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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1188601
審判番号 不服2006-10953  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-29 
確定日 2008-11-26 
事件の表示 特願2000-600513「食事組成物及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年8月31日国際公開、WO00/49896、平成14年11月5日国内公表、特表2002-536988〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2000年2月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1999年2月24日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成17年7月27日付けの拒絶理由通知に対して、平成18年2月2日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、同年2月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月28日付けで手続補正書が提出され、平成19年3月19日付けの審尋に対して、同年9月20日に回答書が提出されたものである。

2.平成18年6月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成18年6月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成18年6月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1である、
「哺乳類用食物基材と、食事組成物を哺乳類に規則的に投与した時、不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出若しくは卵巣子宮摘出、または閉経後に伴い哺乳類のタイプが普通にこうむる体重増加を減少させるのに充分な量のエストロゲン、アンドロゲン若しくはこれらの混合物からなる成分と、カルニチン、イヌリン、共役リノレン酸、及び果糖オリゴ糖からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とを含んでいる食事組成物。」を、
「哺乳類用食物基材と、食事組成物を哺乳類に規則的に投与した時、不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出若しくは卵巣子宮摘出、または閉経後に伴い哺乳類のタイプが普通にこうむる体重増加を減少させるのに充分な量である哺乳類の体重1kg当たり0.001から100mgの量のエストロゲン、アンドロゲン若しくはこれらの混合物からなる成分と、カルニチン、イヌリン、及び共役リノレン酸と果糖オリゴ糖との混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とを含んでいる食事組成物。」に、
同請求項9である、
「不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出若しくは卵巣子宮摘出、または閉経後に伴い哺乳類のタイプが普通にこうむる体重増加を減少させるための方法において、哺乳類用食物基材と、食事組成物を哺乳類に規則的に投与した時、不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出若しくは卵巣子宮摘出、または閉経後に伴い哺乳類のタイプが普通にこうむる体重増加を減少させるのに充分な量のエストロゲン、アンドロゲン若しくはこれらの混合物からなる成分と、カルニチン、イヌリン、共役リノレン酸、及び果糖オリゴ糖からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とを含んでいる食事組成物を、哺乳類に対して規則的に投与することを特徴とする方法。」を、
「不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出若しくは卵巣子宮摘出、または閉経後に伴い、犬、猫及び馬からなる群より選ばれる哺乳類のタイプが普通にこうむる体重増加を減少させるための方法において、哺乳類用食物基材と、食事組成物を該哺乳類に規則的に投与した時、不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出若しくは卵巣子宮摘出、または閉経後に伴い該哺乳類のタイプが普通にこうむる体重増加を減少させるのに充分な量である該哺乳類の体重1kg当たり0.001から100mgの量のエストロゲン、アンドロゲン若しくはこれらの混合物からなる成分と、カルニチン、イヌリン、及び共役リノレン酸と果糖オリゴ糖との混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とを含んでいる食事組成物を、該哺乳類に対して規則的に投与することを特徴とする方法。」に、それぞれ補正することを含むものである。

(2)補正の適否について
(2-1)新規事項の有無及び補正の目的についての検討
上記請求項1及び9に係る補正は、「充分な量」を「哺乳類の体重1kg当たり0.001から100mgの量」、及び「共役リノレン酸、及び果糖オリゴ糖」を「及び共役リノレン酸と果糖オリゴ糖との混合物」とするものであり、更に、請求項9に係る補正は、「哺乳類のタイプ」を「犬、猫及び馬からなる群より選ばれる哺乳類のタイプ」とするものであって、該補正は、願書に最初に添付した明細書の記載からみて新規事項を追加するものではなく、平成14年改正前特許法第17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、該補正は、発明特定事項の限定であって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、同条第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2-2)独立特許要件の検討
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-2-1)刊行物の記載事項
原査定で引用された引用文献2である
「特開平10-87486号公報」(以下、「刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。
(a)「【請求項1】脂肪細胞における脂肪分解を促進するために有効な量のイソフラボン類を含有させたことを特徴とする脂肪細胞における脂肪分解促進用組成物。
【請求項2】イソフラボン類が、ダイゼイン,ダイジン,ジェニステインおよびジェニスチンのうちの少なくとも1種である請求項1記載の組成物。
【請求項5】組成物が、家畜用飼料であり、イソフラボン類を5?1000mg/ml(g)含む請求項1記載の組成物。」(特許請求の範囲の項)、
(b)「本発明の脂肪分解促進用組成物は、脂肪を分解して痩身効果を奏する作用があることから、医薬品、化粧品、機能性食品などの分野での利用が考えられ、例えば経皮投与(皮膚に塗布)、経口投与、静脈注射などの様々な態様で用いたり、食品に添加するなどの利用が考えられる。さらに、家畜などに摂取させて脂肪を分解させ、低脂肪肉を生産させる効果があることから、この組成物を飼料に添加して用いることができる。」(段落【0008】)及び、「実施例5」として、
(c)「マウス腹腔内にダイゼインを投与(67mg/kg体重)し、24時間後の血清中のグリセロール量を測定した。この間、自由飲水、絶食とした。なお、ダイゼインはレシチン(5mg/ml)溶液に懸濁したものを投与した。結果を表1に示す。表から明らかなように、ダイゼイン投与群のグリセロール量は対照群と比較して有意に上昇した。このことから、ダイゼインは生体内においても培養細胞におけるのと同様に脂肪分解を促進させることが示された。」(段落【0015】)が記載されている。

(2-2-2)刊行物に記載された発明
摘示(b)によると、「本発明の脂肪分解促進用組成物は、脂肪を分解して痩身効果を奏する作用」があり、また、「食品に添加するなどの利用が考えられる。」との記載によると、当然に哺乳類用食用基材に添加することを前提としているから、これらを踏まえ、摘示(a)をみると、刊行物には、
「哺乳類用食用基材と痩身効果を奏するために有効な量のイソフラボン類とを含有させたことを特徴とする痩身用食品組成物。」(以下、「引用発明」という。)という発明が記載されていると認定することができる。

(2-2-3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
後者の「イソフラボン類」は、前者の「エストロゲン」に相当し(本件請求項8参照)、摘示(b)の「本発明の脂肪分解促進用組成物は、脂肪を分解して痩身効果を奏する作用がある」との記載からみて、後者の痩身とは体内の脂肪を分解することに起因するものであり、分解した脂肪相当分の体重が減少することになり、少なくとも体重増加を減少させることになるから、両者は、
「哺乳類用食物基材と、食事組成物を哺乳類に規則的に投与した時、体重増加を減少させるのに充分な量のエストロゲン成分を含んでいる食事組成物」で一致し、次の点で相違する。

(ア)体重増加を減少させるのに充分な量が、前者では「不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出若しくは卵巣子宮摘出、または閉経後に伴い哺乳類のタイプが普通にこうむる体重増加を減少させるのに充分な量である哺乳類の体重1kg当たり0.001から100mgの量」であるのに対し、後者ではそのような特定がない点、及び、
(イ)エストロゲン成分の他に、前者では「カルニチン、イヌリン、及び共役リノレン酸と果糖オリゴ糖との混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分」と配合するのに対し、後者ではそれが明らかでない点

(2-2-4)相違点についての判断
(2-2-4-1)相違点(ア)について
本願補正発明に係る「不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出若しくは卵巣子宮摘出、または閉経後に伴い哺乳類のタイプが普通にこうむる体重増加を減少させるのに充分な量である哺乳類の体重1kg当たり0.001から100mgの量」は、「食事組成物」に含有される「エストロゲン成分」の量を特定するものではなく、単に、体重増加を減少させるのに充分な量がどれくらいかを数値で規定したものにすぎない。しかるに、その充分な量は、引用発明に基づいて当業者が普通に実験を行い適宜決定し得ることであって、格別なことではない。また、刊行物1の摘示(c)には、「マウス腹腔内にダイゼインを投与(67mg/kg体重)」との記載があり、この記載に照らしても、上記数値は、格別特異なものであるとはいえない。
(2-2-4-2)相違点(イ)について
カルニチンやイヌリンを食品に添加すること、しかも、これらには、体重増加を減少させる作用があることは、当技術分野では周知に属する事項であるから(例えば、拒絶査定で周知例として例示した「特開平7-196485号公報」には、カルニチンが肥満の治療に用いられること(段落【0043】)、同「特開平3-259070号公報」には、カルニチンが体内の脂肪をエネルギー源として利用しシェイプアップ効果があること(1頁左下欄15行?右下欄4行)、及び同「特開平7-51083号公報」には、イヌリンがダイエット品の成分として利用されること(請求項7)がそれぞれ記載されている。)、体重増加の減少を更に高めるために、引用発明のエストロゲン成分に加えてカルニチンやイヌリンを配合することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
(2-2-4-3)本願補正発明の効果について
引用発明は、食事組成物に哺乳類用食用基材と痩身効果を奏するために有効な量の植物エストロゲンであるイソフラボン類とを含有させたものであり、また、カルニチンやイヌリンを食品に添加すること、及び、これらの化合物に体重増加を減少させる作用があることは、当技術分野では周知事項である。したがって、体重増加を減少させる作用があるイソフラボン類とカルニチン又はイヌリンとの両方を含有する食事組成物が不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出若しくは卵巣子宮摘出を行った哺乳類又は閉経後の哺乳類に対しても体重増加を減少させる作用効果を有するであろうことは当業者であれば予測可能なことであり、これら特定の哺乳類にのみ特異な効果を有するという特段の事情も見あたらない。
そして、本願明細書には、実施例として、「実施例1」乃至「実施例4」が記載されているが、そこには、適用対象や結果について具体的に記載されるところがない。すなわち、例えば、「実施例2」には、「サプリメントは、不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出または卵巣子宮摘出に伴い犬及び猫が典型的にこうむる体重増加を減少させるために投与された。」との記載があるものの、不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出或いは卵巣子宮摘出のどれに該当する犬或いは猫に投与したのか、そして体重増加の減少はどの程度であったのか、具体的に記載されているところはない。また、エストロゲン、アンドロゲン若しくはこれらの混合物からなる成分を単独で試験した場合に、体重増加の減少はどの程度であったのか、及び、カルニチン、イヌリン、共役リノレン酸、及び果糖オリゴ糖からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を単独で試験した場合に、体重増加の減少はどの程度であったのかという比較試験結果も具体的に記載されているところはない。他の実施例についても同様である。また、食事組成物に哺乳類の単位体重当たり、本願補正発明の特定の量のエストロゲン、アンドロゲン若しくはこれらの混合物からなる成分を含有させた場合についても比較試験結果が示されておらず、その効果が不明である。
そうすると、本願補正発明の効果は、本願明細書の記載から客観的に確認することができないので、本願補正発明に係る効果が格別なものであるということはできない。

(2-2-5)まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物に記載された発明、及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成18年6月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成18年2月2日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、下記のとおりである。

「哺乳類用食物基材と、食事組成物を哺乳類に規則的に投与した時、不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出若しくは卵巣子宮摘出、または閉経後に伴い哺乳類のタイプが普通にこうむる体重増加を減少させるのに充分な量のエストロゲン、アンドロゲン若しくはこれらの混合物からなる成分と、カルニチン、イヌリン、共役リノレン酸、及び果糖オリゴ糖からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分とを含んでいる食事組成物。」

(2)原査定の理由3及び引用文献の記載事項
拒絶査定における拒絶の理由(平成17年7月27日付けの「理由3」)の概要は、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができるものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、拒絶の理由で引用された刊行物である「特開平10-87486号公報」は、上記引用文献2であるから、その記載事項及びそれに記載された発明は上記の(2-2-1)及び(2-2-2)に記載されたとおりである。

(3)対比
本願発明は、本願補正発明において「哺乳類の体重1kg当たり0.001から100mgの量」という事項がないものに実質的に相当するから、本願発明と引用発明との相違点は、
(ア’)体重増加を減少させるのに充分な量が、前者では「不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出若しくは卵巣子宮摘出、または閉経後に伴い哺乳類のタイプが普通にこうむる体重増加を減少させるのに充分な量」であるのに対し、後者ではそのような特定がない点、及び、
(イ)エストロゲン成分の他に、前者では「カルニチン、イヌリン、及び共役リノレン酸と果糖オリゴ糖との混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分」と配合するのに対し、後者ではそれが明らかでない点

(4)判断
相違点(ア’)について検討するに、本願発明に係る「不妊手術、去勢、卵巣切除、卵巣摘出若しくは卵巣子宮摘出、または閉経後に伴い哺乳類のタイプが普通にこうむる体重増加を減少させるのに充分な量」は、引用発明に基づいて当業者が普通に実験を行い適宜決定し得ることであって、それに格別な困難性は要するとはいえない。
相違点(イ)は、上記(2-2-4-2)において示した理由と同じ理由で引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得ることである。
また、本願発明の効果についても、上記(2-2-4-3)に示したとおり、格別なものであるということはできない。
そうすると、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできないので、本願は、その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-25 
結審通知日 2008-07-01 
審決日 2008-07-15 
出願番号 特願2000-600513(P2000-600513)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
P 1 8・ 575- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伏見 邦彦▲高▼ 美葉子  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 鈴木 紀子
安藤 達也
発明の名称 食事組成物及び方法  
代理人 西川 繁明  
代理人 西川 繁明  

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