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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1188491
審判番号 不服2005-23774  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-08 
確定日 2008-11-27 
事件の表示 特願2001-284110「レーダ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月28日出願公開、特開2003- 90874〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年9月18日の出願であって、平成17年11月4日付け(発送日同年11月8日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成18年1月10日付けで明細書又は図面についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
本件補正を却下する。

2 理由
(1)本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を、補正前の、
「【請求項1】 サイドローブキャンセラ処理後にサイドローブブランカー処理を行うレーダ装置において、
前記サイドローブキャンセラ処理の演算が収束したことを検出する収束判定手段と、
この収束判定手段の判定結果に基づいて、収束を検出するまでは前記サイドローブブランカー処理をオン状態とし、収束検出後は前記サイドローブブランカー処理をオフ状態とするサイドローブブランカー処理制御手段とを具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】 前記収束判定手段は、前記サイドローブキャンセラ処理で求めるウェイトの変化量の変動幅に基づいて判定することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】 前記収束判定手段は、前記サイドローブキャンセラ処理で求めるウェイトの絶対値に基づいて判定することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項4】 前記収束判定手段は、前記サイドローブキャンセラ処理で求めるウェイトの変化量の変動幅と前記ウェイトの絶対値の双方に基づいて判定することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項5】 前記サイドローブキャンセラ処理が複数のチャンネルビームについて行われるとき、前記収束判定手段は前記チャンネルビーム毎に演算の収束判定を行い、前記サイドローブブランカー処理制御手段は、前記収束判定手段のチャンネルビーム毎の収束判定結果を集計処理し、その処理結果に基づいて前記サイドローブブランカー処理のオン・オフ制御を行うことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。」

から、補正後の、

「【請求項1】 サイドローブキャンセラ処理後にサイドローブブランカー処理を行うレーダ装置において、
前記サイドローブキャンセラ処理の演算が収束したことを検出する収束判定手段と、
この収束判定手段の判定結果に基づいて、収束を検出するまでは前記サイドローブブランカー処理をオン状態とし、収束検出後は前記サイドローブブランカー処理をオフ状態とするサイドローブブランカー処理制御手段とを具備し、
前記収束判定手段は、前記サイドローブキャンセラ処理で求めるウェイトの変化量の変動幅、前記ウェイトの絶対値、前記ウェイトの変化量の変化幅及び絶対値の双方、前記ウェイトの収束状態の連続性のいずれかに基づいて判定することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】 前記サイドローブキャンセラ処理が複数のチャンネルビームについて行われるとき、前記収束判定手段は前記チャンネルビーム毎に演算の収束判定を行い、前記サイドローブブランカー処理制御手段は、前記収束判定手段のチャンネルビーム毎の収束判定結果を集計処理し、その処理結果に基づいて前記サイドローブブランカー処理のオン・オフ制御を行うことを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。」

と補正する補正事項を含むものである。(なお、下線は、補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

(2)本件補正の適否について
本件補正における上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した、発明を特定するために必要な事項である「サイドローブキャンセラ処理の演算が収束したことを検出する収束判定手段」について、「前記収束判定手段は、前記サイドローブキャンセラ処理で求めるウェイトの変化量の変動幅、前記ウェイトの絶対値、前記ウェイトの変化量の変化幅及び絶対値の双方、前記ウェイトの収束状態の連続性のいずれかに基づいて判定する」との限定を加えるものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(3)引用刊行物
ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-218256号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(ア-a)「【0001】【発明の属する技術分野】この発明は、周囲の電波環境に適応しながら、妨害波あるいは干渉波を自動的に抑圧するサイドローブキャンセラ装置に関する。【0002】【従来の技術】サイドローブキャンセラ装置(以後、SLCと略する。)は、所要信号を受信する主アンテナにおいて、サイドローブ領域で受信した妨害波あるいは干渉波を抑圧する為の技術である。図15は、従来のサイドローブキャンセラ装置の構成を説明するブロック図である。図15において、1は目的とする電波を主として受信する主アンテナ、2はサイドローブ領域にある妨害波或いは干渉波を受信しやすく構成された補助アンテナ、3は主アンテナ1と補助アンテナ2で受信した信号の相関をとり、主アンテナ1の受信信号と相関の強い信号の電力を最小とするキャンセラ回路である。」

(ア-b)「【0015】【発明の実施の形態】実施の形態1.この発明の一実施の形態を図1、2を用いて説明する。・・・【0019】次に動作について説明する。まず、送信アンテナ11による送信は行われず、主アンテナ1又は補助アンテナ2には、妨害波、又は他のレーダーからの干渉波が受信される。主アンテナ1又は補助アンテナ2によって受信された電波は、それぞれ受信信号としてキャンセラ回路3へ出力される。そして、これらの受信信号は、キャンセラ回路3内の相関回路4に入力され、相関回路4が相関係数を計算する。この計算は、一定時間入力した主アンテナ1と補助アンテナ2の出力を用いて行われるため、また、相関係数自体も主アンテナ1出力のサイドローブ領域の影響が少なくなるように、計算を繰り返してより良好な値に収束させるため、最終的な相関係数を得るためには所定の時間を要する。相関回路4の出力である相関係数と補助アンテナ2で受信した受信信号は、乗算器5で乗算され、補助アンテナ2で受信した信号に重みづけが行われる。【0020】そして、乗算器5の出力信号を主アンテナ1で受信した信号から減算器6で減算するため、減算器6の出力端でサイドローブ領域の信号電力が最小となるように作用する。以上のようにしてキャンセラ回路3の出力端では、主アンテナ1の信号のうち、補助アンテナ2と相関の強い信号(妨害等)の電力が最小となるように抑圧動作が行われる。・・・【0023】制御回路7は、相関係数が収束するまでの期間Aにおいては、受信切替器8をオフにすることによりキャンセラ回路3の出力を出力しないように制御する。・・・期間Aにおいて受信切替器8をオフにするのは、上述のように期間Aにおいてサイドローブ領域の信号が十分に除去されていないからである。【0024】以上によって、サイドローブ領域の信号が十分に抑制されていない信号の出力を防止することができる。」

(ア-c)「【0055】実施の形態5.・・・【0058】この実施の形態5のSLCの動作は、多くの部分において上記の実施の形態1と同様であるため、この実施の形態3(当審注:「実施の形態5」の誤記と認める。)の中心部をなす特徴的な動作について説明する。・・・【0061】制御回路7Dでは、検出回路16Aの出力S16が収束完了(LOW)を示すのに従い、受信開始信号をONにして、受信切替器8がデータを出力するように切換制御を行う。

(ア-d)【0062】相関係数が十分に収束していないときは、キャンセラ回路出力S3は、図10に示すようにサイドローブ領域の信号の消え残りが多い。この実施の形態5では、この消え残りが多い期間を上記のように検知し、この期間において、受信切替器8をOFFとして、受信信号を外部に出力しないようにする。そのため、サイドローブ領域の信号が十分に抑制されていない信号の出力を防止することができる。

(ア-e)「【0063】また、相関係数が十分に収束していない期間においては、送信アンテナ11から信号を出力しないため、測定対象物に反射して帰ってきた信号が上記収束していない期間にかかり、検知できないということを防止し、良好な検出を行うことができる。」

(ア-f)「【0066】実施の形態6.・・・【0067】図11は、この実施の形態6のSLCの構成を示したブロック図である。図11において、図9と同一の符号は同一又は相当の部分を表す。16Bはキャンセラ回路3のなかの相関回路4の相関係数のデータを監視し、相関係数が良好に収束したか否かを判断して、その判断結果を制御回路7Dに出力する検出回路である。ここで、相関係数は相関処理が完了すると一定値を出力するため、検出回路16Bは、相関係数のデータが一定値(或いは、予め定められた変化率以下)となるのを検出し、制御回路7に相関処理の収束終了の信号を送出する。

(ア-g)【0068】次に、動作について説明する。この実施の形態6の動作は、多くの部分において上記の実施の形態5と同じであるため、ここでは実施の形態5と異なる部分について説明する。制御回路7Dは、ステップトリガS1が入力されると、受信切換回路8に対してOFF信号を出力し、データを出力しないように切換制御を行う。

(ア-h)【0069】検出回路16Bは、相関回路4から相関係数を入力する。この相関係数は、サイドローブ領域の信号が次第に除去され良好な値になるにつれて、一定の値になる。従って、相関係数の変化量が大きいときには、収束していないと判断して制御回路7Dに対して、収束中を示す信号(HIGH)を出力する。一方、相関係数が次第に収束し、変化量が一定のしきい値以下となったときに収束が完了したと判断し、制御回路7Dに対して収束完了を示す信号(LOW)を出力する。

(ア-i)【0070】これらの信号を受けた制御回路7Dでは、信号S16に従い受信切替器8、送信切替器9を制御して、上述のように送受信処理を行う。

(ア-k)【0071】そのため、実施の形態5で説明した効果に加え、より正確に相関係数の収束を知ることができ、時間的効率もよく消え残しをより防止することができる。これは、キャンセラ回路3の出力はアナログの受信信号であり、主アンテナ1から受信したノイズや受信レベルのふらつきなどに左右される値であるのに対し、相関係数は受信信号全体から計算されるデジタルの信号であり、上記ふらつきなどが少なく比較的安定した値であるためである。」

上記摘記事項(ア-b)の「主アンテナ1又は補助アンテナ2には、妨害波、又は他のレーダーからの干渉波が受信される。」と記載されていて、摘記事項(ア-e)とも併せて「レーダー」としての構成が読み取れる。そして、上記摘記事項(ア-d)とも併せると、摘記事項(ア-b)(ア-e)(ア-d)から、「キャンセラ回路3の出力をサイドローブ領域の信号の消え残りが多い期間において受信切替器8をOFFとして外部に出力しないようにするレーダー」が読み取れる。

また、上記摘記事項(ア-f)ないし(ア-i)は、「実施の形態6.」についての記載であって、摘記事項(ア-f)から、キャンセラ回路3のなかの相関回路4の相関係数が良好に収束したか否かを判断して、その判断結果を制御回路7Dに出力する検出回路16Bが読み取れる。
そして、摘記事項(ア-h)から、上記の「相関係数が良好に収束したか否かを判断して」は、相関係数が収束完了したことを判断しているものであって、上記の「その判断結果を制御回路7Dに出力する」ことは、制御回路7Dに対して収束完了を示す信号(LOW)を出力することによって行われていることが読み取れるから、摘記事項(ア-f)及び(ア-h)からは、「キャンセラ回路3のなかの相関回路4の相関係数が収束完了したことを判断して、制御回路7Dに対して収束完了を示す信号(LOW)を出力する検出回路16B」が読み取れる。

さらに、摘記事項(ア-i)の記載の「信号S16」は、摘記事項(ア-h)の「収束中を示す信号(HIGH)」あるいは「収束完了を示す信号(LOW)」であって、「信号S16に従い受信切替器8・・・を制御」との記載と、摘記事項(ア-c)とを併せて、摘記事項(ア-i)(ア-h)(ア-c)から、「検出回路16Bの出力が収束完了(LOW)を示すのに従い、受信開始信号をONにして、受信切替器8がデータを出力するように切換制御を行う制御回路7D」が読み取れる。

したがって、上記摘記事項(ア-a)ないし(ア-k)より、引用刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。
「キャンセラ回路3の出力をサイドローブ領域の信号の消え残りが多い期間において受信切替器8をOFFとして外部に出力しないようにするレーダーにおいて、
キャンセラ回路3のなかの相関回路4の相関係数が収束完了したことを判断して、制御回路7Dに対して収束完了を示す信号(LOW)を出力する検出回路16Bと、
検出回路16Bの出力が収束完了(LOW)を示すのに従い、受信開始信号をONにして、受信切替器8がデータを出力するように切換制御を行う制御回路7Dとを具備し、
前記検出回路16Bは、相関回路4から入力された相関係数が次第に収束し、変化量が一定のしきい値以下となったときに収束が完了したと判断する
レーダー。」

(4) 対比
本件補正発明1と刊行物1発明とを対比する。

ア 刊行物1発明の「検出回路16B」、「レーダー」は、本件補正発明1の「収束判定手段」、「レーダ装置」にそれぞれ相当している。
また、刊行物1発明の「キャンセラ回路3」は、「サイドローブキャンセラ処理」を行うものであることが明らかである。

イ 本件補正発明1の「サイドローブキャンセラ処理で求めるウェイト」は、「各アダプティブ処理回路111?11nの出力を合成回路13で合成し、その合成信号を減算器12にてメインビームの受信信号から減算する減算器12の出力信号とSLCチャンネルビームの受信信号との相関処理を行って複素ウェイトを求め」られるものであって、この複素ウェイトを乗算器11Bに送り、SLCチャンネルビームの受信信号と乗算するものであることが実施態様として開示されているところ、
刊行物1発明の「相関回路4の出力である相関係数」は、(ア-b)「・・・相関回路4の出力である相関係数と補助アンテナ2で受信した受信信号は、乗算器5で乗算され、補助アンテナ2で受信した信号に重みづけが行われる。【0020】そして、乗算器5の出力信号を主アンテナ1で受信した信号から減算器6で減算するため、減算器6の出力端でサイドローブ領域の信号電力が最小となるように作用する。以上のようにしてキャンセラ回路3の出力端では、主アンテナ1の信号のうち、補助アンテナ2と相関の強い信号(妨害等)の電力が最小となるように抑圧動作が行われる。・・・」との記載からみて「補助アンテナ2で受信した信号に重みづけ」をする係数であるから、本件補正発明1の「サイドローブキャンセラ処理で求めるウェイト」に相当している。
また、刊行物1発明の「次第に収束し、変化量が一定のしきい値以下となったとき」は、次第に収束することを前提として、変化量が一定のしきい値以下となったときのことであるから、変化量の変動幅が一定のしきい値以下となったときと技術的に同等である。
してみると、刊行物1発明の「相関回路4から入力された相関係数が次第に収束し、変化量が一定のしきい値以下となったときに収束が完了したと判断する」ことは、本件補正発明1の「サイドローブキャンセラ処理で求めるウェイトの変化量の変動幅に基づいて判定する」ことに相当するから、結果として択一的記載である本件補正発明1の「前記サイドローブキャンセラ処理で求めるウェイトの変化量の変動幅、前記ウェイトの絶対値、前記ウェイトの変化量の変化幅及び絶対値の双方、前記ウェイトの収束状態の連続性のいずれかに基づいて判定すること」に相当しているといえる。

ウ 刊行物1発明の「キャンセル回路3の出力をサイドローブ領域の信号の消え残りが多い期間において受信切替器8をOFFとして外部に出力しないようにする」ことと、本件補正発明1の「サイドローブキャンセラ処理後にサイドローブブランカー処理を行う」こととは、サイドローブキャンセラ処理後に行われる処理である点、及び、サイドローブ領域の信号をブランキングする処理である点で共通している。

エ 上記「ウ」で説示したように、刊行物1発明の「キャンセル回路3の出力をサイドローブ領域の信号の消え残りが多い期間において受信切替器8をOFFとして外部に出力しないようにする」ことは、サイドローブ領域の信号をブランキングする処理といえるものであるから、刊行物1発明の「受信開始信号をONに」することは、「サイドローブ領域の信号をブランキングする処理をオフ状態と」することに相当するといえる。よって、刊行物1発明の「検出回路16Bの出力が収束完了(LOW)を示すのに従い、受信開始信号をONにして、受信切替器8がデータを出力するように切換制御を行う制御回路7D」と本件補正発明1の「この収束判定手段の判定結果に基づいて、収束を検出するまでは前記サイドローブブランカー処理をオン状態とし、収束検出後は前記サイドローブブランカー処理をオフ状態とするサイドローブブランカー処理制御手段」とは、「この収束判定手段の判定結果に基づいて、収束を検出するまでは前記サイドローブ領域の信号をブランキングする処理をオン状態とし、収束検出後は前記サイドローブ領域の信号をブランキングする処理をオフ状態とするブランキング処理を制御する手段」である点で共通している。

すると、本件補正発明1と刊行物1発明とは、次の点で一致し、
[一致点]
「サイドローブキャンセラ処理後にサイドローブ領域の信号をブランキングする処理を行うレーダ装置において、
前記サイドローブキャンセラ処理の演算が収束したことを検出する収束判定手段と、
この収束判定手段の判定結果に基づいて、収束を検出するまでは前記サイドローブ領域の信号をブランキングする処理をオン状態とし、収束検出後は前記サイドローブ領域の信号をブランキングする処理をオフ状態とするブランキング処理を制御する手段とを具備し、
前記収束判定手段は、前記サイドローブキャンセラ処理で求めるウェイトの変化量の変動幅、前記ウェイトの絶対値、前記ウェイトの変化量の変化幅及び絶対値の双方、前記ウェイトの収束状態の連続性のいずれかに基づいて判定することとするレーダ装置。」

次の相違点で相違している。
[相違点]
サイドローブ領域の信号をブランキングする処理が、本件補正発明1は、「サイドローブブランカー処理」であるのに対して、刊行物1発明は、「サイドローブ領域の信号の消え残りが多い期間において受信切替器8をOFFとして外部に出力しないようにする」処理である点。

(5)判断
ア 上記相違点について検討する。
レーダ装置において、サイドローブキャンセラ処理の時間遅れを補う目的で、サイドローブキャンセラ処理の後にサイドローブブランキング処理を設けて、両処理を併用することは周知技術である(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、吉田孝著,「改訂レーダ技術」,日本,社団法人電子情報通信学会,1996年10月1日,295-296頁 参照。)。
そして、刊行物1発明の「サイドローブ領域の信号の消え残りが多い期間において受信切替器8をOFFとして外部に出力しないようにする」処理と上記周知技術とはサイドローブキャンセラ処理の時間遅れを補う目的で当該サイドローブキャンセラ処理の後に設けられるものである点で技術的共通性を有している。
したがって、刊行物1発明の「サイドローブ領域の信号の消え残りが多い期間において受信切替器8をOFFとして外部に出力しないようにする」処理を上記周知技術であるサイドローブブランキング処理に置き換えて、上記相違点に係る構成を本件補正発明1の如くなすことは当業者が容易に想到できたものである。

イ 本件補正発明1が奏する作用効果についても、引用刊行物1の記載事項及び上記周知技術に基づいて当業者が予測可能な範囲内のものである。

ウ したがって、本件補正発明1は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成18年1月10日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、願書に最初に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願第1発明」という。)は、上記「第2」の「2」の「(1)」の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

第4 引用刊行物1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物1及びその記載事項は、上記「第2」の「2」の「(3)」に記載したとおりのものである。

第5 対比・判断
本願第1発明は、本件補正発明1の発明特定事項から、「サイドローブキャンセラ処理の演算が収束したことを検出する収束判定手段」について、「前記収束判定手段は、前記サイドローブキャンセラ処理で求めるウェイトの変化量の変動幅、前記ウェイトの絶対値、前記ウェイトの変化量の変化幅及び絶対値の双方、前記ウェイトの収束状態の連続性のいずれかに基づいて判定する」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願第1発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本件補正発明1が前記「第2」の「2」の(4)及び(5)に記載したとおり、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願第1発明についても、同様の理由により、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願第1発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願第1発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし5に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-17 
結審通知日 2008-09-24 
審決日 2008-10-14 
出願番号 特願2001-284110(P2001-284110)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01S)
P 1 8・ 121- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 有軌中村 説志  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 山下 雅人
飯野 茂
発明の名称 レーダ装置  
代理人 村松 貞男  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 橋本 良郎  

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