ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E01C |
---|---|
管理番号 | 1188777 |
審判番号 | 不服2007-4198 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-02-09 |
確定日 | 2008-12-02 |
事件の表示 | 平成11年特許願第331509号「透水性舗装用歩車道境界ブロック及び透水性舗装の排水構造」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月12日出願公開、特開2000-345508〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年11月22日(優先権主張平成11年3月31日)の出願であって、平成18年12月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年2月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明のうち、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年9月11日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 (本願発明) 「畝(15)と当該畝(15)の下部片側に突出するエプロン(16,31)とを一体に備えた歩車道境界ブロックにおいて、ブロックを畝(15)と平行な方向に貫通する排水路(22,27)が設けられており、この排水路に連通する取水口(23,24)が排水路(22,27)より高い位置で畝の側面及びエプロンの側面ないし上面に開口していることを特徴とする、透水性舗装用歩車道境界ブロック。」 3.刊行物に記載された発明 これに対して、原査定において拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、登録実用新案第3039939号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア) 「【0001】 【考案の属する技術分野】 本考案は、車道を対象とし路盤以下へ水が浸透しない構造とした排水性舗装設の路肩部に布設し、車道の路面水と表層または表層・基層等の浸透水を速やかに排水する排水性舗装用暗渠ブロックに関するものである。」 (イ) 「【0032】 以下、図16乃至図18により実施例7を説明する。 この実施例7は、道路境界部22を上面一端部(歩道側)に突設した排水性舗装用暗渠ブロック120Fで、残り上面に道路横断勾配(排水勾配)と合致する斜面25を形成すると共に、前記道路境界部22寄りの線上に中空部40(「30」の誤記…当審注)に通じる複数の流入孔30(「40」の誤記…当審注)を穿設し、排水性舗装(車道側と歩道側)の表層2または表層2と基層4の浸透水w2を速やかに排水するため、両側面上部寄りの延長線上に、排水性舗装に浸透し路肩に流出した雨水が容易に中空部内に流入し下降する流入孔を設け、該流入孔入り口に窪みbを設け、窪みb内に舗装工事中の転圧時にアスファルト混合物の細骨材の流入を防止する透水かつ耐熱性のフィルター部材80を設けると共に、中空部30の底面部35をV形に形成して、水量の少ない場合の沈殿物の掃流効果を向上する。」 (ウ) 「【0033】 施工時(図18参照)には、排水性舗装用暗渠ブロック120Fを車道と歩道間に布設し、車道側の流入孔60と歩道側の流入孔65が排水性舗装の透水性のある表層2または表層2と基層4の下側に位置するよう施工する。 このように施工すれば、車道側の路面水w1は上面の流入孔40から中空部30内に排水され、歩道と車道の表層2または表層2とその下側の基層4に浸透した浸透水w2は、路肩3から中空部30内に流入孔60,65を通じて急速に排水され、浸水による路盤8と排水性舗装用暗渠ブロック120Fの基礎工kの劣化も防止でき、排水性舗装10の機能を長期間維持できる。」 そして、上記記載事項(ア)?(ウ)及び図面に記載された内容を総合すると、刊行物には、次の発明(以下、「刊行物記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 (刊行物記載の発明) 「道路境界部22を上面一端部(歩道側)に突設した排水性舗装用暗渠ブロック120Fにおいて、当該暗渠ブロックを道路境界部22と平行な方向に貫通する中空部30が設けられており、この中空部30に連通する流入孔65,60,40が、中空部30より高い位置で、道路境界部22の側面並びに暗渠ブロックの側面及び斜面25に、開口している排水性舗装用暗渠ブロック120F。」 4.対比・判断 本願発明と上記刊行物記載の発明とを対比すると、その作用ないし構造からみて、刊行物記載の発明の「中空部30」が本願発明の「排水路」に相当し、以下同様に、「流入孔65,60,40」が「取水口」に、「斜面25」が「上面」に、それぞれ相当する。 そして、本願発明の「畝」の構成は必ずしも明らかではないが、少なくとも平行に盛り上がっているところを指すものと解すると、刊行物記載の発明の「道路境界部22」が本願発明の「畝」に相当し、また、刊行物記載の発明の「排水性舗装用暗渠ブロック120F」は、その上面一端部(歩道側)に車道と歩道の「道路境界部22」を突設したものであるから、刊行物記載の発明の「排水性舗装用暗渠ブロック120F」は本願発明の「透水性舗装用歩車道境界ブロック」に相当するものといえる。 さらに、刊行物記載の発明の道路境界部22を除いた「暗渠ブロック」と本願発明の「エプロン」とは、畝の下部片側に突出する「構成部材」である点で共通する。 してみると、本願発明と刊行物記載の発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「畝と当該畝の下部片側に突出する構成部材とを一体に備えた歩車道境界ブロックにおいて、ブロックを畝と平行な方向に貫通する排水路が設けられており、この排水路に連通する取水口が排水路より高い位置で畝の側面及び畝の下部片側に突出する構成部材の側面ないし上面に開口している透水性舗装用歩車道境界ブロック。」である点。 (相違点) 畝の下部片側に突出する構成部材は、本願発明が「エプロン」であるのに対し、刊行物記載の発明は、道路境界部22を除いた「暗渠ブロック」である点。 上記相違点を検討するため、本願発明の構成要件である「エプロン」について検討すると、本願明細書では「エプロン」の語の定義及びその構成は、必ずしも明らかではないが、平成18年9月11日付けで補正された本願明細書の、「【0005】図12に示す構造は…車道に降った雨水は、透水性の表層13を通って不透水性の基層12の表面を流れてエプロン16の上に流出し、畝に沿って下流側に排出される。なおL形の境界ブロックは、エプロンが幅広く設けられており、ブロックの座りがよく安定している。」及び「【0006】…また、図12の排水構造は、エプロンの上面を排水が流れ、段差のあるエプロンと透水性の表層との間に亀裂が入りやすく、路面の側縁が崩れやすいという欠点がある。」等の記載から、「エプロン」の機能は、その上面において車道に降った雨水を下流側に排出すればよいものであると解される。 また、同本願図面の【図1】?【図5】及び【図10】記載の「エプロン16」は比較的上下の厚みが薄いものであるが、【図6】、【図8】、【図9】及び【図10】記載の「エプロン31」は、比較的上下の厚みが厚いことから、雨水を排出するものであれば厚みのあるブロック状のものでも「エプロン」と呼んでもよいものと解される。したがって、上記刊行物記載の発明の「エプロン」は「ブロック状」のものも排除していない。 さらに、畝と当該畝の下部片側に突出するエプロンとからなる歩車道境界ブロックは、従来周知(特開平9-291505号公報、実願昭57-92526号(実開昭59-1704号)のマイクロフィルム等参照)である。 これらのことを参酌して検討すると、上記刊行物記載の発明のように、歩車道境界ブロックにおいて、畝(道路境界部22)の下部片側に突出する構成部材(道路境界部22を除いた暗渠ブロック)が排水路(中空部30)を設けるものであって、厚みのあるエプロンを有するものが公知であり、当該歩車道境界ブロックを、従来周知の歩車道境界ブロックに適用し、この出願の発明のように構成しようとすることは、当業者であれば、必要に応じて適宜なし得る程度の技術事項であり、このようにしたことによる格別の作用効果も認められない。 なお、請求人は、「引用文献4のブロックは、暗渠ブロックであり、その上面に道路境界ブロックを載置して又は一体に備えているものであって、本願発明の排水路に相当する中空部30は、暗渠ブロックに設けられており、排水路を備えた道路境界ブロックは全く示されていない。暗渠ブロックが排水路(中空部30)を備えていることは当然であるのに対し、従来は、コンクリート製の縁石や道路境界ブロックにその長手方向に排水路を設けるという発想は全くなかったのである。」(審判請求書2頁下14?9行)と主張するが、上記刊行物には、道路境界ブロック(道路境界部22を備える暗渠ブロック)にその長手方向に排水路(中空部30)を設けたものが記載されているから、上記請求人の主張は採用できない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-24 |
結審通知日 | 2008-09-30 |
審決日 | 2008-10-14 |
出願番号 | 特願平11-331509 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E01C)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 深田 高義 |
特許庁審判長 |
石川 好文 |
特許庁審判官 |
宮崎 恭 砂川 充 |
発明の名称 | 透水性舗装用歩車道境界ブロック及び透水性舗装の排水構造 |
代理人 | 西 孝雄 |