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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B62D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D |
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管理番号 | 1188745 |
審判番号 | 不服2006-23200 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-12 |
確定日 | 2008-12-05 |
事件の表示 | 特願2000-402749号「ステアリング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月16日出願公開、特開2002-200984号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願は、平成12年12月28日の出願であって、平成18年8月17日に拒絶査定がされ、これに対し、同年10月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年11月10日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成18年11月10日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年11月10日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 平成18年11月10日付けの手続補正は、特許請求の範囲について、 「【請求項1】変速機の操作用チェンジレバーを支持する支持部材が、ステアリングシャフトを囲む円筒状コラムと同一材料から一体的に成形されているステアリング装置であって、 本体と、この本体に対してステアリングシャフトの回転のロック位置とロック解除位置との間で変位するロック部材とを有するロック装置を備え、 前記支持部材に、そのロック装置の本体が固定され、その本体と支持部材とはコラムの径方向から視て重なる位置に配置され、 前記本体の外面一部は、前記支持部材に固定された状態で前記コラムの外周面に沿う円弧状の凹曲面と、その凹曲面の両端から前記コラムの径方向外方に向かって延びる接合面とを有し、 前記凹曲面に覆われていない前記コラムにおける外周の残りの円弧状の曲面に前記支持部材が一体化され、 前記支持部材に前記本体の接合面に接する第2の接合面が形成され、前記本体の接合面と前記支持部材の第2の接合面とが接することで、前記支持部材と前記本体は前記コラムの径方向において互いに反対側に配置された状態で接合されていることを特徴とするステアリング装置。 【請求項2】その支持部材とコラムとは、アルミ材から一体的に鋳造されている請求項1に記載のステアリング装置。 【請求項3】そのコラムの一端に、その一端が圧入される筒状の第2コラムを備え、両コラムの軸方向相対移動により衝撃を吸収可能な請求項1または2に記載のステアリング装置。」 との記載を、 「【請求項1】変速機の操作用チェンジレバーを支持する支持部材が、ステアリングシャフトを囲む円筒状コラムと同一材料から一体的に成形されているステアリング装置であって、 本体と、この本体に対してステアリングシャフトの回転のロック位置とロック解除位置との間で変位するロック部材とを有するロック装置を備え、 前記支持部材に、そのロック装置の本体が固定され、その本体と支持部材とはコラムの径方向から視て重なる位置に配置され、 前記本体の外面一部は、前記支持部材に固定された状態で前記コラムの外周面に沿う円弧状の凹曲面と、その凹曲面の両端から前記コラムの径方向外方に向かって延びる接合面とを有し、 前記凹曲面に覆われていない前記コラムにおける外周の残りの円弧状の曲面に前記支持部材が一体化され、 前記支持部材に前記本体の接合面に接する第2の接合面が形成され、前記本体の接合面と前記支持部材の第2の接合面とが接することで、前記支持部材と前記本体は前記コラムの径方向において互いに反対側に配置された状態で接合され、 前記第2の接合面は、前記コラムの外周から前記コラムの径方向外方に向かって前記本体の接合面に沿って延びるものとされ、 前記本体における前記凹曲面と前記接合面との境界と、前記コラムの外周と前記第2の接合面との境界とが、前記コラムの外周において相隣接することを特徴とするステアリング装置。 【請求項2】その支持部材とコラムとは、アルミ材から一体的に鋳造されている請求項1に記載のステアリング装置。 【請求項3】そのコラムの一端に、その一端が圧入される筒状の第2コラムを備え、両コラムの軸方向相対移動により衝撃を吸収可能な請求項1または2に記載のステアリング装置。」と補正するものである。 本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「本体の接合面と支持部材の第2の接合面」について、「前記第2の接合面は、前記コラムの外周から前記コラムの径方向外方に向かって前記本体の接合面に沿って延びるものとされ、前記本体における前記凹曲面と前記接合面との境界と、前記コラムの外周と前記第2の接合面との境界とが、前記コラムの外周において相隣接すること」との限定を付加するものであって、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものいえる。次ぎに、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例及び引用発明 1)原査定の拒絶理由で引用された、本件出願前に頒布された刊行物である特開2000-264226号公報(以下「第1引用例」という。)には、車両に装備されるコラムシフト装置の取付構造に関し、図1?5とともに以下の事項が記載されている。 (イ)「【0009】上記ステアリングコラム1の上部周辺であって、アッパブラケット2よりもステアリングシャフト3側の位置には、図1および図2に示す如く、車両に搭載した自動変速機をパーキング状態、リバース状態、ニュートラル状態、ドライブ状態等に切り換えるコラムシフト装置4と、図示しないイグニッションスイッチに取付けられ、キーを差し込んで回すことによって施解錠を行うキーシリンダ5とが設けられている。 【0010】上記コラムシフト装置4は、セレクトレバー6を各セレクト位置に回動自在に支持するセレクタユニット7を備えており、同セレクトレバー6の前端部にはシフトケーブル8の一端が取付けられ、このシフトケーブル8はセレクトレバー6の回動に伴って車両前後方向へ移動するようになっている。しかも、本実施形態のセレクタユニット7は、図1?図3に示す如く、ステアリングコラム1を間に挟んでキーシリンダ5(図中右側)と対向する同一の位置(図中左側の横位置)に配設されている。このため、セレクタユニット7は、車幅方向へ延びる平面長方形状のユニット本体7aを有し、該ユニット本体7aの内側にはキーシリンダ5への取付部9が形成されている。 【0011】そして、上記ユニット本体7aの取付部9の上下端には、上下方向へ延びるボルト締付用座面部9aがそれぞれ一体的に設けられており、これら座面部9aには、締付ボルト10を挿入する差込孔11が穿設されている。このような座面部9としては、弾力性を有する板状に形成することが好ましく、ボルト締めすることによりステアリングコラム1に対して挟持性能が向上する構造となっている。また、取付部9のキーシリンダ対向面(内壁面)には、図2および図3に示す如く、コラム挟持用の円弧状座面12がステアリングコラム1の外周面と対応する大きさで形成されている。 【0012】一方、上記キーシリンダ5は、従来例と同一部品のままで、何の変更を加えずに使用され、従来と同一位置に取付けられている。しかも、キーシリンダ5の取付基部5aのセレクタユニット対向面(内壁面)には、コラム挟持用の円弧状座面13がステアリングコラム1の外周面と対応する大きさで形成されている。なお、キーシリンダ5の取付基部5aには、従来と同様、締付ボルト10を螺入する図示しないボルト孔が穿設されている。 したがって、上記セレクタユニット7と上記キーシリンダ5とは、ステアリングコラム1を間に挟み込んだ状態で、締付ボルト10にてユニット本体7aの取付部9の座面部9aを締付けることにより共締めされ、互いに連結されるように構成されている。 【0013】本発明の実施形態の取付構造によって、コラムシフト装置4を取付けるには、まず、ステアリングシャフト3側に位置するステアリングコラム1の上部を間に挟んでキーシリンダ5を車幅方向の右側に配置するとともに、セレクタユニット7を車幅方向の左側であるキーシリンダ5の横に対向して配置し、両者の円弧状座面12,13をステアリングコラム1の外周面に当接させる。この状態で、ユニット本体7aの取付部9の差込孔11より締付ボルト10を挿入し、キーシリンダ5側のボルト孔(図示せず)に螺入させて座面部9aを締付けると、セレクタユニット7とキーシリンダ5とが互いに連結されて固定され、コラムシフト装置4は取付けられることになる(図1および図2参照)。」 (ロ)「【0016】 【発明の効果】上述の如く、本発明に係るコラムシフト装置の取付構造は、ステアリングコラムの上部周辺に設けられ、変速機のセレクトレバーを回動自在に支持するセレクタユニットを備えたものであって、前記セレクタユニットを、前記ステアリングコラムを間に挟んでキーシリンダと対向する位置に配設しているので、セレクタユニットの配置スペースをステアリングコラムの軸方向で最小限に設定でき、ステアリングコラムのアッパブラケットを従来に比べてステアリングホイール側に位置させることが可能となり、振動および衝撃吸収特性の向上を図ることができる。また、本発明の取付構造では、セレクタユニットとキーシリンダとの共締めによって、これら部材を最小限の部品で確実に固定することが可能になるので、部品点数および組付工数を削減でき、コストダウンおよび組付作業性の向上を図ることができる。」 上記記載事項(イ)及び図2からみて、「ステアリングコラム1」は「円筒状」であることは明らかである。また、「キーシリンダ5の取付基部5aには、従来と同様、締付ボルト10を螺入する図示しないボルト孔が穿設されている。・・・セレクタユニット7と上記キーシリンダ5とは、ステアリングコラム1を間に挟み込んだ状態で、締付ボルト10にてユニット本体7aの取付部9の座面部9aを締付けることにより共締めされ、互いに連結されるように構成されている。」ところから、「キーシリンダ5の取付基部5a」には「ユニット本体7aの取付部9の座面部9a」に共締めされて連結される「取付基部5aの接合面」を有している。 また、「コラムシフト装置の取付構造」とはステアリングシャフトの上端にステアリングホイールを有する「ステアリング装置」に自動変速機のコラムシフト装置を取り付けるものであるから、「コラムシフト装置を取付けたステアリング装置」が記載されているといえる。 してみれば、上記の記載事項(イ)、(ロ)及び図1、2に示された内容を総合すると、上記引用例には、 「車両に搭載した自動変速機のセレクトレバー6を支持するセレクタユニット7が、ステアリングシャフト3を囲む円筒状ステアリングコラム1と当接しているコラムシフト装置を取付けたステアリング装置であって、 キーを差し込んで回すことによって施解錠を行うキーシリンダ5を備え、 セレクタユニット7に、キーシリンダ5の取付基部5aが共締め連結され、セレクタユニット7は、ステアリングコラム1を間に挟んでキーシリンダ5の取付基部5aと対向する同一の位置に配設され、 キーシリンダ5の取付基部5aのセレクタユニット対向面(内壁面)には、セレクタユニット7に共締めされた状態でステアリングコラム1の外周面と対応するコラム挟持用円弧状座面13と、その円弧状座面13の両端からステアリングコラム1外方に向かって上下方向に延びる取付基部5aの接合面とを有し、 前記セレクタユニット7に前記取付基部5aの接合面に共締めする座面部9aが設けられ、取付基部5aの接合面とセレクタユニット7の座面部9aとが共締めすることで、キーシリンダ5を車幅方向の右側に配置するとともに、セレクタユニット7を車幅方向の左側であるキーシリンダ5の横に対向して配置された状態で共締めされ、 座面部9aは、円弧状座面12から取付基部5aの接合面に沿って上下方向に延びるものとされ、 円弧状座面12,13をステアリングコラム1の外周面に当接させた状態で座面部9aを締付け、取付基部5aの円弧状座面13と取付基部5aの接合面との境界と、円弧状座面12と座面部9aとの境界とが、ステアリングコラム1の外周面近傍に位置する、コラムシフト装置を取付けたステアリング装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 2)同じく、原査定の拒絶理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-117514号公報(以下「第2引用例」という。)には、次の(ハ)?(ホ)の事項が記載されている。 (ハ)「【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、シフトレバー機構に関し、特にアッパーコラムハウジングに一体に成形されたハウジングを有するシフトレバー機構に関するものである。」 (ニ)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし上述の従来例の場合では、シフトレバー機構のハウジングが、ステアリングアッパーコラムハウジングとは別個の部品であり、ステアリングアッパーハウジングにボルト等により固定されているので、シフトレバー機構をステアリングアッパーコラムに付設することにより、全体の形状が大きくなり、かつ製造工程が煩雑で組み立て誤差が生じ、コストアップになるという欠点があった。したがって、本発明の課題は、上述の従来例の欠点をなくし、全体の形状が小型精密になり、かつ製造工程が簡単でコストダウンになるシフトレバー機構を提供することである。」 (ホ)「【0006】 【実施例】 ・・・図1?図3において、合成樹脂製ステアリングアッパーコラムハウジング10は一体に成形されたシフトレバーハウジング部分13を有している。また、ステアリングアッパーコラムハウジング10には、一対のチルド回転中心軸用孔11及び軸受12が形成されている。 」 上記の記載事項(ハ)?(ホ)及び図1には「ステアリングアッパーコラムハウジング10とシフトレバーハウジング部分13とを同一材料から一体的に成形」する事項や「ステアリングアッパーコラムハウジング10の外周にシフトレバーハウジング部分13が一体化されている」事項が記載されており、この「ステアリングアッパーコラムハウジング10」は本願補正発明の「コラム」に、同様に、「シフトレバーハウジング部分13」は「支持部材」に対応しているから、第2引用例には「コラムと支持部材とを同一材料から一体的に成形」する事項や「コラムの外周に支持部材が一体化されている事項が記載されているものと認められる。 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、両者は共に、ステアリング装置のステアリングコラムに自動変速機の操作用チェンジレバーとロック装置を取付ける構造に関する発明であって、引用発明の「コラムシフト装置を取付けたステアリング装置」、「車両に搭載した自動変速機」、「セレクトレバー6」、「セレクタユニット7」、「ステアリングシャフト3」、「ステアリングコラム1」、「キーシリンダ5の取付基部5a」、「キーシリンダ5」、「共締め」、「取付基部5aの接合面」、「座面部9a」は、それぞれ本願補正発明の「ステアリング装置」、「変速機」、「操作用チェンジレバー」、「支持部材」、「ステアリングシャフト」、「コラム」、「本体」「ロック装置」、「固定」、「接続面」、「第2の接続面」に相当する。 引用発明の「キーを差し込んで回すことによって施解錠を行うキーシリンダ5」は、ステアリングシャフトの回転をロック部材が取付基部5aに対してロック位置とロック解除位置との間で変位して施解錠を行うものといえるから、本願補正発明の「本体に対してステアリングシャフトの回転のロック位置とロック解除位置との間で変位するロック部材とを有するロック装置」に相当しているといえる。 引用発明の「セレクタユニット7は、ステアリングコラム1を間に挟んでキーシリンダ5の取付基部5aと対向する同一の位置に配設」は、本願補正発明の「本体と支持部材とはコラムの径方向から視て重なる位置に配置」に、引用発明の「(キーシリンダ5の)円弧状座面13」は、本願補正発明の「円弧状の凹曲面」に相当し、引用発明の「(セクレタユニット7の)円弧状座面12」はセレクタユニット7側の円弧状の曲面であるが、ステアリングコラム1と挟んでキーシリンダ5の取付基部5aと共締めされて一体に結合されるものであるから、ステアリングコラム1の外周の円弧状の曲面と同一と見なすことができるので、本願補正発明の「凹曲面に覆われていないコラムにおける外周の残りの円弧状の曲面」に対応するものといえる。 引用発明の「キーシリンダ5の取付基部5aのセレクタユニット対向面(内壁面)には、セレクタユニット7に共締めされた状態でステアリングコラム1の外周面と対応するコラム挟持用円弧状座面13と、その円弧状座面13の両端からステアリングコラム1外方に延びる取付基部5aの接合面とを有し」は、本願補正発明の「本体の外面一部は支持部材に固定された状態でコラムの外周面に沿う円弧状の凹曲面と、その凹曲面の両端から延びる接合面とを有し」に対応し、引用発明の「円弧状座面12をステアリングコラム1の外周面に当接させた」は、本願補正発明の「凹曲面に覆われていないコラムにおける外周の残りの円弧状の曲面に支持部材が一体化され」に対応し、「当接させ」と「一体化され」は共に「固定させる」ことにおいて共通する。 また、引用発明の「上下方向」は、コラムの外方の上下方向であり、本願補正発明の「径方向外方」とは「コラムの外方」という点で共通する。 そうすると、本願補正発明と、引用発明とは、次の点で一致する。 「変速機の操作用チェンジレバーを支持する支持部材が、ステアリングシャフトを囲む円筒状コラムに固定されたステアリング装置であって、 本体と、この本体に対してステアリングシャフトの回転のロック位置とロック解除位置との間で変位するロック部材とを有するロック装置を備え、 支持部材に、そのロック装置の本体が固定され、その本体と支持部材とはコラムの径方向から視て重なる位置に配置され、 本体の外面一部は、支持部材に固定された状態でコラムの外周面に沿う円弧状の凹曲面と、その凹曲面の両端からコラムの外方に向かって延びる接合面とを有し、 凹曲面に覆われていないコラムにおける外周の残りの円弧状の曲面に支持部材が固定され、 支持部材に本体の接合面に接する第2の接合面が形成され、本体の接合面と支持部材の第2の接合面とが接することで、支持部材と本体はコラムの径方向において互いに反対側に配置された状態で接合され、 第2の接合面は、コラムの外方に向かって本体の接合面に沿って延びるステアリング装置。」 一方で、両者は、次の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明では、支持部材とコラムが「同一材料から一体的に成形され」、第2接合面が「コラムの外周から」延びているのに対し、引用発明では、セレクタユニット7(支持部材に相当)とステアリングコラム1(コラムに相当)とが「当接」しているが「同一材料から一体的に成形され」ておらず、座面部9aが「円弧状座面12」から延びている点。 [相違点2] 「接合面、第2の接合面」について、その方向及び「コラムの外周に固定する」状態は、本願補正発明では「コラムの径方向外方に向かって延び」「本体における凹曲面と接合面との境界と、コラムの外周と第2の接合面との境界とが、コラムの外周において相隣接する」のに対して、引用発明では「ステアリングコラム1外方に向かって上下方向に延び」「円弧状座面12,13をステアリングコラム1の外周面に当接させた」もので「凹曲面と接合面との境界とコラムの外周と第2の接合面との境界とが、ステアリングコラム1の外周面近傍に位置」している点。 (4)判断 [相違点1について] 一般に、別部材を溶接やボルト連結するものを同一材料から一体的に成形し、部品点数の低減や組み付けを容易とすることは通常行われていることであり、上記第2引用例にもシフトレバー機構に関して「コラムと支持部材とを同一材料から一体的に成形」する事項や「コラムの外周に支持部材が一体化」されている事項が記載されている(上記(2).記載事項(ハ)?(ホ)参照)。 してみれば、引用発明の「セレクタユニット7(支持部材)とステアリングコラム1(コラム)とが当接している」構成に、上記第2引用例に記載されている事項を適用して、「セレクタユニット7とステアリングコラム1とを同一材料から一体的に成形し、コラムの外周に支持部材を一体化」するとともに座面部9aをコラムの外周から延ばして、本願補正発明の相違点1に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものである。 [相違点2について] 引用発明の接合面と座面部9aとが延びる方向について、「ステアリングコラム1の外方に向かって上下方向」に代えて「コラムの径方向外方」にすることは、円筒状物を二つの部材で挟み込むように両方向部材で接合する際に、円弧状凹曲面から延びる接合面を円筒状物の径方向外方に設けることが一般的であることを勘案すると設計的な事項である。そして、引用発明の「円弧状座面12,13をステアリングコラム1の外周面に当接させ」たものも「ステアリングコラム1の外周面と対応する大きさで形成され」ているので、前記[相違点1について]で、検討したように、座面部9aをステアリングコラム1の外周から延ばす際、「円弧状座面13と取付基部5aの接合面との境界と、ステアリングコラム1の外周と座面部9aとの境界」とをステアリングコラム1の外周において相隣接させることは当業者であれば容易に成し得たものといえ、本願補正発明の相違点2に係る発明特定事項とすることに何ら格別の困難性は認められない。 そして、本願補正発明の作用効果について、発明全体としてみても、引用発明及び第2引用例記載事項から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び第2引用例記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成18年11月10日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、平成18年6月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。) 「【請求項1】変速機の操作用チェンジレバーを支持する支持部材が、ステアリングシャフトを囲む円筒状コラムと同一材料から一体的に成形されているステアリング装置であって、 本体と、この本体に対してステアリングシャフトの回転のロック位置とロック解除位置との間で変位するロック部材とを有するロック装置を備え、 前記支持部材に、そのロック装置の本体が固定され、その本体と支持部材とはコラムの径方向から視て重なる位置に配置され、 前記本体の外面一部は、前記支持部材に固定された状態で前記コラムの外周面に沿う円弧状の凹曲面と、その凹曲面の両端から前記コラムの径方向外方に向かって延びる接合面とを有し、 前記凹曲面に覆われていない前記コラムにおける外周の残りの円弧状の曲面に前記支持部材が一体化され、 前記支持部材に前記本体の接合面に接する第2の接合面が形成され、前記本体の接合面と前記支持部材の第2の接合面とが接することで、前記支持部材と前記本体は前記コラムの径方向において互いに反対側に配置された状態で接合されていることを特徴とするステアリング装置。」 4.引用例及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項及び引用発明は、上記2.(2)に記載したとおりである。 5.対比・判断 上記の本願発明と、上記の2.で検討した本願補正発明とを対比すると、上記2.(1)で指摘したところから明らかなように、本願発明の構成に、更に限定事項を加えたものが本願補正発明にあたる。 そうすると、本願発明の構成を全て含み、更に構成を限定している本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、上記引用発明及び上記第2引用例の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、上記引用発明及び上記第2引用例の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本件出願は、本件出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-24 |
結審通知日 | 2008-10-01 |
審決日 | 2008-10-21 |
出願番号 | 特願2000-402749(P2000-402749) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B62D)
P 1 8・ 121- Z (B62D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西本 浩司 |
特許庁審判長 |
川向 和実 |
特許庁審判官 |
丸山 英行 柿崎 拓 |
発明の名称 | ステアリング装置 |
代理人 | 根本 進 |