傾斜させるジャイロ機構とを備えたレンズ周縁の溝掘り装置にある。」

(2-イ)段落【0007】
「【作用】本発明では、レンズ保持回転部によりレンズ中心部を両側から挟持してこれを保持し、キャリッジを上下左右に移動してレンズの周縁を切削作動部の真上に位置させる。また、ジャイロ機構は、レンズ周縁の切削作動部に対する角度を変化させて所望の方向に溝が掘れるよう作用する。したがって、レンズの形状、肉厚の差異、レンズ周縁の傾斜の変化等に応じてレンズ周縁の所定位置に所定角度で溝を掘ることができる。」

(2-ウ)段落【0009】
「切削作動部20は、ダイアモンドカッター21を外周面から突出配置した回転ドラム22と、スピンドル23を介して回転ドラム22を回転駆動する駆動モーター24とからなり、ダイアモンドカッター21を高速回転してレンズ11の周縁を切削する不動の回転体である。」

(2-エ)【0014】-【0015】
「そして、かかる構成を有する溝掘り装置を用いてレンズ周縁の溝掘りを行なうには、まず、前記レンズ保持回転部30によりレンズを支持し、キャリッジ50を上下左右に動かしてレンズ周縁が高速回転するダイアモンドカッター21の直上に位置するするように移動する。次に、回動装置40によりレンズ11を所定の周速で回動させるとともに、ジャイロ機構60を作動して切削作動部20に対するレンズ保持回転部30の回転軸31を任意の方向に傾斜させ、これによりレンズ11周縁に対するダイアモンドカッター21の角度を一定に保って、レンズ11周縁の溝が周縁に沿って所定の角度に形成されるようにする。
なお、上記キャリッジ50の移動、レンズ11の回動、及びジャイロ機構60の作動は、手動制御してもよいが、公知の自動制御機構を用いることにより、より正確な溝を容易に形成することができる。」

ここで、レンズ保持回転部30の回転軸31が、切削作動部20のスピンドル23に対しても任意の方向に傾斜させられるものであることは自明な事項である。

よって、上記記載事項を技術常識を勘案しながら整理すると、刊行物2には次の事項(以下、「刊行物2記載の事項」という。)が記載されていると認められる。

[刊行物2記載の事項]
「自動制御機構を用い、レンズ保持回転部の回転軸を切削作動部のスピンドルに対し任意の方向に傾斜させ、レンズの形状、肉厚の差異、レンズ周縁の傾斜の変化等に応じてレンズ周縁の所定位置に所定角度で溝を掘ること」

3.対比
本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「レンズLE」は本件発明における「被加工レンズ」に相当し、以下同様に、「眼鏡レンズ加工機」は「眼鏡レンズ加工装置」に、「レンズ枠形状の計測データ」は「玉型形状データ」に、「コバ厚を測定して得られたデータ」は「レンズ形状データ」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「ヤゲン」及び「ヤゲン加工」は、レンズ周縁形状及びレンズ周縁加工、という限りにおいて、本件発明における「溝」及び「溝掘り」と共通しており、また、「ヤゲンのヤゲンカーブ、ヤゲン位置のデータ」は、レンズ周縁加工のための軌跡データ、という限りにおいて、本件発明における「溝掘り軌跡データ」と共通している。
したがって、両者の一致点と相違点は次のとおりと認められる。

[一致点]
「被加工レンズを保持して回転するレンズ回転軸を持つレンズ回転手段と、レンズ周縁形状を形成するレンズ周縁加工砥石を回転するレンズ周縁加工砥石回転軸と、を有し、眼鏡レンズの周縁を加工する眼鏡レンズ加工装置において、前記レンズ回転軸に対する前記レンズ周縁加工砥石の回転軸の傾斜角を変更する傾斜角変更手段と、玉型形状データ及びレンズ形状データに基づいて被加工レンズのレンズコバに形成するレンズ周縁加工のための軌跡データを求め、レンズ周縁加工のための軌跡データに基づいてレンズ周縁加工のための軌跡の各加工点における各傾斜角を決定し、レンズ周縁加工のための軌跡データ及び各加工点における傾斜角に基づいてレンズ周縁加工用データを得て、前記傾斜角変更手段を含む加工装置の動作を制御してレンズ周縁加工する加工制御手段と、を備える眼鏡レンズ加工装置」である点。

[相違点]
レンズ周縁加工が、本件発明では「溝掘り」であって、各加工点における各傾斜角を「溝掘り軌跡の各加工点における法線方向を求めて」決定しているのに対し、引用発明では、そのような特定がされていない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
刊行物1には、「平加工済みレンズに溝を削成する溝堀部材をも備えている」((1-ア)参照)、「本実施例ではヤゲン加工部に、ヤゲン加工砥石811、平加工砥石812が取付けられているが、これに限定されず、面取砥石、溝堀砥石を取付けることによって、溝堀加工、面取加工まで自動的に行なうことができる。」((1-オ)参照)、「本実施例では、研削部材がヤゲン加工砥石及び平加工砥石で構成されているが、必ずしもこの構成に限定されるものではない。例えば、ヤゲン加工砥石と一体にヤゲン加工済レンズに面取加工を行う円筒状の面取砥石及び平加工済レンズに溝を削成する溝堀砥石を有することで、荒摺加工終了後、ヤゲン加工と面取加工、または平加工と溝堀加工と面取加工を連続して自動的に行うことができる。」((1-カ)参照)と記載されている。これらの記載からみて、刊行物1には、レンズ周縁加工として溝掘りを行うこと及びヤゲン加工砥石の回転軸と共通の回転軸で回転する溝掘り砥石を備えることが示されているから、引用発明におけるレンズ周縁加工に溝掘りを加えるとともに、その回転軸をヤゲン加工砥石の回転軸と共通のものとすることは、刊行物1において実質的に開示されていた事項といえる。
ただし、厳密にいえば、溝掘り砥石の回転軸がヤゲン加工砥石の回転軸と共通であっても、溝掘りのときにもヤゲン加工のときと同じ制御をしているとは必ずしもいえない。
一方、刊行物2記載の事項における「自動制御機構」は本件発明における「加工制御手段」に相当し、以下同様に、「レンズ保持回転部の回転軸」は「レンズ回転軸」に、「切削作動部のスピンドル」は「溝掘り砥石回転軸」に、それぞれ相当する。
また、刊行物2記載の事項における「溝堀り」及び「溝を掘ること」は、レンズ周縁加工ともいうことができるものである。
そうすると、刊行物2記載の事項は、
「加工制御手段を用い、レンズ保持回転部の回転軸をレンズ周縁加工砥石回転軸に対し任意の方向に傾斜させ、レンズの形状、肉厚の差異、レンズ周縁の傾斜の変化等に応じてレンズ周縁の所定位置に所定角度でレンズ周縁加工すること」であるとすることができる。
そして、引用発明及び刊行物2記載の事項はいずれも、加工制御手段を用いてレンズ周縁の所定位置に加工を行う、という技術分野において共通するものであるから、引用発明において、レンズ周縁加工を溝堀りとし、レンズ保持回転部の回転軸とレンズ周縁加工砥石回転軸との傾斜角を、刊行物2記載の事項のように、レンズ周縁の傾斜の変化に応じたものとすることは、当業者が容易になし得たことである。また、傾斜角をレンズ周縁の傾斜の変化に応じたものとする際に、レンズ周縁加工軌跡の各加工点における法線方向を求めて傾斜角を決定することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
してみると、引用発明に刊行物2記載の事項を適用して、上記相違点に係る本件発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
なお、刊行物1においても、「フレームカーブCF及びフレームカーブの中心・・・を求める(計算式はレンズカーブの求め方と同一)」((1-ウ)参照)、「フレームカーブである球の中心・・・と光学中心位置OSを通る直線に対して、フレームカーブの中心・・・と(xn、yn、zn)(n=l、2、・・・・・・N)の各点を通る直線との成す角をフレーム溝の方向の角度vθn(n=1、2、・・・・・・N)として求め」((1-エ)参照)、「キャリッジ7及びヤゲン加工部8をデジタル制御し、フレーム溝の角度vθi(n=1、2、・・・・・・N)だけヤゲン加工砥石を傾けることで、フレームの傾きに応じた所定のヤゲン加工を行うことができる。」((1-カ)参照)と記載されていることから、引用発明の傾斜角は、レンズカーブと同一のフレームカーブに基づくレンズ周縁の傾斜の変化に応じたものであり、レンズ周縁加工軌跡の各加工点における法線方向に実質的に等しいものと解される。

また、本件発明の作用効果についてみても、引用発明及び刊行物2記載の事項並びに技術常識から当業者が十分予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

よって、本件発明は、引用発明及び刊行物2記載の事項並びに技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、引用発明及び刊行物2記載の事項並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、本件出願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-29 
結審通知日 2008-10-01 
審決日 2008-10-15 
出願番号 特願2001-343727(P2001-343727)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B24B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今関 雅子  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 槻木澤 昌司
鈴木 孝幸
発明の名称 眼鏡レンズ加工装置  

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