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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1188605
審判番号 不服2006-15905  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-24 
確定日 2008-11-26 
事件の表示 特願2002-294096「高密度記録用ハイブリッド記録及び再生ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月17日出願公開、特開2003-296902〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成14年10月7日の出願(パリ条約による優先権主張2002年3月30日、韓国)であって、平成18年4月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年7月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされた後、平成18年9月27日付けで前置審査の拒絶理由が通知され、これに対し、平成19年1月4日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年1月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】 スライダーの背面にデータ記録及び再生のための部材を備えるハイブリッド記録及び再生ヘッドにおいて、
前記記録及び再生のための部材は、
前記記録媒体のデータが記録される領域を加熱するためのエネルギーを供給するエネルギー供給源と、
前記エネルギー供給源から供給されるエネルギーにより加熱される前記領域にデータを記録するための磁気場を印加する磁気場印加手段と、
前記記録媒体からデータを再生するためのデータ再生手段とを備え、
前記磁気場印加手段が、
前記エネルギー供給源から供給されるエネルギーを前記領域に伝達することができるように備えられたチャンネルと、
前記チャンネルを取り囲み、前記チャンネルからその周りに熱が伝達されることを防止する熱伝達防止部材と、
前記熱伝達防止部材を取り囲む軟磁性体からなるデータ記録用ポールと、
前記データ記録用ポールに磁気場を発生させる磁気場発生手段とで構成され、
前記チャンネルは、エネルギーを伝送する導波層とこれより放出されるエネルギーを前記導波層内に反射させる反射層とを有し、
前記導波層はエネルギー放出端からエネルギー供給源に行く程その断面積が次第に広まる形態であり、
前記反射層は導波層よりも高屈折率の材料からなる多層で構成された物質層であることを特徴とするハイブリッド記録及び再生ヘッド。」

3 前置審査の拒絶の理由
前置審査における拒絶の理由の概要は、明細書の記載が不備であるから、本願発明は、特許法第36条第4項及び第6項2号に規定する要件を満たしていないというものであって、下記の事項(ア)(イ)を指摘している。(なお、記号(ア)等は当審で付与したものである。)

「(ア)請求項1において、「前記反射層は導波層よりも高屈折率の材料からなると共に多層で構成された物質層である」との記載があるが、「多層で構成された物質層」とはどのようなものか、個々の屈折率はどのようになっているのか等が請求項1に記載されていない点で、発明が不明確である。
(イ)発明の詳細な説明において、以下の点が不明である。
(イ1)段落0032に「反射層208bは導波層208aより屈折率が高い物質層で構成されたことが望ましい。」(以下「記載(イ1)」という。)との記載があるが、その理由が不明である。
(イ2)段落0032に「反射層208bは屈折率が相異なる多層で構成されることができる。」(以下「記載(イ2)」という。)との記載があるが、具体的に各層がどの程度の屈折率であるか(例えば、各層どうしの比較において屈折率の大小関係はどのようになっているのか、導波層との比較において個々の層の屈折率の大小関係はどのようになっているのか、等)が不明である。また、そのような屈折率に設定することにどのような利点があるのか不明である。」

4 当審の判断
(ア)について
請求項1は、平成19年1月4日付け手続補正書により補正され、上記3(ア)で指摘された「前記反射層は導波層よりも高屈折率の材料からなると共に多層で構成された物質層である」の記載は、「前記反射層は導波層よりも高屈折率の材料からなる多層で構成された物質層である」(以下「特定事項ア」という。)と補正されたので、これについて以下検討する。
「多層で構成された物質層」における個々の層の屈折率がどのようになっていることにより、反射層として機能するのか、当業者には、その技術的意味が不明である。そして、出願時の技術常識や明細書の記載を考慮しても、上記のように反射層を構成する層を特定する技術的意味が不明である。

(イ)について
(イ1)について
段落0032の記載(イ1)について、請求人は、「同じ段落に記載されておりますように、反射層208bにおいて電磁波を全反射させるためです。」と主張している。
しかしながら、入射側の屈折率の方が大のとき、入射角を大きくしていくとある角度以上では全反射の現象が起こること(スネルの法則)が知られており、屈折率の大小の関係が逆である本願発明の構成に基づいた請求人の主張は採用できない。よって、本願発明の特定事項アの技術的意味に関連した明細書の記載である、「反射層208bは導波層208aより屈折率が高い物質層で構成されたことが望ましい」という記載は、当業者にとって技術的に理解できないものである。
(イ2)について
段落0032の記載(イ2)について、請求人は、「多層で構成される反射層208bの各層の屈折率が、導波層208aから離れる程、高くなることにより、全反射特性を高めることができることを示唆します。このとき、多層で構成される反射層208bの各層は、段落0032に記載されているように、「導波層208aより屈折率が高い物質層で構成」されています。なお、全反射特性を高めるために各層の屈折率を上記のように設定することは、当業者にとって困難なことではありません。」と主張している。
しかしながら、請求人の主張する「反射層の各層の屈折率が、導波層から離れる程、高くなることにより、全反射特性を高めることができる」ことは、明細書に記載されておらず、自明の事項でもないので、請求人の主張は採用できない。しかも、上記「(イ1)について」で述べたように、スネルの法則に反する主張であって、当業者には技術的に理解しがたいものである。請求人が主張するように、反射層の各層の屈折率の高い物質層に特別の構成を工夫して、全反射特性を高めるものであるとすれば、そのための特別の構成及びその技術的根拠を明細書に記載して意見書において説明すべきところ、当該記載はなく、当業者には技術的に理解できないものであるから、発明の詳細な説明の項には本願発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないといえる。また、出願時の技術常識を考慮しても、全反射特性を高めるための導波層及び反射層の各層の構成について、発明の詳細な説明には、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

よって、上記「(ア)について」及び「(イ)について」のとおり、本願発明は、特許を受けようとする発明が明確でなく、また、発明の詳細な説明には当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

なお、特定事項アの「前記反射層は導波層よりも高屈折率の材料からなる多層で構成された物質層である」について、当審が請求人に問い合わせたところ、請求人は、「高屈折率」は誤記であったので、補正の機会を求めている。
しかしながら、請求人は、審判請求時の補正の機会及び前置審査に対する補正の機会において、「高屈折率」に関して補正を行わなかったものであり、本願発明は、上述のとおり前置審査の拒絶の理由により拒絶すべきものであって、適法に補正する機会がないものである。
また、請求人は、反射層の構成を特定事項Aのように特定することにより、原審で示された引用例との差異を主張するものであり、かつ、前置審査の拒絶の理由における指摘に対しても、意見書で「高屈折率」であることを本願発明の特徴として主張していたものであって、これから「高屈折率」の記載が誤記であるとして何らかの補正をしようとしても、当初明細書には反射層の屈折率に関して「高屈折率」以外の記載がないのであるから、適法な補正をすることができないものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第36条第4項及び第6項2号に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-19 
結審通知日 2008-06-24 
審決日 2008-07-16 
出願番号 特願2002-294096(P2002-294096)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (G11B)
P 1 8・ 537- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富澤 哲生  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 小松 正
溝本 安展
発明の名称 高密度記録用ハイブリッド記録及び再生ヘッド  
代理人 伊東 忠彦  
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