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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1188811 |
審判番号 | 不服2005-7026 |
総通号数 | 109 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-04-20 |
確定日 | 2008-12-04 |
事件の表示 | 特願2000- 87291「情報伝達ネットワークの生成方法及び情報伝達ネットワークの生成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月 5日出願公開、特開2001-273386〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成12年3月27日の出願であって、平成17年3月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年4月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月20日付で手続補正がなされたものである。 2.平成17年5月20日付の手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年5月20日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を以下のように補正するものである。 「【請求項1】 情報伝達のシミュレーションを行うための情報伝達ネットワークを生成する方法において、 CPU22のシナリオ設定部27により、各住民の位置や属性データを含む世帯データの入力、調査によって想定した被災社会の状況に応じた各情報伝達特性パラメータの設定、各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータの設定、及び、ネットワーク形成回数の設定を行う第1の手順と、 CPU22のシミュレーション実行部28により、前記第1の手順で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーションし、その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出する第2の手順と、 CPU22に接続された表示部25により、前記第2の手順で求めた地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等の結果をGIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示する第3の手順と、 CPU22の評価検討部29により、前記第2の手順で求めた地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行う第4の手順と を有し、 前記第1の手順における各情報伝達特性パラメータとして、個人が情報伝達相手として選択する人数であって、想定する状況に応じた情報伝達相手数を調査によって把握し、その分布を求めた情報伝達相手数の分布と、個人が選択した情報伝達相手までの距離の分布であって、調査によって把握した情報伝達相手距離の分布と、伝達相手として選択された個人が自らを選択した相手を伝達相手に選択し返す状況を示す反射的選択と同一の相手に選択された二人の個人の間でさらに選択が行われる状況を示す推移的選択とを備えた相手選択におけるバイアスパラメータを入力して設定する手順を含み、 第1の手順における、各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータとして、口頭伝達では、その伝達特性として伝達相手数分布、伝達距離帯分布、歩行速度を表わし、電話伝達では、その伝達特性として伝達相手数分布、輻輳率、輻輳時間分布を表わし、広報車伝達では、その伝達特性として移動ルート、移動速度、音声到達範囲、聴取率、出動タイミングを表わし、屋外拡声器伝達では、その伝達特性として音声到達範囲、聴取率、発声タイミングを表わし、テレビ・ラジオ伝達では、その伝達特性として聴取率、放送タイミングを表わすそれぞれのパラメータを設定する手順を含み、 第2の手順は、その処理構造が、イベント駆動型の処理構造であって、オブジェクトの動作処理を各イベント毎に記述していき、このイベントを発生させるオブジェクト間のメッセージのやり取りを、時間の概念を持った管理クラスに仲介させることにより、時間操作に関連する処理を、一つのクラス内に集中させ、これにより、プログラム内における伝達タイミング調整などの時間処理を簡潔にコーディングするようにし、 クラス構造が、情報伝達メディア共通の基本的な属性データ、オブジェクト間で送受信するメッセージの受け口となる手続きを備えた最上層の共通基底クラス、その下位にあって各メディアに共通する特徴をまとめたメディア基底クラス及び最下位の派生クラスとして実際にモデル上に登場する情報伝達メディアを具備し、情報伝達メディア同士のメッセージのやり取りと各メッセージに対応したイベントを、担当するクラスに処理させることにより、地域住民の情報伝達行動や情報伝達メディアの機能を表現できるようにして記述されたオブジェクト指向型シミュレーションプログラムを用いて、住民間の情報伝達の経路及び経過時間等のシミュレーションを実行する手順を含むことを特徴とする情報伝達ネットワークの生成方法。 【請求項2】 第1の手順における相手選択バイアスパラメータは、 バイアスが生じない布置関係では、確率d=A/(N-1)の式(N:地域住民の総人数、A:情報伝達相手数)で起こるものとして捉え、 反射的バイアスが生じる布置関係では、確率P1=π+(1-π)dの式(π:反射的バイアスパラメータ)で起こるものとして捉え、 推移的バイアスが生じる布置関係では、確率P2=σ+(1-σ)dの式(σ:推移的バイアスパラメータ)で起こるものとして捉えるようにしたことを特徴とする請求項1記載の情報伝達ネットワークの生成方法。 【請求項3】 シナリオ設定部27、シミュレーション実行部28及び評価検討部29からなるCPU22と、このCPU22にシミュレーション条件設定のための各種のデータ、操作プログラム等を入力する入力部20と、前記CPU22に地理空間データを入力するためのGIS21と、シミュレーションした画像を表示するための表示部25と、他の機器への出力のためのデータ出力部26とを具備し、 前記シナリオ設定部27は、前記入力部20及びGIS21からの入力に基づいて、各住民の位置や属性データを含む世帯データの入力、調査によって想定した被災社会の状況に応じた情報伝達相手数の分布、情報伝達相手距離の分布及び相手選択におけるバイアスパラメータからなる各情報伝達特性パラメータの設定、口頭伝達、電話伝達、広報車伝達、屋外拡声器伝達、テレビ・ラジオ伝達等のそれぞれの伝達手段に応じた伝達特性を表すパラメータからなる各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータの設定、及び、ネットワーク形成回数の設定を行い、 前記シミュレーション実行部28は、前記シナリオ設定部27で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーションし、その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出するとともに、前記表示部25にこれらのシミュレーション結果を前記GIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示し、 前記評価検討部29は、前記シミュレーション実行部28で求めた地域の情報取得率、各世帯がネットワークに組み込まれた時点までに要した情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行い、 前記データ出力部26は、前記評価結果を出力するようにしたことを特徴とする情報伝達ネットワークの生成装置。 【請求項4】 シナリオ設定部27は、相手選択におけるバイアスパラメータが、 バイアスが生じない布置関係では、確率d=A/(N-1)の式(N:地域住民の総人数、A:情報伝達相手数)で起こるものとして捉え、 反射的バイアスが生じる布置関係では、確率P1=π+(1-π)dの式(π:反射的バイアスパラメータ)で起こるものとして捉え、 推移的バイアスが生じる布置関係では、確率P2=σ+(1-σ)dの式(σ:推移的バイアスパラメータ)で起こるものとして捉えるようにしたことを特徴とする請求項3記載の情報伝達ネットワークの生成方法。 【請求項5】 評価検討部29は、前記シミュレーション実行部28で求めた伝達対象地域の全住民に対し情報を取得できた住民の割合を示す悉皆性の指標である地域の情報取得率、各世帯がネットワークに組み込まれた時点までに要した速達性の指標である情報取得時間、情報伝達プロセス数を表す正確性の指標である各世帯の情報取得ステップ数を算出するものからなることを特徴とする請求項3又は4記載の情報伝達ネットワークの生成装置。 【請求項6】 シミュレーション実行部28は、その処理構造が、イベント駆動型の処理構造であって、オブジェクトの動作処理を各イベント毎に記述していき、このイベントを発生させるオブジェクト間のメッセージのやり取りを、時間の概念を持った管理クラスに仲介させることにより、時間操作に関連する処理を、一つのクラス内に集中させ、これにより、プログラム内における伝達タイミング調整などの時間処理を簡潔にコーディングするようにし、 クラス構造が、情報伝達メディア共通の基本的な属性データ、オブジェクト間で送受信するメッセージの受け口となる手続きを備えた最上層の共通基底クラス、その下位にあって各メディアに共通する特徴をまとめたメディア基底クラス及び最下位の派生クラスとして実際にモデル上に登場する情報伝達メディアを具備し、情報伝達メディア同士のメッセージのやり取りと各メッセージに対応したイベントを、担当するクラスに処理させることにより、地域住民の情報伝達行動や情報伝達メディアの機能を表現できるようにして記述されたオブジェクト指向型シミュレーションプログラムを用いて、住民間の情報伝達の経路及び経過時間等のシミュレーションを実行するようにしたことを特徴とする請求項3、4又は5記載の情報伝達ネットワークの生成装置。」 (2)当審の判断 (2-1)本件補正の前の特許請求の範囲は、平成16年9月21日付手続補正書に記載された、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 情報伝達ネットワークを生成するためにCPU22を、 各住民の位置や属性データを含む世帯データの入力、調査によって想定した被災社会の状況に応じた各情報伝達特性パラメータの設定、各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータの設定、及び、ネットワーク形成回数の設定を行う第1の手段、 前記第1の手段で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーションし、その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出する第2の手段、 前記第2の手段で求めた地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等の結果をGIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示部25に表示する第3の手段、及び、 前記第2の手段で求めた地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行う第4の手段によって機能させるようにしたことを特徴とする情報伝達ネットワークの生成プログラム。 【請求項2】 第1の手段は、被災社会の状況に応じた各情報伝達特性パラメータとして、情報伝達相手数の分布、情報伝達相手距離の分布及び相手選択におけるバイアスパラメータを入力して設定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の情報伝達ネットワークの生成プログラム。 【請求項3】 第1の手段は、各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータとして、口頭伝達、電話伝達、広報車伝達、屋外拡声器伝達、テレビ・ラジオ伝達等のそれぞれの伝達手段に応じた伝達特性を表すパラメータを設定したことを特徴とする請求項1記載の情報伝達ネットワークの生成プログラム。 【請求項4】 前記第2の手段における住民間の情報伝達の経路及び経過時間等のシミュレーションは、 その処理構造が、イベント駆動型の処理構造であって、オブジェクトの動作処理を各イベント毎に記述していき、このイベントを発生させるオブジェクト間のメッセージのやり取りを、時間の概念を持った管理クラスに仲介させることにより、時間操作に関連する処理を、一つのクラス内に集中させ、これにより、プログラム内における伝達タイミング調整などの時間処理を簡潔にコーディングするようにし、 クラス構造が、情報伝達メディア共通の基本的な属性データ、オブジェクト間で送受信するメッセージの受け口となる手続きを備えた最上層の共通基底クラス、その下位にあって各メディアに共通する特徴をまとめたメディア基底クラス及び最下位の派生クラスとして実際にモデル上に登場する情報伝達メディアを具備し、情報伝達メディア同士のメッセージのやり取りと各メッセージに対応したイベントを、担当するクラスに処理させることにより、地域住民の情報伝達行動や情報伝達メディアの機能を表現できるようにして記述されたオブジェクト指向型シミュレーションプログラムを用いて実行するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3記載の情報伝達ネットワークの生成プログラム。 【請求項5】 情報伝達のシミュレーションを行うための情報伝達ネットワークを生成する方法において、 CPU22のシナリオ設定部27が、各住民の位置や属性データを含む世帯データの入力、調査によって想定した被災社会の状況に応じた各情報伝達特性パラメータの設定、各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータの設定、及び、ネットワーク形成回数の設定を行う第1の手順、 CPU22のシミュレーション実行部28が、前記第1の手順で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーションし、その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出する第2の手順、 表示部25が、前記第2の手順で求めた地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等の結果をGIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示する第3の手順、及び、 CPU22の評価検討部29が、前記第2の手順で求めた地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行う第4の手順とからなることを特徴とする情報伝達ネットワークの生成方法。 【請求項6】 第1の手順が、被災社会の状況に応じた各情報伝達特性パラメータとして、情報伝達相手数の分布、情報伝達相手距離の分布及び相手選択におけるバイアスパラメータを入力して設定する手順を含むことを特徴とする請求項5記載の情報伝達ネットワークの生成方法。 【請求項7】 第1の手順が、各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータとして、口頭伝達、電話伝達、広報車伝達、屋外拡声器伝達、テレビ・ラジオ伝達等のそれぞれの伝達手段に応じた伝達特性を表すパラメータを設定する手順を含むことを特徴とする 請求項5記載の情報伝達ネットワークの生成方法。 【請求項8】 第2の手順は、その処理構造が、イベント駆動型の処理構造であって、オブジェクトの動作処理を各イベント毎に記述していき、このイベントを発生させるオブジェクト間のメッセージのやり取りを、時間の概念を持った管理クラスに仲介させることにより、時間操作に関連する処理を、一つのクラス内に集中させ、これにより、プログラム内における伝達タイミング調整などの時間処理を簡潔にコーディングするようにし、 クラス構造が、情報伝達メディア共通の基本的な属性データ、オブジェクト間で送受信するメッセージの受け口となる手続きを備えた最上層の共通基底クラス、その下位にあって各メディアに共通する特徴をまとめたメディア基底クラス及び最下位の派生クラスとして実際にモデル上に登場する情報伝達メディアを具備し、情報伝達メディア同士のメッセージのやり取りと各メッセージに対応したイベントを、担当するクラスに処理させることにより、地域住民の情報伝達行動や情報伝達メディアの機能を表現できるようにして記述されたオブジェクト指向型シミュレーションプログラムを用いて、住民間の情報伝達の経路及び経過時間等のシミュレーションを実行する手順を含むことを特徴とする請求項5乃至7記載の情報伝達ネットワークの生成方法。 【請求項9】 シナリオ設定部27、シミュレーション実行部28及び評価検討部29からなるCPU22と、このCPU22にシミュレーション条件設定のための各種のデータ、操作プログラム等を入力する入力部20と、前記CPU22に地理空間データを入力するためのGIS21と、シミュレーションした画像を表示するための表示部25と、他の機器への出力のためのデータ出力部26とを具備し、 前記シナリオ設定部27は、前記入力部20及びGIS21からの入力に基づいて、各住民の位置や属性データを含む世帯データの入力、調査によって想定した被災社会の状況に応じた各情報伝達特性パラメータの設定、各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータの設定、及び、ネットワーク形成回数の設定を行い、 前記シミュレーション実行部28は、前記シナリオ設定部27で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーションし、その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出するとともに、前記表示部25にこれらのシミュレーション結果を前記GIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示し、 前記評価検討部29は、前記シミュレーション実行部28で求めた地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行い、 前記データ出力部26は、前記評価結果を出力するようにしたことを特徴とする情報伝達ネットワークの生成装置。 【請求項10】 シナリオ設定部27は、被災社会の状況に応じた各情報伝達特性パラメータとして、情報伝達相手数の分布、情報伝達相手距離の分布及び相手選択におけるバイアスパラメータを設定するようにし、これらのパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーション実行部28でシミュレーションするようにしたことを特徴とする請求項9記載の情報伝達ネットワークの生成装置。 【請求項11】 シナリオ設定部27は、各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータとして、口頭伝達、電話伝達、広報車伝達、屋外拡声器伝達、テレビ・ラジオ伝達等のそれぞれの伝達手段に応じた伝達特性を表すパラメータを設定し、これらのパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーション実行部28でシミュレーションするようにしたことを特徴とする請求項9記載の情報伝達ネットワークの生成装置。 【請求項12】 シミュレーション実行部28は、その処理構造が、イベント駆動型の処理構造であって、オブジェクトの動作処理を各イベント毎に記述していき、このイベントを発生させるオブジェクト間のメッセージのやり取りを、時間の概念を持った管理クラスに仲介させることにより、時間操作に関連する処理を、一つのクラス内に集中させ、これにより、プログラム内における伝達タイミング調整などの時間処理を簡潔にコーディングするようにし、 クラス構造が、情報伝達メディア共通の基本的な属性データ、オブジェクト間で送受信するメッセージの受け口となる手続きを備えた最上層の共通基底クラス、その下位にあって各メディアに共通する特徴をまとめたメディア基底クラス及び最下位の派生クラスとして実際にモデル上に登場する情報伝達メディアを具備し、情報伝達メディア同士のメッセージのやり取りと各メッセージに対応したイベントを、担当するクラスに処理させることにより、地域住民の情報伝達行動や情報伝達メディアの機能を表現できるようにして記述されたオブジェクト指向型シミュレーションプログラムを用いて、住民間の情報伝達の経路及び経過時間等のシミュレーションを実行するようにしたことを特徴とする請求項9乃至11記載の情報伝達ネットワークの生成装置。」 (2-2)検討 本件補正は、拒絶査定に対する審判請求時の補正であるから、本件補正による特許請求の範囲についてする補正は、特許法第17条の2第4項の規定により同項第1号から第4号に掲げる事項を目的とするものに限られる。 そこで、本件補正による特許請求の範囲の補正が、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものであるかを検討する。 (2-2-1)本件補正後の請求項1、3についての補正 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし4には、「情報伝達ネットワークの生成プログラム」に関して記載されており、請求項5ないし8には、「情報伝達ネットワークの生成方法」に関して記載されており、また、請求項9ないし12には、「情報伝達ネットワークの生成装置」に関して記載されている。これに対して、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には、「情報伝達ネットワークの生成方法」に関して記載され、本件補正後の特許請求の範囲の請求項3には、「情報伝達ネットワークの生成装置」に関して記載されているから、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項5ないし8のいずれかに対応し、また、本件補正後の請求項3は、本件補正前の請求項9ないし12のいずれかに対応するものである。 そこで、まず、本件補正後の請求項1と、本件補正前の請求項5ないし8とを対比すると、本件補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項5に係る発明に、補正前の請求項5を引用する請求項6に記載の事項、同じく補正前の請求項5を引用する請求項7に記載の事項、および補正前の請求項5乃至7を引用する請求項8に記載の事項を追加し、さらに前記各事項を補正するものであるから、本件補正後の請求項1についての補正は、補正前の請求項5ないし8のいずれに記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく、当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。 次に、本件補正後の請求項3と、本件補正前の請求項9ないし12とを対比すると、本件補正後の請求項3に係る発明は、補正前の請求項9に係る発明に、補正前の請求項9を引用する請求項10に記載の事項、および同じく補正前の請求項9を引用する請求項11に記載の事項を追加するものであるから、本件補正後の請求項3についての補正は、補正前の請求項9ないし12のいずれに記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく、当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。 また、上記補正後の請求項1、3についての各補正が、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる事項(請求項の削除)、同項第3号に掲げる事項(誤記の訂正)及び同項第4号に掲げる事項(明りょうでない記載の釈明)のいずれを目的とするものでないことも明らかである。 (2-2-2)本件補正後の請求項2、4についての補正 上述したように、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし4には、「情報伝達ネットワークの生成プログラム」に関して記載されており、請求項5ないし8には、「情報伝達ネットワークの生成方法」に関して記載されており、また、請求項9ないし12には、「情報伝達ネットワークの生成装置」に関して記載されている。これに対して、本件補正後の特許請求の範囲の請求項2には、「情報伝達ネットワークの生成方法」に関して記載され、本件補正後の特許請求の範囲の請求項4には、「情報伝達ネットワークの生成装置」に関して記載されているから、本件補正後の請求項2は、本件補正前の請求項5ないし8のいずれかに対応し、また、本件補正後の請求項4は、本件補正前の請求項9ないし12のいずれかに対応するものである。 そこで、本件補正後の請求項2と、本件補正前の請求項5ないし8とを対比すると、本件補正後の請求項2に係る発明は、本件補正後の請求項1を引用する発明であり、補正後の請求項1に係る発明に、本件補正前の請求項5ないし8には記載されていない事項である「第1の手順における相手選択バイアスパラメータは、バイアスが生じない布置関係では、確率d=A/(N-1)の式(N:地域住民の総人数、A:情報伝達相手数)で起こるものとして捉え、反射的バイアスが生じる布置関係では、確率P1=π+(1-π)dの式(π:反射的バイアスパラメータ)で起こるものとして捉え、推移的バイアスが生じる布置関係では、確率P2=σ+(1-σ)dの式(σ:推移的バイアスパラメータ)で起こるものとして捉えるようにしたこと」を発明を特定する事項として付加するものであり、本件補正後の請求項2についての補正は、補正前の請求項5ないし8のいずれに記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく、当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。 また、本件補正後の請求項4と、本件補正前の請求項9ないし12とを対比すると、本件補正後の請求項4に係る発明は、本件補正後の請求項3を引用する発明であり、補正後の請求項3に係る発明に、本件補正前の請求項9ないし12には記載されていない事項である「シナリオ設定部27は、相手選択におけるバイアスパラメータが、バイアスが生じない布置関係では、確率d=A/(N-1)の式(N:地域住民の総人数、A:情報伝達相手数)で起こるものとして捉え、反射的バイアスが生じる布置関係では、確率P1=π+(1-π)dの式(π:反射的バイアスパラメータ)で起こるものとして捉え、推移的バイアスが生じる布置関係では、確率P2=σ+(1-σ)dの式(σ:推移的バイアスパラメータ)で起こるものとして捉えるようにしたこと」を発明を特定する事項として付加するものであるから、本件補正後の請求項4についての補正は、補正前の請求項9ないし12のいずれに記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく、当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。 また、上記補正後の請求項2、4についての各補正が、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる事項(請求項の削除)、同項第3号に掲げる事項(誤記の訂正)及び同項第4号に掲げる事項(明りょうでない記載の釈明)のいずれを目的とするものでないことも明らかである。 (2-2-3)むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (2-3)また、仮に、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合、本件補正後の前記請求項3に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2-3-1)本願補正発明は、情報伝達ネットワークの生成装置が果たす複数の機能により特定された物の発明であり、当該機能はコンピュータの動作に関するプログラムによって実現されるということができる。 したがって、本願補正発明は、その発明の実施にソフトウェアを必要とするところの、いわゆるコンピュータ・ソフトウェア関連発明である。 そして、こうしたコンピュータ・ソフトウェア関連発明が、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるためには、請求項に係る発明において、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていること、つまり、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されていることが必要である。 そこで、本願補正発明を構成する後記(ア)ないし(オ)の各構成要件について、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているといえるかどうか、つまり、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置が構築されているといえるかどうかを、以下に検討する。 本願補正発明を分説して示すと、以下のとおりである。 【請求項3】 (ア)シナリオ設定部27、シミュレーション実行部28及び評価検討部29からなるCPU22と、このCPU22にシミュレーション条件設定のための各種のデータ、操作プログラム等を入力する入力部20と、前記CPU22に地理空間データを入力するためのGIS21と、シミュレーションした画像を表示するための表示部25と、他の機器への出力のためのデータ出力部26とを具備し、 (イ)前記シナリオ設定部27は、前記入力部20及びGIS21からの入力に基づいて、各住民の位置や属性データを含む世帯データの入力、調査によって想定した被災社会の状況に応じた情報伝達相手数の分布、情報伝達相手距離の分布及び相手選択におけるバイアスパラメータからなる各情報伝達特性パラメータの設定、口頭伝達、電話伝達、広報車伝達、屋外拡声器伝達、テレビ・ラジオ伝達等のそれぞれの伝達手段に応じた伝達特性を表すパラメータからなる各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータの設定、及び、ネットワーク形成回数の設定を行い、 (ウ)前記シミュレーション実行部28は、前記シナリオ設定部27で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーションし、その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出するとともに、前記表示部25にこれらのシミュレーション結果を前記GIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示し、 (エ)前記評価検討部29は、前記シミュレーション実行部28で求めた地域の情報取得率、各世帯がネットワークに組み込まれた時点までに要した情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行い、 (オ)前記データ出力部26は、前記評価結果を出力するようにしたことを特徴とする情報伝達ネットワークの生成装置。 (2-3-2)当審の判断 前記(ア)には、「シナリオ設定部27、シミュレーション実行部28及び評価検討部29からなるCPU22と、このCPU22にシミュレーション条件設定のための各種のデータ、操作プログラム等を入力する入力部20と、前記CPU22に地理空間データを入力するためのGIS21と、シミュレーションした画像を表示するための表示部25と、他の機器への出力のためのデータ出力部26とを具備し」と記載されており、「CPU22」についての記載はCPUの機能の概要、「入力部20」についての記載はCPUに入力する情報、「GIS21」についての記載はGISからCPUに入力する情報、「表示部25」についての記載は表示部に表示する情報、「データ出力部26」についての記載は出力先をそれぞれ特定するに止まり、また、上記記載は、情報伝達ネットワークの生成装置の構成の概要を特定するに止まる。 前記(イ)には、「前記シナリオ設定部27は、前記入力部20及びGIS21からの入力に基づいて、各住民の位置や属性データを含む世帯データの入力、調査によって想定した被災社会の状況に応じた情報伝達相手数の分布、情報伝達相手距離の分布及び相手選択におけるバイアスパラメータからなる各情報伝達特性パラメータの設定、口頭伝達、電話伝達、広報車伝達、屋外拡声器伝達、テレビ・ラジオ伝達等のそれぞれの伝達手段に応じた伝達特性を表すパラメータからなる各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータの設定、及び、ネットワーク形成回数の設定を行い」と記載されており、当該記載は、「シナリオ設定部27」に入力、設定される情報が、「各住民の位置や属性データを含む世帯データ」、「調査によって想定した被災社会の状況に応じた情報伝達相手数の分布、情報伝達相手距離の分布及び相手選択におけるバイアスパラメータからなる各情報伝達特性パラメータ」、「口頭伝達、電話伝達、広報車伝達、屋外拡声器伝達、テレビ・ラジオ伝達等のそれぞれの伝達手段に応じた伝達特性を表すパラメータからなる各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータ」、「ネットワーク形成回数」であることを特定するに止まる。 前記(ウ)には、「シミュレーション実行部28は、前記シナリオ設定部27で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーションし、その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出するとともに、前記表示部25にこれらのシミュレーション結果を前記GIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示し」と記載されており、当該記載によれば、「シミュレーション実行部」は、「シナリオ設定部27で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーションし、その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出するとともに、前記表示部25にこれらのシミュレーション結果を前記GIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示」するという機能を実現するためのものであると認められるが、前記(ウ)の記載では、「シナリオ設定部27で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーション」することが、CPU22が具体的にどのような情報をどのように情報処理して実現されるのか提示されておらず、また、「その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出する」ことが、CPU22が具体的にどのような情報にどのような内容の演算を施すことによって実現されるのか提示されておらず、さらに、「表示部25にこれらのシミュレーション結果を前記GIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示」することが、CPU22が具体的にどのような情報をどのように情報処理して実現されるのか提示されていない。 前記(エ)には、「評価検討部29は、前記シミュレーション実行部28で求めた地域の情報取得率、各世帯がネットワークに組み込まれた時点までに要した情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行い」と記載されており、当該記載によれば、「評価検討部29」は「シミュレーション実行部28で求めた地域の情報取得率、各世帯がネットワークに組み込まれた時点までに要した情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行」うという機能を実現するためのものであると認められるが、前記(エ)の記載では、「シミュレーション実行部28で求めた地域の情報取得率、各世帯がネットワークに組み込まれた時点までに要した情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行」うことが、CPU22が具体的にどのような情報をどのように情報処理して実現されるのか提示されていない。 前記(オ)には、「データ出力部26は、前記評価結果を出力するようにしたことを特徴とする」と記載されており、当該記載は、「データ出力部26」が出力する情報が、「前記評価結果」であることを特定するに止まる。 以上の検討を踏まえた上で、請求項3に係る発明の構成を全体として検討すると、請求項3の記載では、情報伝達シミュレーションを行うための情報伝達ネットワークの生成装置の処理機能の概要が抽象的に示されているだけであって、シナリオ設定部27で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーションすること、その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出すること、表示部25にこれらのシミュレーション結果を前記GIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示することが、CPU22が具体的にどのような情報をどのように情報処理して実現されるのか提示されておらず、さらに、シミュレーション実行部28で求めた地域の情報取得率、各世帯がネットワークに組み込まれた時点までに要した情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行うことが、CPU22が具体的にどのような情報をどのように情報処理して実現されるのか提示されていない。 以上のことから、請求項3の記載では、「情報伝達の速達性、正確性、悉皆性を確保し、人的被害を最小限に食い止めたり、流行の広がりの傾向を知ったりする等のネットワークの生成過程を知るためのシミュレーションを行う情報伝達ネットワークの生成装置を提供する」という目的を達成できるようなソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているとは認められない。 (2-3-3)まとめ したがって、本願の請求項3に記載された本願補正発明は、特許法第2条第1項に定義された「自然法則を利用した技術思想の創作」には該当しないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。 (2-3-4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成17年5月20日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成16年9月21日付の手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載されたとおりのものであるところ、請求項9に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「2.(2-1)の【請求項9】」に記載したとおりのものである。 (1)原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶理由通知及び拒絶査定の記載からみて、原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。 1.特許法第29条第1項柱書の規定に関する理由(以下「拒絶の理由A」という。) 請求項1-12の各手段、手順には、出願人が所望する作用・機能・動作が単に記述されているのみであり、請求項1-12において、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工が実現されておらず、請求項1-12に記載されたものは、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することにより構築されたものとはいえないので、ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。 したがって、請求項1-12に記載されたものは特許法第29条第1項柱書でいう「発明」でない。 2.(略) (2)当審の判断 本願発明は、情報伝達ネットワークの生成装置が果たす複数の機能により特定された物の発明であり、当該機能はコンピュータの動作に関するプログラムによって実現されるということができる。 したがって、本願発明は、その発明の実施にソフトウェアを必要とするところの、いわゆるコンピュータ・ソフトウェア関連発明である。 そして、こうしたコンピュータ・ソフトウェア関連発明が、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるためには、請求項に係る発明において、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていること、つまり、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されていることが必要である。 そこで、本願発明を構成する後記(ア)ないし(オ)の各構成要件について、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているといえるかどうか、つまり、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置が構築されているといえるかどうかを、以下に検討する。 本願発明を分説して示すと、以下のとおりである。 【請求項9】 (ア)シナリオ設定部27、シミュレーション実行部28及び評価検討部29からなるCPU22と、このCPU22にシミュレーション条件設定のための各種のデータ、操作プログラム等を入力する入力部20と、前記CPU22に地理空間データを入力するためのGIS21と、シミュレーションした画像を表示するための表示部25と、他の機器への出力のためのデータ出力部26とを具備し、 (イ)前記シナリオ設定部27は、前記入力部20及びGIS21からの入力に基づいて、各住民の位置や属性データを含む世帯データの入力、調査によって想定した被災社会の状況に応じた各情報伝達特性パラメータの設定、各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータの設定、及び、ネットワーク形成回数の設定を行い、 (ウ)前記シミュレーション実行部28は、前記シナリオ設定部27で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーションし、その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出するとともに、前記表示部25にこれらのシミュレーション結果を前記GIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示し、 (エ)前記評価検討部29は、前記シミュレーション実行部28で求めた地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行い、 (オ)前記データ出力部26は、前記評価結果を出力するようにしたことを特徴とする情報伝達ネットワークの生成装置。 前記(ア)には、「シナリオ設定部27、シミュレーション実行部28及び評価検討部29からなるCPU22と、このCPU22にシミュレーション条件設定のための各種のデータ、操作プログラム等を入力する入力部20と、前記CPU22に地理空間データを入力するためのGIS21と、シミュレーションした画像を表示するための表示部25と、他の機器への出力のためのデータ出力部26とを具備し」と記載されており、「CPU22」についての記載はCPUの機能の概要、「入力部20」についての記載はCPUに入力する情報、「GIS21」についての記載はGISからCPUに入力する情報、「表示部25」についての記載は表示部に表示する情報、「データ出力部26」についての記載は出力先をそれぞれ特定するに止まり、また、上記記載は、情報伝達ネットワークの生成装置の構成の概要を特定するに止まる。 前記(イ)には、「シナリオ設定部27は、前記入力部20及びGIS21からの入力に基づいて、各住民の位置や属性データを含む世帯データの入力、調査によって想定した被災社会の状況に応じた各情報伝達特性パラメータの設定、各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータの設定、及び、ネットワーク形成回数の設定を行い」と記載されており、当該記載は、「シナリオ設定部27」に入力、設定される情報が、「各住民の位置や属性データを含む世帯データ」、「調査によって想定した被災社会の状況に応じた各情報伝達特性パラメータ」、「各情報伝達メディアの伝達特性を表すパラメータ」、「ネットワーク形成回数」であることを特定するに止まる。 前記(ウ)には、「シミュレーション実行部28は、前記シナリオ設定部27で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーションし、その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出するとともに、前記表示部25にこれらのシミュレーション結果を前記GIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示し」と記載されており、当該記載によれば、「シミュレーション実行部」は、「シナリオ設定部27で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーションし、その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出するとともに、前記表示部25にこれらのシミュレーション結果を前記GIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示」するという機能を実現するためのものであると認められるが、前記(ウ)の記載では、「シナリオ設定部27で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーション」することが、CPU22が具体的にどのような情報をどのように情報処理して実現されるのか提示されておらず、また、「その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出する」ことが、CPU22が具体的にどのような情報にどのような内容の演算を施すことによって実現されるのか提示されておらず、さらに、「表示部25にこれらのシミュレーション結果を前記GIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示」することが、CPU22が具体的にどのような情報をどのように情報処理して実現されるのか提示されていない。 前記(エ)には、「評価検討部29は、前記シミュレーション実行部28で求めた地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行い」と記載されており、当該記載によれば、「評価検討部29」は「シミュレーション実行部28で求めた地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行」うという機能を実現するためのものであると認められるが、前記(エ)の記載では、「シミュレーション実行部28で求めた地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行」うことが、CPU22が具体的にどのような情報をどのように情報処理して実現されるのか提示されていない。 前記(オ)には、「データ出力部26は、前記評価結果を出力するようにしたことを特徴とする」と記載されており、当該記載は、「データ出力部26」が出力する情報が、「前記評価結果」であることを特定するに止まる。 以上の検討を踏まえた上で、本願発明の構成を全体として検討すると、請求項9の記載では、情報伝達シミュレーションを行うための情報伝達ネットワークの生成装置の処理機能の概要が抽象的に示されているだけであって、シナリオ設定部27で設定した各住民の世帯データ及び各種のパラメータに基づいて住民間の情報伝達の経路及び経過時間等をシミュレーションすること、その結果から情報伝達効率として、地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等を算出すること、表示部25にこれらのシミュレーション結果を前記GIS21から入力した地理空間データ上に展開して表示することが、CPU22が具体的にどのような情報をどのように情報処理して実現されるのか提示されておらず、さらに、シミュレーション実行部28で求めた地域の情報取得率、各世帯の情報取得時間、各世帯の情報取得ステップ数等の結果を情報の速達性、正確性、安定性を評価するための代理指数として評価を行うことが、CPU22が具体的にどのような情報をどのように情報処理して実現されるのか提示されていない。 以上のことから、請求項9の記載では、「情報伝達の速達性、正確性、悉皆性を確保し、人的被害を最小限に食い止めたり、流行の広がりの傾向を知ったりする等のネットワークの生成過程を知るためのシミュレーションを行う情報伝達ネットワークの生成装置を提供する」という目的を達成できるようなソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているとは認められない。 したがって、本願の請求項9に記載された発明は、特許法第2条第1項に定義された「自然法則を利用した技術思想の創作」に該当するとは認められない。 (3)むすび 以上のとおり、本願の請求項9に記載された発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-14 |
結審通知日 | 2008-09-09 |
審決日 | 2008-09-24 |
出願番号 | 特願2000-87291(P2000-87291) |
審決分類 |
P
1
8・
574-
Z
(G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q) P 1 8・ 1- Z (G06Q) P 1 8・ 572- Z (G06Q) P 1 8・ 573- Z (G06Q) P 1 8・ 571- Z (G06Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 谷口 信行 |
特許庁審判長 |
藤内 光武 |
特許庁審判官 |
▲吉▼田 耕一 久保田 健 |
発明の名称 | 情報伝達ネットワークの生成方法及び情報伝達ネットワークの生成装置 |
代理人 | 古澤 俊明 |
代理人 | 古澤 俊明 |