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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B
管理番号 1188578
審判番号 不服2007-9412  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-04 
確定日 2008-11-25 
事件の表示 特願2001-374700「3次元モデルデータ生成装置、及びこれを備えた自動プログラミング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月27日出願公開、特開2003-177809〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成13年12月7日の特許出願であって、同18年7月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月14日に手続補正がなされ、同年11月2日付けで拒絶の理由が通知され、同19年1月15日に意見書が提出され、同年2月23日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年4月4日に本件審判の請求がなされ、当審において同20年5月21日付けで拒絶理由が通知され、同年7月25日に手続補正(方式についての同年8月21日の手続補正を含む)がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成20年7月25日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。
請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「3次元モデルに関するデータを入力する入力装置と、
前記入力装置からの入力データを基に、3次元モデルのフィーチャに係るデータと、該フィーチャを定義する形状データであって、3次元空間内の座標値で表される頂点データ、2つの頂点を結んで構成される稜線の方程式データ、前記稜線と前記2つの頂点とを関連付ける稜線データ、稜線により囲まれて形成される面の方程式データ、及び前記面と前記稜線とを関連付ける面データを少なくとも含んで構成される形状データとを生成,編集する形状生成/編集処理手段と、
前記形状生成/編集処理手段において生成,編集されたフィーチャに係るデータと、前記形状データとを相互に関連付けて記憶する3次元モデルデータ記憶手段とを備えた3次元モデルデータ生成装置において、
前記形状生成/編集処理手段は、更に、前記入力装置から入力された面取りに関するデータであって、面取り角度及び切り込み量、又は曲率半径で定義される面取りデータを受け付け、受け付けた面取りデータを、該面取りを付加する角部又は隅部の前記稜線データであって前記形状データの一部を構成する稜線データと相互に関連付けて前記3次元モデルデータ記憶手段に格納するように構成されてなることを特徴とする3次元モデルデータ生成装置。」

3.刊行物記載の発明
これに対し、本願出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された特開平11-306224号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.段落0001
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は三次元モデル作成装置に関し、特にフィレットを付加したときに形状から消去されるフィレット元稜線のデータを保存して利用できるようにした三次元モデル作成装置に関する。」

イ.段落0020?0021
「【0020】
【発明の実施の形態】まず、本発明の概略について図面を参照して説明する。図1は本発明の原理的な構成を示した図である。図1において、三次元モデル作成装置は、入力手段1と、形状生成/編集処理手段2と、表示手段3と、フィーチャ管理手段4と、元稜線データ管理手段5と、三次元データ記憶手段6と、図面作成処理手段7と、二次元データ記憶手段8とから構成されている。入力手段1は、形状生成/編集処理手段2に対して、三次元モデルの作成指示や、作成された三次元モデルに対する各種編集指示などを行うもので、文字や数字などを入力するキーボード、マウスやタブレットなどのポインティングデバイスなどから構成される。形状生成/編集処理手段2は、入力手段1からの各種指示に従って、三次元モデルの形状を生成し、編集を行う部分であり、三次元CADシステムが有する三次元モデルの生成に必要な基本的な処理機能を有している。その形状生成/編集処理手段2による形状生成/編集処理の結果は表示手段3に表示される。フィーチャ管理手段4は形状生成/編集処理手段2で形状生成/編集処理されたフィーチャの三次元データを三次元データ記憶手段6に保管し、管理している。元稜線データ管理手段5は形状生成/編集処理手段2が処理中のフィーチャがフィレットの場合に、そのフィレットと関連付けて三次元データ記憶手段6に記憶された元稜線データを三次元データ記憶手段6から取り出し、それを三次元表示用のデータに変換する。図面作成処理手段7は形状生成/編集処理手段2で作成された三次元モデルの形状データをもとに、これを二次元平面へ投影することによって二次元の図面用の二次元データを作成し、二次元データ記憶手段8へ記憶する。
【0021】形状生成/編集処理手段2での三次元のモデリング時において、作成されたフィーチャがフィレットである場合、そのフィレットを付加する元となった稜線のデータ、すなわち元稜線データをフィーチャ管理手段4がフィレットフィーチャに関連付けてフィレットの形状データとともに三次元データ記憶手段6に記憶しておく。」

ウ.段落0026
「・・・。形状生成/編集処理部31が三次元モデルを生成するときの生成単位をフィーチャと呼んでおり、たとえば形状生成/編集処理部31が生成する直方体、穴、突起、フィレットはフィーチャの一つである。・・・。」

エ.段落0028?0032
「【0028】次に、形状生成/編集処理部31におけるフィーチャの生成例を以下に例示する。図4は三次元モデルの生成例を示す図であって、(A)は直方体の生成例を示し、(B)はフィレットを付加した例を示している。直方体は、(A)に示したように、六つの面f1?f6と、これらの面の交線である12本の稜線e1?e12とによって表される。形状生成/編集処理部31によってこの直方体が生成されると、その直方体に対して、直方体自身を表すフィーチャ名(ID:識別子)と、その直方体を構成する面(面ID)と、各面をそれぞれ構成する稜線とを関連付けたデータが生成される。
【0029】ここで、一つの稜線e1に対してフィレットを付加するとき、まず、稜線e1を指定し、半径を指定する。稜線e1の両端点での半径が異なるフィレットを付加する場合、半径は別々に指定する。この結果、(B)に示したように、稜線e1の位置にフィレット面f7が新たに生成される。これに伴なって、フィレットの元稜線である稜線e1が表示画面から消去され、フィレット面f7を構成する稜線e13?e16が表示される。このとき、フィレット面f7に接する四つの面f1,f3,f4,f6は形状が変化するので、それらに関するデータは更新される。
【0030】これらのデータは三次元データ部34に記憶されるが、次に、そのフィレットが付加された直方体に関するこれらのデータの記憶場所について説明する。図5は三次元データ部における三次元モデルのデータ配置を説明した図であって、(A)直方体のデータを示し、(B)はフィレットが付加された直方体のデータを示している。形状生成/編集処理部31により直方体が生成されると、(A)に示したように、フィーチャ管理部32により、三次元データ部34におけるフィーチャデータ域に「直方体」が登録され、これに関連付けられて形状データ域に面f1?f6および稜線e1?e12が登録される。
【0031】次に、稜線e1にフィレットが付加されると、(B)に示したように、フィーチャ管理部32により、三次元データ部34におけるフィーチャデータ域に「フィレット」が新たに登録され、これに関連付けられて形状データ域にフィレット面f7および稜線e13?e16が登録され、フィレットが付加されたことによって消去された稜線e1が直方体の形状データから消去され、さらに、フィレットの元稜線e1を元稜線データ域にフィレットに関連付けられて新たに登録される。
【0032】このようにして、三次元モデルを構成する稜線にフィレットを付加するときに、フィレットを付加したことによって消去されたフィレットの元稜線をそのフィレットに関連付けて別個に保存するようにした。これにより、フィレットを付加したことによってフィレットの元稜線は、三次元表示からは消去されるが、データとしては保存されているので、必要に応じて、そのフィレットの元稜線を画面に表示させて、その元稜線を基準としたパラメトリック機能を利用したり、図面作成時に寸法線を引く基準点の作成に利用することができるようになる。以下、それらの場合の処理について説明する。」

オ.段落0038
「【0038】なお、以上の実施の形態では、稜線に断面円弧の形状を有するフィレットを付加した場合について説明したが、稜角を斜めに直線的に削る面取りについても同様に適用することができる。」

カ.図5
フィーチャデータ域に記憶される直方体の形状データが、形状データ域に6本の面f1?f6、12本の稜線e1?e12として記憶されていること、フィーチャデータ域に記憶されるフィレットの形状データが、形状データ域に1本の面f7、4本の稜線e13?e16として記憶され、フィレットの元稜線データが元稜線データ域に稜線e1として記憶されていることが看取できる。

上記記載を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「3次元モデルに関するデータを入力する入力手段1と、
前記入力手段からの入力データを基に、3次元モデルの面取りを含むフィーチャに係るデータと、該フィーチャを定義する形状データであって、稜線データ、面データを含んで構成される形状データとを生成,編集する形状生成/編集処理手段2,31と、
前記形状生成/編集処理手段において生成,編集されたフィーチャに係るデータと、前記形状データとを相互に関連付けて記憶する三次元データ記憶手段6,34とを備えた三次元モデル作成装置において、
前記形状生成/編集処理手段は、更に、前記入力装置から入力された面取りに関するデータを受け付け、受け付けた面取りデータを、前記三次元データ記憶手段の元稜線データ域に格納された該面取りを付加する角部の元稜線データと相互に関連付けて前記三次元データ記憶手段に格納するように構成されてなる三次元モデル作成装置。」

4.対比・判断
刊行物1発明の「入力手段1」、「三次元データ記憶手段6,34」、「三次元モデル作成装置」は、それぞれ本願発明の「入力装置」、「3次元モデルデータ記憶手段」、「3次元モデルデータ生成装置」に相当する。
刊行物1発明の「面取りを含むフィーチャ」と、本願発明の面取りを含まない「フィーチャ」とは、「フィーチャ」である限りにおいて、一致する。
刊行物1発明の「稜線データ、面データを含んで構成される形状データ」と、本願発明の「3次元空間内の座標値で表される頂点データ、2つの頂点を結んで構成される稜線の方程式データ、前記稜線と前記2つの頂点とを関連付ける稜線データ、稜線により囲まれて形成される面の方程式データ、及び前記面と前記稜線とを関連付ける面データを少なくとも含んで構成される形状データ」とは、「稜線データ、面データを含んで構成される形状データ」である限りにおいて、一致する。
刊行物1発明の「面取りデータを、前記三次元データ記憶手段の元稜線データ域に格納された該面取りを付加する角部の元稜線データと相互に関連付けて前記三次元データ記憶手段に格納する」と、本願発明の「面取りデータを、該面取りを付加する角部又は隅部の前記稜線データであって前記形状データの一部を構成する稜線データと相互に関連付けて前記3次元モデルデータ記憶手段に格納する」とは、「面取りデータを、該面取りを付加する角部の稜線データと相互に関連付けて前記3次元モデルデータ記憶手段に格納する」である限りにおいて、一致する。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「3次元モデルに関するデータを入力する入力装置と、
前記入力装置からの入力データを基に、3次元モデルのフィーチャに係るデータと、該フィーチャを定義する形状データであって、稜線データ、面データを含んで構成される形状データとを生成,編集する形状生成/編集処理手段と、
前記形状生成/編集処理手段において生成,編集されたフィーチャに係るデータと、前記形状データとを相互に関連付けて記憶する3次元モデルデータ記憶手段とを備えた3次元モデルデータ生成装置において、
前記形状生成/編集処理手段は、更に、前記入力装置から入力された面取りに関するデータを受け付け、受け付けた面取りデータを、該面取りを付加する角部の稜線データと相互に関連付けて前記3次元モデルデータ記憶手段に格納するように構成されてなる3次元モデルデータ生成装置。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:フィーチャについて、本願発明は、「面取りを含まない」が、刊行物1発明は、「面取りを含む」。
相違点2:形状データについて、本願発明は、「3次元空間内の座標値で表される頂点データ、2つの頂点を結んで構成される稜線の方程式データ、前記稜線と前記2つの頂点とを関連付ける稜線データ、稜線により囲まれて形成される面の方程式データ、及び前記面と前記稜線とを関連付ける面データを少なくとも含んで構成される形状データ」であるが、刊行物1発明は、「稜線データ、面データを含んで構成される形状データ」である点。
相違点3:面取りデータについて、本願発明は、「面取り角度及び切り込み量、又は曲率半径で定義される」が、刊行物1発明は、不明である点。
相違点4:「面取りデータを、該面取りを付加する角部の稜線データと相互に関連付けて前記3次元モデルデータ記憶手段に格納する」について、本願発明は、「面取りデータを、該面取りを付加する角部又は隅部の前記稜線データであって前記形状データの一部を構成する稜線データと相互に関連付けて前記3次元モデルデータ記憶手段に格納する」ものであるが、刊行物1発明は、「面取りデータを、前記3次元モデルデータ記憶手段の元稜線データ域に格納された該面取りを付加する角部の元稜線データと相互に関連付けて前記3次元モデルデータ記憶手段に格納する」ものである点。

相違点1、3について、一括して検討する。
刊行物1発明と本願発明とでは、両者ともに「面取り」を考慮しているものの、「フィーチャ」として扱うか否かで異なる。
しかし、データの呼称をいかにするかは、適宜選択すべきものであり、作業者のデータ入力・識別の便を考慮して、「フィーチャ」データの一部としてではなく、別に「面取り」データとすることは、適宜なしうる事項にすぎない。
そして、「面取り」データとする、すなわち、面取り形状の特定にあたり、「面取り角度及び切り込み量、又は曲率半径」は、一般的なものにすぎない。
よって、相違点1、3に係る事項は、必要に応じて適宜なしうる設計的事項にすぎない。

相違点2について、検討する。
刊行物1発明も、形状データをもとに、3次元モデルを生成し表示するものであるから、形状を特定するための種々のデータが必要であることは明らかである。
そして、形状を特定するためのデータとして、「3次元空間内の座標値で表される頂点データ、2つの頂点を結んで構成される稜線の方程式データ、前記稜線と前記2つの頂点とを関連付ける稜線データ、稜線により囲まれて形成される面の方程式データ、及び前記面と前記稜線とを関連付ける面データ」は、格別なものではない。
よって、相違点2に係る事項は、必要に応じて適宜なしうる設計的事項にすぎない。

相違点4について、検討する。
「面取りを付加する角部」と関連付けられる「(元)稜線データ」の格納領域が、刊行物1発明と本願発明とでは、「3次元モデルデータ記憶手段」内ではあるものの、領域が異なっている。
しかし、データをどこに格納するかは、そもそも設計的事項の範疇である。
また、刊行物1発明は、「元稜線データ」として格納するための「元稜線データ域」を設けている。よって、設計の効率化の観点から、「元稜線データ域」を設けることなく、形状データの一部として格納することは、適宜なしうる設計的事項にすぎない。
よって、相違点4に係る事項は、適宜なしうる設計的事項にすぎない。

請求人は、平成20年7月25日の意見書において、「刊行物1のように、面取り部について形状データ(フィレット面f7及びこれを構成する稜線e13?e16)を生成したのでは、形状データ全体のデータ量が多くなって、データの転送時間が長くなったり、その格納に大容量の格納領域を要するといった不都合を生じますが、本願請求項1に係る発明のように、面取りデータと、面取りが付加される角部又は隅部の稜線データ(稜線データE1)とを関連付けることで、形状データ全体のデータ量を格段に減少させることができ、データの転送に長時間を要したり、その格納に大容量の格納領域を要するといった不都合が生じるのを防止することができます」と、主張する。
しかし、本願発明が、「フィレット面f7及びこれを構成する稜線e13?e16を生成しない」ものであることは、請求項1の記載上、明確ではないから、請求人の主張は根拠がない。
仮に、明確であったとしても、「元稜線データ」と「面取りデータ」により、「フィレット面f7及びこれを構成する稜線e13?e16」のデータがなくとも、加工後の形状の特定が可能であることは、明らかであるから、必要のないデータの作成、送信を行わないとすることに困難性は認められない。
よって、請求人の主張は採用できない。

また、各相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

5.むすび
本願発明は、刊行物1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-03 
結審通知日 2008-09-09 
審決日 2008-09-29 
出願番号 特願2001-374700(P2001-374700)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 所村 美和  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 尾家 英樹
菅澤 洋二
発明の名称 3次元モデルデータ生成装置、及びこれを備えた自動プログラミング装置  
代理人 村上 智司  

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