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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B
管理番号 1188560
審判番号 不服2005-11662  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-22 
確定日 2008-11-25 
事件の表示 特願2000-338604「ゴルフ練習装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月26日出願公開、特開2001-170238〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年11月7日(パリ条約による優先権主張:1999年11月19日、米国)に出願したものであって、平成17年3月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月22日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成20年4月18日付けで拒絶の理由を通知したところ、請求人は同年6月4日付けで意見書及び手続補正書を提出した。

2.本願発明
平成20年6月4日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲(請求項数6)の請求項1及び6の記載は、それぞれ以下の通りである。
「【請求項1】 床又は地面上に装置を支持するためのベース部材、及びフレーム部材を含むゴルフ練習装置であって、前記フレーム部材が前記ベース部材から上方に延びており、前記フレーム部材がフレーム部材から側方に延びる装着アームと前記装着アームからスイング自在に懸垂された物体とを有し、前記物体の少なくとも一部が通常のゴルフスイング中にゴルフクラブヘッドによって打たれる位置で床又は地面に隣接し、前記物体はゴルファが小さな目標を打つことに集中せずに自由にスイングできるように大きな目標を与えるためにソフトボールと実質的に同じ大きさ及び形状を有するか、又は実質的に球形でありかつ約3?8インチの直径を有するか、又は4?5インチの直径を有する涙滴形状パンチングバッグと実質的に同じ大きさ及び形状を有し、前記物体は筋肉発達のためにゴルファに筋肉緊張を課すためにゴルフクラブの衝撃に対して実質的な抵抗を与えるために、及びゴルフクラブヘッドが物体の下を最終的に通過するためにゴルフクラブヘッドが十分に物体をスイングできかつゴルファがゴルフスイングのフォロースルーを完了することができるために約4?12オンスの重量を有することを特徴とするゴルフ練習装置。」
「【請求項6】 通常のゴルフスイング中にゴルフクラブヘッドによって打たれるための位置で地面又は床上に載っている物体、及び前記物体が打たれた後に動くことができる距離を制限するために地面又は床に及び前記物体に固定されたフレキシブルコードを含むゴルフ練習装置であって、前記物体はゴルファが小さな目標を打つことに集中せずに自由にスイングできるように大きな目標を与えるために野球のボールと実質的に同じ大きさ及び形状を有するか、又は実質的に球形でありかつ約3?8インチの直径を有するか、又はソフトボールと実質的に同じ大きさ及び形状を有し、前記物体は筋肉発達のためにゴルファに筋肉緊張を課すためにゴルフクラブの衝撃に対して実質的な抵抗を与えるために、及びゴルファがゴルフスイングのフォロースルーを完了することができるためにゴルフクラブヘッドが十分に物体を動かすことができるために約3?12オンスの重量を有することを特徴とするゴルフ練習装置。」

<当審に係る平成20年4月18日付けの記載不備に関する拒絶理由の抜粋>
「1.請求項1において、「ゴルファが小さな目標を打つことに集中せずに自由にスイングできるように大きな目標を与えるために」、「筋肉発達のためにゴルファに筋肉緊張を課すためにゴルフクラブの衝撃に対して実質的な抵抗を与えるために、及びゴルフクラブヘッドが物体の下を最終的に通過するためにゴルフクラブヘッドが十分に物体をスイングできかつゴルファがゴルフスイングのフォロースルーを完了することができるために」とあるが、この記載によって「ゴルフ練習装置」そのものの構成がどのように限定されるのか不明である。
(前者は、「物体」が「ソフトボールと実質的に同じであるか、又は実質的に球形でありかつ約3?8インチの直径を有するか、又は涙滴形状パンチングバッグと実質的に同じであり」という構成を有する目的を単に記載しただけで構成を何等限定していないものなのか、それとも何らかの構成を特定しているのか。
後者は、「物体」が「約4?12オンスの重量を有する」という構成を有する目的を単に記載しただけで構成を何等限定していないものなのか、それとも何らかの構成を特定しているのか。)

2.請求項6において、「ゴルファが小さな目標を打つことに集中せずに自由にスイングできるように大きな目標を与えるために」、「筋肉発達のためにゴルファに筋肉緊張を課すためにゴルフクラブの衝撃に対して実質的な抵抗を与えるために、及びゴルファがゴルフスイングのフォロースルーを完了することができるためにゴルフクラブヘッドが十分に物体を動かすことができるために」とあるが、上記と同様、この記載によって「ゴルフ練習装置」そのものの構成がどのように限定されるのか不明である。

7.請求項1において「前記物体の少なくとも一部が通常のゴルフスイング中にゴルフクラブヘッドによって打たれる位置で」とあるが、この記載によって「ゴルフ練習装置」そのものの構成がどのように限定されるのか不明である。
(物体の少なくとも一部が床又は地面に隣接していれば、通常のゴルフスイング中にゴルフクラブヘッドによって打つことが可能な位置にあるといえるから、物体の少なくとも一部が床又は地面に隣接していること以上に何らかの構成を特定しているのか。)

8.請求項6において、「通常のゴルフスイング中にゴルフクラブヘッドによって打たれるための位置で」、「前記物体が打たれた後に動くことができる距離を制限するために」とあるが、この記載によって「ゴルフ練習装置」そのものの構成がどのように限定されるのか不明である。
(「地面又は床上に載っている」という物体の位置を特定する目的を単に記載しただけで構成を何等限定していないものなのか、それとも何らかの構成を特定しているのか。
また、「地面又は床に及び物体に固定されたフレキシブルコード」という構成を有する目的を単に記載しただけで構成を何等限定していないものなのか、それとも何らかの構成を特定しているのか。)」

上記記載不備の拒絶理由に対し、請求人は、平成20年6月4日付け意見書「(3) 理由A(記載不備)の御指摘に対して」の項で「(i)記1及び2の御指摘に対して 御指摘の記載はいずれも、本願発明のゴルフ練習装置で使用する物体が特定の形状・大きさ又は重量を有する目的を単に記載するにすぎず、構成を何等限定するものではない。」、「(v)記7及び8の御指摘に対して 請求項1の御指摘の記載は、審判官殿の指摘通り、物体の少なくとも一部が床又は地面に隣接していること以上に何らかの構成を特定するものではない。
また、請求項6の御指摘の記載も、審判官殿の指摘通り、「地面又は床上に載っている」という物体の位置を特定する目的、又は「地面又は床に及び物体に固定されたフレキシブルコード」という構成を有する目的を単に記載しただけであり、構成を何等限定するものではない。」と述べている。

そうすると、請求項1、6に係る発明の構成は、これら指摘した記載を除いた以下のものとして認定し得ることになるので、下記のものについて以降検討する。

「【請求項1】 床又は地面上に装置を支持するためのベース部材、及びフレーム部材を含むゴルフ練習装置であって、前記フレーム部材が前記ベース部材から上方に延びており、前記フレーム部材がフレーム部材から側方に延びる装着アームと前記装着アームからスイング自在に懸垂された物体とを有し、前記物体の少なくとも一部が床又は地面に隣接し、前記物体はソフトボールと実質的に同じ大きさ及び形状を有するか、又は実質的に球形でありかつ約3?8インチの直径を有するか、又は4?5インチの直径を有する涙滴形状パンチングバッグと実質的に同じ大きさ及び形状を有し、前記物体は約4?12オンスの重量を有するゴルフ練習装置。」(以下、「本願発明1」という。)
「【請求項6】 地面又は床上に載っている物体、及び地面又は床に及び前記物体に固定されたフレキシブルコードを含むゴルフ練習装置であって、前記物体は野球のボールと実質的に同じ大きさ及び形状を有するか、又は実質的に球形でありかつ約3?8インチの直径を有するか、又はソフトボールと実質的に同じ大きさ及び形状を有し、前記物体は約3?12オンスの重量を有するゴルフ練習装置。」(以下、「本願発明6」という。)

3.引用刊行物
当審の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平1-94876号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.「ネット吊下用の水平枠を有する支持手段と、この水平枠に上端が固定され吊下方向に向いたネット構成糸を有するネットと、このネットの下端に取り付けられた遊動枠と、前記支持手段に取着され前記遊動枠の両端を上下方向に遊動自在に支持するガイド手段と、前記ネットの下方に設けられたネット固定枠と、前記遊動枠の略中央に一端が螺合され、ネット固定枠に他端が回動自在に係合されたボルトと、このボルトに固定された回転ハンドルと、前記支持手段に一端が係止された弾性紐手段と、この弾性紐手段の他端に結合された球技用ボールと、前記ネットの後方の位置で前記支持手段上に取り付けられてネット前方の所定区域内に感知範囲を有し、ネット前方からネットに向って飛来する球技用ボールが前記感知範囲内に入ったときに命中信号を出力するとともにそのときの球速を表わす球速信号を出力し、個々の命中球速トータルの命中回数をおよびその積を総合得点として表示する表示部を有する標的手段と、を有することを特徴とする球技用具。」(特許請求の範囲)
イ.「まず第1図において、2組のコ字形の脚枠11,12上に2本の垂直枠13,14を回動ジョイント15,16によって取り付ける。垂直枠13,14の上下端には2本の水平枠17,18が連結される。垂直枠13,14には2本のスライドパイプ19,20が嵌合される。」(第2頁左下欄第15?末行)
ウ.「例えば練習用のテニスボール40は、第1図に示したようにネット30の上部からネット30の前方へ長く突出されたボール支持枠41の先端の滑車42から吊下されたゴム紐43の先端に吊下される。ゴム紐43は、ボール支持枠41の途中に設けられた滑車44,45,46を介して、水平枠17の滑車47,48に導かれ、垂直枠13上のゴムリール49に巻回される。従って、滑車42からのゴム紐43の長さは、ゴムリール49に巻回されたゴム紐43の巻回数によって調節できるものである。
ボール支持枠41の中間部は、水平枠17に設けられた支持体50上に、回動ジョイント51によって支持されている。ボール支持枠41の後端は、第3の垂直枠52上に設けられたスライドパイプ53に回動ジョイント54を介して連結される。従って、スライドパイプ53を垂直枠52上でスライドさせることによってボール支持枠41を上下に傾けることができる。スライドパイプ53は止めねじ55によりて垂直枠52上の任意の位置で固定することができる。例えば、スライドパイプ53を図示の位置から下方へ移動させると、ボール支持枠41の先端は大きく上方へ移動し、テニスボール40の位置が高くなる。これによって例えばスマッシュの練習を行なうことができる。」(第3頁右上欄第6行?左下欄第11行)
エ.「上記の説明ではボール40をボール支持枠41の先端から吊下した状態にしたが、垂直枠13上の他のリール70上にゴム紐を巻いておき、図示しない滑車を介してゴム紐を垂直枠13の下方に導き、ネット30の前方に置いた第6図のような重り71の滑車72に係合させるようにして、ボール40を床上に持ってきてもよい。尚、このときはゴム紐43とボール40とはスイベル73を介して連結した方が望ましい。なぜなら、ボール40が床上を転がるときにゴム紐43に強いよりが生じるからである。又、ボール40とスイベル73との間にはゴム紐を用いてもよいし、又、ナイロンの糸を用いてもよい。」(第4頁左下欄第15行?右下欄第7行)
オ.「以上の説明はテニスを例にとったが、例えばサッカーボールのような大きいボールの場合は、ネット30をハンドル36で緩く張る等の対応がすぐにでき、極めて便利である。」(第4頁右下欄第12?15行)
カ.「この発明の結果、エレクトロニクスゲーム的な要素が運動器具に採り入れられ、テニスをはじめ、野球、ゴルフ、サッカー、バレーボール等の練習ができるばかりでなく、エレクトロニクスゲームを楽しみ乍ら健康増進にも役立てることができるようになった。」(第5頁左上欄第5?10行)
キ.第1図から、2本の垂直枠13,14とその上下端に連結された2本の水平枠17,18からなる枠体が脚枠11,12から上方に延びていることが看取でき、水平枠17に設けられた支持体50上にボール支持枠41の中間部が支持され、ボール支持枠41が枠体から突出されていることが看取できる。

上記記載及び図面を含む刊行物全体の記載から、刊行物には、以下の発明がそれぞれ開示されていると認められる。
「2組のコ字形の脚枠11,12及び2本の垂直枠13,14とその上下端に連結された2本の水平枠17,18からなる枠体を含む球技用具であって、前記2本の垂直枠13,14とその上下端に連結された2本の水平枠17,18からなる枠体が前記脚枠11,12から上方に延びており、前記水平枠17に設けられた支持体50上に中間部が支持され、枠体から突出されたボール支持枠41と、ボール支持枠41の先端の滑車42から吊下されたゴム紐43の先端に吊下されるボール40とを有し、滑車42からのゴム紐43の長さは、ゴムリール49に巻回されたゴム紐43の巻回数によって調節できる球技用具。」(以下、「引用発明1」という。)

「床上に載っているボール40、及び前記ボール40に連結され、重り71の滑車72に係合され、2組のコ字形の脚枠11,12及び2本の垂直枠13,14とその上下端に連結された2本の水平枠17,18からなる枠体の垂直枠13上のリール70上に巻かれたゴム紐43を含む球技用具。」(以下、「引用発明2」という。)

4.対比・判断
(1)本願発明1について
本願発明1と引用発明1とを比較すると、引用発明1の「脚枠11,12」、「垂直枠13,14とその上下端に連結された2本の水平枠17,18からなる枠体」、「ボール支持枠41」、「ボール40」は、それぞれ本願発明1の「ベース部材」、「フレーム部材」、「装着アーム」、「物体」に相当し、引用発明1の「球技用具」と、本願発明1の「ゴルフ練習装置」は、いずれも「球技装置」の点で共通する。
引用発明1の2組のコ字形の脚枠11,12がボール40、ボール支持枠41、枠体等からなる装置を床又は地面上に支持し得ることは明らかであるから、該脚枠11,12は、床又は地面上に装置を支持するためのものといえる。
引用発明1のボール支持枠41は、水平枠17に設けられた支持体50上に中間部が支持され、枠体から突出されているから、枠体から側方に延びているといえる。
引用発明1のボール40は、ゴム紐43の先端に吊下され、滑車42からのゴム紐43の長さは、ゴムリール49に巻回されたゴム紐43の巻回数によって調節できるから、ボール40の少なくとも一部が床又は地面に隣接するように調節できる。そうすると、引用発明1のボール40は、スイング自在に懸垂され、少なくとも一部が床又は地面に隣接するものといえる。
よって、両者は、
「床又は地面上に装置を支持するためのベース部材、及びフレーム部材を含む球技装置であって、前記フレーム部材が前記ベース部材から上方に延びており、前記フレーム部材がフレーム部材から側方に延びる装着アームと前記装着アームからスイング自在に懸垂された物体とを有し、前記物体の少なくとも一部が床又は地面に隣接する球技装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]物体に関し、本願発明1は、「ソフトボールと実質的に同じ大きさ及び形状を有するか、又は実質的に球形でありかつ約3?8インチの直径を有するか、又は4?5インチの直径を有する涙滴形状パンチングバッグと実質的に同じ大きさ及び形状を有し」、「約4?12オンスの重量を有する」と特定されているのに対し、引用発明1は、そのような特定がない点。
[相違点2]球技装置に関し、本願発明1は、「ゴルフ練習装置」と特定されているのに対し、引用発明1は、そのような特定がない点。

上記相違点1について検討する。
刊行物の上記ウ.に「例えば練習用のテニスボール40」と記載され、上記オ.に「以上の説明はテニスを例にとったが、例えばサッカーボールのような大きいボールの場合は」と記載され、上記カ.に「テニスをはじめ、野球、ゴルフ、サッカー、バレーボール等の練習ができる」と記載されているように、引用発明1のボール40として、種々の球技に用いられるボールを採用することが示唆されているから、ソフトボールに用いられるボールを採用することは当業者が容易になし得る程度のことであり、ソフトボールに用いられるボールであれば、該ボールは、ソフトボールと実質的に同じ大きさ及び形状を有するか、又は実質的に球形でありかつ約3?8インチの範囲内の直径を有し、約4?12オンスの範囲内の重量を有することは明らかである。
よって、本願発明1の上記相違点1のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点2について検討する。
引用発明1の滑車42からのゴム紐43の長さは、調節可能であり、採用したボールの少なくとも一部が床又は地面に隣接するように調整すれば、本願発明1の物体の位置と相違せず、該ボールが床又は地面に隣接する位置にあれば、ゴルフクラブヘッドで打ち抜き、ゴルフの練習が可能であり、そのような練習のできるものをゴルフ練習装置と称するのは、単に表現上の差異にすぎない。

そして、本願発明1の作用効果も、引用発明1から当業者が予測できる範囲のものである。

(2)本願発明6について
本願発明6と引用発明2とを比較すると、引用発明2の「ボール40」及び「ゴム紐43」は、本願発明6の「物体」及び「フレキシブルコード」に相当し、引用発明2の「球技用具」と、本願発明6の「ゴルフ練習装置」は、いずれも「球技装置」の点で共通する。
よって、両者は、
「床上に載っている物体、及びフレキシブルコードを含む球技装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点3]フレキシブルコードに関し、本願発明6は、「地面又は床に及び前記物体に固定され」と特定されているのに対し、引用発明2は、そのような特定がない点。
[相違点4]物体に関し、本願発明6は、「野球のボールと実質的に同じ大きさ及び形状を有するか、又は実質的に球形でありかつ約3?8インチの直径を有するか、又はソフトボールと実質的に同じ大きさ及び形状を有し」、「約3?12オンスの重量を有する」と特定されているのに対し、引用発明2は、そのような特定がない点。
[相違点5]球技装置に関し、本願発明6は、「ゴルフ練習装置」と特定されているのに対し、引用発明2は、そのような特定がない点。

上記相違点3について検討する。
引用発明2のゴム紐43(本願発明6の「フレキシブルコード」に相当。)は、ボール40(同「物体」)に連結されているから、ボール40に固定されているといえる。
引用発明2の2組のコ字形の脚枠11,12及び2本の垂直枠13,14とその上下端に連結された2本の水平枠17,18からなる枠体は、床と相対移動しないことを前提としていることは明らかであるから、枠体を床に固定することは当業者が容易になし得る程度のことである。そうすれば、引用発明2のゴム紐43は、枠体、リール70を介するものの床に固定されることになる。
よって、本願発明6の上記相違点3のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点4について検討する。
相違点1で列記したように、引用発明2のボール40として、種々の球技に用いられるボールを採用することが示唆されているから、野球あるいはソフトボールに用いられるボールを採用することは当業者が容易になし得る程度のことである。野球に用いられるボールであれば、該ボールは、野球のボールと実質的に同じ大きさ及び形状を有するか、又は実質的に球形でありかつ約3?8インチの範囲内の直径を有し、約3?12オンスの範囲内の重量を有することは明らかである。また、ソフトボールに用いられるボールであれば、該ボールは、ソフトボールと実質的に同じ大きさ及び形状を有するか、又は実質的に球形でありかつ約3?8インチの範囲内の直径を有し、約3?12オンスの範囲内の重量を有することは明らかである。
よって、本願発明6の上記相違点4のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点5について検討する。
引用発明2のボール40は、床上に載っているから、ゴルフクラブヘッドで打ち抜き、ゴルフの練習が可能であり、そのような練習のできるものをゴルフ練習装置と称するのは、単に表現上の差異にすぎない。

そして、本願発明6の作用効果も、引用発明2から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、請求人は、平成20年6月4日付け意見書の「(4) 理由B(進歩性欠如)の御指摘に対して」の項で、以下のように主張している。
「刊行物1には、ゴルフボール以外のボールを使用してゴルフの練習を行うことは記載も示唆もされていないし、ましてや、本願請求項1及び6で規定されるような、ゴルフボールよりずっと大きくて重い物体を使用してゴルフの練習を行うことは何ら示唆されていない。
また、本願発明によれば、本願請求項1及び6に規定されるような、ゴルフボールよりずっと大きくて重い物体を使用してゴルフの練習を行うことにより、ゴルファーが小さな目標を打つことに集中せずに自由にスイングすることができ、しかもゴルフスイング技術の練習だけでなくゴルファーの筋肉増強も図ることができるという効果を有する(本願明細書[0005])。かかる効果の顕著性、及び本願請求項1及び6に規定される物体の形状・大きさ及び重さの特定の臨界的意義は、前回の審判理由補充で提出した実験成績報告証明書2から明らかである。念のため、この証明書の写しを再度ここに添付する。この証明書から、本願請求項1及び6に規定される物体の形状・大きさ及び重さに関して、通常のゴルフボールと比較して、ドライバーの飛距離及びフェアウェイキープ率が際立って優れた改善効果を有することが認められる。」
しかしながら、請求人が各請求項で請求しているものは、装置そのものであり、特定の装置を用い、特定の練習方法で練習するゴルフ練習方法ではない。請求人の主張する効果は、特定の装置を用い、特定の練習方法で練習した結果であり、各請求項で請求しているものがゴルフ練習方法であれば、請求人の主張が理解できなくもないが、請求人の主張は、請求項の記載に基づくものとはいえないし、仮に方法だとしても、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1及び6は、本願優先権主張日前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-30 
結審通知日 2008-07-01 
審決日 2008-07-14 
出願番号 特願2000-338604(P2000-338604)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 佐藤 宙子
酒井 進
発明の名称 ゴルフ練習装置  
代理人 風早 信昭  

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