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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B32B |
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管理番号 | 1188526 |
審判番号 | 不服2006-25282 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-11-08 |
確定日 | 2008-11-27 |
事件の表示 | 平成8年特許願第235813号「化粧シート」拒絶査定不服審判事件〔平成10年3月3日出願公開、特開平10-58631〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成8年8月20日の出願であって、平成17年5月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成18年10月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月8日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、同年12月5日に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成18年12月5日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成18年12月5日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成18年12月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1における 「基材上に、1分子中に少なくとも2個以上のアクリロイル基を有する化合物5?80重量%と顔料を含むベタ印刷層及び絵柄層を設け、さらに電離放射線硬化樹脂を含む表面保護層を設けた後に、電離放射線を照射してベタ印刷層及び絵柄層及び表面保護層を硬化させ、かつ各層間の界面にて化学反応させてなることを特徴とする化粧シート。」 を、 「基材上に、1分子中に少なくとも2個以上のアクリロイル基を有する化合物5?80重量%と顔料を含むベタ印刷層及び絵柄層を設け、さらに電離放射線硬化樹脂を含む表面保護層を全面に設けた後に、電離放射線を照射してベタ印刷層及び絵柄層及び表面保護層を硬化させ、かつ各層間の界面にて化学反応させてなることを特徴とする化粧シート。」 とする補正事項を含むものである。 2 新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1において、補正前の「さらに電離放射線硬化樹脂を含む表面保護層を設けた後に、」を補正後に「さらに電離放射線硬化樹脂を含む表面保護層を全面に設けた後に、」と補正するものであり、これはこの出願の願書に最初に添付した明細書の実施例1及び2の記載に基づき、電離放射線硬化樹脂を含む表面保護層を設ける態様をさらに限定して特定するものであるから、同明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成18年改正前特許法17条の2第3項に規定する要件を満たすものであり、また同条4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 3 独立特許要件の有無 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(すなわち、平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)否かについて、検討する。 (1) 本願補正発明 本件補正の請求項1に係る発明は、以下のとおりである。 「基材上に、1分子中に少なくとも2個以上のアクリロイル基を有する化合物5?80重量%と顔料を含むベタ印刷層及び絵柄層を設け、さらに電離放射線硬化樹脂を含む表面保護層を全面に設けた後に、電離放射線を照射してベタ印刷層及び絵柄層及び表面保護層を硬化させ、かつ各層間の界面にて化学反応させてなることを特徴とする化粧シート。」 (以下、これを「本願補正発明」という。) (2) 刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用された特開平6-218897号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。 a 「樹脂浸透性の良い紙に、電子線硬化型樹脂を含む目止めシーラー層、電子線硬化型樹脂を含むインキによる印刷層、電子線硬化型樹脂層を設け、電子線を照射することによって一体に硬化されてなることを特徴とする化粧紙。」(特許請求の範囲、請求項1) b 「以下、図面に基づき本発明について詳細に説明する。図1に示したように、樹脂浸透性の良い紙1に、電子線硬化型樹脂を含む目止めシーラー層2、電子線硬化型樹脂を含むインキで形成した印刷層3、及び電子線硬化型樹脂層4を形成した後、電子線を照射することにより、目止めシーラー層及び印刷層に含まれる電子線硬化型樹脂を硬化させるとともに、表面の電子線硬化型樹脂を硬化させて本発明の化粧紙を得る。」(段落【0008】) c 「また、目止めシーラー層・印刷層に含まれる電子線硬化型樹脂は連続印刷や連続コートができるように乾燥させているのみであり、電子線は表面の電子線硬化型樹脂を塗布した後に照射して最終で硬化させるので、各層に含まれる電子線硬化型樹脂は一体化して硬化するため、相互の密着性は全く問題がない。」(段落【0010】) d 「目止めシーラー層2としては、塗布はグラビアコート法等の公知の方法よるが、樹脂としてはウレタン樹脂等の溶剤型或いはアクリル樹脂等の水性型で熱乾燥する樹脂を主体とし、併用樹脂として電子線硬化型樹脂を使用し、熱乾燥でタック残りがなく連続印刷できる程度の添加量とする。 同様に印刷層3の形成も、グラビア印刷法等の公知の方法で印刷するが、インキのバインダーとしては、溶剤型或いは水性型で熱乾燥する樹脂を主体とし、併用樹脂として電子線硬化型樹脂を使用し、熱乾燥で連続印刷・コートできる程度の添加量とする。」(段落【0013】?【0014】) e 「目止めシーラーやインキに併用樹脂として含む電子線硬化型樹脂は、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、等の(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー及びそれらのエマルジョン、単官能または多官能のモノマーなどの単体や混合で適宜選択できる。」(段落【0015】) f 「表面の電子線硬化型樹脂層4は、グラビアコート法・ロールコート法等の公知の塗布方法で良い。樹脂としては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、シリコンアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー等に、単官能または多官能のモノマー、スリップ剤・マット剤等の添加剤を配合して粘度を数10?数100cpsに調整した電子線硬化型樹脂が好ましい。」(段落【0016】) g 「電子線の加速電圧は200?250Kv、照射量は3?5Mrad程度が良い。この処理によりすべての層の電子線硬化型樹脂が一体となり、層間の強度や表面の強度が優れた化粧板が得られる。」(段落【0017】) h 「【作用】化粧紙の表面は、表面保護の電子線硬化型樹脂層が目止めシーラー層までよく浸透するが、必要以上に浸透しないので、表面の樹脂層が確保され、表面の仕上がり外観に優れる。また紙層は目止めシーラーで強化されると共に、各層の電子線硬化型樹脂が一体となって硬化するので、化粧紙層のどこをとっても弱い層がなく、極めて強度の高い化粧紙を得ることが出来る。」(段落【0018】) i 「【実施例】 <実施例1>樹脂浸透性の良い紙として坪量30g/m^(2) の化粧紙用原紙を用い、これに電子線硬化型樹脂を含む目止めシーラーとしてウレタン樹脂40重量部、ウレタンアクリレートオリゴマー5重量部、ポリイソシアネート10重量部、希釈溶剤45重量部からなる樹脂を用い、これを乾燥後2g/m^(2 )となるよう塗布した。続いて電子線硬化型樹脂を含むインキとして塩化ビニル・酢酸ビニル樹脂を15?30重量部、着色顔料5?30重量部、2官能モノマー3?12重量部、全体を100重量部として残りを希釈溶剤(割合は色によって異なる)からなるものを用い、これでオーク調木目絵柄を印刷した。熱乾燥後、電子線硬化型樹脂層として、粘度200cpsに調整した電子線硬化型樹脂(東亞合成化学工業(株)製:「アロニックスMー8030」)80重量部、2官能モノマー18重量部、スリップ剤2重量部を用い、これを15g/m^(2) 塗布し、塗布面側から電子線照射装置にて加速電圧200Kv、3Mradの電子線を照射して電子線硬化型樹脂を硬化させ、化粧紙を得た。 これを尿素・酢酸ビニル系の接着剤にてパーチクルボードと貼り合わせて化粧板にしたところ、外観上非常に光沢が高く(光沢度80%)、塗装感もあり、層間強度や表面強度の優れた(鉛筆強度2H、碁盤目状接着テープ剥離試験にて剥離なし)化粧板が得られた。」(段落【0020】?【0021】) j 「【発明の効果】以上に示したように、本発明により得られる化粧紙の表面は、表面保護の電子線硬化型樹脂層が目止めシーラー層までよく浸透するが、必要以上に浸透しないので、表面の樹脂層が確保され、表面の仕上がり外観に優れる。 また、各層の電子線硬化型樹脂は、ただ一度の電子線照射のみによって、化粧紙の断面を通過した電子線の作用によって硬化して一体となるため化粧紙層のどこをとっても弱い層がなく、極めて強度の高い化粧紙を製造でき、生産効率も非常に高い。多色機で1工程で生産することが非常に容易である。また、化粧紙の裏面には電子線硬化型樹脂が浸透していないため、接着剤によっての基材との接着性も優れる。」(段落【0024】?【0025】) k 【図面の簡単な説明】の【図1】には、以下のような、刊行物1に記載された発明の方法による化粧紙の断面を示した模式図が示されている。 【符号の説明】 1…樹脂浸透性の良い紙 2…電子線硬化型樹脂を含む目止めシーラー層 3…電子線硬化型樹脂を含むインキによる印刷層 4…電子線硬化型樹脂層 【図1】 (3) 対比・判断 ア 刊行物1に記載された発明 刊行物1には、「樹脂浸透性の良い紙に、電子線硬化型樹脂を含む目止めシーラー層、電子線硬化型樹脂を含むインキによる印刷層、電子線硬化型樹脂層を設け、電子線を照射することによって一体に硬化されてなることを特徴とする化粧紙。」(摘示a)に関する発明が記載されており、また、「樹脂浸透性の良い紙1に、電子線硬化型樹脂を含む目止めシーラー層2、電子線硬化型樹脂を含むインキで形成した印刷層3、及び電子線硬化型樹脂層4を形成した後、電子線を照射することにより、目止めシーラー層及び印刷層に含まれる電子線硬化型樹脂を硬化させる」(摘示b)こと、及び「目止めシーラー層・印刷層に含まれる電子線硬化型樹脂は連続印刷や連続コートができるように乾燥させているのみであり、電子線は表面の電子線硬化型樹脂を塗布した後に照射して最終で硬化させるので、各層に含まれる電子線硬化型樹脂は一体化して硬化する」(摘示c、類似の表現として摘示g、摘示h、摘示j。)こと、が記載されている。 また、目止めシーラー層及び印刷層における電子線硬化型樹脂の添加量については、「目止めシーラー層2としては、塗布はグラビアコート法等の公知の方法よるが、樹脂としてはウレタン樹脂等の溶剤型或いはアクリル樹脂等の水性型で熱乾燥する樹脂を主体とし、併用樹脂として電子線硬化型樹脂を使用し、熱乾燥でタック残りがなく連続印刷できる程度の添加量とする。同様に印刷層3の形成も、グラビア印刷法等の公知の方法で印刷するが、インキのバインダーとしては、溶剤型或いは水性型で熱乾燥する樹脂を主体とし、併用樹脂として電子線硬化型樹脂を使用し、熱乾燥で連続印刷・コートできる程度の添加量とする。」(摘示d)ことから、併用樹脂として電子線硬化型樹脂を使用することを考慮すれば、刊行物1に記載された発明における目止めシーラー層及び印刷層における電子線硬化型樹脂の添加量は、50重量%未満であると認められる。 (なお、この解釈は、実施例の記載、例えば実施例1における「電子線硬化型樹脂を含む目止めシーラーとしてウレタン樹脂40重量部、ウレタンアクリレートオリゴマー5重量部、ポリイソシアネート10重量部、希釈溶剤45重量部からなる樹脂を用い、これを乾燥後2g/m^(2 )となるよう塗布した。続いて電子線硬化型樹脂を含むインキとして塩化ビニル・酢酸ビニル樹脂を15?30重量部、着色顔料5?30重量部、2官能モノマー3?12重量部、全体を100重量部として残りを希釈溶剤(割合は色によって異なる)からなるものを用い、これでオーク調木目絵柄を印刷した。」(摘示i)という記載とも矛盾しない。) また、「電子線硬化型樹脂を含むインキとして塩化ビニル・酢酸ビニル樹脂を15?30重量部、着色顔料5?30重量部、2官能モノマー3?12重量部、全体を100重量部として残りを希釈溶剤(割合は色によって異なる)からなるものを用い、これでオーク調木目絵柄を印刷した。」(摘示i)との記載から、刊行物1には印刷層のインキに着色顔料を含む態様が示されている。 してみると、本願補正発明の記載ぶりに合わせると、刊行物1には、 「樹脂浸透性の良い紙上に、電子線硬化型樹脂50重量%未満を含む目止めシーラー層、電子線硬化型樹脂50重量%未満と着色顔料を含むインキによる印刷層を設け、さらに電子線硬化型樹脂を含む電子線硬化型樹脂層を設けた後に、電子線を照射して目止めシーラー層及び印刷層及び電子線硬化型樹脂層を硬化させ、かつ各層に含まれる電子線硬化型樹脂は一体に硬化されてなる化粧紙。」 の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 イ 本願補正発明と引用発明1との対比 引用発明1における「樹脂浸透性の良い紙」、「目止めシーラー層」、「着色顔料を含むインキによる印刷層」、「印刷層」、「電子線硬化型樹脂層」及び「化粧紙」は、それぞれ、本願補正発明における「基材」、「ベタ印刷層」、「顔料を含む絵柄層」、「絵柄層」、「表面保護層」及び「化粧シート」に対応する。 そして、引用発明1における「電子線硬化型樹脂」は一種の「重合性化合物」であり、また、引用発明1における「各層に含まれる電子線硬化型樹脂は一体に硬化されてなる」とは、各層に含まれる電子線硬化型樹脂が各層間の界面にて化学反応させることにより各層間において一体に硬化されることを意味していることを考慮すると、引用発明1における「各層に含まれる電子線硬化型樹脂は一体に硬化されてなる」は、本願補正発明における「各層間の界面にて化学反応させてなる」に対応する。 さらに、本願明細書には「本発明の表面保護層4に用いる電離放射線硬化型樹脂は、具体的には分子中に重合性不飽和結合基を有するオリゴマー及び/又はモノマーを適宜混合した、電離放射線により硬化可能な組成物が用いられる。尚、ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線又は電子線が用いられる。」(段落【0010】)と記載されていることからみて、本願補正発明における「電離放射線硬化型樹脂」及び「電離放射線」は、それぞれ、引用発明1における「電子線硬化型樹脂」及び「電子線」を含むものである。 以上のことから、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、両者は、 「基材上に、重合性化合物5重量%以上?50重量%未満を含むベタ印刷層及び重合性化合物5重量%以上?50重量%未満と顔料を含む絵柄層を設け、さらに電子線硬化型樹脂を含む表面保護層を設けた後に、電子線を照射してベタ印刷層及び絵柄層及び表面保護層を硬化させ、かつ各層間の界面にて化学反応させてなる化粧シート。」 である点で一致するが、以下の(ア)?(ウ)の点で相違すると認められる。 (ア) ベタ印刷層及び絵柄層で使用する重合性化合物として、本願補正発明が「1分子中に少なくとも2個以上のアクリロイル基を有する化合物」を用いるのに対し、引用発明1においては「電子線硬化型樹脂」を用いる点 (イ) ベタ印刷層において、本願補正発明が「顔料を含む」のに対し、引用発明1においては「顔料を含む」点は特定されていない点 (ウ) 表面保護層について、本願補正発明が「全面に」設けるのに対し、引用発明1においては「全面に」設ける点は特定されていない点 (以下、これらの相違点を、それぞれ「相違点(ア)」、「相違点(イ)」、及び「相違点(ウ)」という。) ウ 相違点について (ア) 相違点(ア)について 「1分子中に少なくとも2個以上のアクリロイル基を有する化合物」は電子線硬化型樹脂として周知である(必要なら、例えば、特開平6-343917号公報(拒絶理由通知における引用文献3)、特開平6-344516号公報、及び特開平8-24776号公報参照。)ので、引用発明1における電子線硬化型樹脂として「1分子中に少なくとも2個以上のアクリロイル基を有する化合物」を用いることは当業者が容易に想到し得ることである。 (イ) 相違点(イ)について 着色や遮蔽等のために、目止めシーラー層、すなわちベタ印刷層に顔料を含ませることは周知である(必要なら、例えば、特開昭63-99273号公報、特開昭54-160444号公報、及び特開平6-91819号公報参照。)ので、着色や遮蔽等のために、引用発明1において、目止めシーラー層、すなわちベタ印刷層に顔料を含ませることは当業者が適宜なし得ることである。 (ウ) 相違点(ウ)について 刊行物1の図1にも示されている(摘示k)ように、表面保護層を「全面に」設けることは化粧シートの技術分野において周知であるので、表面保護層を「全面に」設けることは当業者が容易になし得ることである。 エ 効果について しかも、本願補正発明が上記相違点に基づき格別顕著な技術的効果を奏し得たものとは認められない。 すなわち、本願補正発明の効果は「表面の強度と積層された各層の密着性が共に強く耐擦傷性に優れた」(例えば、【0003】)ものであるところ、引用発明1においても「紙層は目止めシーラーで強化されると共に、各層の電子線硬化型樹脂が一体となって硬化するので、化粧紙層のどこをとっても弱い層がなく、極めて強度の高い化粧紙を得ることが出来る。」(摘示h)とともに、実施例においても「層間強度や表面強度の優れた(鉛筆強度2H、碁盤目状接着テープ剥離試験にて剥離なし)化粧板が得られた。」(摘示h)ことが記載されているので、本願補正発明が上記相違点に基づき格別顕著な技術的効果を奏し得たものとは認められない。 オ 対比・判断のまとめ したがって、上記各相違点は当業者が容易に想到し得たものであり、また本願補正発明がこれらの相違点に係る特定事項により格別顕著な効果を奏するものとは認められないから、本願補正発明は、その出願前に頒布された刊行物である特開平6-218897号公報に記載された発明(引用発明1)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 4 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するものであるから、その余の点を検討するまでもなく、本件補正は、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、この出願の発明は、平成17年8月1日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「基材上に、1分子中に少なくとも2個以上のアクリロイル基を有する化合物5?80重量%と顔料を含むベタ印刷層及び絵柄層を設け、さらに電離放射線硬化樹脂を含む表面保護層を設けた後に、電離放射線を照射してベタ印刷層及び絵柄層及び表面保護層を硬化させ、かつ各層間の界面にて化学反応させてなることを特徴とする化粧シート。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物(特開平6-218897号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3 刊行物、刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明について 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物(特開平6-218897号公報)は上記の「第2,3(2)」に示した刊行物1と同じものであるから、「刊行物の記載事項」及び「刊行物1に記載された発明」は、それぞれ、先に「第2,3(2)」及び「第2,3(3)ア」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本願補正発明に関し、「さらに電離放射線硬化樹脂を含む表面保護層を全面に設けた後に、」中の「全面に」の部分を削除したものに相当するから、本願発明と引用発明1との相違点は先に「第2,3(3)イ」で述べた相違点(ア)及び(イ)のみであるから、その対比及び相違点についての判断は、先に「第2,3(3)イ」?「第2,3(3)オ」に記載したもののうち、相違点(ウ)について述べた部分を除いたとおりである(ただし、「本願補正発明」を「本願発明」と読み替える。)。 5 まとめ よって、本願発明は、この出願前に頒布された刊行物である特開平6-218897号公報に記載された発明(引用発明1)及び及び周知事実に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-25 |
結審通知日 | 2008-10-01 |
審決日 | 2008-10-16 |
出願番号 | 特願平8-235813 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B32B)
P 1 8・ 121- Z (B32B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 深草 祐一 |
特許庁審判長 |
原 健司 |
特許庁審判官 |
唐木 以知良 橋本 栄和 |
発明の名称 | 化粧シート |
代理人 | 金山 聡 |