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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1188504
審判番号 不服2006-7647  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-21 
確定日 2008-11-27 
事件の表示 平成 9年特許願第354192号「記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月29日出願公開、特開平11-170612〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成9年12月8日の出願であって、平成18年3月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月21日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。
その後、平成18年4月21日付けの手続補正は、当審によって平成20年6月25日付けで却下されるとともに、同日付けで当審による最後の拒絶理由が通知され、それに対し、平成20年8月27日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

第2.平成20年8月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年8月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についての補正を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】 2値化処理された一定領域内の画素データの黒率又はパターンにより濃度値を判定する濃度値判定手段と、この濃度値判定手段により判定された濃度値に対応したレーザ印加パルス幅を決定するレーザパルス制御手段と、このレーザパルス制御手段により決定されたレーザ印加パルス幅に従って記録画素の記録を行うレーザ記録手段とを具備し、前記レーザ印加パルス幅として、前記濃度値判定手段により判定される黒率又はパターンに対応した予め定められた1画素のレーザスキャン時間を等分割したt1時間に相当する分割パルスを単位とするn倍(nは自然数)のパルス幅が設定されることを特徴とする記録装置。」(平成17年11月2日付け手続補正による)
から、
「【請求項1】 擬似中間調画像を記録する記録装置であって、中間調画像を面積変調で2値化処理した画像を入力する入力手段と、この入力手段により入力された画像の注目画素を中心とする一定領域内の周辺画素の黒画素数をカウントすることにより黒率を判定する黒率判定手段と、この黒率を黒画素数に応じて少なくとも3段階以上に区分し、黒率とパルス幅との関係をテーブル化して記憶するメモリと、前記黒率判定手段により判定された黒率に対応したパルス幅を前記メモリより読み出してレーザ印加パルス幅を決定するレーザパルス制御手段と、このレーザパルス制御手段により決定されたレーザ印加パルス幅のみの制御により注目画素の記録を行うレーザ記録手段とを具備し、前記メモリより読み出して決定される前記レーザ印加パルス幅は、前記黒率の減少に伴なってパルス幅が段階的に減少するよう、予め定められた1画素のレーザスキャン時間Tを等分割した時間t1に相当した分割パルスを単位とするn倍(nは自然数)のパルス幅(t1×n≦T)が設定されることを特徴とする記録装置。」
と補正された。

本件補正には、以下の補正事項が含まれる。
(補正事項1)
補正前の請求項1の「記録装置」が、「擬似中間調画像を記録する記録装置」であることを付加するとともに、「記録装置」が具備する手段として、「中間調画像を面積変調で2値化処理した画像を入力する入力手段」を付加する補正。

(補正事項2)
補正前の請求項1の「2値化処理された一定領域内の画素データの黒率又はパターンにより濃度値を判定する濃度値判定手段」を、「この入力手段により入力された画像の注目画素を中心とする一定領域内の周辺画素の黒画素数をカウントすることにより黒率を判定する黒率判定手段」に変更するとともに、「濃度値判定手段により判定された濃度値」を、「前記黒率判定手段により判定された黒率」に変更する補正。

(補正事項3)
補正前の請求項1の「記録装置」が具備する手段として、「この黒率を黒画素数に応じて少なくとも3段階以上に区分し、黒率とパルス幅との関係をテーブル化して記憶するメモリ」を付加するとともに、「レーザ印加パルス幅」は、「前記メモリより読み出して」決定されるものとする補正。

(補正事項4)
補正前の請求項1の「レーザ記録手段」について、「レーザ印加パルス幅に従って記録画素の記録を行う」を、「レーザ印加パルス幅のみの制御により注目画素の記録を行う」に変更する補正。

(補正事項5)
補正前の請求項1の「レーザ印加パルス幅」について、設定されるパルス幅が「前記濃度値判定手段により判定される黒率又はパターンに対応した」ものであるとするのを、「前記黒率の減少に伴なってパルス幅が段階的に減少するよう」に変更する補正。

(補正事項6)
補正前の請求項1の「レーザスキャン時間」を「レーザスキャン時間T」に、「t1時間」を「時間t1」に、「相当する」を「相当した」に、「パルス幅」を「パルス幅(t1×n≦T)」に変更する補正。

2.補正の目的
(1)補正事項1について
「擬似中間調画像を記録する記録装置」とする補正によって、補正前の記録装置が記録することのできる画像の種類として、擬似中間調画像を記録できることを新たに特定するものである。したがって、この補正は、記録装置は、少なくとも「擬似中間調画像」を記録することができるものであることを限定する補正である。
また、「中間調画像を面積変調で2値化処理した画像を入力する入力手段」を付加することで、補正前の記録装置が入力手段を備えることを新たに特定するものである。
したがって、これらの補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に記載される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)補正事項2について
「2値化処理された一定領域内の画素データの黒率又はパターンにより濃度値を判定する濃度値判定手段」を、「この入力手段により入力された画像の注目画素を中心とする一定領域内の周辺画素の黒画素数をカウントすることにより黒率を判定する黒率判定手段」に変更する補正は、補正前に、濃度値判定手段が「画素データの黒率」又は「パターン」により濃度値を判定するとの択一的な記載であったのを、その一方の「黒率」を判定することに限定するとともに、補正前の「黒率」をどのように判定するかについて、「この入力手段により入力された画像の注目画素を中心とする一定領域内の周辺画素の黒画素数をカウントすることにより」判定することに限定する補正である。
また、「濃度値判定手段により判定された濃度値」を、「前記黒率判定手段により判定された黒率」に変更する補正は、前記したように、濃度値判定手段について補正前の択一的な記載からその一方に限定することに伴った補正である。
したがって、これらの補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に記載される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3)補正事項3について
「この黒率を黒画素数に応じて少なくとも3段階以上に区分し、黒率とパルス幅との関係をテーブル化して記憶するメモリ」を付加する補正は、補正前では、レーザ印加パルス幅を決定するのに濃度値とレーザ印加パルス幅とが対応していることが特定されていただけであったのを、その対応は3段階以上に区分されており、さらにその対応関係をテーブル化してメモリに記憶されていることを限定したものである。
また、「レーザ印加パルス幅」が「前記メモリより読み出して」決定されるものとする補正は、前記のとおり、レーザ印加パルス幅がメモリに記憶されているとすることに伴った補正である。
また、補正前の「濃度値」を、「黒率」とした点については、前記したように、濃度値判定手段について補正前の択一的な記載からその一方に限定することに伴った補正である。
したがって、これらの補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に記載される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(4)補正事項4について
レーザ記録手段を用いた記録装置において、ドットの階調記録制御を行う場合に、レーザ強度を制御する方式、パルス幅を制御する方式、それらを併用する方式等いくつかの方式が存在している。
そして、補正前のレーザ記録手段は、少なくともパルス幅を制御する方式を用いて記録を行うものであるとするのを、補正後のレーザ記録手段は、パルス幅を制御する方式のみの制御により記録を行うものに限定しており、この補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に記載される特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。

(5)補正事項5について
補正前の「濃度値」を、「黒率」とした点については、前記したように、濃度値判定手段について補正前の択一的な記載からその一方に限定することに伴った補正である。
また、「黒率の減少に伴なってパルス幅が段階的に減少するよう」にした点については、補正前では、黒率とパルス幅との対応関係が特に特定されていなかったのを、当該記載のとおりに限定するものである。
したがって、この補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に記載される特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。

(6)補正事項6について
補正前では、設定されるパルス幅がどのように設定されるかについて特定されていなかったのを、補正事項6の補正は、レーザスキャン時間を「T」とし、レーザスキャン時間を等分割した時間を「t1」とすると、設定されるパルス幅は、「t1×n≦T」であることに限定するものである。
また、「相当する」を「相当した」にする補正は、そのような限定を行う補正に伴った補正である。
したがって、これらの補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に記載される特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。

以上のように、本件補正の補正事項1?6は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められるので、補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.刊行物
本件出願前に頒布され、当審で引用した特開平4-212871号公報(以下、「引用文献A」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
(ア)「【産業上の利用分野】この発明は電子写真印字装置等における画像処理装置に関するものである。」(段落【0001】)
(イ)「濃度選択回路44は、図5のタイミング図に示すように、画信号クロックに従って例えば3行3列の画信号マトリクスMを形成し、その中央部の対象画素Aの濃度を周囲画素の黒白パターン(2^(8)=256通り)に応じて決定する。
例えば図7(a)に示すように対象画素Eが黒、周囲の8画素が全て黒のとき、対象画素Eの濃度E1としてvを選択し、図7(b)に示すように対象画素Eが黒、周囲の8画素が全て白のとき、対象画素Eの濃度E1としてwを選択する。
なお、v,wには以下の関係が成立する。
0<W<V<(2 -1)
ここで、2 -1は、最も濃度が高い状態を示している。なお、v,wは計算式で求めることは困難であり、印字プロセス条件等から実験的に最適値を求め、ROMテーブルまたはそれに相当するものに格納しておくとよい。
図8は、ROMテーブル442を有する濃度選択回路44の構成を示すブロック図である。図8において、441はマトリクス回路であり、対象画素Eとその周囲画素(この例では8画素)とが設定される。
次に、図8に示したものの動作について説明する。画信号発生回路21から、1ラインごとに画信号がマトリクス回路441およびラインメモリ45に転送される(図中、転送ルートをそれぞれN1,N2で示す。)。また、ラインメモリ45には、前ラインおよび前々ラインの画信号が記憶されているので、転送ルートN3でそれらの画信号がマトリクス回路441に転送される。
マトリクス回路441には、ある対象画素Eについて、3ライン(現ライン、前ライン、前々ライン)の各3画素が設定されればよいが、そのような設定を行うためにバッファ443,444をアクティブにするタイミング、マトリクス回路441への3画素取り込みのタイミング、およびラインメモリ45への画信号書込みのタイミングが、タイミング発生器(図示せず)によって作成される。なお、この場合には、対象画素Eは、前ライン中の画素とする。
CPU42は、マトリクス回路441に設定された対象画素Eおよび周囲8画素のパターン認識を行う。対象画素Eが黒画素の場合には、そのときの周囲8画素による黒白パターン(2^(8)=256通りのうちの1つ)を示すデータをROMテーブル442に送る。対象画素Eが白画素の場合には、対象画素について印字はなされないので、濃度補正の必要はなく、白画素を示すデータをROMテーブル442に送る。
ROMテーブル442には、256通りの黒白パターンおよび対象画素が白画素であった場合の計257パターンのそれぞれに対応した濃度があらかじめ格納されている。そして、ROMテーブル442は、CPU42から与えられたデータに応じた濃度E2を濃度補正演算回路41に出力する。」(段落【0030】?【0037】)
(ウ)「次いで、第2の乗算器41bの出力であるnビット画信号についての濃度補正係数と濃度選択回路44で決定された濃度E1とから、濃度補正演算回路41は更にE1×(濃度補正係数) の演算を行い、この演算の結果である画信号E2をLEDヘッド35のシフトレジスタ30に入力する。この画信号E2には、全ての濃度補正内容(LEDチップの不均一補正、ランク補正、感光体感度補正)に加えて、周囲画素から得られた補正濃度が反映されている。そして、その画信号E2を構成するnビットの内容でLEDチップの発光量が制御される。
LEDヘッド35に対して、図6に示すように、画信号クロックに同期して画信号E2が入力され、1ライン転送終了後にラッチ信号が出力される。ストローブ信号STB1?STBmは、LEDチップ331?33mを発光させるため、印字すべきタイミングで電流コントロール回路321?32mを一定時間オンさせるものである。そして、上記のデータ転送、ラッチ信号およびストローブ信号出力を繰り返すことによって、印字が行なわれる。」(段落【0038】?【0039】)
(エ)【図8】から、マトリクス回路441は、3行3列の画信号マトリクスを形成し、その中心を対象画素Eとすることが看取できる。
(オ)【図9】から、露光手段としてLEDプリントヘッド3を用いていることが看取できる。

前記記載(イ)には、「対象画素Eが黒画素の場合には、そのときの周囲8画素による黒白パターン(2^(8)=256通りのうちの1つ)を示すデータをROMテーブル442に送る。対象画素Eが白画素の場合には、対象画素について印字はされないので、・・・」との記載があり、マトリクス回路441に入力される画素データが、2値データであるのは明らかである。

前記記載(イ)の「対象画素Eが黒画素の場合には、そのときの周囲8画素による黒白パターン(2^(8)=256通りのうちの1つ)を示すデータをROMテーブル442に送る。」との記載から、引用文献AのCPU42とマトリクス回路441は、協働して、対象画素Eを中心とする一定領域内の周辺画素の記録パターンを判定するものであるといえる。

引用文献A記載の発明の「ROMテーブル442」について、前記記載(イ)には、「ROMテーブル442には、256通りの黒白パターンおよび対象画素が白画素であった場合の計257パターンのそれぞれに対応した濃度があらかじめ格納されている。そして、ROMテーブル442は、CPU42から与えられたデータに応じた濃度E2を濃度補正演算回路41に出力する。」(段落【0037】)と記載されており、引用文献Aに記載のROMテーブル442は、記録パターンに対する最適な濃度を事前に求めておき、記録パターンと最適な濃度との対応するように記憶したテーブルであるから、記録パターンと濃度との関係をテーブル化して記憶しているといえる。
また、引用文献A記載の発明の「ROMテーブル442」について、前記記載(イ)には、「ROMテーブル442は、CPU42から与えられたデータに応じた濃度E2を濃度補正演算回路41に出力する。」(段落【0036】)と記載されている。しかし、技術常識からして、ROMテーブル442自身で信号を出力しているのではなく、CPU42の制御によってROMテーブル442を参照して、マトリクス回路441とCPU42によって判定された対象画素の周囲のパターンに対応する濃度を出力しているものと認められる。したがって、引用文献AのCPU42とROMテーブル442は、協働して、対象画素Eの周辺画素の記録パターンに対応した濃度を前記ROMテーブル442より読み出して、対象画素Eの濃度を決定するものである。

したがって、前記記載及び図面を含む引用文献A全体の記載から、引用文献Aには、以下の発明(以下、「引用文献A記載の発明」という。)が開示されていると認める。

<引用文献A記載の発明>
「画信号の対象画素Eを中心とする一定領域内の周辺画素の記録パターンを判定するCPU42及びマトリクス回路441と、記録パターンと濃度との関係をテーブル化して記憶するROMテーブル442と、前記CPU42及びマトリクス回路441により判定された記録パターンに対応した濃度を前記ROMテーブル442より読み出して濃度を決定するCPU42及びROMテーブル442と、このCPU42及びROMテーブル442により決定された濃度で対象画素Eの記録を行うLEDヘッド35とを具備し、前記パターンに対応した濃度に基づいた発光量が設定される印字装置。」

4.本願補正発明と引用文献A記載の発明との対比
a.引用文献A記載の発明の「対象画素E」、「ROMテーブル442」、「印字装置」は、本願補正発明の「注目画素」、「メモリ」、「記録装置」に相当する。

b.引用文献A記載の発明の「記録パターン」と、本願補正発明の「黒率」は、どちらも「注目画素の周辺記録に係る情報」という点で共通する。
また、引用文献A記載の発明の「濃度」と、本願補正発明の「パルス幅」(「レーザ印加パルス幅」)は、どちらも「印加エネルギーに係る信号」という点で共通する。
したがって、引用文献A記載の発明の「記録パターンと濃度との関係」と、本願補正発明の「黒率とパルス幅との関係」は、どちらも「注目画素の周辺記録に係る情報と印加エネルギーに係る信号との関係」という点で共通する。

c.引用文献A記載の発明の「CPU42及びマトリクス回路441」と、本願補正発明の「黒率判定手段」とは、どちらも「周辺記録に係る情報を判定する判定手段」である点で共通する。

d.引用文献A記載の発明の「CPU42及びROMテーブル442」と、本願補正発明の「レーザパルス制御手段」とは、どちらも「印加エネルギー決定手段」である点で共通する。

e.引用文献A記載の発明の「LEDヘッド35」と、本願補正発明の「レーザ記録手段」とは、どちらも「記録手段」である点で共通する。

f.引用文献A記載の発明と本願補正発明とは、周辺記録に係る情報に対応した印加エネルギーが設定される点で共通する。

したがって、本願補正発明と引用文献A記載の発明とは、以下の点で一致している。
「注目画素を中心とする一定領域内の周辺記録に係る情報を判定する判定手段と、
注目画素の周辺記録に係る情報と印加エネルギーに係る信号との関係をテーブル化して記憶するメモリと、
前記判定手段により判定された注目画素の周辺記録に係る情報に対応した印加エネルギーに係る信号を前記メモリより読み出して印加エネルギーに係る信号を決定する印加エネルギー決定手段と、
この印加エネルギー決定手段により決定された印加エネルギーに係る信号で注目画素の記録を行う記録手段とを具備し、
周辺記録に係る情報に対応した印加エネルギーが設定される記録装置。」

そして、本願補正発明と引用文献A記載の発明とは、以下の点で相違している。
<相違点1>
本願補正発明は、記録装置について、「擬似中間調画像を記録する記録装置」であることが特定されるとともに、記録装置は、「中間調画像を面積変調で2値化処理した画像を入力する入力手段」を有し、注目画素は、「入力手段により入力された画像」の一部であることが特定されているのに対して、引用文献A記載の発明では、それらの特定を有しない点。

<相違点2>
本願補正発明では、「注目画素の周辺記録に係る情報」が「黒率」であり、「判定手段」が「黒率判定手段」であるとともに、黒率は、黒画素数をカウントすることにより判定するものであることが特定されているのに対して、引用文献A記載の発明では、それらの特定を有しない点。
また、メモリに関し、本願補正発明では、「この黒率を黒画素数に応じて少なくとも3段階以上に区分し」と特定されているのに対し、引用文献A記載の発明では、そのような特定を有しない点。

<相違点3>
本願補正発明では、「印加エネルギーに係る信号」が「パルス幅」(「レーザ印加パルス幅」)であり、「注目画素への印加エネルギーを決定する手段」が「レーザパルス制御手段」であることが特定されているのに対して、引用文献A記載の発明では、それらの特定を有しない点。
また、本願補正発明は、記録手段がレーザ記録手段であって、レーザ印加パルス幅のみの制御によりレーザを駆動するものであり、レーザ印加パルス幅を、「黒率の減少に伴なってパルス幅が段階的に減少するよう、予め定められた1画素のレーザスキャン時間Tを等分割した時間t1に相当した分割パルスを単位とするn倍(nは自然数)のパルス幅(t1×n≦T)」とするのに対して、引用文献A記載の発明は、記録手段がLED記録手段であって、そのような特定を有しない点。

5.判断
<相違点1について>
まず、記録装置が「擬似中間調画像を記録する記録装置」である点について検討する。
引用文献Aには、画信号発生回路21から濃度選択回路44に入力される画信号がどのような信号であるか、特に記載されているものではない。
しかしながら、引用文献Aに記載の印字装置は、黒白データからなる2値信号を記録することができる装置であるから、入力される2値信号が、擬似中間調画像である場合も、画像自体が2値で表現された2値画像(例えば、文字画像等)である場合も、いずれの場合でも記録することが可能である。
そして、引用文献Aに記載の印字装置でいずれの画像(擬似中間調画像または2値画像)を記録するかは、画信号発生回路でどのように処理されたデータを入力するかに応じて適宜決まる事項である。
また、階調データを面積変調で2値化処理し、擬似中間画像に変換した画像を記録することは、例示するまでもなく従来から周知の技術である。特に、引用文献Aに記載されるような電子写真方式の記録装置においては、固体現像剤を使用するために濃度変調を適用し難いので、階調記録を行う場合に面積変調を用いて記録を行うことはよく行われていることであり周知技術といえる。
してみれば、引用文献Aに記載の画信号発生回路が印字装置内にある場合であれ、印字装置外にあるホスト装置であれ、2値データを出力する印字装置へ送信するデータとして、擬似中間調画像とすることは当業者であれば容易に想到することができるものである。
よって、記録装置が擬似中間調画像を記録する装置とする点は、引用文献A記載の発明および周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものである。

次に、記録装置が「中間調画像を面積変調で2値化処理した画像を入力する入力手段」を有する点について検討する。
入力手段について「中間調画像を面積変調で2値化処理した画像を入力する」と記載することで、「入力手段」について何を特定しているか不明であるので、発明の詳細な説明の記載を参照することとする。
本件の発明の詳細な説明の段落【0013】には、「図1において、入力端子11は、中間調画像を面積変調で2値化処理した画像データを入力する端子である。」と記載されている。この記載から、本願補正発明の記録装置が具備する「入力手段」とは、2値化処理を行う処理手段ではなく、既に2値化処理(多値データを2値データに処理すること)されたデータを入力するための端子であることが把握できる。
一方、引用文献Aには、入力手段が明記されているものではないが、画信号発生回路21から画信号が濃度選択回路44に入力されるものが記載されており、濃度選択回路44には、画信号発生回路21からのデータを入力するための手段を備えているといえる。
してみれば、本願補正発明と引用文献A記載の発明は、いずれも2値データを入力するための手段を備えるものであり、相違点1の入力手段に関する相違点は、実質的な相違点とはいえない。

また、注目画素が、「入力手段により入力された画像」の一部であるとする点は、上記したとおり「入力手段」が単に端子を指す限りにおいて、引用文献A記載の発明との実質的な相違点となるものではない。

なお、請求人は、平成20年8月27日付けの意見書において、「引用文献Aに記載の画信号発生回路21に関して、中間調画像を面積変調で2値化処理した画像でないとする積極的な記載はありませんが、単純2値画像であるがゆえの濃度選択による制御が必要との見方が自然であります。逆に、中間調画像を面積変調で2値化処理(濃度保存)した画像であるがゆえ、更なる、濃度制御は不要との見方が通例であります。」と主張するものである。
しかしながら、引用文献Aに記載される各種濃度補正は、複数のLEDチップの露光量が異なる(つまり、製造誤差等による素子毎のばらつき)のを補正するために行われるのであるから、印字データとは関係なく素子に対して固定的に行われるものである。
したがって、引用文献Aに記載される各種濃度補正は、画信号が擬似中間調画像であるか、それとも単純2値画像であるかというデータ内容とは関係なく行われるものであり、各種濃度補正を行うことを理由に、画信号が単純2値画像であって、擬似中間調画像を採り得ないとまではいうことができないものである。
よって、請求人の上記主張は採用できるものではない。

<相違点2について>
引用文献A記載の発明は、対象画素がどの程度孤立しているかを判定し、孤立ドットの印字濃度むらを防止することが目的であって、記録パターンの判定は、孤立の程度を判定しているものである。
したがって、引用文献A記載の発明において、対象画素Eの周辺画素を記録パターンで判定せずに、単純化して周囲画素の黒画素数の個数で判定し、周囲画素の黒画素数の個数をカウントすることで判定を行うようにすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。
また、黒画素数を比率である黒率として判定するようにすることは、単なる設計変更に過ぎず、その場合に、周辺画素の記録情報を判定する判定手段を「黒率判定手段」と称することも当業者であれば容易に想到し得ることである。
さらに、メモリに関して、黒画素数に応じて何段階に区分するかは、孤立ドットの判定をどれくらい厳密に行うか、また、メモリ容量や処理速度をどのように設定するか等に応じて当業者が適宜設定し得る設計事項であって、3段階以上に区分することに何ら困難性はない。

<相違点3について>
電子写真式の記録装置において、露光手段をレーザ記録方式とするものとLED記録方式とするものはいずれも周知である。また、レーザ記録方式の場合に、レーザ印加パルス幅を可変制御する制御方式とレーザ強度を可変制御する制御方式はいずれも周知である。
してみれば、引用文献A記載の発明を、電子写真式の記録装置として周知であるレーザ記録方式の記録装置であって、レーザ印加パルス幅のみを可変制御することで記録を行う記録装置に適用することは当業者が容易に想到し得ることである。
また、それにともない引用文献A記載の発明における「濃度」を「パルス幅」(「レーザ印加パルス幅」)とし、「CPU42及びROMテーブル442」からなる注目画素への印加エネルギーを決定する手段を「レーザパルス制御手段」と称することも当業者であれば容易に想到し得ることである。

また、レーザ印加パルス幅のみを可変制御することで記録を行うレーザ記録装置において、レーザ印加パルス幅を階調値に対応させてどのように設定するかについて、以下に検討する。
(1)予め定められた1画素のレーザスキャン時間Tを等分割した時間t1に相当した分割パルスを単位とするn倍(nは自然数)のパルス幅(t1×n≦T)とする点について
レーザ印加パルス幅を制御することで階調記録を行う場合に、1画素のレーザスキャン時間(以下「1画素周期」という。)を最大階調値に対応させ、1画素周期を等分割したパルスの自然数倍をそれぞれの階調値に対応させることは、周知である(例えば、特開昭63-151212号公報、特開平2-151462号公報の第3図(A)で示される制御を参照されたい。)。
したがって、該周知の事項を採用したにすぎない。

(2)黒率の減少に伴なってパルス幅が段階的に減少する点について
引用文献Aの前記記載(イ)には、
「例えば図7(a)に示すように対象画素Eが黒、周囲の8画素が全て黒のとき、対象画素Eの濃度E1としてvを選択し、図7(b)に示すように対象画素Eが黒、周囲の8画素が全て白のとき、対象画素Eの濃度E1としてwを選択する。
なお、v,wには以下の関係が成立する。
0<W<V<(2 -1)」(段落【0031】)
と記載されている。
この記載から、対象画素Eの周囲の8画素のうち、黒画素数(つまり、記録画素数)が8個の場合の対象画素の濃度は、黒画素数(記録画素数)が0個の場合の対象画素の濃度よりも大きく設定されていることが把握できる。
また、引用文献Aの図7(a)と図7(b)に示されているのは、対象画素Eの周囲の8画素について黒画素数が最も多い場合と最も少ない場合であることは明らかであるから、周囲の黒画素数の数だけに着目すれば、黒画素数が図7(a)と図7(b)に示される数の間の値となる場合に、対象画素Eの濃度をWとVの間の濃度とすること、つまり、対象画素Eの周囲の黒画素数(つまり、記録画素数)が多いほど、対象画素Eの濃度を大きくすることは当業者であれば容易に想到することである。
してみれば、引用文献A記載の発明をレーザ印加パルス幅のみを可変制御することで記録を行うレーザ記録装置に適用した場合に、注目画素の周辺の黒画素数(黒率)の減少に伴って対象画素Eのパルス幅を減少するような関係とすることも当業者が容易に想到することである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献A記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、その出願前に頒布された引用文献Aに記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成17年11月2日付けの手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】 2値化処理された一定領域内の画素データの黒率又はパターンにより濃度値を判定する濃度値判定手段と、この濃度値判定手段により判定された濃度値に対応したレーザ印加パルス幅を決定するレーザパルス制御手段と、このレーザパルス制御手段により決定されたレーザ印加パルス幅に従って記録画素の記録を行うレーザ記録手段とを具備し、前記レーザ印加パルス幅として、前記濃度値判定手段により判定される黒率又はパターンに対応した予め定められた1画素のレーザスキャン時間を等分割したt1時間に相当する分割パルスを単位とするn倍(nは自然数)のパルス幅が設定されることを特徴とする記録装置。」

2.刊行物
本件出願前に頒布された当審の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「第2.平成20年8月27日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.刊行物」に記載したとおりである。

3.対比・判断
前記「第2.平成20年8月27日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の目的」で検討したように、本願補正発明は、本願発明の発明特定事項のさらなる限定をしたものであるから、本願発明は、それらの発明を特定する事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明を特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.平成20年8月27日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「5.判断」に記載したとおり、引用文献A記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献A記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願日前に頒布された引用文献A記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-24 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-14 
出願番号 特願平9-354192
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
P 1 8・ 575- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 名取 乾治  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 江成 克己
菅藤 政明
発明の名称 記録装置  
代理人 鷲田 公一  

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