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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1188465
審判番号 不服2004-19744  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-24 
確定日 2008-11-27 
事件の表示 特願2003- 83929「光情報記録装置、情報処理装置、光情報記録方法、プログラム及び記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月21日出願公開、特開2004-295950〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許願(以下「本願」という。)は、平成15年3月25日に出願されたものであって、平成16年7月22日付けで手続補正されたが、平成16年8月20日付けで拒絶すべきものである旨の査定がされ、これに対して、平成16年9月24日付けで拒絶査定不服審判の請求がされ、平成16年10月21日付けで手続補正されたものである。


II.平成16年10月21日付け手続補正についての却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成16年10月21日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1.平成16年10月21日付け手続補正(以下「本件補正」という。)の内容
本件補正は明細書についてするもので、そのうち特許請求の範囲については、
-本件補正前-
「【請求項1】 記録層が多層構造で各記録層について記録データの記録が可能な光情報記録媒体に対して記録データの記録を行う光情報記録装置において、
前記各記録層に半径方向に蛇行したらせん状の案内溝の当該蛇行を読み取る読取手段と、
この前記蛇行の復調としてアドレス情報を取得するアドレス情報取得手段と、
前記アドレス情報の特定のビットに基づいて、現在の記録層を検出する記録層検出手段と、
前記現在の記録層に応じて、前記アドレス情報に所定の変換を行って変換アドレスを得るアドレス変換手段と、
前記変換アドレスを用いて、目標アドレスへのアクセスを行うアクセス手段と、
このアクセスした位置に、ユーザデータを記録する記録手段と、
を備えていることを特徴とする光情報記録装置。
【請求項2】 記録層が多層構造で各記録層について記録データの記録が可能な光情報記録媒体に対して記録データの記録を行う光情報記録装置において、
前記各記録層に半径方向に蛇行したらせん状の案内溝の当該蛇行を読み取る読取手段と、
この前記蛇行の復調としてアドレス情報を取得するアドレス情報取得手段と、
前記アドレス情報の特定のビットに基づいて、現在の記録層を検出する記録層検出手段と、
目標とする層の番号と前記現在の記録層の番号の差を取って、記録層間の移動する方向と層数を決定する層間移動決定手段と、
前記決定に基づき層間を移動させる層間移動手段と、
前記現在の記録層に応じて、前記アドレス情報に所定の変換を行って変換アドレスを得るアドレス変換手段と、
前記変換アドレスを用いて、目標アドレスへのアクセスを行うアクセス手段と、
このアクセスした位置に、ユーザデータを記録する記録手段と、
を備えていることを特徴とする光情報記録装置。
【請求項3】 前記読取手段による前記読取り、及び、前記記録手段による前記記録は、前記光情報記録媒体が他の記録層とある記録層とで前記案内溝の前記らせん状の方向が逆向きであるときは、当該他の記録層と当該ある記録層とで逆向きに行うこと、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項4】 前記変換手段は、前記所定の変換としてビット反転を行なうこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項5】 前記変換手段は、前記所定の変換として符号反転を行なうこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項6】 前記アクセス手段は、前記変換後のアドレスに応じて前記光情報記録媒体の半径方向のアクセス距離を決定すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項7】 前記アクセス手段は、前記変換後のアドレスに応じて前記光情報記録媒体の半径方向のアクセス方向を決定すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項8】 前記アドレス情報取得手段は、前記記録データのデータアドレスに対して所定の変換を行って当該データアドレスよりもすくない語長で表現されている前記アドレス情報を取得すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項9】 前記復調は位相変調されているものを復調すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項10】 前記復調は周波数変調されているものを復調すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項11】 前記復調は振幅変調されているものを復調すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項12】 各種情報処理を行うことができる情報処理装置において、
請求項1又は2に記載の光情報記録装置を備えていること、を特徴とする情報処理装置。
【請求項13】 記録層が多層構造で各記録層について記録データの記録が可能な光情報記録媒体に対して記録データの記録を行う光情報記録方法において、
前記各記録層に半径方向に蛇行したらせん状の案内溝の当該蛇行を読み取る読取工程と、
この前記蛇行の復調としてアドレス情報を取得するアドレス情報取得工程と、
前記アドレス情報の特定のビットに基づいて、現在の記録層を検出する記録層検出工程と、
前記現在の記録層に応じて、前記アドレス情報に所定の変換を行って変換アドレスを得るアドレス変換工程と、
前記変換アドレスを用いて、目標アドレスへのアクセスを行うアクセス工程と、
このアクセスした位置に、ユーザデータを記録する記録工程と、
を備えていることを特徴とする光情報記録方法。
【請求項14】 記録層が多層構造で各記録層について記録データの記録が可能な光情報記録媒体に対して記録データの記録を行う光情報記録方法において、
前記各記録層に半径方向に蛇行したらせん状の案内溝の当該蛇行を読み取る読取工程と、
この前記蛇行の復調としてアドレス情報を取得するアドレス情報取得工程と、
前記アドレス情報の特定のビットに基づいて、現在の記録層を検出する記録層検出工程と、
目標とする層の番号と前記現在の記録層の番号の差を取って、記録層間の移動する方向と層数を決定する層間移動決定工程と、
前記決定に基づき層間を移動させる層間移動工程と、
前記現在の記録層に応じて、前記アドレス情報に所定の変換を行って変換アドレスを得るアドレス変換工程と、
前記変換アドレスを用いて、目標アドレスへのアクセスを行うアクセス工程と、
このアクセスした位置に、ユーザデータを記録する記録工程と、
を備えていることを特徴とする光情報記録方法。
【請求項15】 前記読取工程による前記読取り、及び、前記記録工程による前記記録は、前記光情報記録媒体が他の記録層とある記録層とで前記案内溝の前記らせん状の方向が逆向きであるときは、当該他の記録層と当該ある記録層とで逆向きに行うこと、を特徴とする請求項13又は14に記載の光情報記録方法。
【請求項16】 前記変換工程は、前記所定の変換としてビット反転を行うこと、を特徴とする請求項13,14又は15に記載の光情報記録方法。
【請求項17】 前記変換工程は、前記所定の変換として符号反転を行うこと、を特徴とする請求項13,14又は15に記載の光情報記録方法。
【請求項18】 前記アクセス工程は、前記変換後のアドレスに応じて前記光情報記録媒体の半径方向のアクセス距離を決定すること、を特徴とする請求項13,14又は15に記載の光情報記録方法。
【請求項19】 前記アクセス手段は、前記変換後のアドレスに応じて前記光情報記録媒体の半径方向のアクセス方向を決定すること、を特徴とする請求項13,14又は15に記載の光情報記録方法。
【請求項20】 前記アドレス情報取得工程は、前記記録データのデータアドレスに対して所定の変換を行って当該データアドレスよりもすくない語長で表現されている前記アドレス情報を取得すること、を特徴とする請求項13,14又は15に記載の光情報記録方法。
【請求項21】 記録層が多層構造で各記録層について記録データの記録が可能な光情報記録媒体に対して記録データの記録を行う光情報記録装置の制御をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
前記各記録層に半径方向に蛇行したらせん状の案内溝の当該蛇行を読み取る読取処理と、
前記蛇行を復調してアドレス情報を取得するアドレス情報取得処理と、
前記アドレス情報の特定のビットに基づいて、現在の記録層を検出する記録層検出処理と、
前記現在の記録層に応じて、前記アドレス情報に所定の変換を行って変換アドレスを得るアドレス変換処理と、
前記変換アドレスを用いて、目標アドレスへのアクセスを行うアクセス処理と、
このアクセスした位置に、ユーザデータを記録する記録処理と、
を前記光情報記録装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項22】 記録層が多層構造で各記録層について記録データの記録が可能な光情報記録媒体に対して記録データの記録を行う光情報記録光情報記録装置の制御をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
前記各記録層に半径方向に蛇行したらせん状の案内溝の当該蛇行を読み取る読取処理と、
この前記蛇行の復調としてアドレス情報を取得するアドレス情報取得処理と、
前記アドレス情報の特定のビットに基づいて、現在の記録層を検出する記録層検出処理と、
目標とする層の番号と前記現在の記録層の番号の差を取って、記録層間の移動する方向と層数を決定する層間移動決定処理と、
前記決定に基づき層間を移動させる層間移動処理と、
前記現在の記録層に応じて、前記アドレス情報に所定の変換を行って変換アドレスを得るアドレス変換処理と、
前記変換アドレスを用いて、目標アドレスへのアクセスを行うアクセス処理と、
このアクセスした位置に、ユーザデータを記録する記録処理と、
を前記光情報記録装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項23】 プログラムを記憶している記憶媒体において、
請求項21又は22に記載のプログラムを記憶していること、を特徴とする記憶媒体。」

-本件補正後-
「【請求項1】 記録層が多層構造で各記録層について記録データの記録が可能な光情報記録媒体に対して記録データの記録を行う光情報記録装置において、
前記各記録層に半径方向に蛇行したらせん状の案内溝の当該蛇行を読み取る読取手段と、
この前記蛇行の復調としてアドレス情報を取得するアドレス情報取得手段と、
前記アドレス情報の特定のビットに基づいて、現在の記録層を検出する記録層検出手段と、
目標とする層の番号と前記現在の記録層の番号の差を取った結果の符合と絶対値によって移動方向と移動層数を決定する層間移動決定手段と、
前記決定に基づき層間を移動させる層間移動手段と、
前記現在の記録層に応じて、前記アドレス情報に所定の変換を行って変換アドレスを得るアドレス変換手段と、
前記変換アドレスを用いて、目標アドレスへのアクセスを行うアクセス手段と、
このアクセスした位置に、ユーザデータを記録する記録手段と、
を備えていることを特徴とする光情報記録装置。
【請求項2】 前記読取手段による前記読取り、及び、前記記録手段による前記記録は、前記光情報記録媒体が他の記録層とある記録層とで前記案内溝の前記らせん状の方向が逆向きであるときは、当該他の記録層と当該ある記録層とで逆向きに行うこと、を特徴とする請求項1に記載の光情報記録装置。
【請求項3】 前記変換手段は、前記所定の変換としてビット反転を行なうこと、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項4】 前記変換手段は、前記所定の変換として符号反転を行なうこと、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項5】 前記アクセス手段は、前記変換後のアドレスに応じて前記光情報記録媒体の半径方向のアクセス距離を決定すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項6】 前記アクセス手段は、前記変換後のアドレスに応じて前記光情報記録媒体の半径方向のアクセス方向を決定すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項7】 前記アドレス情報取得手段は、前記記録データのデータアドレスに対して所定の変換を行って当該データアドレスよりもすくない語長で表現されている前記アドレス情報を取得すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項8】 前記復調は位相変調されているものを復調すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項9】 前記復調は周波数変調されているものを復調すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項10】 前記復調は振幅変調されているものを復調すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録装置。
【請求項11】 各種情報処理を行うことができる情報処理装置において、
請求項1又は2に記載の光情報記録装置を備えていること、を特徴とする情報処理装置。
【請求項12】 記録層が多層構造で各記録層について記録データの記録が可能な光情報記録媒体に対して記録データの記録を行う光情報記録方法において、
前記各記録層に半径方向に蛇行したらせん状の案内溝の当該蛇行を読み取る読取工程と、
この前記蛇行の復調としてアドレス情報を取得するアドレス情報取得工程と、
前記アドレス情報の特定のビットに基づいて、現在の記録層を検出する記録層検出工程と、
目標とする層の番号と前記現在の記録層の番号の差を取った結果の符合と絶対値によって移動方向と移動層数を決定する層間移動決定工程と、
前記決定に基づき層間を移動させる層間移動工程と、
前記現在の記録層に応じて、前記アドレス情報に所定の変換を行って変換アドレスを得るアドレス変換工程と、
前記変換アドレスを用いて、目標アドレスへのアクセスを行うアクセス工程と、
このアクセスした位置に、ユーザデータを記録する記録工程と、
を備えていることを特徴とする光情報記録方法。
【請求項13】 前記読取工程による前記読取り、及び、前記記録工程による前記記録は、前記光情報記録媒体が他の記録層とある記録層とで前記案内溝の前記らせん状の方向が逆向きであるときは、当該他の記録層と当該ある記録層とで逆向きに行うこと、を特徴とする請求項12に記載の光情報記録方法。
【請求項14】 前記変換工程は、前記所定の変換としてビット反転を行うこと、を特徴とする請求項12又は13に記載の光情報記録方法。
【請求項15】 前記変換工程は、前記所定の変換として符号反転を行うこと、を特徴とする請求項12又は13に記載の光情報記録方法。
【請求項16】 前記アクセス工程は、前記変換後のアドレスに応じて前記光情報記録媒体の半径方向のアクセス距離を決定すること、を特徴とする請求項12又は13に記載の光情報記録方法。
【請求項17】 前記アクセス手段は、前記変換後のアドレスに応じて前記光情報記録媒体の半径方向のアクセス方向を決定すること、を特徴とする請求項12又は13に記載の光情報記録方法。
【請求項18】 前記アドレス情報取得工程は、前記記録データのデータアドレスに対して所定の変換を行って当該データアドレスよりもすくない語長で表現されている前記アドレス情報を取得すること、を特徴とする請求項12又は13に記載の光情報記録方法。
【請求項19】 記録層が多層構造で各記録層について記録データの記録が可能な光情報記録媒体に対して記録データの記録を行う光情報記録光情報記録装置の制御をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
前記各記録層に半径方向に蛇行したらせん状の案内溝の当該蛇行を読み取る読取処理と、
この前記蛇行の復調としてアドレス情報を取得するアドレス情報取得処理と、
前記アドレス情報の特定のビットに基づいて、現在の記録層を検出する記録層検出処理と、
目標とする層の番号と前記現在の記録層の番号の差を取った結果の符合と絶対値によって移動方向と移動層数を決定する層間移動決定処理と、
前記決定に基づき層間を移動させる層間移動処理と、
前記現在の記録層に応じて、前記アドレス情報に所定の変換を行って変換アドレスを得るアドレス変換処理と、
前記変換アドレスを用いて、目標アドレスへのアクセスを行うアクセス処理と、
このアクセスした位置に、ユーザデータを記録する記録処理と、
を前記光情報記録装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項20】 プログラムを記憶している記憶媒体において、
請求項19に記載のプログラムを記憶していること、を特徴とする記憶媒体。」
とするものである。

2.本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1,13,21を削除し請求項の数を23から20にするとともに、項番号を連続するように順次繰り上げ、本件補正前の請求項2,13,21(本件補正後の請求項1,11,19)に係る各発明がそれぞれ備えた「層間移動決定手段」「層間移動決定工程」「層間移動決定処理」について、
「目標とする層の番号と前記現在の記録層の番号の差を取った結果の符合と絶対値によって移動方向と移動層数を決定する層間移動決定手段(層間移動決定工程、層間移動決定処理)」
と下線部の要件を付加して具体的に限定するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除と同項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認める。

3.本件補正の適否
次に、本件補正後の請求項1に記載されてた事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、上記1.-本件補正後-の【請求項1】に記載されたとおりのものである。

(2)刊行物及びその記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は、特開2003-6997号公報(平成15年1月10日公開、以下「刊行物1」という。)、特開平11-273082号公報(平成11年10月8日公開、以下「刊行物2」という。)である。
(2-1)刊行物1の記載
補正後発明の「前記各記録層に半径方向に蛇行したらせん状の案内溝の当該蛇行を読み取る読取手段と、この前記蛇行の復調としてアドレス情報を取得するアドレス情報取得手段と、前記アドレス情報の特定のビットに基づいて、現在の記録層を検出する記録層検出手段」としている点について、本願明細書の発明の詳細な説明【0068】以下の【発明の実施の形態】【0075】【0076】【0077】【0079】等を参酌すると、上記「(案内溝の)蛇行の復調として」取得される「アドレス情報」は、「案内溝のウォブル変調によりアドレス情報を埋め込むこと、あるいは埋め込まれたアドレス情報のことをADIP(ADdress In Pre-groove)という。」(【0077】)とされた「ADIP」情報であることは明らかであるから、刊行物1の「ADIP」等のアドレス情報に関連した記載をみると、以下の記載がある。
i.「【0037】図6は、グルーブをウォブリングしたウォブルアドレスの変調方法として、FSK変調の一つであるMSK(minimum shift keying)変調を用い、また復調時のウォブル検出ウインドウ(wobble detection window )L=4を用いた場合のウォブル波形を示す。なお、Lとはウォブル検出ウインドウのレングスを示し、L=4とは、検出単位がモノトーンウォブル4波期間に相当するという意味である。モノトーンウォブルとは、MSK変調のキャリア周波数によるウォブル波形が連続する区間のウォブルをいう。
【0038】ウォブリンググルーブに記録するアドレス情報としてのデータ波形(チャンネルビット)を図6(d)の波形(data)としたとき、このデータ(data)はプリエンコードされ、図6(e)のプリコードデータとされる。例えばデータ(data)が論理反転するタイミングでプリコードデータが「1」とされるようにプリエンコードされる。そして、このプリコードデータによりMSK変調が行われ、図6(f)のようなMSK変調信号としてのストリームが形成される。」
ii.「【0040】図7にMSK変調部分を含むウォブル波形のストリームを示す。図7(a)のモノトーンビットとは、周波数fw1(=キャリア)による単一周波数のウォブルが連続する区間である。モノトーンビットはモノトーンウォブル56波で形成される。
【0041】図7(b)のADIPビットは、これもモノトーンウォブル56波の期間となるが、そのうちの12モノトーンウォブル区間であるADIPユニットがMSK部とされ、即ちこのMSK部は上記のようにプリコードデータが周波数fw1,fw2によりMSK変調された部分である。このMSK部がアドレス情報を含む区間となる。またADIPビットの残りの44モノトーンウォブル区間は、周波数fw1(=キャリア)による単一周波数のウォブルが44波連続する区間である。
【0042】図7(c)のシンクビットは、これもモノトーンウォブル56波の期間となるが、そのうちの28モノトーンウォブル区間がシンクユニットとされ、上記のようにプリコードデータが周波数fw1,fw2によりMSK変調された部分となる。このシンクユニットのパターンにより同期情報が表現される。またシンクビットの残りの28モノトーンウォブル区間は、周波数fw1(=キャリア)による単一周波数のウォブルが28波連続する区間である。
【0043】このADIPビット、モノトーンビット、シンクビットが、1つのアドレス情報(ADIP)となる次に説明するアドレスブロック(83ビット)を構成することになる1つのビットに相当する。
【0044】本例の場合、データの記録単位である1つのRUB(recording unit block)に対しては、ADIPアドレスとして3つのアドレスが入るものとされる。図8にその様子を示す。RUBは、ECCブロック単位のデータ群に対してランイン、ランアウトが付加されたデータ単位であるが、この場合、1つのRUBは498フレーム(498row)で構成される。そして図8(a)のように1つのRUBに相当する区間において、ADIPとしては3つのアドレスブロックが含まれることになる。1つのアドレスブロックはADIPデータとしての83ビットから成り、上記図7のようにADIPビット及びモノトーンビットは、56モノトーンウォブル期間に相当するため、1つのアドレスブロックは83×56=4648モノトーンウォブル期間に相当し、また1RUBは、4648×3=13944モノトーンウォブル期間に相当する。
【0045】図8(b)に1つのアドレスブロックの構成を示している。83ビットのアドレスブロックは、8ビットのシンクパート(同期信号パート)と、75ビットのデータパートからなる。シンクパートの8ビットでは、モノトーンビット(1ビット)とシンクビット(1ビット)によるシンクブロックが4単位形成される。データパートの75ビットでは、モノトーンビット(1ビット)とADIPビット(4ビット)によるADIPブロックが15単位形成される。ここでいう、モノトーンビット、シンクビット、及びADIPビットは、上記図7で説明したものであり、シンクビット及びADIPビットはMSK変調波形によるウォブルを有して形成される。」
iii.「【0055】次にアドレスブロックにおけるデータパートの構成を図11で説明する。 図11(a)(b)からわかるように、データパートは、15個のADIPブロック(ADIP block“0”?“14”)から形成される。各ADIPブロックは5ビットである。
【0056】5ビットの各ADIPブロックは、モノトーンビットが1ビットとADIPビットが4ビットで構成される。各ADIPブロックにおいて、シンクブロックの場合と同様に、モノトーンビットはキャリアをあらわす単一周波数のウォブルが56波連続する波形であり、これを図12(a)に示す。
【0057】1つのADIPブロックに4ビットのADIPビットが含まれるため、15個のADIPブロックにより60ADIPビットでアドレス情報が形成される。1つのADIPビットは、12モノトーンウォブル期間のADIPユニットと44モノトーンウォブルで形成される。
【0058】ADIPビットとしての値が「1」の場合のウォブル波形パターンと、それに対応するアドレス情報としてのデータパターンを図12(b)に示し、またADIPビットとしての値が「0」の場合のウォブル波形パターンと、それに対応するアドレス情報としてのデータパターンを図12(c)に示す。ADIPビット「1」「0」は、それぞれ12モノトーンウォブル期間における3チャンネルビットで表現される(1チャンネルビットは4モノトーンウォブル期間)。
【0059】ADIPビットとしての値「1」は、図12(b)のように、ADIPユニットの区間において、「100」のチャンネルビットデータストリームとなり、つまりプリコードデータストリームとして「100010000000」に相当するウォブル波形となる。具体的には、プリコードデータの「1」に相当する部分が、周波数fw2の1.5波、プリコードデータの「0」に相当する部分が周波数fw1の1波とされるように、MSK変調されたウォブルパターンとなる。
【0060】ADIPビットとしての値「0」は、図12(c)のように、ADIPユニットの区間において、「010」のチャンネルビットデータストリームとなり、つまりプリコードデータストリームとして「000010001000」に相当するウォブル波形となる。
【0061】以上のようにして、ウォブリンググルーブにはMSK変調データが記録されることになるが、このように記録されるADIP情報としてのアドレスフォーマットは図13のようになる。アドレスデータとしてのECC単位は、図示するように15ニブル(1ニブル=4ビット)で構成される。この15ニブル、即ち60ビットが、図8(b)に示すデータパートの75ビットのうちの、モノトーンビット15ビットを除いた60ビットのADIPビットに相当するものとなる。つまり、図13のデータ内容が図8(a)の1つのアドレスブロックに含まれる実データとなる。そして、この図13の各ビットの情報としての「1」「0」は、図12(b)(c)のウォブルパターンで表現される。
【0062】15ニブルは9ニブルのデータと6ニブルのECCパリティから成る。9ニブル(36ビット)のデータとしては、RUBナンバ(RUBアドレス)が20ビット(RUB no.bit 0?RUB no.bit 19)、アドレスナンバが2ビット(address no.bit 0、address no.bit 1)、レイヤナンバが2ビット(layer no.bit 0、layer no.bit 1)、リザーブ(未定義)が12ビット(reserve bit 0?reserve bit 11)が配される。そしてNibble based RS(15,9,7)のリードソロモン符号(Reed Solomon Codes)として、この36ビットのデータに対して6ニブル(24ビット)のECCパリティ(parity bit 0?parity bit 23)が付加される。
【0063】20ビットのRUBナンバとして、対応するRUBのアドレスが記録される。図8のように1RUBに3つのアドレスブロックが対応するため、3つの各アドレスブロックでは、同一のRUBナンバが記録されることになる。2ビットのアドレスナンバは、1つのRUBに対応する3つのアドレスブロックについて付されるナンバである。2ビットのレイヤナンバとしては、多層ディスクを想定した場合のレイヤナンバが記録される。」
iv.「【0102】7.カッティング装置例
続いて、上述したディスク製造部203におけるカッティング装置について説明する。ディスクの製造プロセスは、大別すると、いわゆる原盤工程(マスタリングプロセス)と、ディスク化工程(レプリケーションプロセス)に分けられる。原盤工程はディスク化工程で用いる金属原盤(スタンパー)を完成するまでのプロセスであり、ディスク化工程はスタンパーを用いて、その複製である光ディスクを大量生産するプロセスである。
【0103】具体的には、原盤工程は、研磨した硝子基板にフォトレジストを塗布し、この感光膜にレーザビームによる露光によってピットやグルーブを形成する、いわゆるカッティングを行なう。例えば図2のようなディスク100の場合、ディスクの最内周側のエンボスエリアに相当する部分でピットカッティングが行われ、またグルーブエリアに相当する部分で、ウォブリンググルーブのカッティングが行われる。図1,図3のようなディスク100の場合は、リードインエリア91?リードアウトエリア93にわたってウォブリンググルーブのカッティングが行われる。ここでは、図1のディスク100についてのカッティング装置として説明する。」
v.「【0109】そして、このカッティング装置では、カッティングの際、サーボコントローラ84は、モータ81によって硝子基板71を一定線速度で回転駆動するとともに、スライドモータ83によって硝子基板71を回転させたまま、所定のトラックピッチでらせん状のトラックが形成されていくようにスライドさせる。同時に、レーザ光源72からの出射光は光変調器73、光偏向器74を介して記録信号に基づく変調ビームとされて対物レンズ76から硝子基板71のフォトレジスト面に照射されていき、その結果、フォトレジストがグルーブに基づいて感光される。
【0110】グルーブカッティングのために、システムコントローラ67はデータ発生部63からMSK変調部分及びモノトーンウォブル部分に対応するデータを順次出力させる制御を行う。例えばデータ発生部63は、バイトクロックbyteCKに基づいてモノトーンウォブルに相当する期間は「0」データを連続して出力させる。またMSK変調部分に相当する期間は、前述したアドレスブロックを構成する各ADIPユニットに対応して必要なデータを発生させる。即ちシンク、データ「0」、データ「1」に相当するチャンネルビットデータを、所定タイミングで出力する。もちろん上述したようにデータ「0」、データ「1」は各ADIPユニットから集められた際にアドレス値、付加情報、検証情報Pを構成するデータとなるように各値が所要順序で出力される。
vi.「【0114】8.ディスクドライブ装置例
次に、ディスク100に対して相変化ピットマークを形成する記録動作と、相変化ピットマークデータの再生及びADIP情報の再生を行うことのできるディスクドライブ装置を説明する。図21はディスクドライブ装置30の構成を示す。図21において、ディスク100は上述した本例のディスクである。
【0115】ディスク100は、ターンテーブル7に積載され、記録/再生動作時においてスピンドルモータ6によって一定線速度(CLV)で回転駆動される。そして光学ピックアップ1によってディスク100上のトラックに記録されたピットデータやトラックのウォブリングとして埋め込まれたADIP情報の読み出しがおこなわれる。グルーブとして形成されているトラック上にデータとして記録されるピットはいわゆる相変化ピットである。なお図2のようなディスク100に対応する場合はエンボスピットの読出も行われる。
【0116】?【0118】・・・省略・・・。
【0119】マトリクス回路9から出力される再生データ信号は2値化回路11へ、フォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEはサーボ回路14へ、プッシュプル信号P/PはMSK復調部24へ、それぞれ供給される。
【0120】グルーブのウォブリングに係る信号として出力されるプッシュプル信号P/Pは、MSK復調部24,ウォブルPLL25,アドレスデコーダ26のウォブリング処理回路系で処理されて、ADIP情報としてのアドレスが抽出されたり、当該ADIP情報のデコードに用いるウォブルクロックWCKが、他の所要回路系に供給される。即ちMSK復調部でMSK復調が行われてADIPデータが抽出され、ADIPデータがアドレスデコーダ26でデコードされる。これによってアドレス情報や各種制御情報、さらには検証情報Pが得られ、システムコントローラ10に供給される。」
vii.「【0130】またシステムコントローラ10からのトラックジャンプ指令に応じて、トラッキングサーボループをオフとし、二軸ドライバ16に対してジャンプドライブ信号を出力することで、トラックジャンプ動作を実行させる。
【0131】またサーボプロセッサ14は、トラッキングエラー信号TEの低域成分として得られるスレッドエラー信号や、システムコントローラ10からのアクセス実行制御などに基づいてスレッドドライブ信号を生成し、スレッドドライバ15に供給する。スレッドドライバ15はスレッドドライブ信号に応じてスレッド機構8を駆動する。スレッド機構8には、図示しないが、ピックアップ1を保持するメインシャフト、スレッドモータ、伝達ギア等による機構を有し、スレッドドライバ15がスレッドドライブ信号に応じてスレッドモータ8を駆動することで、ピックアップ1の所要のスライド移動が行なわれる。
【0132】・・・省略・・・。
【0133】以上のようなサーボ系及び記録再生系の各種動作はマイクロコンピュータによって形成されたシステムコントローラ10により制御される。システムコントローラ10は、ホストコンピュータ40からのコマンドに応じて各種処理を実行する。例えばホストコンピュータ40から、ディスク100に記録されている或るデータの転送を求めるリードコマンドが供給された場合は、まず指示されたアドレスを目的としてシーク動作制御を行う。即ちサーボ回路14に指令を出し、シークコマンドにより指定されたアドレスをターゲットとするピックアップ1のアクセス動作を実行させる。その後、その指示されたデータ区間のデータをホストコンピュータ40に転送するために必要な動作制御を行う。即ちディスク100からのデータ読出/デコード/バファリング等を行って、要求されたデータを転送する。
【0134】またホストコンピュータ40から書込命令(ライトコマンド)が出されると、システムコントローラ10は、まず書き込むべきアドレスにピックアップ1を移動させる。そしてエンコード/デコード部12により、ホストコンピュータ40から転送されてきたデータについて上述したようにエンコード処理を実行させる。そして上記のようにライトストラテジー21からのライトデータWDATAがレーザドライバ18に供給されることで、記録が実行される。」

上記iii.の【0063】で「2ビットのレイヤナンバとしては、多層ディスクを想定した場合のレイヤナンバが記録される。」とし、また、上記v.の【0109】では、ディスク製造部におけるカッティング装置による「原盤工程」についてであるが、「このカッティング装置では、カッティングの際、サーボコントローラ84は、モータ81によって硝子基板71を一定線速度で回転駆動するとともに、スライドモータ83によって硝子基板71を回転させたまま、所定のトラックピッチでらせん状のトラックが形成されていくようにスライドさせる。」とする記載から、光ディスクのトラックである「グルーブ(案内溝)」が、「らせん状」であることは明らかである。そして、らせん状のグルーブ(案内溝)を有する多層光ディスクを想定した場合のADIPアドレスのデータ構成、及び、これに対応した光ディスクドライブ装置に着目して整理すると、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認める。

「複数の記録層を有し、トラック及びグルーブ(案内溝)が、らせん状に形成されている多層光ディスクに対して、相変化ピットマークを形成する記録動作と、相変化ピットマークデータ及びADIPアドレスデータの再生動作を行うことのできる光ディスクドライブ装置であって、
相変化ピットマークデータは、多層光ディスクのらせん状のトラックに記録され、
ADIPアドレスデータは、MSK変調を用いて、らせん状のグルーブ(案内溝)のウォブリングとして記録され、
ADIPアドレスデータとしてのECC単位は、15ニブル(1ニブル=4ビット)で構成され、
この15ニブル、即ち60ビットが、ADIPビットに相当するものであり、
各ビットの情報としての「1」「0」は、所定ののウォブルパターンで表現され、
15ニブルは、9ニブルのデータと6ニブルのECCパリティから成り、
9ニブルのデータとして、
RUB(recording unit block)ナンバ(RUBアドレス)が20ビット、アドレスナンバが2ビット、レイヤナンバが2ビット、リザーブ(未定義)が12ビットが配され、
この9ニブルのデータに対して6ニブルのECCパリティが付加され、
20ビットのRUBナンバとして、対応するRUBのアドレスが記録され、
1RUBに3つのアドレスブロックが対応する場合、3つの各アドレスブロックで、同一のRUBナンバが記録され、
2ビットのアドレスナンバは、1つのRUBに対応する3つのアドレスブロックについて付されるナンバであり、
2ビットのレイヤナンバは、多層光ディスクのレイヤナンバであり、
光ディスクドライブ装置は、
グルーブ(案内溝)のウォブリングに係る信号として出力されるプッシュプル信号を、MSK復調部でMSK復調を行い、ADIPアドレスデータを抽出し、ADIPアドレスデータをアドレスデコーダでデコードし、これによってADIPデータとしてのアドレスを取得するアドレス取得部を備え、
書込命令が出されると、
書き込むべきアドレスにピックアップを移動させ、ライトデータがレーザドライバに供給されることで、記録を実行するようにした光ディスクドライブ装置。」

(2-2)刊行物2の記載
刊行物2には、多層構造の光ディスクに対して所望のデータの読み取りが要求された場合に、読み取るべきデータの記録されている層と、その層におけるデータの記録位置とを迅速かつ正確に得ることが可能である極めて良好な多層光ディスク再生装置を提供することを目的としてなされた、多層光ディスク再生装置に関する発明について、以下の記載がある。
i.「【0014】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1において、符号11はDVDフォーマットに準ずる多層構造の光ディスクで、この実施の形態では2層構造のものを想定している。この光ディスク11は、ディスクモータ12によって所定の回転速度で回転駆動されるようになっている。
【0015】この光ディスク11の信号記録面側には、光学式ピックアップ13が設置されている。この光学式ピックアップ13は、光ディスク11の径方向に移動可能となるように支持されており、回転駆動されている光ディスク11から、その記録されたデータを読み取るように機能する。
【0016】・・・省略・・・。
【0017】さらに、上記制御回路14には、入力端子15を介してID(Identifier)情報が供給されるようになっている。このID情報は、光ディスク11上に記録されたデータの位置をセクタ単位で示した論理アドレスであり、例えば、光ディスク11から所望のデータを検索する際に、そのデータの記録開始位置を示すID情報が入力端子15に供給されることになる。
【0018】そして、上記制御回路14は、詳細は後述するが、ID情報が入力されると、そのID情報に基づいて、読み取るべきデータの記録されている光ディスク11の層と、その層におけるデータの記録開始位置を示す物理アドレスとを求め、光学式ピックアップ13の位置を制御することにより、そのID情報で指定された位置のデータを読み取るように動作している。
【0019】ここで、2層構造の光ディスク11の種類について説明する。図2に示す光ディスク11の場合は、層0,1の両方に対して、それぞれ最内周部にリードインエリア(中心から22.6?24cm)があり、最外周部にリードアウトエリアがあり、その中間部にデータエリアがある。」
ii.「【0020】そして、各層0,1には、共に、最内周部から外周方向に向けて順次大きくなっていくように、物理アドレスが設定されている。この場合、層0と層1とは、同じ半径位置では同じ物理アドレスを有している。そして、この図2に示すタイプの光ディスク11に対しては、各層0,1を最内周部から外周方向に向けて交互に再生する方式(Parallel Track Path )が採用されている。」
iii.「【0021】また、図3に示す光ディスク11の場合は、層0の最内周部にリードインエリアがあり、最外周部にミドルエリアがあり、その中間部にデータエリアがある。一方、層1には、最内周部にリードアウトエリアがあり、最外周部にミドルエリアがあり、その中間部にデータエリアがある。そして、層0には、最内周部から外周方向に向けて順次大きくなるように物理アドレスが設定され、層1には、最外周部から内周方向に向けて順次大きくなるように物理アドレスが設定されている。この場合、層1の物理アドレスと層0の物理アドレスとは、その各ビット値の0を1に1を0に反転させた関係となっている。
【0022】ここで、図3に示すタイプの光ディスク11に対しては、まず、層0に対して最内周部から外周方向に向けて再生を行ない、層0の再生が終了した後に、層1に対して最外周部から内周方向に向けて再生を行なう方式(Opposite Track Path )が採用されている。
【0023】なお、DVDフォーマットに準ずる多層構造の光ディスク11では、リードインエリアに記述されているPFI(Physical Format Information )の中に、その光ディスク11が1層構造であるか2層構造であるかを示すデータと、2層構造である場合にパラレルフォーマットかオポジットフォーマットかを示すデータとが含まれている。」
iv.「【0024】次に、上記制御回路14が、その入力されたID情報に基づいて、読み取るべきデータの記録されている光ディスク11の層と、その層におけるデータの記録開始位置を示す物理アドレスとを求める動作について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0025】まず、開始(ステップS1)されると、制御回路は14は、ステップS2で、光ディスク11のリードインエリアから上記PFIを読み取る。その後、制御回路14は、ステップS3で、入力端子15からID情報を取得する。そして、制御回路14は、ステップS4で、PFIの内容に基づいて光ディスク11が2層構造であるか否かを判別し、2層構造でないと判断された場合(NO)、そのまま終了(ステップS11)される。
【0026】また、ステップS4で2層構造であると判断された場合(YES)、制御回路14は、ステップS5で、PFIの内容に基づいて光ディスク11がパラレルフォーマットであるかオポジットフォーマットであるかを判別する。そして、パラレルフォーマットであると判断された場合、制御回路14は、ステップS6で、入力されたID情報つまり論理アドレスと、図2に示した層0のデータエリアの最終セクタEDA(End sector number of the Data Area)の物理アドレスとを比較し、ID>EDAであるか否かを判別する。
【0027】このステップS6で、ID>EDAであると判断された場合(YES)、制御回路14は、ステップS7で、まず、光ディスク11から読み取るべきデータが層1にあると判断する。また、制御回路14は、ステップS7で、層1のデータエリアの開始セクタの物理アドレスを30000h(hは16進数であることを示す)とすると、(ID-EDA-1)+30000hなる演算を行なうことにより、層1において読み取るべきデータの記録開始位置を示す物理アドレスを算出し、終了(ステップS11)される。
【0028】この物理アドレスの算出は、例えば、ID情報の示す論理アドレスが50000hで、EDAの物理アドレスが40000hであるとすると、(50000h-40000h-1)+30000h=3FFFFhとなる。つまり、層1の物理アドレス3FFFFhからデータの読み取りを開始すればよいことになる。
【0029】一方、上記ステップS5で、PFIの内容に基づいて光ディスク11がオポジットフォーマットであると判断された場合、制御回路14は、ステップS8で、入力されたID情報つまり論理アドレスと、図3に示した層0のデータエリアの最終セクタEL0(End sector number in Layer 0)の物理アドレスとを比較して、ID>EL0であるか否かを判別する。
【0030】このステップS8で、ID>EL0であると判断された場合(YES)、制御回路14は、ステップS9で、まず、光ディスク11から読み取るべきデータが層1にあると判断する。また、制御回路14は、ステップS9で、(ID-EL0-1)+(EL0 XOR FFFFFFh)なる演算を行なうことにより、層1において読み取るべきデータの記録開始位置を示す物理アドレスを算出し、終了(ステップS11)される。なお、上式において、XORは、排他的論理和演算のことである。
【0031】この物理アドレスの算出は、例えば、ID情報の示す論理アドレスが50000hで、EL0の物理アドレスが40000hであるとすると、(50000h-40000h-1)+(40000h XOR FFFFFFh)=FCFFFEhとなる。つまり、層1の物理アドレスFCFFFEhからデータの読み取りを開始すればよいことになる。」

(3)対比・判断
〔対比〕
補正後発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
a.両発明とも、多層の記録層を有する光ディスクの記録再生に対応するものであって、らせん状の案内溝のウォブリングとして記録されたADIPアドレスデータから、アドレスを読み取る点で共通する。
b.刊行物1記載の発明において、多層の記録層のためのレイヤナンバは、
ADIPアドレスデータとしてのECC単位を構成する15ニブル(1ニブル=4ビット)、60ビットのうちの9ニブル、36ビットからなるデータの所定位置のニブルの2ビットで記録されており、ADIPアドレスの一部として所定位置、即ち、特定のビットに記録されていることは明らかである。
したがって、刊行物1記載の発明における多層光ディスクに対応したディスクドライブ装置のアドレス取得部は、レイヤナンバについても取得していることは明らかで、刊行物1記載の発明におけるアドレス取得部が、補正後発明におけるアドレス情報取得手段と、アドレス情報の特定のビットに基づいて、現在の記録層を検出する記録層検出手段に相当することは明らかである。
c.刊行物1記載の発明において、アドレス取得部の前段で、グルーブ(案内溝)のウォブリングに係る信号として出力されるプッシュプル信号を得ており、らせん状のグルーブ(案内溝)のウォブリングに係る信号を読み取っていることは明らかであり、補正後発明における「各記録層に半径方向に蛇行したらせん状の案内溝の蛇行を読み取る読取手段」に相当する読取手段を備えていることは自明である。
d.刊行物1記載の発明は、書込命令が出されると、書き込むべきアドレスにピックアップを移動させ、ライトデータがレーザドライバに供給されることで、記録を実行するようにしており、補正後発明の、目標アドレスへのアクセスを行うアクセス手段、及び、アクセスした位置に、ユーザデータを記録する記録手段と備えていることも明らかである。
e.刊行物1記載の発明における光ディスクドライブ装置は、複数の記録層を有する多層光ディスクに対応するものであり、各記録層に対して、相変化ピットマークを形成する記録動作と、相変化ピットマークデータ、及び、ADIPアドレスデータの再生動作を行うことのできるものであるから、刊行物1記載の発明における光ディスクドライブ装置が、記録動作又は再生動作に際して、層間を移動すべきか否かを決定する層間移動決定手段及びこの決定に基づいて層間を移動させる層間移動手段を備えていることは自明である。

結局、補正後発明と刊行物1記載の発明との[一致点]及び[相違点]は、以下のとおりである。
[一致点]
「記録層が多層構造で各記録層について記録データの記録が可能な光情報記録媒体に対して記録データの記録を行う光情報記録装置において、
前記各記録層に半径方向に蛇行したらせん状の案内溝の当該蛇行を読み取る読取手段と、
この前記蛇行の復調としてアドレス情報を取得するアドレス情報取得手段と、
前記アドレス情報の特定のビットに基づいて、現在の記録層を検出する記録層検出手段と、
層間移動決定手段と、
前記決定に基づき層間を移動させる層間移動手段と、
目標アドレスへのアクセスを行うアクセス手段と、
このアクセスした位置に、ユーザデータを記録する記録手段と、
を備えている光情報記録装置。」の点。

[相違点]
イ.層間移動決定手段の決定処理について、補正後発明では、
「目標とする層の番号と現在の記録層の番号の差を取った結果の符合と絶対値によって移動方向と移動層数を決定する」としているのに対して、刊行物1記載の発明では、その決定処理が不明である点。
ロ.目標アドレスへのアクセス動作において、補正後発明では、アドレス情報取得手段で取得したアドレス情報に、現在の記録層に応じて、所定の変換を行って変換アドレスを得るアドレス変換手段を備え、この変換アドレスを用いて、目標アドレスへのアクセスを行っているのに対して、刊行物1記載の発明では、アドレス変換手段を備えていない点。

〔判断〕
以下、各相違点について検討する。
-相違点イ.について-
特開平5-101398号公報(平成5年4月23日公開、以下「刊行物3」という。)には、記録過程,再生過程において安定に記録再生できる光スポット絞り込み光学系等を検討し、さらに、3次元データフォーマット、それに伴う3次元アクセス方法を検討するとしてなされた3次元記録再生装置に関する発明について、
「【0169】ここで、目標層kにアクセスする場合の第1の実施例のブロック図を図23に示す。回転するディスク4に対し、AF(オートフォーカス)アクチゥエータ移動信号発生回路93でのこぎり波106を発生させ、AFアクチゥエータドライバ91を駆動させ、絞り込みレンズ8をディスク面に対し+Z方向(ディスクにレンズを近づける方向)に動かす。この時、AF検出回路89ではAF誤差信号35が得られる。この信号は引込み点判定回路92でゼロクロス点105を検出され、ある層面に合焦点であることをAFサーボ系コントローラ94(なお、【図23】では、符号が「99」とされているが、正しくは「94」であることは明らかである。)に伝える。判定回路92では図24aに示すように、ゼロスライスレベルより少しずれたスライスレベル103によって、図24bに示すAFパルス37を作り、その立ち下がり104を検出することでレンズ8が合焦点を通り過ぎる直前のタイミングをコントローラ94に送る。
【0170】コントローラ94では、上位コントローラからの指令で焦点引込み状態であることを認識し、上記タイミングの入力と共にスイッチ97を切り替え、AFサーボ回路90をAFアクチゥエータドライバ91につなげサーボループを閉じさせる。この状態では、AFサーボ回路90は、AF信号検出回路89でえられるAF誤差信号が常にゼロになるようにAFアクチゥエータを駆動させる。よって、ディスク4が回転時に上下振れしてもある層に回折限界のスポットを安定に形成させることができる。
【0171】次に、レイヤー番号検出回路95において、図5で示したプリフォーマット部にある層アドレスを読み取るとることで現在いる層の番号を認識し、コントローラ94に送る。コントローラ94では、現在焦点を結んでいるj番目の層から上位コントローラからの指令であるk番目の目標層まで、上下どちらの(sign(k-j))方向に,どれだけの(|k-j|)層数をスポット移動させれば良いかを認識し、レイヤージャンプ信号発生回路96にジャンプ強制信号107を発生させ、AFアクチゥエータドライバに入力させる。
【0172】ジャンプ信号107は、1層間の移動にたいし、+-極性のパルスの1対のパルスで構成され、上下の移動方向によって、+-のパルスを入れ替わる。先頭のパルスはスポットを移動方向におよそ移動距離分だけ駆動させるために用い、次の極性反転パルスはスポットが行き過ぎないように制定するためのものである。また、移動する層数の対のパルスをドライバ91に入力する。次に、レイヤー番号を検出し、j=kとなったところで、目標層kにスポットが位置づけられる。ランダムアクセスのために他の層にアクセスするときも、上記と同様に、レイヤージャンプを行えば良い。」
と、要するに、記録層が多層構造の光ディスクの各記録層に光スポットを絞り込み、データを記録再生する3次元記録再生装置において、『現在焦点を結んでいるj番目の層から上位コントローラからの指令であるk番目の目標層まで、上下どちらの(sign(k-j))方向に、どれだけの(|k-j|)層数をスポット移動させれば良いかを認識し、レイヤージャンプ信号発生回路にジャンプ強制信号を発生させ、AFアクチゥエータドライバに入力させることによって、目標層に焦点を合わせる』ことの記載がされている。
刊行物3記載の記録再生装置でも、目標とする層の番号と現在の記録層の番号の差を取った結果の符合と絶対値によって移動方向と移動層数を決定しており、多層光ディスクのレイヤナンバで、現在焦点を結んでいる層位置を認識する刊行物1記載の発明において、層間移動決定手段の決定処理に、これを採用することは、当業者であれば、格別の発明力を要すことなく、適宜になし得ることと認める。

-相違点ロ.について-
刊行物2には、
入力されたID情報の示す論理アドレスに、光ディスクのTrack Path方式に応じた所定の演算処理、即ち、変換処理を行うことで、読み取るべきデータの記録されている光ディスクの層と、その層におけるデータの記録開始位置を示す物理アドレスとを求め、光学式ピックアップの位置を制御することにより、そのID情報で指定された位置のデータを読み取ることが記載されている。
又、Opposite Track Path方式の光ディスクの場合、層0には、最内周部から外周方向に向けて順次大きくなるように物理アドレスが設定され、層1には、最外周部から内周方向に向けて順次大きくなるように物理アドレスが設定され、層1の物理アドレスと層0の物理アドレスとは、その各ビット値の0を1に1を0に反転させた関係とされている。
したがって、光ディスクの同じ半径位置どうしの物理アドレスが、一方の記録層における物理アドレスに対して、所定の変換処理で求められることは自明である。
多層光ディスクにおいて、目標アドレスにアクセスしようとする際、現在位置アドレスと目標アドレスとの記録層の異同等に応じて、アドレス情報に所定の変換を行い、変換されたアドレスを用いて、アクセス動作を行うことは、適宜なし得ることであり、刊行物1記載の発明において、アドレス変換手段を付加し、アクセス手段を、変換アドレスを用いてアクセスを行うものとすることは、当業者であれば、格別の発明力を要すことなく、必要に応じて、適宜になし得る範囲内のことと認める。

結局、本件補正の補正後の請求項1に係る発明は、刊行物1乃至3に記載された各発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


III.本願について
1.本願発明
平成16年10月21日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1乃至23に係る各発明は、平成16年7月22日付けの手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の記載からみて、その請求項1乃至23に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は、前記II.〔理由〕1.-本件補正前-の【請求項1】に記載(以下「本願発明」という。)されたとおりのものと認める。

2.刊行物及びその記載
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は、特開2003-6997号公報、特開平11-273082号公報であって、その記載は、上記II.3.(2)の(2-1)(2-2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記II.で検討した補正後発明から、「目標とする層の番号と前記現在の記録層の番号の差を取った結果の符合と絶対値によって移動方向と移動層数を決定する層間移動決定手段」及び「前記決定に基づき層間を移動させる層間移動手段」の構成要件を除いた上位概念の構成にあたるものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後発明が、上記II.〔理由〕3.(3)対比・判断に記載したとおり、刊行物1及び2に記載された各発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本願発明も、同様の理由により刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、相違点は上記II.3.(3)[相違点]ロ.に相当するものとなり、[相違点]イ.については生じない。

4.本願発明についてのむすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-25 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-15 
出願番号 特願2003-83929(P2003-83929)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 聡岩井 健二齊藤 健一  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 山田 洋一
小松 正
発明の名称 光情報記録装置、情報処理装置、光情報記録方法、プログラム及び記憶媒体  
代理人 伊東 忠彦  

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